椎名 さんのレビュー一覧
投稿者:椎名
9 件中 1 件~ 9 件を表示 |
紙の本おまえの優しい手で
2002/02/13 19:34
人間の持つ深淵
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
水戸泉さんといえば「子供シリーズ」。天才的頭脳を持つ見た目はフツーの鬼畜小学生が一見ガタイのいい鈍な高校生をヤッてしまうというあのシリーズで名高いハイテンションBL作家。
But! しかし! 皆さん、水戸泉さんのもう一つの顔を知っていますか? そう「パラノイア幻想」や「月無夜」で描かれたあの世界。
「子供シリーズ」を「楽しめるもの」とするならば、この話や今あげた小説は水戸泉さんの「魂のこもったもの」です。
水戸泉さんの「魂」に触れたいと思う人は、まずはこの「おまえの優しい手で」を読みましょう。水戸泉さんの言いたいことはこういうことなんだとしみじみわかる。
この話は傷ついても立ち向かう痛々しさに溢れてる。人の持つ業が、ここにはありました。暴力とエロスが蔓延る世界で、立ち向かう相手はやはり人間。
この世界で私は、人間の持つ暗くて見えない深淵、業みたいなものを見ました。水戸泉さんの話を普段読む人には特に読んで欲しいなあと思う一冊。
紙の本ピアニシモ
2002/03/27 01:29
この世には誰にも気付かれない死が溢れてる
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「戦場なんだよ、ここは」とさとるがいった。逃げ場のない戦場。遠くの誰かが同じ場所で感じてる。ひっそりとして静かな、誰にも気付かれぬまま迎える死が溢れてる戦場を。
フィッツジェラルドの『マイ・ロスト・シティー』を思い出した。享楽と退廃のアメリカで何もかも得て、そしてこれからの人生で何も得ることはできないだろうと、思った彼。不幸ではない。むしろ幸せだ。けれど幸せの中にあるこの影は抱えたまま消えることはない。欲しいものさえ分からないまま、何かに飢えてる。この世を知れば知るほど、何が本当で何が嘘か、何が幸せで、不幸せか、わからなくなっていく。
私はまだ「ヒカル」の存在を消せないままでいる。この本を読んで、そしてじっと見つめてください。あなたの中にも「ヒカル」の存在はきっとあるはず。
紙の本リバーズ・エッジ
2002/03/27 01:24
平坦な戦場で戦う若者たちの物語
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
岡崎京子は大好きなマンガ家です。全部読んではいませんがいつもいつも胸にザクッとささる。岡崎京子の世界にある「空洞」はきっと誰にでもあるものなのだと思う。私の欲しいものって何。それは手に入れられるもの? 満たせるもの?
私はここから抜け出せないのかもしれない。これ以上のものを手にするには私は臆病すぎる。
この話は、それぞれの「若者」の「何か」を求める物語です。
2002/03/27 01:17
恋はハードボイルドだけど…
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
綺麗なイラストに反して中身はとてもリアル。ここには不器用な恋の痛みがある。いつもいつも相手の心との距離感を図ってる。近づけなくて焦れったくてでも相手の心と自分の心が違うことをわかってて。同性を好きになってしまったらきっとなおさらに。恋はハードボイルドだ。だけどハードボイルドになれなくて足踏みしかできない恋もある。そんな恋の切なさを繊細に描いた秀作。
紙の本熱情
2002/02/13 19:18
エロスの極致
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
初めて読んだとき「うおおお」と思わずうなり声をあげました。サスガ飛沢杏さん。この方は一筋いかない何かがある。
内容は明らかにおかしい。荒唐無稽です。教師が生徒に監禁されてヤラレまくるという…なんかこう書いたら身も蓋もない筋書きだねえ。しかしそこは飛沢杏さん。ただのヤリまくりのBLには終わらせない!
エロスの極致がまさにココにってなほど描かれる性描写に精神論が組み込まれている。セックスの激しさを描くことでお互いの孤独と飢餓がビシバシと鞭打つ鋭さで伝わってくる。人間って絶対SかMだと思う私としてはそれをあからさまに肉体的な関係で表した話だと感じました。
精神的なSとMって絶対みんな持ってると思うんです。それと肉体関係が繋がるとこんなに激しいものになるのか。
いやいや、とにかくすごかった。身体の奥にある欲望の炎は本当はこんな激しさを持っているのかも。などとこの本で妖しい世界に一歩踏み込んでしまった私でした。
ちょっぴりアブノーマルなBLを読みたい方にはオススメです。
2002/02/13 19:07
不思議な空間
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
表紙のショタっぽいイラストにためらうなかれ。中身を開いてもショタっぽいイラストに侮るなかれ。この本の中には独特の不思議な空間があります。
マンガの描き方も他のマンガと少し違ってどこか詩的。白と黒の使い分けが上手い。コマ割は少し見づらいと感じるかも知れませんがそれも味が出てる。
静かで切なくてどこか古めかしさを感じさせる不思議な時間を過ごせるマンガです。少し違ったBLを求める方は是非。
紙の本リトル・バタフライ
2002/02/13 19:00
あまずっぱい初恋の味
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
う〜ん。かわいい! みんなかわいい! かわいいったらない! 思春期の恋は常に甘酸っぱいドキドキが溢れてる。
目が合うだけでどきっとする。同じ空間にいるだけで幸せになる。話を交わしたとき、時間よ止まれ! なんて願う。相手に触れた時なんて心臓バクハツ! ああ初恋。思わず尻上がりになる。恥ずかしいほどもの慣れない恋を覚えてますか? みっともないくらい情けないくらい一生懸命な初恋の姿がこの中にあります。
私も初恋のこのドキドキを忘れずに初心に返って恋愛しよう! と思いました。
2002/02/13 18:31
ジェットコースターラブロマンス
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
やっと完結しましたね。ハラハラドキドキ怒濤の三巻。まさに「ジェットコースターラブロマンス」という名にふさわしいBL小説です。BLには意外と歴史ロマンスやSF・ファンタジーが少ない。JUNEと呼ばれるジャンルだった時代には多かったのに。
しかしとにかく面白い! 波瀾万丈な歴史と交錯するそれぞれの人間関係が息もつかせぬ勢いで読者を最後まで引っ張る。健気で一途でおてんばなチュールと強引で冷酷で不器用なレイのすれ違いが切なくて甘くてハラハラしてたまらない!
これを読んでファンタジー同士のジャンルが融合するとき、BLはもっともっと面白い作品を創り出すことができると心底思いました。BLなオイシイ要素がてんこ盛り。ジェットコースターなラブロマンスを求めるあなたは是非とも読みましょう。
2002/03/27 01:34
この世は何でも起こりえる
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
「生きているのか、死んでいるのかさえわからない。その曖昧さに耐えられるか」
今更な問い。曖昧さに耐えるか、傷ついてぼろ切れのようになっても曖昧さを壊すか、選べるのはどちらかだ。戦線離脱もできるだろう。この本もそして「ピアニシモ」も、離脱でもなく曖昧さを壊すでもなく叫ぶことを選んだ。叫びたい。でも叫べる人はごくわずかだ。読んだ後、よく分からないと思った。だけどどんどん胸に話が言葉がシミのように広がった。心の中にずっしりと居座った何かを感じた。いつかこの気持ちは変えられるだろうか。
果たしてあなたは「今」、「ここ」にいると確信が持てますか? もう一つの「今」、「ここ」、そして「あなた」はいませんか?
独特の筆致で気付いたら読み終えていました。笙野頼子の『タイムスリップ・コンビナート』と同様に、時が経ってからまた読み直したくなる本です。
9 件中 1 件~ 9 件を表示 |