投稿元:
レビューを見る
海外での経験、チームラボ代表の猪子寿之氏の影響により日本の文化に非常に興味がわき、
なぜこのような文化が生まれたのかを知りたくなったため手に取りました。
終始一貫して著者が指摘している日本人の自然信仰と御霊信仰を基本とした神道の影響が大きいことを
指摘している。西洋が物事を客観的に捉え、物事を支配したがる支配・略奪の文化であることから
自然も掌握しようとしてきたのに対し、日本は古来より争いの少なく、豊かな文化をはぐくんだ理由は
共同体として自然に逆らわず恐れ多いものとして万人共通でとらえつつ仏教が個人宗教であることで
救済することで古墳や仏像などからみれる日本独自の文化を「形」としてみれることを筆者は強く
主張している。
富士山を敬う富士嶽三十六景がゴッホに影響を与え、土器からは装飾を施した火焔土器が
世界最古であること、仏像は性を抽象化し、神を具現化した様子が他の文化と異なること。
個人的に庭園の違いとして、イギリス式は石や木々を削り、噴水などの水本来の流れを制御し
ているのに対し、日本は自然本来の姿をできるだけ維持しつつ、庭や物体にその自然の尊厳を
凝縮させる点からも捉え方が違うことに、日本文化を論じている方からは自明なのかもしれないが
非常に興味をもった。
頻繁に西洋との比較を交えながら論じられており、客観的にとらえることの
できるようになっている。
継承を重んじる点も、天皇制が125代にわたり継承されている国としての固有性、シンボルとしての
天皇という独立した象徴を中心とした共同体がはぐくむ共生感によって、老舗の店舗数が世界的に
最大級であることを示している。(戦争などで文化が不連続にならなかったことも大きいと考えるが)
他にも
・和をつくりだすことを軸にして、お茶を飲む、歌を書く、という日常の行為が儀式になったり
社会性を膨らます。
・流入してきたもの、受け入れたものを作り変え日本スタイルにアレンジする
などといった点が新しい発見であった。
もう少し茶や浄瑠璃、歌舞伎や文芸作品の文化的な側面について深く掘り下げみてほしかったが、
個人的には満足しています。
投稿元:
レビューを見る
日本文化は、世界からも称賛を受けることが多いが、その原点は日本独特の神道にある。神道の中には、自然信仰、御霊信仰、皇祖霊信仰があり、日本の様々な文化や日本人の言動の中に、神道が根付いている。
例えば、日本の庭園などがそうである。日本の庭園は、そのままの岩や木をうまく調和させ配置し、砂を川に見立てる枯山水など、自然の調和を大事にする芸術である。しかし、ヨーロッパの庭は、自然を刈り込み、人工的な美しさを美徳とする。自然を制覇することが欧米人の考え方なのである。
また、皇居や明治神宮など、東京のど真ん中にあれだけの広大な人が入れない緑地が存在することもおもしろい。また20年ごとに行われる伊勢神宮内宮の遷宮も1300年続いていると思うと、世界的に見ても考えられない文化である。また葛飾北斎の富嶽三十六景には、つねに富士山が象徴としてあらわされている。
日本人は、昔から自然を大事にし、いかに調和させていくのかを重視した種族なのである。そう考えると、自虐的に歴史を考えたり、欧米に敬重するのではなく、もっと自分たちの国に誇りを持ってよいと思う。
投稿元:
レビューを見る
すべてのものを神道的な観点より説明しようとするきらいがあり、少しうさんくささもあるが、一方で日本の良さ等も十分に伝わる、また日本をもっと知りたいと思える内容なので、良い本であると思った。
投稿元:
レビューを見る
自然に恵まれ外敵から隔絶された島国、争わず、国譲りで統一。自然崇拝、和の精神、神の加護。
大陸的なものと比べると、改めてその根本的な相違に気づかされる。
投稿元:
レビューを見る
累計5。日本人は富士山をはじめとする自然を敬うことを遥か昔から続けてきた。自然への畏敬の念が神道となり,仏教などと融合しながら日本人独特の価値観を築きあげてきた。葛飾北斎が表す富嶽三十六景には,富士が描かれているが,どれも小さい。北斎は富士山を描いたのではなく,富士に守られている人々の生活を描くことで,富士山=自然に対する信仰を描いたのではないか,という。そして,その技法だけではなく,価値観や自然を神とする心がゴッホやアンリ・リヴィエールらに影響を及ぼしたのではないかという主張。庭園や盆栽など,美や観を凝縮するのが日本人,というのも興味深い。また,争いを避ける原点に国譲りの神話がある点なども共感できる。
投稿元:
レビューを見る
693
田中英道
昭和17(1942)年東京生まれ。東京大学文学部仏文科、同美術史学科卒業。ストラスブール大学に留学しドクトラ(博士号)取得。文学博士。現在、東北大学名誉教授。フランス、イタリア美術史研究の第一人者として活躍するかたわら、日本美術の世界的価値に着目し、精力的な研究を展開している。また、日本独自の文化・歴史の重要性を提唱し、日本国史学会(平成24年設立)の創設に尽力、代表を務める