須藤晴彦さんのレビュー一覧
投稿者:須藤晴彦
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2003/02/13 07:47
職業・呪文・アイテム
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オタクについての議論を中心に据えたシンポジウムのレジュメ的内容であるこの著作を舞台に、RPGの主人公たちがそれぞれの能力を用いて論を進めていく。そんな例えが浮かんでしまうのもまたオタクという言葉の力だろうか。
哲学者という職業の編者がジャック・デリダという呪文を用いてオタクという魔物と戦う。時には、漫画やインターネットといったアイテムがその戦いの助けとなる。しかし戦いの最大の助けはやはりパーティーの仲間達だ。斉藤環氏は医師という職業でジャック・ラカンという呪文を身に付けている。持っているアイテムには編者と共通のモノもあればそうでないものもある。ときにパーティー編成を変えながら、彼等は現象とも存在とも決めかねないその魔物をとらえようとしているのだ。
パーティー編成が変わればパーティー内で交わされる言葉も微妙に変わってくる。かつて魔物側についていた人間をパーティーに加えればそこで使われる言葉にもまた変化が表れる。このような、それぞれ異なる職業・呪文・アイテムを持つ人間達でも通じ合う言葉を使いコミットしていくさまそれ自体が、この著作内で繰り広げられる議論の内容と共に極めて現代的であり、副題の「ポストモダン」状態を表しておりエキサイティングだ。
エキサイティングは加速する。火付け役は鈴木謙介氏という職業社会学者によるここでの書評であり、そのような書評が書けるこのサイトの作りである。
映画で観たことのあるシーンに現実で出会う、そんな日々を僕たちは過ごしている。ゲームで見たことのある関係を、この著作で、そしてこの著作から広がる現実で僕たちは見、実際そのような関係の中で過ごすことになる。
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