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tiharuさんのレビュー一覧

投稿者:tiharu

2 件中 1 件~ 2 件を表示

ジャケ買いして大勝利した作品

2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ジャケットに一目惚れして購入した。BLアワードで表紙デザイン賞を受賞したらしい。それも納得の美しさ。
作品は、いわゆる「(最初はソフトな)クズ攻め×健気受け」。よくあるパターンだし、受けの設定の不幸さも、BL世界なら王道と言えば王道。
しかし、しかし。
終盤のご都合主義を否定できないくらい、綺麗にととのえ作られた良作だったと思う。
設定は王道だが、誠実さが並外れている。
酷さをポルノに使わない。「持つと持たぬと」の間にある溝の深さを、柔らかな言葉でも逃げずに見据える。
受けの健気な献身は美しいが、よくよく考えればエゴである。そして受け自身も、自分のそれがエゴであるとわかっている。エゴという言葉や概念を知らなかったとしても。
それが、とても清々しい。
攻めのクズさも、少しずつ感化され氷解していく。受けは自己評価が低いまま攻めを翻弄させるし、攻めの与える愛情を受け取るのがあまり上手ではないから、攻めは湯水のように愛情を与え続けなければきっと、攻め自身が満足も安心もできない。慢心なんて絶対にむり。
クズにはいい呪いだと思う。いつまでも愛情いっぱいでいて欲しい。
そう、本書は綺麗なハッピーエンドなのだ。
ご都合主義、結構。
命を削る雨はやさしく静かに降るし、その滴は庭の花木を芽吹かせ生き返らせる。
残酷さを残酷なまま上質なシルクでくるんで、やわらかく提示されてしまった。読者の私たちは、極上の質感にうっとりとしながら呻くしかない。
繰り返すが、ハピエンである。だから大丈夫。

なお、構成も見事である。
視点が切り替わるが、整理されているので混乱しない。
映画のように、このささやかで美しい世界に引き込んでくれる冒頭のシーンは、中盤に形を変えて挿入され、視界が広がりクリアになる。
並行して走っていたライン、点在していたモチーフがひとつに収束してラストシーンへの明快な道筋になる。
構成まで美しい。見事だ。

そうして読み終えて表紙にかえってくると、気づくのだ。この表紙が、いかに秀逸なデザインであるかということに。
この表紙の1枚絵は、間違いなく、この物語を完璧に表現している。

この表紙に惹かれた人は、せっかくなので一読してみて欲しい。きっとこの物語を必要としている人もいるだろう。

私はこの作者さんが描くこの物語の続き、
甘く、残酷に支配されたしあわせな生き地獄を、ぜひ読んでみたい。

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電子書籍イヴの時間3巻

2015/08/27 13:40

コミックならではの味わいがある

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

もともと「アンドロイドもの」「人のカタチをした人でないもの」との関わりを描いたドラマは、私のいわゆるツボというやつだ。
それもあって『イヴの時間』はアニメ版をすでに観ていたのだけれど、今回、電子書籍割引のクーポンを利用して購入。
すでに知っている話ばかりだったのだけれど、購入してみてよかった!

アニメにアニメならではの良さがあるのと同様、コミックにはコミックならではのよさがある。色も音も動きも無い分、与えられた限られた情報を、より深く味わうことができたと思う。
(アニメ版も素晴らしい作品です)

また、読んだ場所がよかった。電子書籍で、タブレットだけ持っていれば読めるのをいいことに、気に入りのカフェで読んだ。
コーヒーの匂いの中で見る『caffe イヴの時間』は、とても味わい深い。
また近いうちに、ぜひ再読したい。

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