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この作者にしては"ライト"なノベル
2024/01/18 07:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:螺子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公が小学生だからか、主な客層となる若年層に向けた配慮なのか、あるいは大衆向けを狙ったためか、過去作に比べると諸々の描写が優しい気がします。
今までの作品は怖い話が好きでも怖くて読めないという方がちらほら見受けられるレベルでしたが、今作はよほど苦手でない限りはエンタメとして楽しめる程良い怖さ。だと思います。たぶん。今のところは。
例えば『断章のグリム』だったら確実にページを割いて「もうやめて!」と言いたいくらい緻密に描写されていただろうな、というシーンが暗転してぼかされていたり。
例えば『霊感少女〜』だったら完膚なきまでに心を擦り潰されていたであろうシーンが、誰しも経験したことのある暗澹たる気持ちになる程度で抑えられていたり。
とはいえ、描写が控えめになってはいても、この世界観の残酷さと美しさは充分に伝わるはずです。特に過去作からの読者には。
派手なグロテスク描写や、クリーチャー的な描写が少ないぶん、作者の得意とする生々しく嫌な心理描写が光ります。
最初は小学生なのに早熟過ぎでは?と感じるかもしれませんが、読み進めていくと『小学生だからこそ』の割り切れなさ、大人から見ると「考え過ぎ」な幼さに由来することがわかります。この辺りのバランスが非常に上手いと感じました。
強いて言うなら、主人公が小学生ということで、過去作に比べると蘊蓄パートが物足りないと感じるかもしれません。
そして初読の方。甲田学人という作家の、その作風を知るための最初の一冊として、かなりおすすめです。
こちらがハマった方には新装版が発売し全13巻で完結しているMissingをおすすめします。高校生の学園ホラー、もとい、メルヘンです。
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個人的に怖いのは苦手なのでたぶん続きは読めないかも。
先が気になるので残念。
最近のラノベではあまり見かけない、場の表現が上手だなと思った。昔のラノベはこういった作品が多かった気がする。
掴みも引きも良い作品なので刺激の欲しい作品を読みたい方にはおすすめ。
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『missing』に出ていた人物の名前が出てくるとは思わなくて驚いた。
バックボーンの掘り下げや彼がどうして怖い絵を描いているのか、という源流を知れそうで今から続きが楽しみだ。
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この方の作品は恐らく全て読了しました。
ホラー小説がSNSで話題になっており、それらのポストのひとつでこの作品がおすすめされているのを見て購入。期待外れでした。
序章でまたいつものファンタジー路線だと察しました。帯の真夜中のメルヘンを見落としたのが悔やまれるところ。
序盤の黒板の「ほうかごがかり」の描写こそ一瞬期待しましたが、何者かに突き飛ばされるところでシステムめいたものを感じ興醒め。
一話から二話までは恐怖描写らしい描写もなく、登場人物の内心の葛藤のみ。三話もほんの5ページ程度しか恐怖描写がありません。もう少し溜めのある恐怖描写が見たかったところ。
以前は「ほうかごがかり」でのあっさりとして葛藤のみに重きを置いた恐怖描写よりも、湿度と生々しい痛みや惨憺とした恐怖描写だった気がしますが、今作ではそれらが一切感じられません。
電撃文庫の対象年齢である中高生よりも少し下の、小学校高学年から中学生ぐらいが対象のホラーといった雰囲気。
これよりファンタジーとバトル色強めの「断章のグリム」の方が痛みの描写としてはもう少し上だったように思いますし、「夜魔」のカッターナイフの方がもう少し薄気味悪い。「ノロワレ」の方が恐怖描写の質が良い。
十叶詠子、空目恭一、真木夢人、今回でいえば太郎さんなどのキャラクターの癖が強過ぎて、それらキャラクターの描写で対象年齢の下がるホラーになっているような気がします。上記のキャラクターはあまりにアニメ・漫画的なキャラクターで、この方の著作がメディアワークス文庫より電撃文庫の方が多いのはだからかな、と思っておりました。断章のグリムの「時槻風乃と黒い童話の夜」も時槻風乃がいない方が面白かったと個人的には思いました。
登場人物を固定せず、やたらと癖の強いキャラクターの登場しない短編集のようなものが読んでみたいです。この方の惨憺とした恐怖描写は好きなので。
続き物なので次を購入するかは悩むところです。電撃ノベコミ+で五話の最新話まで読みましたが、恐怖描写なし。五話の3の「ハントゥ」などは作者の豊富な知識がうまく小説と噛み合っていない印象を受けました。
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『Missing』の甲田学人先生の新作と聞いたら読むしかない。
怪談は知られ、語られることで感染し、増殖していく。でも皆に知られる前に「登場人物」が「それ」を知り尽くして記録してしまえば怖くない、と安心させておいて……。
続きが気になる。
「学校の怪談」なので、グロテスクなホラー描写はそこまでありません(ないとは言わない)。
というか、いい意味で小学生に読んでほしい。
子供向けな感じを一切感じさせないからこそいい。「ほうかごがかり」に任命されそうな「内向的」「特別」「はずれもの」「子供でいられなかった」人にこっそり読んでほしいです。
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Missing以来のファンで全作品読んでます。
私が大人になってしまったのか、設定やキャラクターを見直して一般向けに書いた方が、著者の知識や見聞を活かせるのではないかと最近は思ってしまいます。(Missingやグリムの時はそういった感じは受けなかったのですが)
文章や表現や題材は相変わらず大好きなので、おそらくこれからも作品が出れば読み続けますが…慣れてしまったのかあの頃文章を読んで感じた新鮮な感動みたいなものが薄くなっていて、難しいですね。いつだったか数年前にWEBでのみ無料で読めた作品(タイトル忘れました)は久しぶりに良かった気がしたので、まだまだ期待しております。
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放課後の教室で黒板に書かれた「ほうかごがかり二森啓」、突然の自分の名前と謎の言葉。その日の深夜、自室にチャイムの爆音が鳴り目の前に不気味な学校「ほうかご」があった。
真夜中のメルヘンという事だが、メルヘンって何?と考えてしまうほど一般的に考えるメルヘンと距離感がある。
対象年齢が小学校高学年からといった印象だが、私がその年代の時に読んだら読んだ事を後悔しただろう。作者の創り出した「ほうかご」と「無名不思議」の不穏で不吉で不気味な雰囲気、それが怖い。始めは何が起きたのかが分からない恐怖。そこから事態を説明されるが、それぞれの動き方はもちろん違う。動く事は恐怖の対象と相対する恐怖、動かなければ事態を把握出来ずに変化していく恐怖。生徒たちの心理描写の読者は時に共感し、時に異常性を感じる。つねに何かに対して強弱はあるものの恐怖がある。
1巻では主人公の二森啓とまっかっかさん、読者モデルの見上真絢と赤いマントがメインになっているが、最初なので怖さはまだこれでも抑えられているのだろう。
怖さの中でもしっかり読者に作者が何を伝えたいのかが書かれている作品だと感じた。