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増田悦佐氏による最新本です、平成初期頃からお世話になっていて63冊目となります。彼の著作の特徴は、その気になれが誰でも入手できるオープンなデータをベースに解説を展開している点にあリます。
一般の報道等からは手に入れる事が難しい情報や、世の中の動き(電気自動車、コロナ、気候変動等)についても、将来どのように展開していくかを明言しているので参考になります。
今回のテーマは現在のアメリカはどうなっているのか、その原因を作り出したのは、アメリカが絶頂期にあった第二次
世界大戦直後に制定されたある法律が原因であるとしています。ガザ侵攻においてどちらが悪いのでしょうか、アメリカはどんなことがあってもイスラエルを非難することができない理由も述べられています。更に、もの凄い予算を毎年投入しているアメリカ軍ですが、ある調査によればアメリカよりもロシアの方が強いという結果もあるようです。
アメリカがイギリスより覇権を得てから70年余り経過しますが、そろそろ交代の時期に来ているのでしょうか。今後も世界情勢から目が離せられないですね。
以下は気になったポイントです。
・現在の1ドルの価値は、連邦準備制度が発足した当時に比べると僅か3セント分に過ぎない、ドルの価値が下がる続けたのは、第二次世界大戦後のことである(p37)アメリカの命運が尽きた4年間とは、1946−49年の4年間である、1946年に制定された、ロビイング規制法である。巨大化をさまざまな形で封じられtきた銀行業界に巨大銀行が生まれ、金融だけでなく経済一般を牛耳るチャンスを産んだ(p38)
・特殊検疫集団が直接議員にカネを渡して自分達に有利な法律、制度を作らせようとすると犯罪になるが、間に連邦議会に登録して4半期ごとに財務報告をするロビイストをはめ込めば、合法的にカネを議員に渡す事ができるというのが、ロビンング規制法である(p42)これにより、アメリカを効率向上による利益拡大を追求する国家から、レントシーカー(法律制度を自分達に都合の良いように変えさせることで利益拡大を目指す)国家に変えてしまった(p43)
・二度にわたる世界大戦が起きた頃のアメリカでは、この大戦に参加すべきかどうかで議論で活発な議論が起きていたが、それ以降は、議会はCIAが路線を引き、大統領が行った決断を事後承諾するだけの機関に成り果てている(p50)
・イギリスの悪名高い3枚舌外交とは、アラブ人にはパレスチナの独立を認め、フランス・ロシアとは旧オスマントルコ領の分割を密約していた(p57)
・国際貿易、資本取引における米ドルの地位は、ほとんど金兌換停止によって低下しなかった、ちょうどこの年、アメリカの貿易収支が赤字化し、アメリカは国際貿易で赤字の分を、貿易相手国に米ドルを支払う形で決済していたので、貿易総額に占める米ドルのシェアはむしろ突出度を高めたから(p62)
・ロビイング規制法成立の約50年後の1994年に制定され、1997年からフルに施行された州際銀行支店効率化法によって、とうとう大手銀行資本が自由に多数の州に支店網を構築できるようになった(p64)1999年からは、商業銀���業務と投資銀行業務の兼業禁止が解除された、金融危機頻発の原因は、このことによって5大銀行とそれ以下の銀行との間の格差が急速に広がったことにあるのではないだろうか(p66)
・中央銀行の金融政策だけで慢性的なインフレ状態を維持することはできず、有力産業の寡占企業や金融業界から送り込まれたロビイストを通じて、議会がインフレ持続政策を追求してきたからこそ実現できた見るべきではないか(p68)
・軍需がなければ2007−2009年のアメリカ経済は1930年代大不況並みに落ち込んでいたかもしれない(p74)
・アメリカでは経済エリートの賛成率が高いほど、可決率が高くなっている、経済エリートがほとんど賛成しない法案は絶対と言っていいほど可決しない、経済エリートの90−100%が賛成する法案は60%以上の確率で可決される(p119)
・なぜ集団万引き事件が頻発するかと言えば、消費者金融の発達で普通の商売が成り立たなくなった質屋が買い取って転売してくれるから(p147)
・世界貿易センター(WTC)の所有者=ニューヨーク港湾局は、老朽化して堅牢一点張りの牢獄を垂直にしたような設計で、WIFI不通もあって入居率50%、しかもアスベスト使用で解体費莫大とWTCに建っていた一群の高層ビルの処分に困っていた(p164)
・アメリカはロシアの10倍を超える国防予算を費やしながら、現状ではロシアより軍事力が弱いと判断されている(p168)実際の戦力となると贈収賄と上底価格で闇に消えた部分が異常に大きいのだろう(p170)
・2024年のアメリカは、13年生と17年生が同時発生するのを観察するという貴重な体験ができる年、前回は1803年(221年前)で、ナポレオンからルイジアナを1500万ドルという破格で購入したころ(p200)
・アメリカから盛大な軍事援助を受けていたアフガニスタンの傀儡政権が、武器では圧倒的に劣勢なはずのタリバン軍に負け続けたために、2021年に米軍が兵器を安全に破壊する暇もなく命からがら逃げ出す醜態を演じたことである(p213)
・バイデン大統領は、イスラエル軍によるパレスチナ民間人の大量虐殺を支持し支援し続けてきた、それどころか凄まじい経済封鎖で食糧確保もままならないパレスチナ人にとって命綱になっているUNRWAによる救援活動を兵糧攻めで阻止することを平然と宣言した、この理由は、バイデンは長かった上院議員時代の通算で他のごの議員よりも多くの献金をイスラエルロビーからもらっているから(p218)
・哀れな末路を辿った大帝国として、西ローマ帝国、大唐帝国、東ローマ帝国も似たようなものだった、大帝国が滅びる時「腐敗は芯から始まり、破綻は周縁からやって来る」ものである(p219)
2024年5月7日読破
2024年5月8日作成