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林 健二郎さんのレビュー一覧

投稿者:林 健二郎

5 件中 1 件~ 5 件を表示

サイバーエコノミーにズバリ切り込み,ネット社会の本質が見えてくる優れた解説書

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 わずか数年間で世界を覆い始めたサイバーエコノミーの本質にズバリ切り込んだ優れた解説書である。無限に夢を語るネット経済論と現実のネットバブル崩壊の中で,サイバーエコノミーとどう付き合って行くべきかという今日的課題に確かな視点を提供している。
 「牛を殺すことを想像しながらハンバーグを食う」というレトリックを使いながら,サイバーエコノミーという一見捕らえ難い新しい世界を手際よく料理する論理展開に引き込まれる。鋭い観察と研究を背景に,問題の本質を次々と解明して行く分析にある種の爽快感を覚える。
 著者は日本銀行で金融取引における法制,会計および情報処理技術に関する調査研究と金融制度の企画立案に従事し現在,早稲田大学大学院アジア太平洋研究科経営コースの教授として学生の研究指導に当たっている。
 本書はまず,サイバーエコノミーの誕生と発展について,その背後にある新しい情報通信技術の仕組みを概観し,そうした技術的な仕組みが実は新しいエコノミーの本質に深く関係するものだということを明らかにする。次に,そうした技術がもたらす経済活動や社会への影響と将来について論じている。特に電子マネーについての解説は興味深い。貨幣の本質,中央銀行の役割,金融政策との関連についての深い分析は読みごたえがある。
 「サイバーエコノミーの経済学」で今日の問題の核心に迫っている。「情報財」が持つ収獲逓増性,経験財,公共財という3つの特色についての分析は示唆的である。特に収獲逓増性が日常を豊かにする一方で,市場の仕組みの観点からみると,企業は変動費すらも回収できず,もがけばもがくほど首が締まる罠があるとの洞察は鋭い。「2つのボーダーレス化」で国家と市場の関係の変化と企業の変質の可能性を論じ,「ネットワーク時代の社会と個人」ではプライバシーとアイデンティティー問題について考察を深めている。終章の「再び牛とハンバーガー」でサイバーエコノミーについて,著者の哲学を語っている。ネット社会の本質がみえてくる優れた解説書である。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本ドル化 米国金融覇権の道

2001/01/25 12:15

世界経済を翻弄するドル化の実態を解明した力作

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 ニクソン・ショック以来30年間,日本は米国の通貨戦略に翻弄(ほんろう)され続けてきた。日米円ドル委員会以来の金融自由化,プラザ合意による急激な円高,前川レポートによる経済政策の大転換,ブラック・マンデーと超低金利政策,その結果としてのバブル発生と崩壊,金融ビッグバンと金融危機,ゼロ金利政策,財政破綻(はたん)など,近年の日本経済は目に見えない巨大な力に絶えず揺さぶられてきた。
 日本は国民が汗水垂らして稼いだ国富が流出し,ルールが変わり,自信を喪失している。「なぜ,際限なく経常赤字を垂れ流すドルを買い支え続けるのか」「なぜ,ただ同然の金利で海外に大量の資本供給を続けるのか」「なぜ,日本の制度を投げ棄てて米国方式に変えねばならないのか」「なんのために金融自由化を進めるのか」「なぜ,日本の企業や銀行を外資にバーゲンセールするはめになったのか」「なぜ,円の価値をおとしめるような日本悲観論が語られるのか」「なぜ,日本の経済政策は失敗し続けるのか」「なぜ,FRBに節度ある政策を求められないのか」。日本国民の心の中にくすぶるこうした疑問の多くは本書が解明する「米国金融界が作り出す『ドル化』という専一的支配体制」によって氷解するはずである。
 貨幣起源説にさかのぼって貨幣こそ現代資本主義的社会のシンボルであると定義した上で,権力による操作性や社会構造を変える力など,貨幣の本質をまず明らかにする。次に今日の国際通貨システムの混乱の原因をヘゲモニー論ではなく,「基軸通貨国に対する抑制力に乏しい通貨システムは不安定化する」という命題に沿って論理を展開する。「金融のヒエラルキーと過剰金融」で通貨システムが不安定化する構図を示し,「基軸通貨国ビナイン・ネグレクト(みてみぬふりして放置)論の系譜」でドル本位制ができ上がった経緯を眺めた上で,「眼前の危機は,日本経済の危機だけではなく,世界の通貨政策全体が危機なのだ」と警鐘を鳴らしている。 19世紀のポンドの歴史的考察,20世紀におけるドル化の歴史の詳細な分析,ドル化の猛威,米国の金融覇権の構図,金融自由化と市場原理の意味,日本の金融システム変容の経緯,頻発する国際金融危機の原因,日本からの国富流出の構図,ドルに制約を加える必要性などが史実をもとに明快に語られている。通貨戦略なき円は滅びるのだろうか。エコノミストはもとより日本経済を憂える心ある人にとっての必読書である。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本ボランタリー経済学への招待

2000/12/28 12:16

第三の経済主体に光を当て,新しい経済理論構築に挑戦する知的プロジェクト

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 20世紀を通していろいろな社会実験が行われた。社会主義は失敗し,資本主義もうまく行かない。ニューエコノミックスや新保守主義も欠陥があった。欧州諸国は「第三の道」の実験を始め,繁栄を謳歌した米国は,矛盾の拡大で軌道修正が必至の情勢にある。第43代大統領に就任するブッシュ氏の「思いやりのある保守主義」も「第三の道」に通じるものがある。バブル崩壊(市場の失敗)と財政破綻(政府の失敗)に直面する日本も,新しい道を模索している。
 第一セクターの政府,第二セクターの企業と並ぶ第三セクターの役割への期待が世界的に高まっている。本書は東京海上研究所が98年に「ボランタリー・エコノミーについての経済学的研究」プロジェクトを発足させ,10回の研究会での議論をベースに執筆された論文集である。監修者の下河辺淳氏と編者の香西泰氏の「対談『ボランタリー経済学への招待』刊行にあたって」でその問題意識が明快に示されている。
 岩田論文は市場経済とボランタリー経済を広範な視野で対比し,倫理的基礎を提示している。福田論文はボランタリー活動の飛躍的高まりの背景を説明した上で,日米比較を通して日本におけるあり方を検討している。猪木論文は市場機構の欠陥を修繕する上でのボランタリーな中間組織の役割に注目し,privateでもpublicでもないcommonという概念を提示している。三田論文は「より良い社会を建設しようとする自発的な熱意にうながされた人々がお互いに「共感」しあい,「関与」しあうことによって,そこに社会を動かす力が生まれ,その力を原動力として個人・企業・行政の間に安定した社会的関係が形成され,確実性が高まり,経済発展がもたらされる」として,ボランタリーコモンズと相互関与財をキーワードに理論を展開している。
 地球環境問題に対するボランタリー経済の生成過程を考察する桂川論文,金融機関の企業組織におけるボランタリー経済の位置づけをする藤原論文,国際比較を通じて日本におけるボランタリー経済をとりまく状況を論じる市川論文,ボランタリー活動が活発になった時代的背景を,経済政策の歴史を通じて明らかにする土志田論文から構成されている。
 21世紀の経済を考える新しい視点と多くの示唆を得ることができる。
(C) ブッククレビュー社 2000

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本物のエコノミストの深い思索を通して,新世紀の経済を考える名著に出合う

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 経済学は時代と共に進化する。新世紀を読み解く新しい経済理論の構築が待たれている。本物のエコノミストは今何を考えているか,是非とも知りたいと思う昨今である。もとより経済学は人間の営みの経済的側面を理解するための学問である以上,今必要なことは人間の営みを凝視し,経済行為を再定義し,場としての市場を再点検することであろう。
 本書は日本評論社『経済セミナー』の連載「エコノミストの読書日記(1997年4月号〜2000年3月号)」を再構成したものである。渡辺利夫氏の「人間を読む」,香西泰氏の「経済を読む」,中村達也氏の「市場を読む」と3氏の「今,この三冊」の4部編成である。
 渡辺氏は自らの体験をもとに著者と評者の魂の対話を通して人間の営みについて論理を深めていく。「人間の心の闇に分け入る情熱のないものに,社会時評などやってはもらいたくない」という気迫に圧倒される。死と向き合い,病気の中で自己と社会を凝視することによって本当の姿が見えてくる。専門外の本を読むことで視点を広げ,新しい視座を形成することが,問題の本質に迫る上でいかに大切かを教えられる。
 香西氏の広い視野と深い思索にも驚かされる。産業の実態を観察する調査マンの眼,米国繁栄の中にひそむ危機を洞察するエコノミストの眼,収穫逓増に到る諸理論を評価する理論経済学者の眼,経済学をどう教えるかを模索する教師の眼を通して経済学の奥の深さを楽しませてくれる。
 中村氏は岐路に立つ資本主義の未来,規制緩和と市場経済が機能する条件,欲望の変質と資本制システムの関係,市場の暴力化とグローバル経済の問題など今日的課題に真正面から取組み,新世紀の経済を哲学する道を案内してくれる。
 自らの経済理論を現実社会の諸現象で検証し,他の理論との対話を通して進化させ続ける本物のエコノミストの真しな姿がそこにある。新世紀の経済を考えるための数々の名著との出合いが楽しめる。
(C) ブッククレビュー社 2000

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紙の本シナリオ・プランニングの技法

2000/11/01 12:15

不確実な世界を生き抜き,組織を成功に導くための奥義書

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 100年に一度の大変革期である。100年前も大合併,大再編成の嵐が吹き荒れた。19世紀に活躍した企業で20世紀に君臨し続けた企業は数少ない。環境激変と不確実性が高まる今日の世界を生き抜く英知を世界中の企業経営者が血眼になって探し求めている。本書はそのための数少ない奥義書のひとつである。
 シナリオ・プランニングは米空軍の軍事計画の方法論だったものを1960年代にハーマン・カーンがビジネスに応用し,さらに1970年代前半にピエール・ワックがロイヤル・ダッチ・シェルの経営戦略手法として確立したものである。これによってシェルは第一次,第二次石油ショック,その後の石油価格の暴落を予見し,適切に対処した物語は有名である。
 著者は1982年から86年までシェルでシナリオ・プランニング・チームを率いた後,グローバル・ビジネス・ネットワーク社を設立し,シナリオ・プランニングを実践している。本書はその経験もふまえ,シナリオの作り方からそれを活用して組織を成功に導く技法を具体的事例を用いて分かりやすく解説している。
 並の経営戦略論との違いは,人間の本質に対する深い洞察に裏付けられた英知で論理が組み立てられている点にある。シナリオを作るための「情報の探索と収集」方法は長年の経験を通じて培われた研ぎ澄まされた感度と高い識見がいかんなく生かされており示唆に富む。
 「シナリオを構成する積み木」となるドライビングフォースの探し方と5つの要因。「筋書きを作る」際の3つの基本型と4つの要素,相互作用と絞り込みの技法はまさに芸術といえよう。さらにそのシナリオが組織内で共有されるとき,学習する組織が築かれる。「最も成功する経営者とは,自分の仕事は決定を下すことではなく,相互の理解を形成することだと考えている人々だ」という言葉は重い。「2005年の世界」は我々が直面する挑戦と変化を示したものだ。巻末には戦略的対話の方法,シナリオ作成のステップ,シェル・グループにおけるシナリオ・プランニングの活用例などが付されている。
(C) ブッククレビュー社 2000

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