meisuiさんのレビュー一覧
投稿者:meisui
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2005/03/02 00:44
夢から覚めたような気持ち。
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私がこの本を手に取ったきっかけは友人のすすめだった。「とても絵が可愛くて、切ない本があるよ。」と。
読んでいる時この本は圧倒的表現力で私に語りかけてきたと思う。私が「語りかけてきた」と断言できないのは読後感にある。
夢から覚めたような感じ。
この一言だった。
不思議だったり、怖かったり、楽しかったり、わくわくしたり…
夢で見た出来事はすごく鮮やかだったはずなのに、夢から覚めてしまうと、具体的な記憶ではなく感覚的な記憶だけが残っている。
ファンタスティックサイレントは塔の町での2つの物語が描かれている。私はおそらくこの塔の町の住人だった。きっと作中の登場人物たちと泣き笑いもしただろう。だからこそ、読み終わった後の喪失感はなんともいえないものだ。ただなんとなく「からっぽ」な感覚だけが残る。それだけにファンタスティックサイレントの世界は私を魅了した。
ここで重要なのは、この世界が変幻自在であることだ。作者は具体的な世界観の設定はしていない。もちろん、絵本なので建物やキャラクター、物語の雰囲気だけで世界が構成されている。だから、子供の頃のように本の中に自分を投影できる。
作者は読者の想像の余地を残す形でこの塔の町を作り上げてくれたのだ。
私は久しぶりにこの本をもう一度手に取り、塔の町に帰ってみよう。最近夢をみていない方、この夢でつづられた世界に入り、あなただけの塔の町にいってみたらいかがかと思う。きっと読み終えた時の不思議な感覚の虜になるだろう。
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