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一切の反論を認めないほどに、この『サンクチュアリ』は名作だ、と断言したいです。
個人的な殿堂入り作品が、また一つ増えて、心底、嬉しいです。
漫画読みにとって、このレベルの作品を読めるのは、本当に幸福だ、と感じ、作者と編集者に感謝したくなります。
こう言っちゃなんですが、実は、この『【新装版】サンクチュアリ(7)』を読む前に、藤田和日郎先生の、『黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ』を読んでいました。
『黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ』を読んでいる方、または、未読であっても、藤田和日郎先生の他作品を読んでいる方は、この作品も超を付けても構わないくらいの名作であるのは察しが付くでしょう。
しかし、当然ながら、『[新装版]サンクチュアリ(7)』に宿っていた熱は、『黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ』に決して、負けちゃいませんでした。
描かれた時代も、ジャンルもまるで違う作品ですが、私の中で、お互いに、一切、退かず、真正面から殴り合いを展開し、私の心を熱いもので満たしてくれました。
極道が登場する作品ではあるので、中学校や高校の図書室に置いて貰うのは、やや厳しい気もしますが、夢を叶えるために本気で生きるってのは、どういう事か、を学生の内に学ぶのに、この『サンクチュアリ』は適している、と私は感じました、完結まで読み切って。
この『サンクチュアリ』のラストシーンは、数多くの名作漫画の中でも、特に感動できるものだ、と私は言いたいです。それこそ、この終わり方を目の当たりにして、泣かなかったら人の心を喪っているんじゃね、と思ってしまうレベルです。
史村翔先生、池上遼一先生、本当に心を満たしてくれる漫画を読ませていただき、ありがとうございました。
この台詞を引用に選んだのは、死に瀕しているからこそ、文字通り、命懸けの覚悟が、言葉に宿っている、と感じたので。
確かに、ソロコフの悪意に踊らされた瀬川はバカだったかもしれない。
しかし、彼は最期の最期で、自分がバカであることを認め、ただのバカで終わらない為の行動を起こした・・・カッコいいじゃねぇの。
そんな瀬川の死が無駄にならなかったってのも、これまた、グッと来る。
「眼ェ開“あ”けェや!!おめェら、眼ェ開けて見ねェと、オレと同ンなじで、一生、バカのまンまだぜェ!!」(by瀬川)
こちらもまた、読み手の胸を打つ台詞だ。
暴力団は良くない、と感じ、悪意に屈しない、それは大切な事だ。
しかし、今、国民は、暴力団よりも政治家に厳しい目を向けなかった事を悔いるべきなのかもしれない。
国政を担う覚悟を持たず、ただ、自分の私腹を肥やすために、もしくは、欲望を満たすためだけに、政治家になった者が、ろくでもないポカをやらかして、何のケジメもつけずに辞め、どっかの会社の幹部の席に、ちゃっかりと座る。
そんな腐敗から、目を逸らしていた、または、本気で排除しようとしなかったからこそ、質の低い政治家が増えてしまい、それが日本の経済にマイナスを齎す結果になってしまった。
増税クソメガネにも責任はあるけど、私たち、���民も、政治の不健全さを見過ごした罪を自覚すべきなんだろうな。
「・・・オレや中城を選ばなかった票は、極道の持つ“暴力”への恐怖であり、批判だ・・・・・・それは、日本人の持つ誇るべき健全さだ!」(by北条彰)
この台詞を引用に選んだのは、北条の中にある、パッと見た感じこそ静かだけど、その実、鋼すら一瞬で蒸発させるほどの怒りを感じたので。
この手の怒りは、男にとって譲れぬ誇りを穢されたからこそ生じるものだ。
果たして、私に、こんな怒りを発揮する事が出来るだろうか・・・
「日本の極道、舐めんでください!!」(by北条彰)
この台詞を引用に選んだのは、伊佐岡って漢の白旗の揚げ方が、実に美事だったので。
政界って言う魑魅魍魎が跋扈し、自らも人外に落ちなければ、魔窟のトップに立てぬ場所で生きていた事で、すっかりと汚れ、目にも澱んだ光が灯るようになってしまった伊佐岡。
日本を守るために、そこまで汚れ切った漢が、そんな自分の目を覚まさせ、魂を濯ぎ、政治家に必要なモノを思い出させてくれた若人に、これ以上ないくらいに、潔く、己の負けを認める。
これほどカッコいい姿を、まさか、伊佐岡が魅せてくれるとは思ってもいなかった。
ほんと、史村先生と池上先生は、魅力的な敵の親玉を描くのが凄い。
「・・・あの男が、君達に政治家の命を蘇らせた・・・・・・もう、私の時代ではない・・・・・・私が賛同したのはね・・・最後に、私自身の手で上げたかった浅見への白旗だ!」(by伊佐岡)
そして、これですよ、これ。
もう泣くしかないですって、このシーンと会話は。
仮に、今後、この『サンクチュアリ』が実写ドラマ、アニメになる時が来たら嬉しいが、その作品の評価は、このラストシーンで決まってしまうだろうな。
北条彰と浅見千秋の間にある絆は、あえて、「友情」じゃなく、「聖域」と表現したくなるシーンだなぁ。
「・・・・・・もう一度、ジャンケンやろうか・・・」
「・・・もう、ジャンケンはいい・・・・・・・・・北条・・・もう眠っていいか?・・・」
「・・・・・・ああ・・・」(by北条彰、浅見千秋)