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作家の夫が事故死して未亡人になってしまった、まだ26歳の女性。そんな彼女の家に、夫の死後9か月経って赤ん坊が置き去りにされる、「この子はあなたに/男の子は/父親の家に住むのが/当然だから」という紙片とともに。彼女は、ネロ・ウルフに、赤ん坊の母親と、そして亡き夫が本当の父親かどうかを調べてほしいと依頼する。渋々ながら引き受けたウルフとアーチ―の母親探しが始まる。
赤ん坊が身に付けていたオーバーオールのボタンは、白い馬の毛で作られた特殊なものだった。ボタンの制作者と思しき女性を突き止めたアーチーは彼女に会いに行くが、追い返されてしまう。ウルフに連絡を入れている間に、彼女は車で出かけてしまい、見つかったのは彼女の絞殺死体。人探しが殺人事件に発展してしまう。果たして犯人は、そして母親は一体誰なのか、というストーリー。
ウルフとアーチ―のいつものやり取りは楽しいし、女性好きのアーチ―が依頼人といい関係になったり、外出嫌いのウルフが依頼人の利益を守るため、クレイマー警視の追及を逃れて家から逃走する羽目に陥るなど、ウルフファンにとっては面白い場面も多い。
ただ、事件としてはウルフの推理により解決するものの、犯人がどうして殺人を犯してまで…という肝心のところが判然とせず、やや尻切れトンボの感が否めない。謎解きを期待する読者にとってはちょっと拍子抜けか。