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最近、日本の宗教の歴史に関心を持ち始めたのだが、中でも神道と仏教の関係、神仏習合のことを知りたく思っていたので、本書を読んでみた。
<参考になったところ>
〇本地垂迹説のそもそもの起源として、仏教教学において、権現・化身という権実(権は仮、実は真)思想により、歴史的な釈迦と超越者の仏陀についての教理的な説明がなされたこと。(17頁)
〇律令国家完成期に至る神仏両信仰に、陰陽道が関係していること。(三章)
〇神仏習合の具体例(五章ー十章)
・八幡宮 ~宇佐八幡宮、石清水八幡宮 等
・御霊信仰 ~御霊会、牛頭天王と祇園社、天満天神信仰(北野天満宮等)
・修験系 ~蔵王権現(吉野・金峯)、熊野三山
〇鎌倉新仏教と神仏習合の関係(十一章、十二章)
〇縁起譚と習合文芸(十三章)
・本地垂迹思想が基盤となっている『神道集』、その中の甲賀三郎伝説の紹介(名は知っていたが、こんなお話だったのか!)
〇神影図と習合曼荼羅(十四章)
・取り上げられている画像がやや見づらいが、図柄、描かれているものが何なのか詳しく説明されており、神仏習合の表現について知ることができた。これからは注意して見てみたい。
ここまはそれなりに理解できた。しかし、十五章以下の天台の神道、真言の神道で、それまでの仏本神迹が神本仏迹へ転換したことについて、かなりのページを割いてそれらの神道論が説明されているのだが、どうしてそのような転換が生じたのかは、良く分からなかった。公武対立や元寇によって神国思想が活発化し、仏家をして神道の再認識を余儀なくさせたという外的要因のことはともかく、思想的な根本的要因は”本覚門思想”の興隆にあると著者は言う。その本覚門思想が??だった。
・天台教学 →山王一実神道
・真言教学 →両部神道
・吉田神道(唯一神道)
本書では、本地垂迹とはどのようなものだったのか、上層階級から庶民がそれぞれどのようなイメージで信仰していたのか、(現代にいう)文芸や美術にいかなる影響を及ぼしたのかなど、その全体像が総合的に論じられている。自分の能力不足から、終盤の論述に付いていくことはできなかったが、とりあえずその歴史的展開を知ることができたことで、ひとまずは良しとしよう。いつか再チャレンジしてみたいものだ。