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あと少し、もう少しのスピンオフ。渡部くんが大人になってて、でも駅伝の思い出がずっと心に残りながら日々を過ごしてるのがほっこり。
今回の主人公は29歳無職のすねかじりニートだけど、お年寄りとの付き合い方にリスペクトがあったり人としての基本ができてて憎めない感じ。
後半のお別れのシーンは切なかった。
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三部作の1つのようです。
あと少し、もう少しの渡部くんが登場します。
やりたいことも特になく、ニート状態の主人公が人との交流の温かみや切なさを経験します。
瀬尾まいこさんの作品は気持ちがほっこりします。
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まず、29歳まで無職なんてふつうにめちゃめちゃ羨ましい笑
しかも実家が資産家なら、働かなくても生きていけそうだしなあ とゲンキンなことばかり考えたんだが…
お友達は「あと少し、もう少し」に出ていた子なんだろうな〜と思うんだけど、読んだのがだいぶ前で忘れたなあ…
瀬尾さんの本は気楽に読めるし、嫌な感じの登場人物もいないから、おだやかでいられてよい。
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最初、主人公(宮路)に対して、なんじゃこいつってめっちゃ思った。なに自惚れてるのねん、と。その分渡部くんはとてもしっかりしているように見えるのだけど、このそよかぜ荘でのじいさん・ばあさんとの数ヶ月で、彼は社会での助け合いと現実の重みを知る。この婆さんの筆頭株・水木さんの手紙がもう泣けるのよ。最後のありがとうと、ハンカチへの感謝と、2人の息子は来ないお葬式に泣けた。宮路くんがお葬式に慣れているところは悲しいけど、エッセンシャルワーカー(結局親族が存命でも出席していないようだし、人を弔うということは誰かがやるはずのことなので)が必要不可欠であることが浮き彫りになる小説としても認知されるべきだろう。
心にズドンとくるけど、やさしい物語だったなあ。ありがとう。
p.34 「こいつ?ボンクラだから若く見えるだけで、結構年食ってるんだよ」「そうなんだ。じゃぁ友達?」「まさか。まぁ召使いってとこだね」「はは。そういうことなんだ」
p.44 「ああ、ぼんくら。でかした」
「でかしたじゃなくて、こういう時はありがとうって言うんだ」
俺は水木のばあさんの横に腰かけながら、テーブルの上に袋の中身を出した。
「これ、かりんのど飴だろう。で、ボールペン、ばあさんどっちがいいかわかんないから水性と油性両方な。甘い物はホームパイにした。これならたくさん入ってるから、みんなで分けて食べられるだろう」
「いちいち解説しなくても、物を見たらわかるよ。あ、そっか。ほんくら、自分の買い物の腕をほめてもらいたいんだな」
水木のばあさんはそう言いながら、ホームパイの袋を開けると、「回しておくれ」と周りのじいさんやばあさんたちに配った。せんべいにクッキーにチョコレート。ダイニングはお菓子がたくさんある。年寄りたちは食欲旺盛みたいだ。
「本当、身勝手なばあさんだな。あと、これハンドタオル」
「ああ、どうも」
p.63 「こうやって思いどおりの物を買ってもらえるって感激だ」と今中のじいさんが言った。
「そうだよね。息子に買ってもらうとなると、細かい指示出せないからさ、なんでもいいからかゆみ止めとかって頼んじゃうんだよね。探さなくても買えるものにしないとと思うからさ」
そうしみじみと言う心城さんに、「ムヒのマイルドタイプね」とかゆみ止めを渡してやった。
俺は他人だからか、細かい指定があったほうが買い物をしやすい。的外れなものを渡して戸惑われたら二度手間だ。それを、身内となるといろいろ気遣うって妙な話だ。
いや、身内だから何でも言えるなんていうのこそ、ただの理想なのかもしれない。
p.85 こいつら、俺じゃなく頼んだ品物が来るのを楽しみにしてるんだな。俺、宅配便の兄ちゃんじゃないんだって。
そう思いながらも、俺は、「はいはい。皆さんのちゃんとありますよ」
と買ってきたものをテーブルに広げた。みんなは聞きとしながら手にする。
p.86 水木のばあさんはそう言いながら、あられの袋を開けた。
「一人は何百円のことだろうけど、まとめて払うほうは千円二千円になってくるだろう」
「ああそうかな」
「そうだよ。少ない額でも、お金のことはきちんとしないと」「ほんくら、働いてもないのにお金のこと語るんだね」水木のばあさんはけけけと笑った。
「金の貸し借りは友情を破綻させることもあるんだぜ」
「ぼんくら、友達もいないのに友情語るとはな。貸し借りじゃないよ。どうせ金を持ってたって、使い切れないからいいんだ」
水木のばあさんの言うことは嘘ではないだろう。そよかぜ荘は、広々としていて上質そうな木で造られた建物だ。ここにいるじいさんばあさんらは、服装からしても経済的に恵まれた人たちなのだろう。でも、違う。お互いお金に困ってはいなかったとしても、誰かにとって自分が物を当たり前に買い与える人間になってはだめだ。お金は金銭的な意味以外のものも、人の間にもたらしてしまう。
p.165 「ええ」
渡部君はうなずいた。彼が言うと、どうしてだろう。ものすごく確かなことのように思える。いや、俺だってそれが本当のことだって知っている。
高校生のころの俺は、自分を受け入れられなくなるほど落ち込むことがあっても、すべてが終わったような絶望を味わっても、また笑い転げられる日々が来ることを、心を揺らすできごとが待っていることを、知っていた。それを俺に伝えてくれたのは、音楽ではない。
p.181 「じゃあ、歌いますか?」渡部君は笑いながらそう言った。
「ああ。そうだな。・・・・・次はさ、「心の瞳」っていう曲で、じいさんらあんまり知らないかもしれないけど、そう、まあ、聴いて」
俺が曲名を紹介すると、優しいサックスの音が響いた。心の奥までしみこんでいく音。俺はとにかく泣かないように、歌詞を伝えることだけに集中した。
本庄さんはどうしてこの歌を、俺たち二人の歌だと思ったのだろうか。
本庄さんは六年前に奥さんを亡くしたと言っていた。そのあと、そよかぜ荘でどんな毎日を過ごしていたのだろう。
決して途方に暮れてはいなかったはずだ。きちんと服を着て、姿勢を正して、しっかりと目を開けて。本庄さんはいつでも何かに手を伸ばせるように準備をしていた。
生きていけばそのぶん、明日は一つ減り、また一つ減っていく。誰かと一緒にいられる明日。記憶に留めていられる明日。現実は想像以上に過酷だ。ウクレレを弾く時間が、本庄さんが最後に手にした何かになっていたのなら、俺にとっても幸せなこと
だ。
p.189 ぼんくら息子へ
六月十二日、ほんくらの演奏をいて驚いた。へたくそなギターに野太い声。よくこんなので人前で歌う気になったなとぞっとしたよ。みんながしらけてるのに、堂々と歌い続けてさ。
あのころの私は、生きるのが惨めだった。そよかぜ荘に入って一ヶ月。トイレもお風呂も介助がいる。恥ずかしくないわけがない。開き直っているふりをしつつ死にたくなった。もう九十一歳だ。死んだほうがいい年なのに、どうして生きなきゃいけないんだろうかと苦しかった。
でも、歌っているほんくらの姿を見て、まだまだ恥をさらしてもいいのかもしれないと思えた。二十九歳にもなって無職なのにへらへらしているぼんくらよりはましだなってさ。
今日も夕飯を食べた後に、食事はまだかと聞いてしまった。先週は二度も粗相をした��
もうすぐ記憶がめちゃくちゃになるんだと思う。留めておきたいことも消えてなくなってしまうのだろう。
ほんくらのこと、誰かわからなくなってしまう前に、ここにしたためておく。
ぽんくら。もうバカで単純で陽気なふりをするのはやめな。当たり前のように、年寄りに聞こえる音量と速度と距離で話せるやつがぼんくらなわけがない。毎回へそ曲がりの私の心を射るものを買ってこられるやつが何も考えていないわけがない。
もう無邪気でいるのは終わりだ。
老人ホームに入った時点で人生は終わった。そう思っていた。でも、最後の四ヶ月は最高だった。忘れたくない。そう思える日々が送れてよかった。ありがとう。
水木静江
p.194 「時がいろんなことを解決してくれるのは、ちゃんと日常を送っているからですよ。
こんなふうに、布団の中で時間をやり過ごしているだけで薄れる痛みなんて、何一つ
ありません」
渡部君は勝手にクローゼットを開けると、「これでいいですか?」と黒いジャケットを出してきた。
「俺、葬式なんて行かない」
「子どもみたいなこと言わないでください」
「誰でもお前みたいに対処できるわけじゃないって」
渡部君はいつでも目の前の現実に毅然と応じることができる。本庄さんがぼけた時も、俺にサックスをやるよう言われた時もそうだ。どんなことでも受け入れる力を持っている。だけど、俺にはそれができない。二十九年間、自分のできることだけをして、何とも向き合わず、何も越えようとせずに生きてきた俺には、あまりに難しい。
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宮路くん、働こう。
人のせいにばかりしている。
そんなぼんくらな宮路くんが、
現実に向き合っていく物語。
渡部くんにもう少し色々な事情が
ありそうな気がしてましたが、
特に触れられることもなく、
さらっと流された感があります。
ラスト良かった
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主人公のピュアな真っ直ぐさ、登場人物全員のあたたかさに癒されました。
幅広い世代に愛される作品ではないでしょうか。
三部作とは知らずに読み始めたのですが、
「あと少し、もう少し」の渡部くんが出て来てびっくり。
前作からの成長した彼はもはや敵なしでは…!
他のメンバーも今後のお目にかかれますように。
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例えば、ゆるい幸せがだらっと続いたとする
きっと悪い種が芽を出してもうさよならなんだ
というソラニンの歌詞がなんとなく出てくるような本でした(別に暗くないです)
主人公の宮路は、だらしないやつではあったけど、人を思いやれる、人のために考えることができるタイプの人間。なので主人公適性のあるだらけ人間、という評価です。
短編ではありましたが、充実した気持ちになりました。
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瀬尾まいこワールド!!
本当に読みやすい。
ただ私の職業が介護士なので、セキュリティが…とか、やたら現実的なことに目が行ってしまう。。。
でも、こんな施設があったら楽しいだろうなぁ〜とも思う。
主人公は本当に純粋に音楽が好きなんだなぁ。
大人になっても、こんな純粋でいられることってなかなかないから、それは羨ましく思う。
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最高。最高だった。
老人ホームと青年の話。
生きること、頑張ること、愛すること、生きること、全部詰まった作品。そしてテンポもよくてめちゃくちゃ元気貰えた。でも泣きそうにもなった。久々に本読んで泣きそうになった。瀬尾まいこさん、やっぱり最高。
バンドしてる、2人最高。
渡部くんの淡々とした感じに胸きゅん。
なんかもう青春っていいなぁ。
大学時代思い出した。
いつかは死ぬ。今を一生懸命生きていきたい。
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あっという間に読み進めました。
時間がかかってもいい、自分の意思で動くことの力強さに気づきました。
周りも温かく、時には厳しく、見守ることの大切さがありました。
人の深みはこんな経験から生まれるのではないかと思います。
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宮路本人も今の状況を何とかしなければと迫られているのは感じ取れるのだが、介護施設に通うことで現実逃避して、渡部くんを引き入れて音楽業界へと考える。
普通に考えてもあり得なくて甘いんだけど、渡部くんや御老人方の独特の空気感もあり嫌な感じがしない。
本庄さんの痴ほう症や、水木さんの退場など宮路同様にショックを受けるが、舞台を考えると突然ではないんだな。もういつ事が起こっても仕方がない状況だ。
それでも渡部くんの言葉が残る。
「時が色んなことを解決してくれるのはちゃんと日常を送っているから。布団の中で時間をやり過ごしてもなんにも解決しない」
「ぼくを葬儀場にひとりでいかせないで下さい」
いつも何となくフワフワして掴めない感じの渡部くんだか時々残酷なくらい鋭い一言が刺さる。
他の作品にも登場しているのを知らなかったので少し後悔。先に読んでおけば彼の背景がもっと分かりより理解出来ていたかも。
最後にやっと大人になれたような宮路。ようやく応援する気持ちになれた。自分も気付かないところで何か何処かで止まっているのかもしれない。よくよく顧みてみよう。
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老人ホームで働くサックスを吹く渡部君とミュージシャンになりたい『ぼんくら』こと宮路君と施設の入所者のふれあい。入所者が『ぼんくら』に買い物を頼むその内容と、それにどう答えるか悩むところやウクレレの練習でのやりとりなど,とてもよかった。
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胸アツになれる作品でした!
宮路くんと渡部くん、おじいさんおばあさんとのやり取りがとても良かった。
起き上がる決意をした宮路くん、ずっと音楽を大切にしながらも前に進んで欲しいな(* 'ᵕ' )☆
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境遇は逆だけど、共通する悩みを抱えながらそれぞれの子ども時代を過ごした2人が、介護施設での音楽を介して友達になる。
最初は読んでいて腹立たしくなるような宮路くんだけれど、渡部くんや介護施設に暮らすお年寄りたちとの関わりの中で少しずつ変わっていく様子が、だんだんと心地よくなっていく。
結局、宮路くんという人間は、まじめで素直すぎるのだ。それ故に固まってしまった部分を、お年寄りたちと渡部くんが溶かしていく。
ともすれば、後半の展開はなんとなく読めてしまうようだけれど、それでも心を揺さぶられる。
「あと少し、もう少し」「君が夏を走らせる」と三部作と知らず手にしたので、渡部くんが登場してびっくり。雰囲気が随分変わってて、陸上部の話が出るまで分からなかった。そして「あと少し、もう少し」を読み返したくなる展開も。
一気読み必至。三部作、永久保存確定。
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29歳無職、親からの仕送りでの生活、夢はミュージシャン。
ここまで聞くと、自堕落な奴!と思うが、彼、宮路はいたってピュアなのだ。高校時代に音楽に目覚め、軽い気持ちでバンドを組んだ仲間たちはそれぞれ社会人になっていくなか、宮路だけはその夢を捨てきれずにいた。
そんな中、老人ホームでボランティア演奏をしていたある日、神がかり的なサックス奏者に出会う、といってもサックス奏者はその老人ホームで働くスタッフ、渡部。
その音が聞きたくて、宮路はその老人ホームに通うようになるが、いつの間にか入居者たちと親しくなっていく。
ばあさんやじいさんから、ぼんくらと呼ばれながらパシリにされても 彼らに気遣いながら寄り添えることができる とてもやさしい人間なのだ。渡部もまた、仕事に真摯に向き合い、入居者から厚い信頼を得ていた。
音楽を通して、人とのかかわりの中で、それぞれみんなが少しずつ変わり始めていく。
夢をあきらめきれない宮路と、現実を見据えている渡部、真逆な彼らのやり取りが軽快で楽しかったし、お年寄りたちとの会話も楽しかった。
余談だけれど、実写化するなら
宮路君は 仲野太賀くんというイメージだった。