水城徹さんのレビュー一覧
投稿者:水城徹
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2001/08/16 16:27
狼男を撃つ銀の弾丸は無い──『人月の神話』復刊現実的な人間を含んだ,ソフトウェア開発論の出発点
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『人月の神話』について,本来なら説明はもう要らない筈である。
何故なら,この本は,元はと言えば四半世紀前に出たものだからだ。 “狼男を撃つ銀の弾丸は無い”という有名なセリフも,著者が論じてから,もう二十五年が経った。
しかし,現実には,『納期がヤバいという時期になってマネージャーが増員したけど,来たのは新人で,教育の手間がプロジェクトを更にデンジャーに』とか,『コンサルタントに騙された上司が導入した新開発ツールのせいで現場発狂』というのは、未だに良くある話である。
そういうデスマーチ感溢れる状況に覚えがあるなら,『人月の神話』を読んでおいたほうがいい。
また,流行りのエクストリームプログラミングに浮かれる向きも必読だ。『日経雑誌に載っていたから』と周囲に信仰じみた害毒を撒き散らす前に,本書を読むべきである。全ての問題を解決する魔法,『狼男を撃つ銀の弾丸』は無いのだから。
会社での仕事のような,組織的なソフトウェア開発には,人間関係やドキュメントなどの政治的,官僚的な側面が必ず忍び寄ってくる。実のところそれは,とても大きな部分だ。そして,避ければ避けるほど,貴方は最悪な環境,システムを掴まされることになるだろう。
プログラマーはグループ,チーム,メンバの役割や技量,コミュニケーションのような政治的な部分に,自覚して注意を払うべきなのだ。ドキュメントの質とバージョンに考慮を払うべきなのだ。特に,プロジェクトをまとめる立場になったら,しっかりと考えて欲しい。
本書は,その出発点として最適である。なぜなら,本書こそ,現実的な人間を含んだ,ソフトウェア開発論の出発点だったのだから。
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