深川黄表紙掛取り帖
著者 山本 一力
元禄バブルの厄介事を若い4人がスカッと解決。カッコイイ奴らが、金に絡んだ江戸の厄介ごとを、知恵で解決する裏稼業。定斎(じょうさい)売りの蔵秀(ぞうしゅう)、長身男装の絵師...
深川黄表紙掛取り帖
商品説明
元禄バブルの厄介事を若い4人がスカッと解決。カッコイイ奴らが、金に絡んだ江戸の厄介ごとを、知恵で解決する裏稼業。定斎(じょうさい)売りの蔵秀(ぞうしゅう)、長身男装の絵師・雅乃、文師・辰次郎、飾り行灯師・宗佑の若い4人が力をあわせ、豪商・紀伊國屋文左衛門とも渡り合う。大店が桁違いに抱えた大豆を、大掛かりなアイディアで始末する「端午のとうふ」、他4編を収録。(講談社文庫)
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「金」と「粋」。
2006/03/08 13:15
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は5編の連続短編からなる、「江戸版コン・ゲーム小説」のような体を為している。物語り中、大きなお金に目が眩んだ者達があらゆるコン・ゲームを仕掛ける。しかし主人公、定斎(夏バテ防止薬)売りの蔵秀他4人の面々が、色々な智恵と計算と心意気でその企みを打ち砕く!というのが物語りの骨子。
主要登場人物中、絵師の雅乃は紅一点で物語に晴れやかさを加えているし、智恵者の飾り行灯師の宗佑は、やはり問題解決には無くてはならない存在となっている。そしてもう一人、物語中ではあまり目立たない絵草子師の辰次郎。しかし実はこの辰次郎の存在が、物語をさらに面白くしているように思う。数字算盤事に長けた辰次郎がいる事で、事件にリアリティを持たせ、一種のミステリトリック的な所まで、持ち上げることに成功しているからだ。
そして非常に巧妙なのは、悪とも善とも、どっちとも着かない紀伊国屋文左衛門を登場させている事。若くして大金を得た紀文、やはり他の金に目の眩んだ者達と同じかと思いきや、地元富岡八幡を心から敬い、その祭り事の費えには糸目を付ず豪気に振舞う。とても微妙な人物像が、物語にさらに深みと面白みを加えているように感じた。
「金と力で、さらなる金を巻き上げようなんてえ輩は、俺達が許さねぇ!」とばかりに活躍する4人と、その廻りの人達の、粋。その粋に触れ、動かないはずの物が動き、悪を滅ぼしていく。そしてついに現れる超大物武家が、4人を呼んで告げる事とは。さらに、その超大物武家が最後の最後に見せる愛嬌。
「粋」が「金」に劣る事があってはならない。そんな事をしみじみと感じさせてくれる本作品。さあ現代どうだろう。「大きなお金が至上の力」だと考えてしまった輩が、そこここに、いはしないだろうか・・・。もしいるとするならばまず、そんな輩に読んでもらいたい一冊である。