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歌人の東直子さんが2017年1月1日から12月31日までX(旧Twitter)に載せた365日分の早朝の空を眺めてできた詩集です。
1月から12月までタイトルがついていて、1年分の空が一行から三行にわたり表現されています。
その中から何度も通読してみて私が好きだった空の表現をいくつか挙げます。最初は本が付箋だらけになったけれど、これでも減らしに減らした分です。
1月
おはようございます。
あけましておめでとうございます。
雲ひとつない、澄んだ青空です。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
果たせなかった夢のように、ほの明るい空です。
空が、すばらしい輝きにみちています。
朝焼けが冬木に透けています。よく晴れています。
2月
海の底の砂のような空です。
半分の朧月、ちぎれたあわい雲、空も春っぽくなってきました。寒いけど。
一面の雪野原、のように曇っています。
やさしい色の空がどこまでも明るいです。
3月
和紙をいちまい貼ったようにやわらかく霞んでいます。
夢が忘れ物をしたような雲がうかんでいます。
夢の中のみずうみのように曇っています。
4月
洗いざらしのデニムのような明るい空です。
満開の花に、霧雨がふりそそいでいます。
まぼろしがまどろんでいるような淡い灰色です。
5月
こころが落ち着く空の色です。
いちまいの和紙を通して光がさしているようです。
海をあわだてすぎてできた空のようです。
壁紙にしたいようなかわいい空です。
6月
清らかなものを清らかなまま永遠に預かってくれる、青空です。
つつけば合唱がこぼれ落ちそうな、重たげな雲です。
いつまでも眠っていたくなるような、あたたかい小糠雨が降っています。
水に落ちる水がつくる水の輪が、音楽のようです。雨が降っています。
7月
雲を散らしたサラダのような、夏空です。
8月
青空にコンデンスミルクがとけているようです。
白い空が、朝にだけ咲く花々を眺めています。
9月
爽やかに澄みきった青空です。
言葉を知る前にふれたもののように気持ちよさそうな青白い空です。
10月
物語のはじまりにふさわしいような、明るい曇り空です。
乙女たちのコーラスが聴こえてきそうな雲が棚引いています。
思い出したらにじむ気持ちのような、ささやかな雨が降っています。
11月
淡い青空が、とても広いです。
清々しくあたたかく、明るい青空です。
お母さんのショール、お兄さんの靴下、お父さんのハンカチ、妹のリボン、お姉さんのブックカバー、私のスカート、にしたい、きれいな水色の空です。
雲のない青空が輝いています。
12月
もしも鳥だったら、高く高く飛んでたわむれてみたい、美しい晴天です。
なにを添えても良く映える、青白い陶磁器のよう��空です。
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365日分の朝の空。空はみなにあって、ひとつだけで、でも毎朝違う顔をする。静かで、かわいくて、穏やかな気持ちになれました。あとがきにある「二度と戻らない一年間」を、一日を、大事にしていきたいと思えた詩集でした。
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はじめて東直子さんの本を読みました。新聞のエッセイを読んで「好きだな」と感じてはいたのですが。
毎日そんなに変わらないようにも思える朝の空だけど、一日たりとも同じ空は無いのだなと改めて気づかせてくれました。
私も真似してみたいと思いました。朝、空を見て何か詩のような言葉にして表現するって、ちょっと難しそうだけど、そのひとときと、その時の自分の感じ方を大切にすることだと思いました。
素敵な本です。