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ぶんこ虫さんのレビュー一覧

投稿者:ぶんこ虫

11 件中 1 件~ 11 件を表示

紙の本噓つきアーニャの真っ赤な真実

2004/08/13 00:04

3人の少女の姿がそのまま世界を映し出す鏡のようだ。

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 東西冷戦中、ベルリンの壁が崩壊する前の、東欧社会、なんて興味を向けたこともなかった気がする。まだ、社会主義の理想を多くの人々が信じていたころ、東欧チェコスロバキアのプラハにソビエト学校なんてものがあり、そこで世界各国の子供達が学んでいたなんて、しかも、その中に日本人がいたなんて、想像をはるかに超えた話だ。
 ここでは3つの物語が語られている。著者のソビエト学校時代の友人たち。やがて日本に帰った著者が、長い年月を経て、もう一度彼女達に再会するまでの物語だ。ギリシャ人でありながら、ギリシャを見たことのないリッツァ。ルーマニアの高級官僚の娘アーニャ。ユーゴスラビア人のヤスミンカ。…冷戦後、彼女達が暮らす国々は、急激な社会変革や民族紛争を引き起こすことになる。
 「白い都のヤスミンカ」は3話の中でもっとも痛切な物語だ。その昔、ベオグラードの美しさに魅了されてトルコ軍が町への攻撃を断念した、という逸話には、何か人間性への信頼のようなものが内包されていると思う。けれど、昔話ではない現代、20世紀の終末に、アメリカとNATOはついにベオグラードを爆撃した。「明日にも命の危険にさらされるかもしれない、恐ろしくてたまらない。けれど、国を捨てようとは思わない。たくさんの友人、知人、隣人と築いてきた日常を捨てることはできない」…まだ爆撃される前のベオグラードで再会したヤスミンカの言葉が痛切に胸に響く。
 この本を読んで、世界に絶えることのない戦争というものの理不尽さを思わずにはいられない。民族、宗教、思想の違いが、どうしてこんなにも果てしない争いを生むのだろう。どうして人々をこんなにも苦しめ、悲しませてもなお、戦争は終わらないのだろう、と。

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紙の本新・御宿かわせみ

2011/08/21 18:08

明治編になりました。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

明治編です。子ども達の時代になりました。
そうか、「御宿かわせみ」って幕末の物語だったんだ、と改めて気づきました。
江戸編の最終巻から明治編の本巻まで、物語の上では数年の月日が流れ、登場人物の身の上にも劇的な変化があったことが語られています。亡くなった人、行方不明の人、悲惨な事件。それら、幕末の最後の出来事は、「御宿かわせみ」第〇巻として語られることはなく、物語は、イギリス留学していた麻太郎の帰国から再開することになります。
江戸編で、何でも出来て頼りになる「若先生」だった東吾のあとを、明治編では麻太郎がしっかり受け継いで走り回っているのを見ると、なんだか嬉しくなりますが、麻太郎に限らず、千春も源太郎も花世も、「かわせみ」の子ども達って、みんな出来すぎるくらい良い子ばかりで、うらやましい限りです。
明治維新、というと、何か劇的に時代が変化した、と思い込みがちですが、確かに政治の世界ではそうなのかもしれませんが、一般庶民の暮らしにおいては、たとえばいきなり生活スタイルが変化するわけでも、話す言葉が変わるわけでもないわけで、変わるものと変わらないものの中で、人々は結構たくましく、適応力を発揮して生きているんだろうと思います。
外国人が増えたり、汽車が走るようになったり、奉行所がなくなったり、神林家も麻生家も引越しをしていたり、さまざまな時代の変化の波の中で、「かわせみ」は変わらないものの象徴としてそこにあり、「かわせみ」をめぐる人々の、やはり変わらないあたたかな人間関係が、どんな時代にあっても変わらない大切なものを示しているように思います。
「御宿かわせみ」は何度かテレビドラマ化されていますが、明治編もいつかドラマで見てみたい気がします。ずいぶん長いシリーズになりましたが、変わらずに読み心地のいい物語であり続けているのがスゴイと思います。

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紙の本心星ひとつ

2011/08/21 16:16

作中の料理にリアリティがあるのも楽しい。

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

このシリーズ、最近の時代小説の中でもイチ押しです。
主人公澪が、料理人として成長していく物語で、度重なるライバル店の妨害にもめげず、周囲の人々と助け合いながら懸命に生きていく姿を描いています。
澪は、主筋の店の再建と、親友を苦界から助け出すことを一心に願っていますが、それはとてつもなく遠くはるかな道のりです。たどりつけるかどうかもわからない、気の遠くなるようなその道を、澪は懸命に歩いていきますが、その中で迷ったり、立ち止まったり、ときにはあきらめそうになりながら、決してスーパーウーマンではない主人公の悩み苦しみ、心の揺れ動く様が、しみじみとした共感を誘うのだと思います。
澪の周囲の人々は皆、何がしかの悲しみや、どうにもならない運命みたいなものを背負っています。それなのに、どうしてそんなに、と思えるほど、みんな優しいのです。お金や物に限らず、心遣いや手助け、何でも惜しみなく与え合って生きている、だから、みんな一緒に泣いて、一緒に笑っています。この巻は、主人公に大きな決断を迫る事件がおきており、今後の澪の人生そのものを左右する巻となっていますが、きっとその先の道でも、澪とその周りの人々は、お互いに惜しみない愛情を与え合いながら生きていくんだろうと思います。
作者の作品はほかに「銀二貫」「出世花」を読みましたが、いずれも秀逸です。人はこんなにも優しく、愛情深く、強く生きていけるものなのだと、心があたたかくなります。作者の次の作品が楽しみです。

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紙の本晩鐘 下

2011/08/30 20:47

読んだあと、澱のようにわだかまる物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 「風紋」上下巻「晩鐘」上下巻、4巻をかけて語られるのは、ひとつの殺人事件を契機に、予期せぬ運命に翻弄されるふたつの家族の物語です。
 前作「風紋」では被害者の娘と加害者の妻を主人公に、事件の発生から裁判までの過程を、本作「晩鐘」では、被害者の家族のその後に加えて、加害者の子ども達のその後が大きなテーマになっています。
 どちらの家族も深く傷ついて、たくさんのものを失いながら、それでも生きていかなければならない冷酷な現実に直面しますが、深い闇の底からようやく立直ろうとする家族がある一方で、少しずつ壊れながら破滅への道を辿っていくもう一方の家族の姿が対比的に描かれています。そして悲劇の連鎖は止むことなく、いちばん力の弱い者に容赦なく降りかかっていきます。その悲痛な結末の苦さが、いつまでも胸の底に残り続けるのです。
 前作「風紋」は刊行からすでに15年以上経っているという事実に驚きながら、澱のようにわだかまる何かを思い出しては、また読み返してしまう、そんな物語です。

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紙の本白萩屋敷の月

2004/04/24 00:01

宗太郎先生登場!

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 表題作が秀逸。東吾の兄、通之進の少年時代の恋、その後、というお話。江戸時代、武家社会で、14歳の少年と21歳の娘では、成り立ちようもない恋。少年は、はじめ自覚がなく、のちにそれが恋であったと気づく。娘は少年への想いを秘めたまま、黙って他家へ嫁ぐ。ふたりは互いに恋していながら、最期まで互いにそれを知りえなかった。東吾だけがそのことに気づいて、胸の奥にしまうことになる。
 あと「美男の医者」が小気味よくて面白い。東吾たちのちょっとしたコンゲーム、“百万ドルを取り返せ”ならぬ“十両を取り返せ”のたくらみに主演して去った美男の医者。ところがこれが実は御典医の息子だったというオマケつき。こののち「かわせみ」のレギュラーになる宗太郎先生登場の巻。
 かわせみシリーズの中でもオススメの1冊。

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紙の本償い

2004/04/23 23:21

ホームレスの元医者と不思議な少年の物語

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 医者からホームレスになった男と、家族や周囲に不幸が続く少年。ふたりが出会って、巻き込まれていくのは、連続殺人や無理心中や自殺やホームレスへの集団暴行といった、毎日ニュースに出てくるような事件の詰め合わせだが、この物語は単純な犯人探しや謎解きのお話ではない。家族を失い、医療ミスの責任を取らされてホームレスになった元医師と、他人の心の悲鳴が聞こえてしまう特異な能力ゆえに、深い知性と闇のような絶望にとりつかれている15歳の少年の、邂逅とふれあいと救済の物語なのだ。
 最後まで、一気に読める。物語のラスト、ようやく前向きに歩き出そうとする主人公の姿に、しみじみとした感動を覚えた。

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紙の本深紅

2004/11/13 00:12

時間が彼女たちを癒してくれることを願わずにはいられない。

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 作者の他の作品に比べて、本書は読後感が随分違う。解放とか救済とか、そういう言葉では不足だろうと思うけれど、何か明るいところへ導かれて終わるような温もりを感じた。どうしたんだろう、いい傾向だな、と思っていたら、作者の訃報を知った。
 物語は重く衝撃的に始まる。悲惨な殺人事件。その被害者の家族としてたったひとり生き残ってしまった少女の苦悩。キリキリと突き刺すようにその深い絶望を描き出していく前半は容赦がない。
 犯罪被害者の娘と、加害者の娘という、ありえない取り合わせの二人の少女の交流を描いた後半。そこでは、ひとつの犯罪計画が進行するが、物語は二人の日常を丹念に追っていくことになる。
 その日常の中で、加害者の娘である未歩は、相手の素性を知らないまま、友人として心を開いていく。被害者の娘である奏子は、未歩を憎みながら、次第に憎しみ以外のものを感じるようになる。全く両極の立場にありながら、同じ年月を苦しみながら生きてきたという現実。未歩を知るにつれ、奏子の心の中の闇がゆらぎはじめる。
 奏子も未歩も、その心に秘めた苦悩や憎悪を捨てることはできないだろう。けれど二人は、その絶望の中から立ち上がって、再生への道を歩き始める。そんな彼女達がいつか癒される日が来るようにと祈らずにはいられない。
 静かな感動が残るこんな物語を、作者にはもっと書いて欲しかった。残念でならない。
 

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紙の本復活の地 3

2004/11/01 23:39

最終巻は「防災の手引き」として読んでしまいました。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 最終巻です。
 セイオとスミルの成長物語としても楽しめましたが、この巻は、その大半を「防災の手引き」として読んでしまいました。もちろん現実の災害とは違いますし、地震予知が不可能である現実を考えると、やはり物語の世界のこと、と言うしかないのですが、それでも、セイオたちが仕掛けていった事前対策のひとつひとつに「なるほど」と感心させられたり、考えさせられたり、妙に現実的な気分で読んでいました。
 それにしてもレンカ帝国の幸運は、セイオに限らず、とびきり優秀な人材に恵まれたことです。災害などの緊急のときは、ハードとかソフトとかいう以前に、能動的に動ける人間がどのくらいいるかが最大のポイントでしょう。物語の世界には要所要所にそういう人々が配置されていますが、現実の世界は…、なんて、ついつい考えさせられてしまいます。
 こういう現実的なことを考えながら読んでしまったSFというのも珍しいかもしれません。物語自体は、これに国レベル、星間レベルでの政治的駆け引きや権力争いなども絡んできますが、上手に織り込まれて読みやすく仕上がっています。
 小川一水氏の作品のすべてを読んでいるわけではありませんが、前作「第六大陸」と本書「復活の地」は、それ以前の作品とは一味違ってきている感じがします。描かれる人物や世界がぐんと魅力的になってきましたし、何より読みやすくなりました。次はどんな物語を披露してくれるのか、楽しみにしています。

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紙の本復活の地 2

2004/08/12 23:05

こんな有能な役人いるわけがない、と思いつつ、負けるなセイオ、と応援したくなる。

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 大災害を描いたハリウッド映画は多いけれど、この小説は、大災害そのものの脅威とかサバイバルではなく、大震災で崩壊した都市と社会の復興、その過程における人間の有様を描こうとしている。
 主人公セイオ、生き残った上級官僚として震災直後から救援活動に孤軍奮闘する。やたらに有能で行動力があって怯まない。公僕の何たるかをよく認識していて、目的のためには手段を選ばず、保身を考えない。ちょっと出来すぎで、とても役人とは思えない。偏屈で破天荒で口は悪いし敵ばかり増やしている。組織の中の人間としてはかなり規格外。実際にこういう人がいると周囲のフツウの人は結構ツライものだけど、そこに、誠実、忠実、有能で、心身ともに健全な人間である天軍士官ソレンスが副官として配置されているのがなんとも嬉しい。いいコンビです。
 第2巻に入って、王家の姫君スミルはじめ登場人物たちの輪郭や、星外諸国、植民地等々政治的な関係もくっきりとしてきたし、シンルージ男爵なんて、前巻では典型的な情けないお役人だったのに、この巻で飛躍的に好感度アップしてますし。最終巻、更なる波乱を期待して、楽しみに待ってます。

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紙の本邪魔 下

2004/04/27 23:08

平凡な日常生活を守るために戦ったある主婦の物語(というと変かな?)

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 平凡な日常生活が、あるとき突然あっさりと崩れていく。その渦の中で、平凡な主婦が、平凡な日常をつなぎとめようとして必死に戦いはじめる。
 ある放火事件が夫の仕業なのではないか、という疑惑。警察の監視、マスコミの取材、報道。次第に追い詰められていく中、夫への疑惑を忘れようとのめりこんだ市民運動にも裏切られ、自分の居場所までも失い…。
 困惑と怒りの中で、滑稽なほど見事に階段を踏み外していく主婦の姿が、奇妙に可笑しくて生々しい。この主婦の支離滅裂ともいえる奮闘をひとつの軸に、もうひとつは警察内部の不正や争いを描いて、どこか壊れている二人の刑事の行動を追っていく。
 上巻は、人物や事件が雑然と入り乱れて疾走している感があり、いくぶん不安定な読み心地だったが、下巻に仕掛けられた隠し玉でいっぺんに目が覚めた。
 どこでどう間違ったのか、刑事も放火犯も主婦も、あれよあれよという間に「こんなはずじゃなかった」道へ踏み込んでいく。その過程が、過激なくせにリアルで、滑稽ですらある。
 結局、破滅への道をひた走ってしまった主婦が、最後に選んだ逃走手段が自転車だった、なんて、もう笑うしかないくらい切なくて痛々しい。彼女は結局、逃げきったんだろうか。そんなことはありえないと思いつつ、描かれなかった彼女のその後をあれこれ想像してしまう。

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紙の本砦なき者

2004/04/10 01:45

テレビという虚構

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 テレビという虚構を最大限に利用して成り上がっていく青年八尋と、八尋が標的としたテレビ番組関係者の、戦いの物語といったところか。
 八尋がメールを利用して不特定多数の狂信的なファンを煽動するあたりは、多少の違和感を覚えたけれど、それを非現実的とは言えない時代に私達は暮らしている。実際に起きている事件や犯罪は、もうとっくに、そういう段階を踏み越えているのかもしれない。
 新聞にしろ、テレビにしろ、限られた時間、限られた容量の上に、何がしかの主観をもった人間の手でつくられている、という事実を忘れないようにしないと、情報の洪水の中で生活している私達は、簡単に、自分で判断するという大切なことを手放してしまう気がして、こわい。
 それにしても、ある事件の現場を目指して、携帯を手に手に、人々が集まってくる光景というのは、グロテスクでうすら寒いものだ。

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