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みなとやヨーコさんのレビュー一覧

投稿者:みなとやヨーコ

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本この国で女であるということ

2001/10/30 13:08

女は情熱の炎を燃やす生き物

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 夢を形にしていく作業にワクワクする要素を感じていたあまっちょろいドリーマーの私に冷や水をかけてくれた著書。
 「夢を追いかける」なんて陳腐な言葉では言い表せない、自分として生きていく、ただそれだけの情熱がほとばしっている。その情熱が消えることなく、逞しく存在する女性たちの登場。マイノリティーとして第一線でやっていくゆえの潔さもいい。男性のそれとは比較できないくらいに熱いはず。男性には「社会との違和感」をそう強く感じられないと思うから。
 現代は自由な社会であると思う。どんな夢だって持っていいし、何になってもいい。そのかわりそれと同じくらいの自己責任が待ち構えている。この重さに負けてしまうパターンが大半なのだと思う。だから夢なんか最初から持たない方が楽なのかもしれない。でもそれができない「欲張り」であったり、「本能」があったり、「環境」であったり、「戦士」だって存在するのだ。理屈抜きでそういう存在であると息苦しさはハンパじゃない。それも女であると男性とは一味違う苦さを増している。もがきながら、叩かれながらも茨の道を進む姿を描いている、この著書は女としての勇気と絶望を同時にもたらしてくれる。決してサクセスストーリーでは終わってない視点もいい。
 これを手にした時のそれぞれの事情で感じ方は違うだろう。時には反感すら覚える箇所もあるかもしれない。特別な人だからと流してしまうだけかもしれない。私はこんなじゃなくて良かったと安心するかもしれない。それでも、きっと心のどこかに小さな情熱の炎が浮かぶだろう。

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人生は瞬間の集まりで

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 ここに集められた江國物語は短いのだけれど、短いからこそ、どれもより甘くて、切なくて、いとおしかったり、そんなアワアワとした、人間の感情が鮮明に湧き上がってくる。そして物語の余韻がとてつもなく長いのも降参なのだ。
 なんの前触れもなく、「私」という日常生活のふとした瞬間に、この中のどれかの物語のワンシーンが再生されるようだ。それも決してハリウッド映画みたいな派手さでもなく、ヨーロッパ映画みたいなマニアックさでもない。そう、まるで古い8mビデオをジーコジーコ言わせて眺めているような感じ。台詞はあっても話し声は聞こえない。車の通り過ぎる音や降る雨の音、店の雑音、街そのもののざわつきがBGMのように流れている。同時にそれぞれの匂いまで漂ってきそうなリアルさ。そう言えば8mって瞬間瞬間を封じ込めているような映像だ。
 楽しかったね、悲しかったね、大変だったね…なんていうノスタルジックに浸れるほど、時は経過していなくて、だからまだ終わってしまっていなくて、ずっと続いてるようなのに短い物語という不思議さを醸し出す。だから時には息苦しくなるくらい、物語をすぐそばで感じる。だから忘れない、忘れられない。
 男と女がただそこにいるだけで、人はこんなにも弱くて強くて、わがままで従順で、敏感で鈍感で、憎たらしくててかわいくて、なんという矛盾の中で暮しているんだろう。瞬間というとてつもなく短い時間を優先しながら、暮していけたらいいな、私も。

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