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重いテーマの本を読んだ後に、優しくて温かいお話が読みたくて瀬尾さんの本を選びました。
29歳無職の主人公が、老人ホームの訪問を通して次へと動き出すお話。
「あと少し、もう少し」のスピンオフだと知らずに読んでしまいました。
でもやっぱり瀬尾さんの作品は癒されます。
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大人青春小説。自分の青春を忘れたくない、というのと同じように、この小説のことも忘れたくない、と思った。
ぼんくらと水木のばあさんの、クスッと笑えるやりとり。本庄のじいさんのまっすぐな演奏。このまま時が止まればいいのにと思う瞬間。
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なんとかやり過ごしていただけの一日は、たくさんの感情であふれる一日となった。音楽は、それを連れてきてくれただけだ。俺が何年もの間あきらめきれずにしがみついてきたものは、ギターを弾くことや歌うことではなかったのかもしれない。ずっと手にしたかったもの。きっと、それは音楽ではない。
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主人公が自堕落風だけど、素直でいいやつなのが良い。
“Wake Me Up When September Ends" "東京ブギウギ"が文字だけで身に沁み入ってくる。前者が文章内に出てきたところで、話の方向性が漠然と分かった部分もあるけれど、それを含めて静かで優しい時間が文章で描かれているところは良かった。実写化したらちょっと見てみたいかもしれない。
「無邪気でいるのは終わりだよ」(p.188)
The innocent can never last.
東京ブギウギ
リズムウキウキ
心ズキズキワクワク
海を渡り響くは
東京ブギウギ
この歌を聴くと、戦争や貧困を知らない俺でも、あの昭和の立ち上がるパワーを感じる。音楽は時代や場所なんて軽く超えてしまう力を持っている。それに、自ら進んで出会おうとしなくても、向こうから体に入ってきてくれる。何もかもシャットアウトしたい時だって、音楽だけは俺の中で響いている。(p.126)
ちょうど朝ドラのテーマでタイムリーなので今後も楽しみにしよう。
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瀬尾まいこ『その扉をたたく音』
2023年 集英社文庫
読み始めると一気にその世界にもっていかれる瀬尾まいこワールド健在でした。
主人公宮路と老人ホームの入居者たちや、そこで働く渡部くんとのつながりも物語。
音楽、楽器や演奏などを通して物語は紡がれているけど、人とのつながり、そして魂に訴えかけてくる素敵なお話でした。
命や時間の現実、でもそれらには関係ないところでの人として生きることの意味や未来。
自分の現実世界としても身につまされるものも多く、不安やネガティブなものがあったけれど、それでも希望とまでは言わないまでも光や未来を感じられました。
ドラマティックなことではなく、誰しも考えられる日常のお話かもしれない。でもだからこそダイレクトに心に伝わってくる素敵な物語でした。
#瀬尾まいこ
#その扉をたたく音
#集英社文庫
#読了
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いた、天才が。
あの音はきっと、
俺を今いる場所から
引っ張り出してくれる。
29歳無職の「ぼんくら」な俺、
サックスの「神様」、
個性豊かな「じいさん」ばあさん」。
音楽が彩る、大人の青春小説。
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親のすねをかじったニート29歳、宮路。
偶然出会った介護士の渡部はサックスの神様だった。
彼に近づくため、
渡部の勤めるホームに通い詰める宮路は、
入居者から「ぼんくら」と呼ばれる。
最初に登場するおじいちゃんおばあちゃんの口も手も悪くて、ちょっと…ってなりましたが。苦笑
宮路も相当なので、おあいこですかね。苦笑
最後は…ほろりときました。
やっぱり言葉って大切だな、って。
思っていても、後から意味に気づくよりも、
ちゃんと言葉で伝えた方が良い。
余談ですが、
私が本書に登場するような高齢者になったとき、
こんなに良いホームに入れる財力はないだろうなあと
読みながら少し遠い目になりました。苦笑
そんなことも思いながら、
それでもとりあえず
嫌味な奴じゃないおばあちゃんを目指そうとも
思いました。苦笑
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「音楽も文学も美術も、芸術はすばらしい。でも、それと同じくらいに、価値のあるものが周りにはたくさんある。」
この言葉に出会えたことが嬉しい。今のわたしに刺さる内容だった。今の仕事に向き合いたくないから、わたしは音楽で輝こう、文学に向き合おう、そっちに人生の重きを置いて生きていけばいいじゃないと自分に言い聞かせてきた。でも宮路さんが辿り着いた答えにわたしもハッとした。目の前の人に、ことに向き合い、日常を一生懸命に生きるからこそ、音楽であれ文学であれ、美術であれ、輝くのだと。この世界を切り捨てるには早すぎる。もう少しわたしの周りにある素敵なものに目を向けてみようと思えた。
音楽と物語の組み合わせが最高だった。小説に出てくる音楽を聴きながらその部分を読むと、本当にその世界に連れ出してくれる感じがした。600円でこの感覚が味わえるなんて、コスパ良すぎて驚いた。嬉しい。新しい楽しみを知ってしまった。嬉しい。
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読んでよかった。こんな風に誰かに動かされたり誰かを動かすキッカケになるような人になれたらよいなぁ…難しいけど。
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読みやすくサラサラと短時間で読み終わった。
無職の29歳男性。私だったらかなり絶望してしまう状況だけど、主人公はどこか楽観的であっけらかんとしている。この作者独特の、登場人物どうしの淡々とした歯に衣着せぬ言葉の掛け合いが好きだ。物語を通して暗くなりすぎることなく、どこかポップに読み進められる。
一番心に響いた言葉は最後に主人公が悟るシーン。「俺だけが真ん中にいた世界は、もう終わったんだ」
私も環境に恵まれて、甘やかされ苦労することなくエゴイストな人生を送ってきた自覚があるから、胸に突き刺さった。自分が真ん中にいる限り、心の底から人生に必死にはなれないし満たされない。自分のすぐそばにいる人にも自分と同じように悩み苦しみがあって、時には地獄を背負いながら生きているんだって、気づけるかどうかなんだ。
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文章がとても読みやすくてすっと入ってくる、そして心あたたまる作品でした。なかなか前に踏み出せずにいる宮路が老人ホームの入所者や介護士の渡部と関わっていく事でようやく自分の人生を歩みだそうとする。そしてその独りよがりだった宮路の音楽で救われた人もいる。音楽ってやっぱり人の心を動かす力があるんだな。ちょうど朝ドラを見ていたので東京ブギウギが出てきた時はテンション上がりました。
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なんと、本作に登場する介護士でサックスを吹く渡部くんは、『あと少し、もう少し』の中で寄せ集めの駅伝メンバー(当時中学生)、第4章(4区)の語り手だったんですね。忘れてました‥。
本作は、まだ若いのに、人生に行き詰まり立ち竦む青年と、人生の最終盤に差しかかった老人たちが醸し出す、温かい感情の交流と成長物語でした。
主人公は宮路、29歳で無職。実家から月20万円の仕送りを得て、ギター片手に音楽の夢を追い続けています。こんなへらへらの〝ぼんくら〟宮路が、老人ホームで演奏し、渡部くんの天才的なサックス演奏・様々なお年寄りたちと出会います。
本作の一番の読みどころは、宮路がボランティアで通う老人ホームの渡部くん、入居者と関わることで少しずつ変容し、大事なことに気付いていく構成と描写の巧みさだと思います。
瀬尾さんは、相変わらず個性の書き分けが上手く、優しいけれども甘やかし過ぎず、読み手に一歩踏み出す勇気を与えてくれます。
本作は、青少年読書感想文全国コンクールの(高校の部)課題図書だったそうですね。大人はもちろんですが、多くの若い方に読んでほしいと思います。進路で悩んだり、将来仕事で悩んだりした時、ふと立ち止まって思い起こしてほしい一冊です。
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ただのお金持ちおぼっちゃまかと思いきや、ものすごい真っ直ぐな若者でした。ご高齢者と同じ目線で対等に関わって、結果傷ついて泣いて。最後は泣けました。そして北大路公子さんの解説に共感です。
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久しぶりに読んだ本。
29歳で生活のすべてを親の金で過ごし好きな音楽を好きなだけ鳴らしている宮路。心のどこかではなんとかしなくては、とも思っている。そんな彼が縁あって高齢者施設でサックスを吹く渡部君と出会い、とりこになってしまう。施設に通ううちにそこに住まうお年寄りたちとの出会いがあり、笑いと涙の交流が始まる。やがて気づく自分の歩む道。
宮路だけでなく読み手の自分までとりこにしてしまう著者の作風はいつも希望が、近くはないかもしれないけど、みえる物語なのです。
介護に携わる側の人間として実にお年寄りたちのやるせないけどみょうな開き直りのような、穏やか心境が、さりげないけど計り知れないくらいのたくさんの人生を歩んだ足跡が描かれていました。人はいつか死にます。どの人生も尊いものであることを教えてくれます。今を生きる若い人におすすめです。
もちろん、今のわたしにも響きました。
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無職の売れないミュージシャンがひょんなことから老人ホームに出入りするようになるお話
仕事も音楽もどんな小さなことでも、相手のためを思うことが大切。自分満足、自己中心じゃ相手にはなかなか伝わらない。凄くいいお話でした。
何よりもあの駅伝でクールにしてても本当は熱かった4区渡部くん!「あと少しもう少し」のスピンオフと気づき嬉しかったです。残りの4名のお話にも期待しちゃいます
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さらっと読めてしまった
一歩前に進むのは、出会いと一人では生きていないとの気づきかな
ぼんくらが落ち込んでいようが、現実世界は動くんだよ
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瀬尾まいこさんの何となく心が温かくなる物語が好きだと気づいた
無職の宮路が老人ホームでの人との関わりを通して、生きる気力を取り戻していくのがよかった
水木のばあさんも本当は生きたいっていう気持ちがあまりなくて、宮路との関わりで頑張って生きたいっていう気持ちが沸いたみたいなのも、ばあさんからの手紙で分かって泣いてしまった
また瀬尾さんの本読むぞ