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『郵便局』(光文社古典新訳文庫)を面白く読んだので、その前の時期のことを書いた本書を読むことにした。
『郵便局』では、何だかんだ不平不満は垂れながらも、それなりに長い期間郵便配達の仕事を続けたチナスキーであったが、本書では、様々な仕事を短期間のうちに転々としながら、全米を放浪する。
毎日のように浴びるほど酒を飲み、女と暮らしセックスをし、競馬に興じる。金を稼がなければならないから仕事を探し働くが、それはだいたい単純作業だったり、底辺に近いもの。そして、ちょっと嫌なことや自分の自由にできないことがあると、サッと辞めてしまう、あるいは辞めさせられる。
そのような生活を送りながらも作品を書いては出版社に送るチナスキーだが、ほとんどはボツになってしまう。そんな中で一編の短篇が採用との手紙をもらう。その嬉しさについての描写が実に感動的。傍からは自堕落と見えるような生活を送りながらも文章を書くことを続けた著者ブコウスキーの生き方が垣間見える。
汚い言葉のオンパレードだし、女性の描写も露骨に性的なものが多いが、グイグイと読まされてしまう不思議な魅力がある。きれいごとを嫌うチナスキーの自由な生き方に、自分では到底できないと思うからこそ憧れるのだろうか。