佐々木真理さんのレビュー一覧
投稿者:佐々木真理
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紙の本スランプ・サーフィン
2001/09/05 18:12
成熟あってこそ・・・
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このエッセイを手にとって最初に感じたことは、人は窮地に立たされた時にその人の全てが現れるということ。エッセイを通じてそのことを教えてもらったことに、まず感謝をしたい。
エッセイの巻頭から、光野さんは過去のスランプ体験を素直に語ってくれる。おしゃれなエッセイで一世風靡をしてきた著者が、弱さを惜しみなく披露してくれるのだ。これはスランプから脱却する過程で、または乗り切った後で大切な何かを見つけた人にしかできないセンスだと思う。
40歳を目前にしたある既婚者女性で「光野さんのエッセイを全て読んでいる」という熱烈なファンは「女性として成熟するということを感性豊かに、しかも的確に伝えてくれる」と評している。美しく年を重ねるための知恵と勇気を与えてくれる珠玉のような言葉がこの『スランプ・サーフェイン』にも散りばめられている。それはファンにとって、この上もなくうれしいことだ。
このエッセイには体験に基づくスランプからの脱却法が、知恵袋のように綴られている。「走る」「踊る」というキーワードで肉体の解放を勧めたり、色にこめられているパワーを活用して気分を盛り上げる方法や、ランク別落ち込んだときのファッション対策「落ち込んだ時のファッション四段活用」、そして「おしゃれのスランプが教えてくれたこと」では、光野調の鋭い感性がきらりと光る。
私が個人的にはっと息を呑んだのは「少女の尻尾を切り捨てて」。
成熟は、自分の中にある純化された少女性を切り捨てなければ到達できない。それには勇気がいるが、母性という、相手も自分も包み込むような気持ちをもって初めて大人の女になる。豊潤な愛を与える存在になれ、と述べている。これは光野桃という作家の視点だ。
母性を持続するためには、愛情と余裕がないとできないと思う。だからこそ、スランプから抜け出す自分なりの方法を持つことが大事なのだ。
今の私のスランプ脱却方法は、焦らず待とう、ということ。その姿勢が今の自分を包み込む、私なりの母性だと思うから。
紙の本誰にでもできる恋愛
2001/05/01 12:26
「自立した男女」という凛々しいキーワードで展開する恋愛論
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タイトルを見た瞬間「そんなはずはない」と思った貴方は、すでにこの本の扉を開いています。そう、貴方の反論通り、のっけから龍さまは次のように述べています。「結論から言うと、誰にでもできる恋愛などというものはありません。男も女も同じです。リスクを負える人間、つまり自立した男女にしか恋愛をする資格はないわけです」。
「自立した男女」という凛々しいキーワードで展開するこの恋愛論は、政治、経済、教育、社会的事件、歴史とさまざまな角度から縦横無尽に恋愛を成立させる重要なアイテムを語っています。これまで「恋愛論」といえば男女の性の違いを分析し、それを踏まえた上で異性に対する幻想からの脱却、つまり相手を知ることが恋愛を成就させる第一歩と説いています。でもこの本はこれまでの「恋愛論」を飛び越えて「よりよい他者に出会える方法」という非常にクオリティの高いテーマを投げかけているのです。
寂しいから、という理由で人は人の温もりが恋しくなり他者を求めます。それは孤独感から解放されたいからですが、「誰でもいい」というのは、充実して生きる努力を放棄している人。生きていく基準を見失っている人はいい恋愛などできない、とばっさりと切り捨てています。
そんな辛口エッセイはごめんだわ、という貴方。でも寝ころんでポテトチップスやチョコなどを口にしながら、トレンディドラマを見るだけが楽しみという人に現実の恋愛は無縁だということぐらいは、想像できますね。そう、自分がどんな女なのかを知り、どうしたら素敵な男性と出会えるのかと戦略をたて、相手から素敵だと思われるための努力を惜しまないことがよりよい恋愛をもたらす。もはや「棚からぼた餅」は恋愛に関してあり得ないのです。
でもこんなクオリティの高い女性が増えても、恋愛は男女間の人間関係。男を変えるくらいの超魅力的な女性などまだまだひとにぎり。男も変わらなくては……そのためには男性側からのアクティブな働きかけも必要ですよね、龍さま。
(佐々木真理/ライター/2001.4.30)
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