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柚月氏の作品は期待を裏切らない!それぞれの登場人物の性格や話し方も素晴らしい。本作品の設定や物語の進行は微笑ましく建設的で心和む!そして安心して読み進められる。誰にでも読むことを進めていきたい一冊だった。
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親の過剰な庇護が子供に与える影響は?
過去の過酷な生活から自らを縛る父親と、その父親からの愛情を素直に受け入れない息子の悟。
父親と息子が同じ職業を営むからこそ、すれ違いの蟠りは根深く解消されにくくなる。そこに補導委託した春斗が加わり、頑なな春斗の心を溶かす過程が、悟にとって父親を受け入れる契機となる様は、年齢に拘らず人の再生と成長を見るようで実に暖かい内容の本だった。
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人の生き方に関わるいろいろな役割があることを知りました。
すべてがうまくいくわけではないと思いますが、他者を思いやる気持ちは人の心を動かすのだと感じました。
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後半から涙が止まらず、一気読みした。
孝雄と悟、春斗と達也・緑、それぞれの親子の葛藤や愛情など、不器用ながらも大切な人を大切に想うがゆえにすれ違う気持ちの描写が手に取るようにわかり、情景も浮かびやすかった。
自分と両親との関係や、自分の祖父母と両親との関係と重ね合わせて読む部分も多く、涙なしでは読めない一冊だった。
登場人物が皆とても心温かいので、読了後はあたたかい気持ちになれた。
虐待や毒親、親ガチャといったワードをよく目にするようになった現代に合ったストーリー。
子育てとは何か、親が子どもに幸せになってほしいと思う気持ち、でもその幸せとは何か、子どもの目にうつる親の姿、様々なことを考えさせられた。
幸せとはなんだろう、自分はこれからどう人生を歩んでいきたいんだろう、そんなことを考えたときや、これから子育てをする人、子育て中の人、親との関係に悩んでいる人、どんな人にでも心に響く何かがある一冊だと思う。
そして、身近な人だからこそ、自分の気持ちはしっかり伝えないと伝わらない、そう改めて気付かされたので、家族や大切な人には感謝や愛情を日々伝えていきたいと感じた。
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南部鉄器の職人・孝雄は口数が少なく、息子の悟は親としての孝雄を認めず育ってきた。その拗らせぶりはどうかと思うが、しっかり者の妹・由美やとにかく孝雄を慕う同じ工房で働く健司ら周りの人に助けられてやってこれたんだなというのが伝わる。家族に黙って孝雄が引き受けた補導委託でやってきた少年・春人との生活を通して見えてくる孝雄の想いと過去。人それぞれに考える幸せの形には違いがあり、どれが正解ということはないだろうけれど、親も子供もしっかり話をして、子供の考えも尊重しながら親は自分の人生経験を基に助言しつつ、常に親は子供の味方でいてあげることが大事なんだと教えられた。私も、まだ小さい自分の子供にいろんな話をしながら、聞きながら味方でいられる親でありたいと思う。
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補導委託制度から親子間の長年のわだかまりが氷解しつつあるあり方を描いた作品。
近くにいる者ほど気がつかないもの。親としてのヤセ我慢もあるだろうし、子として直接聞かなくとも自分のことはわかっていて欲しいとの願いもある。
平易な文章ながら、終わりのほうは、ぐっとくるものあり。
久々に泣ける作品を読んだ。
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近しい存在だからこそ心の内が相手に伝わりづらいというのは往々にしてあるな〜と感じつつ、言葉にしないと意図しないすれ違いが何年も続く可能性があると思うと、しっかり言葉で伝えることは大事だなと改めて実感させてくれる作品でした。
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「補導委託」という制度を初めて知った。
家裁に送られてきた問題行動のある少年を一定期間預かる、という制度。保護司という一般人のボランティアが出てくる小説はいくつもあるけれど、この補導委託というのは珍しい気がする。
普通の家庭で問題のある少年を預かる、というのはいろんな意味でものすごくハードルの高いことだと思う。
どんな問題行動があるのか、危険はないのか、ちゃんと生活させられるのか。
そんな役目を家族に相談もなく引き受けた南部鉄器職人の父子の物語。
ただでさえ父親と息子ってのは一筋縄ではいかない面倒くささがあるというのに、そこにある日突然入り込んできた他人、しかも問題あり、ってそりゃ戸惑うし反対もするでしょう。
自分自身にや母親に対する父親の愛情の無さと、引き受けた少年への父の愛情深さとのギャップに苛立つ主人公悟の、その心の揺れがわかりやすい。
その父と息子の間の溝をいい感じで埋めてくれる二人の職人。この二人のキャラがいいんだ、とても。
長く働いている職人と、風来坊助っ人職人と。彼らと父息子と接することで、自分と自分の家族の持つ歪みにあらがう力をつけていく少年。本当はこんな風にうまく行くばかりじゃないとは思う。受け入れる側も受け入れられる側も納得いかないことの方が多いだろう。
それでも、他人と身近に接することでしか手に入れられないものがある、そして他人を挟んで初めて見つけられる家族の問題もある。
家族だから、家族なのに、そんなしがらみを越える力を見せてくれる。
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補導委託って制度、知らなかったなぁ。
全部さらけ出して話し合えば何でも解決するってわけではないけど…お互いを思うあまりのすれ違いほど悲しいものはないよねぇ。
歩み寄るためにも、思いを言葉にして伝えることは、とても大切なことだと思うな。
いちいち言葉にしなくても気持ちが伝わる愛情や信頼関係は素敵だと思うし、報われなくても寡黙でいる美しさもわからんではないけど、己の美意識は横においてでも、相手のために、思いを込めた言葉を発する努力はするべきだと思うのよね。
小説を読むことは、そんな言葉にならなかったいろいろに思いを馳せさせてくれる…と思う。
このところずっと、人は何の為に生きるのか…的なことを考えているんだけど、そんなことを考えてる余裕があるのは幸せってことなんだろうなと思ったり…。
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Amazonの紹介より
問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度ーー補導委託の引受を突然申し出た父・孝雄。南部鉄器の職人としては一目置いているが、仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の思いもよらない行動に戸惑う悟。納得いかぬまま迎え入れることになった少年と工房で共に働き、同じ屋根の下で暮らすうちに、悟の心にも少しずつ変化が訪れて……。家族だからこそ、届かない想いと語られない過去がある。岩手・盛岡を舞台に、揺れ動く心の機微を掬いとる、著者会心の新たな代表作!
「補導委託」という言葉を初めて聞きました。
非行少年を補導委託したことで深堀りされていく父と子の関係性に家族の難しさを感じました。なかなか面と向かって父親と言葉を交わしづらいですが、正直な気持ちで交わすことが大切であるとしみじみ思いました。
非行少年といっても、見た目は普通の真面目な少年にしか見えません。なぜ犯罪を犯したのか?
詳細は後半に描かれていて、前半では受け入れた側の家族を中心に描かれています。
背中で語るようなあまり言葉を喋らない父親が勝手に補導委託を引き受けたことによって、親子関係はさらに亀裂が走ります。
険悪な雰囲気ですが、それを支えるベテランの健司さんの存在感が良かったです。読んでいて、もう泉谷しげるさんのイメージでした。明るく振る舞っている一方で、暗い過去も潜んでいます。深い事情を知ると、それぞれに人の歴史ありとしみじみ感じました。
少年を受け入れたことによって、息子として、今まであまり愛情を注がれた記憶がないのに、少年を愛情を注ぐことに嫉妬などを感じる場面があります。
良い大人が・・・と思う一方で、嫉妬することにその気持ちもわかるなと思いました。
なんで別の子供にはそんなに愛情を注いでいるんだ。自分は子供の頃、なかったじゃないか。
いつまでも子供かもしれませんが、息子の気持ちが文章を通して、人柄が表れているように感じました。
さて、少年の方に着目すると、色んな不可解な出来事が発生します。
毎週、ポストに何かを出すのですが、それは何か?
そもそも少年はどんな罪を犯したのか?
色んな謎を残したまま、後半へ。今度は少年の家族の方に重視されるのですが、深掘りしていくと、少年の背景が浮き彫りになっていきます。
少年の閉ざされた心が段々と溶けていく様子は、感慨深く感じました。
優等生だからこそ感じる心の葛藤。そして沸々と湧き上がってくる感情の爆発。
様々な謎を通してわかってくる少年の実態に、他人事ではないなと思いました。
感情をどうコントロールしていくのか。一人だけで抱えず、周りの協力や環境が必要だなとしみじみ感じました。
小説内では、様々な登場人物の心理描写が描かれているのですが、それぞれの登場人物が放つ魂の叫びには、心を打たれました。
一見、普通に振る舞っている人も、心の内側では誰しも弱い部分を持っているかと思います。
色んな人物を通じて、じんわりと世界観に浸れました。
言葉でちゃんと伝えることの大切さをしみじみと感じた作品でした。
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久しぶりに柚月裕子作品の真骨頂を堪能。ストーリが美し過ぎるところはあるが、柚月氏の流麗な文章にとても合致していてあまり気にならない。もう少しミステリー要素も欲しいところだが、新聞連載なのでこのあたりが適当か。
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南部鉄器職人の父と葛藤のある悟は、自分の子供にも愛情のない父親が問題少年の補導委託を引き受けた事に納得いかなかった。
やがて受け入れる事になった少年春斗の親子関係を通し、自分と親との関係を見つめ直していく。
近すぎてよく見えない、老眼のような親子関係。
言い得て妙です。
子供への愛情は時によって親の価値観で歪められてしまう事がある。親子の間だけでは治せないその歪みを、補導委託という仕組みで多くの人が関わる事で、少年とその家族を救っていく事が出来るのであろう。
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罪を犯した少年の補導委託を受け入れた、南部鉄器の工房が舞台。子を思う親心が核となるお話だった。
親が子供の将来を思う時、
良い大学に行って、給料が良い安定した職に就いて欲しい、苦労をさせたくないと願う親もいるだろうし、
自分のやりたいことを、後悔のないようして欲しい、と思う親もいるだろう。
どちらも、子を思う親の愛情からのものだ。この二つの考えの両立はなかなか現実的に難しい。だが、それをどうするか?という問いを投げかけられた。
時々出来過ぎだな、としらけそうになることもあったが、先が気になりどんどん読み進めた。
『子供が幸せなら、ずっと幸せなままでいて欲しいと願い、子供が失敗すれば、大丈夫だろうかと心配する。どっちに転んでも、これで安心ということは無い。(親とは)損な役割です。』
この台詞が、とても心に残った。親が子の幸せを願う心は、見方によってはとても貪欲なのだ。
気になったところ
○何かを作り出す者は、刺激や影響を受けつつも、己を貫き通す心がないと、中途半端なものしかできない。
○何かがこじれる理由は、相手の考えていることがわからないから
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柚月裕子さんの作品
『風に立つ』
柚月さんの作品だと知り手に取りました。
こんなに感動する作品だと思いませんでした。 父親に大切に育てられてないと思っていた息子の悟は『補導委託』を通して少しずつ打ち解けていきます。
登場人物たちの語りがどれもジーンと心にきました。
「苦労はしても後悔のない人生を送りなさい。」
「辛い思いをしたあなただからこそ、誰かのためにできることがきっとある」
南部鉄器についてやチャグチャグ馬コなんかも…初めて知りました。
終わりかたも私好みでウルっとしました。出会えてよかった一冊です。
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2024.4.30
補導委託というものを初めて知った。
たとえ親子であっても人の気持ちってなかなか伝わらない。親が子を思い、子が応えようとする、矢印はお互いを向いているのにすれ違ってしまうこともあるんだよなぁ。
“人生で一番辛いのは孤独ではないか、と悟は思っている。お金があっても、親しい人がいても、どこまでも自分に寄り添ってくれる人間がいなければ、心は満たされない。逆に、環境が整っていなくても、自分のことを心から支えてくれる者がいれば、どのような問題にも立ち向かっていけるのではないか。”