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高桑弥須子さんのレビュー一覧

投稿者:高桑弥須子

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紙の本ちいさな魔女リトラ

2001/06/19 17:37

魔女は人が困っているのを見るのが大好きなのさ

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 トーマはおかあさんとふたりぐらしです。ある日、おかあさんが病気になってしまいました。「そうだ、魔女にくすりを作ってもらおう。」そう思い立ったトーマは、とんがりやまの森を抜け、魔女の家にやってきました。
 小さな魔女のリトラは言います。「わしは人が困ったり悲しんだりするのを見るのが大好きだからね、くすりは作ってやらないよ。まあ、おもしろいことをしてくれたら、作ってやってもいいがね。」
 そこでトーマはでんぐりがえしをしてみせます。ところが魔女は、「フン」とほうきにのってくるりくるりと見事な宙返りを披露。では、草の葉っぱのお面は?「くだらない!」。それならばと、トーマは魔女を町の高い塔のてっぺんへ連れていき「ほら、町のなかがよく見えておもしろいよ。」「ばかばかしい!わしはいつもほうきに乗りながらいつだってみているわい!」怒りだした魔女はとつぜん!! ……というわけで、くすりは無事にトーマの手元に。
 大きな判型。遠目の利く絵。遠くから見れば、昼なお暗い森は鬱蒼と暗く、明るい野原は罌粟の花の赤が鮮やか。近くに見れば、ヘビイチゴのつぶつぶ、罌粟の繊毛まで描き込まれている。昼の景色と対照的に、夜の森は隣粉をこぼしそうな白い蛾、草陰に顔を出すひきがえる、目を光らせるフクロウたちが不気味に佇む。ひらけた残照の丘に照り映える葉裏や長い影は郷愁を誘う。
 愛すべきひねくれ者の魔女リトラ。しわが一つ増えるたびに体が小さくなると言うけれど、本当は人間に親切にするたびに、小さくなるのかもしれないよ。

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