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レビューアーランキング
先月(2017年8月)

もりこさんのレビュー一覧

投稿者:もりこ

24 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本FLESH&BLOOD 12

2009/02/28 02:17

イラストが変わりました。

14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

歴史と恋と冒険のタイムスリップBL、めっちゃ待ってた12巻です。
前も今も好きなイラストレーターなので嫌とは思いませんでしたが、バンビのようにきゅるんっと愛らしかったカイトが、表紙を見た途端「立派な鹿になっとる!」と思ったら限定小冊子で鹿トークが。こちらの小冊子は表紙のナイジェルがごっつ悩ましげです。
そして本体の人物紹介ページ。華やかビューティフルな王子様だったジェフリーが、エロゴージャスな魔王様に見えました。ナイジェルは一気に色っぽくなって、ビセンテは堅さに磨きがかかり、キットは美しいけれど意外にアクがない。総じて衣装以外は前より現代的な感じに見えます。このジャンルにおけるイラストの影響力を再認識しました。
病気になっても恋ゆえに現代に帰還することを望まず、追いすがるビセンテに自分を差し出しても命がけでジェフリーを守ろうとするカイト。それほど愛せる相手に出会える幸運は、一生ないほうが多いからこそ憧れます。が、以前のイラストでイメージしていた時は、カイトたちを応援する気持ちが強くて、一緒にハラハラしながら君に幸あれとか思ってましたが、今は立派な鹿ならきっと大丈夫、君よ永遠なれという気がしています。
現代社会の様々な問題の原点をこの時代に見るという考え方も理解できるし、16世紀の人々がなぜあれほど宗教一色だったのかも、そう言われればとかなり納得できました。
その上で、古今東西変わることない人の思いを、その人物の立場や状況・性格に添って描き出すことで、読み手を引き込み共感させてくれる、すごい想像力だと思います。まさにペンという名の羽根があるという感じでした。すでに次巻を楽しみに、待ちの姿勢に入っています。

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紙の本大奥 第3巻

2008/01/30 22:30

鮮烈な覚悟を底に押し込めて、静かに綴る没日録

12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

若い男子のみが感染する致死率の高い疫病によって人口の男女比率が崩れ、女将軍に美男たちが仕えることになった大奥を舞台とするパラレル時代劇です。
男女逆転によって起こる出来事を描くのではなく、起こる出来事によって逆転せざるをえなかったという描き方が秀逸です。3巻では2巻から引き続き、国家存亡の危機に当たって女将軍が誕生した経緯と、彼女を取り巻く男や女、時代の様子が語られています。
発想、着眼点、切り口、流し方、信念と色気を併せ持つ登場人物たち。どれをとっても見事です。「この国はまだ滅びぬような気がするのです」。様々な事由に動かされながら繰り返す日々の暮らしが時代であり、その積み重ねが歴史だと教わりました。
台詞が多いので文字が混雑しているページもままありますが、かえって気をつけてよく読みこんでしまうリズムがあるのでまったく気になりません。しかも時にはその台詞を封じ、表情だけで心の機微や感情のひだを、大胆に細心にしかも手際よく写し取っていたりするのが見とれるほどに鮮やかです。背景も少なめですが、それが逆にどろどろな人間関係を描きながらもどこか洒脱で小粋な作風に一役買っているようです。章ごとに主人公が変わる群像劇のような構成も潔くて面白いです。
映画にもドラマにもアニメにも創り出せない空間、ここでしか味わえない空気を醸していて、マンガの極意を見た気がしました。1冊で3冊読んだぐらい、ずっしりと読みごたえのある作品です。

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紙の本舞姫 10

2008/01/15 22:42

20年後に読み返しても、きっと色あせない不朽の名作

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

初めに表紙にひかれた。シックな色使いで様々なバレエのポーズを描いた、日本画のように美しい表紙。その美を体現する作中の少女たちは、自身が置かれた境遇の中でそれぞれに心を乱されつつも、頂点を目指してしのぎを削る。熾烈な競争が時には命までかけさせるほどに。
第一部完結として物語に一区切りがつく10巻は、家族の悲劇を乗り越えて若い才能が芽吹き始める主人公・六花の姿で締めくくられている。けれどそこにいたる道程はとても痛ましい。いやだ。六花の慟哭がこもる短い言葉が強く焼きつく。
バレエに関する技術や身体のこと、音楽や舞台裏なども過不足なく分かりやすく描かれ知識のなさを気にさせない。しかしそんなことはこの作者にとってはしごく当然のようだ。
それよりもこの作品でもっとも肉感的に描かれているのは登場人物の心情である。絵柄は人物にも背景にも奥行きや厚みをあまり感じない。けれど人生の苦さや現実の重みが、等身大でそこにある。それが全体に白い画面に張り詰めた緊張感をもたせ、読み手の意識を引きずり込む。すると主人公の涙は徹底して悲惨に映り、舞台の成功の場面では満場の拍手さえ読者の心に響かせる。日出処の天子でも感じたように、初めに引きずり込まれた意識が、読み進むと今度は名状しがたい感情になって引き出されていく気がした。喜怒哀楽のどれにも当てはまらない情動を生み出す、すごい表現力だと思った。
無残に敗れる者、しなやかに花開く者。過酷で華麗な舞踏を通して十人十色の人生が舞う。完結後には伝説にでもなりそうな作品だ。

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紙の本Flesh & blood 10

2007/11/13 01:49

歴史の縦糸、冒険の横糸に、恋の綾糸をからめて織りなす技ありBL

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

早く続きを!もっとイラストを! 新刊が出るたびそう思わずにいられない
シリーズの10巻です。
エリザベス1世統治下の16世紀イングランドにタイムスリップした少年カイト。身の安全のために歴史の授業を生かし、予言を能くする占い師を名乗ってしまう。よくあるタイムスリップの設定を、必然として活用するところに作者の技術を感じました。
そのカイトの予言を欲して対立する、イングランド海賊の船長(ブロンド・ブルーアイ・奔放・自信家・当然美形)ジェフリーと、スペイン貴族の間諜(ブルネット・エメラルドアイ・慎重・ストイック・勿論男前)ビセンテ。
他にも、氷の瞳に火の心を持つ隻眼の美青年ナイジェルなど、好い男キャラがざっくざくです。
10巻では、恋人ジェフリーの許からビセンテに連れ去られたカイトに、スペイン宮廷で起こる異端審問や暗殺未遂事件と、そこから誠実にカイトを守り続けるビセンテの姿がメインになっています。
綿密な時代考証を土台に据え、がっしりした骨格でドラマラスに組み立てられた物語。その常に簡潔でよどみない文体が、現場の状況や登場人物の心情をダイレクトに、流れ込むように伝えてくれる。だから読んでるとメラメラくるし、本の中で時代に触れ、冒険や恋の高揚感を自分も一緒に味わえる。そういう読書の醍醐味を、がっつり頂けるストーリーです。
肉づきも色ツヤもよいキャラクターたちが、美麗なイラストを羽衣にゴールデンエイジを駆け抜ける。早く続きが読みたいです。9巻以来離れ離れでアンチェンドメロディな二人が、今度こそ再会できますように。

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紙の本7SEEDS 11

2007/11/13 00:35

田村由美流、心と体のサバイバル術

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

もし地球に巨大隕石が衝突したら…。人類の滅亡を避けるため、ほぼ勝手に選ばれた若者たちが、想像を絶する未来世界に希望の種子としてばら蒔かれる。シリーズ11巻は、滅亡の日々をシェルターで生き、シェルターで死んでいった人々のお話です。
ぎりぎりの境地に立ち、心から震えることを楽しいという。作中3巻の台詞ですが、この作者の持ち味はそれに尽きると思います。緩急自在のストーリー構成と、話にぴったりフィットする独特なタッチの濃い画面で、読み手を引っ張り揺さぶってくれます。生き生きとして個性的なキャラクターたちの心の奔流が、読者の気持ちを難なく共鳴できるところまで持っていってくれる。そういう稀有な作家だと思います。それはもうリアルタイムで読めることが漫画好きとして光栄なほどに。
BASARAもそうでしたが、長丁場に圧倒的な強さを誇り、読み終えて何年経ってもしっかり記憶に残る。これ以後の続刊も、そんな数少ない漫画のなかのひとつであり続けてくれると期待しています。

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こんなにドラマティックなホラーがあったなんて

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

すごいです。このジャンルでこの絵柄で、なぜこんなにもロマンにあふれていられるのか不思議です。あの赤白ストライプのお家からは想像もできない堂々たる怪奇ロマンでした。
不毛の未来に校舎ごとジャンプしてしまった子供たち。大人たちは次第に狂いはじめ、子供たちは変化し進化してゆく。その過程に次々と現れる、怪虫、おばけキノコ、未来人類、巨大オニヒトデなど、並外れた想像力の産物たち。二度と戻れないタイムスリップのなか、息つく間もないハイテンションで展開される怖ろしくも叙情的な人間ドラマでした。
この傑作が30年以上前に描かれたなんて本当に驚きですし、その時代に発表するにはある種の勇気が必要だったのではないかとも思います。
また、想像力だけでなく知識力も観察眼もまさに一流なので、奇想天外でありながら足はしっかり地を踏んでいると感じられます。だからこそこれだけの感動が生み出せたのではないかと思うと、今まで読もうとしなかったことが不覚でした。ブラボーです。

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遅すぎた危機感、タイムリミットは過ぎてしまったようです

5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

予知夢がおそろしく当たってしまうブラジル人ジュセリーノ氏の未来予想は…。
例えば、いつもより早く出かける用意ができた。ゆっくり出てもいいけど、でも今日は早めに出社したほうがいい気がする。行ってみたらタイムレコーダーが動かない。調整に時間がかかったけど、早めに着いたおかげで遅刻にならずにすんだ。そんな虫の知らせのような経験は割と誰でもあると思います。
この著者の場合はそれが極端に強烈にくるということでしょうか。毎晩おそろしい夢を見て、飛び起きメモをしたためて、当たらないことを祈りつつ8万9千通の手紙を自費で送り続ける。見上げた精神力です。それも占い師がはまりやすい万能感ゆえの傲慢さはかけらもなく、未来における負の可能性を誰よりも本人がおそれて協力を頼んでいるという感じです。テレビの特集番組よりもはるかに淡々とした構成で読みやすくもありました。
メディアにヤラセは数多いし、政府の情報隠蔽はそれを上回っているでしょう。というのも、海外在住の知り合いに現地のニュースを聞いたり、早朝のニュースの内容が昼には差し替えられたりしているのをしばしば目にしていると、残念ながら情報は操作されていると判断せざるを得ません。
その政府が、これだけ増えてきた環境問題に関する報道を許している。おそらく操作済みではあるでしょうが、それでも見ていると、氏の予言は年号や場所などに多少のニアミスはあれど物凄く当たりそうで怖いです。環境破壊がもう後戻りできないところまできてしまっているのは事実だからです。そして、氷河の溶ける音に追い立てられて早くから環境保護に取り組んできた北欧諸国の人々が真っ先に家をおわれることになるのも、二酸化炭素などほとんど出さない生活様式で暮らす人々が住むツバルが、この世で真っ先に沈むのも事実です。それが本当に100年も先なら、ツバルの人も今からニュージーランドに移住したりしないのではないかとも思います。
マイカーやめてバス・電車になって数年が経ちましたが二酸化炭素は増え続けているし、ヤシの実洗剤を使っていても水の汚染は止まりません。それを無駄とは思わないけれど、自分にできることは針の先にも遠く及ばず、相変わらず留意していることの数倍は垂れ流す加害者であり続けています。ある大学の研究所が20年後には日本の海岸の8割が水没していると予測したのを聞いたことがあります。このままではもしかしたら想像するよりもずっと早く日本人も国に住めなくなる時がくるかもしれません。著者や多くの学者たちが言うように地球規模の気象変動なら手も足も出ないし、全ての事物は永遠ではないので。
国に帰らないのではなく帰れなくなる。それを心から無念に思わない人はいないと思います。皆がそうなら仕方ないと割り切ったつもりでも、いざぎりぎりとなればじたばたして少しでも食い下がろうとせずにはおれないのが人間ではないでしょうか。ちょうど「いつ死んでもいい」とよく言うタイプの老人こそが熱心に病院へ通うようなもので。
そのじたばたして食い下がるべきときが今現在なのだと気づかせてくれた。この本に書かれた氏の言葉には予言の真偽以上に、計り知れない価値があると感じました。

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クリエイティブな失恋

19人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

子供の頃から周りの女子たちがなぜ恋愛マンガばかり好きなのか分からなかった。ドラマも映画も、多種多様な人間の感情のひとつに過ぎない恋愛感情を、なぜこれほど取り上げることが多いのか不思議だった。それがこの作品を読んで少し見えた気がする。恋愛は人生の花だというが、その理由がここに描かれている。
主人公・爽太は恋する「妖精さん」ことサエコに振られて一念発起、フランスへチョコレート修行に出、帰国後「チョコレート王子」となるが、それでもサエコとはなかなか結ばれない。すると今度は人妻になった彼女のために、爽太は悪い男になる修行を始める。
確かに彼らが現実に居たら、爽太は面倒くさい男で、サエコは傍迷惑な女だ。けれど男女ともに、してあげることよりしてもらうことばかり望んで、都合の良い相手ばかりを求めがちな昨今、彼らは本物の恋をしている。下心はあっても打算はなく、夢も見るけど地に足もついている。そのすごく絶妙なバランスが、ストーリーに臨場感と現実味を持たせていて、引き込まれた。
恋愛ものの結末は、別れるか結ばれるかどちらかしかないことが多い。けれどその過程に実りがあれば、花は咲いたといえるだろう。だから花を愛でるように、女子たちは恋愛マンガが好きなんだと思う。私も女の端くれとして、七色の感情に染まる世にも美しい幻の花を、しばらく眺める気持ちで読んだ。

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紙の本デッドショット

2007/11/26 02:47

悲しみがこごって闇になり、愛が群がりほむらになる

16人中、16人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

冤罪で投獄された麻薬捜査官ユウトは、獄中で怜悧な美貌をもつCIAエージェントのディックと出会う。互いに惹かれながらも、かつて爆殺された恋人の報復のために脱獄したディックを追って、ユウトはFBIと契約する。
二人が狙う同じ獲物は、軍事キャンプを故郷とし刑務所暮らしを懐かしむ哀れなテロリスト、コルブス。CIAとFBI、復讐する者と阻止する者。生木を裂くような別れを経た二人の人生が再び交わるのは、なにもかもが終わった後…。
ハッピーエンドですが、とても切ないお話です。完結編となる3巻ではコルブスの悲惨な過去が語られ、絡まったそれぞれの愛憎が引き絞られて最後の対決に向かっていきます。
どこにいても、お前の幸せを祈ってる。一見ありがちな台詞ですが、心からの言葉として聞いた時、これほど優しく寂しい言葉もないように思います。きりも限りもなく愛しく、それだけに優しさにも寂しさにも際限がない。それを切なさと呼ぶのだと改めて知った気がしました。
BLでしかできない話の運びでありながら、感情移入がスムーズにできるのがこの作者のすごいところだと思います。しかも特定の登場人物への感情移入ではなく、物語の流れそのものに引き込む力がとても強いのです。だから単純な台詞ほど心に沁みるし、かなり雰囲気のあるイラストとの相乗効果もあって、滲み出すような情感に泣かされました。
こんな風にただひたすらに人として豊かに人を愛せたら、人生がどれほど輝くことかと羨ましくもなる、印象的な作品でした。

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酸いも甘いもかみ分けた、厳しく温かい作家の眼

9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

40歳を過ぎたバレリーナ礼奈は、IT企業の社長和也をパトロンに発表会に取り組む。しかし和也が求婚したのは礼奈ではなく…。愛と裏切りに自身を見失いかけた時、舞台の妄執がヴィリとなって心の隙間に入り込む。
バレエを扱った作品であるが、静かで緊張感に満ちた作品自体は、能舞台に似ているように感じた。
緻密な心理描写がヒントを散りばめ伏線を張り、線の細い画面に張り詰めた印象を与える。そして、ここぞという瞬間には気合の入った勝負を、真実味のある恐怖を添えて投げかけてくるという見事な構成。
それらが語るのは、人のカルマというものではないか。仏教の輪廻思想からくる前世が云々はさておき、人である以上は逃れようのない愚かしさ、根源的に存在するずるさや脆さ。そういう誰にも宿る業である。それゆえ自己愛にとらわれがちな人々。そんな自己と他者を共に戒め、許すことがいかに難しいか。そこにつまづいた時、奈落は人の前に口を開けるのだと描きながら、後に希望を残している。自分自身に向かい合い、許すことを悟った者は、奇跡さえなしえる可能性があるのだと。
そこに作者自身の人間としての懐の深さ、超えてきたものがあることを感じて、心に残る作品だった。

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チェーザレ様と呼ばせてください!

8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

高校の頃、塩野七生さんの「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」を読んで、うっかりチェーザレに惚れました。なのに授業は眠たくなるようなひと撫でで終わってしまってとても残念でした。あの頃にこんなアートで華麗な教科書があったらよかったのになあと思いながら読んでいます。
シンプルな表紙に色鮮やかな帯のきりっとした美しさが、いつも最初の楽しみです。
5巻ではそろそろ少年の凛々しさに青年の猛々しさが加わってきたチェーザレ様。暗殺の危機を積極的に回避しつつ、下町見聞や大学での模擬戦などを通じて、着々と支配者としての基礎を固めてゆかれます。
その背景にある性格や状況が、かわいいアンジェロ、シブめのミゲルなど、名わき役たちの活躍で克明に見えてくるのが面白いです。絵も端正で迫力があってすごく丁寧なので見ていて気持ちいいです。構成がまた良くて、最後から数えて4・5ページ目のチェーザレ様の台詞と、巻頭カラーの見開きタイトルページの絵が自分の中できれいに重なった瞬間、クラッとくるほどかっこよかったです。
世界史の年表に載っている名前、ではなく、確固たる実在人物としての存在感をもつ登場人物たち。それが過去の現実である、中世の宗教観や倫理観のなかでより肉感的に浮かび上がって、馬上の勇姿にもっと笑顔が見たいと思うレベルでチェーザレ様に惚れ直しました。
たった31年の人生で100年分は行動したような人物を、ここまで精密に描いている作者の根気と挑戦に敬意を表したい作品です。

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紙の本ミスミソウ 3

2009/07/02 20:26

久々に本気で怖かったホラーマンガ

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

廃校が決まった山村の中学校。最後の卒業生たちにとって部外者である転校生・春花へのいじめが凄惨な事件に発展し、完結となるこの3巻で、悲しくも怖ろしい復讐劇の幕が下りる。
表紙からしてすごく上手い絵とは思わなかったが、火も雪も花も、景色のすべてが心象風景につながる構図はすごいし、心情をダイレクトに表す表情は寒気を感じさせる。
全体的にはドラマチックでさえあるホラーフィクションだが、事件のひとつずつ、それぞれの心理をとってみれば、現実にあるものしか描かれていない。PTSD、自律神経失調症、強迫性障害、共依存など、誰もが落ちる可能性のある穴の中でもがく登場人物たち。そこに子供ならではの残虐性が加わって、一気に恐怖が加速する。
子供には大人が望む子供らしさだけではなく、負のらしさも必ずある。しかし大人はしばしばそれを忘れ、素直と従順を履き違え、(時には現実問題からやむを得ず)子供の意思を置き去りにして、大人にとって都合のよいらしさの枠に子供を当てはめようとする。「私は家族を焼き殺された」。帯に書かれた衝撃的な事件は、そんなところから始まっているのではないか。現実の厳しさや責任の重さに思いやりを失う大人たち。子供はそれを子供特有の思考回路で転写しているだけに見える。
両親を亡くした春花に「おじいちゃんがついてる」と肩を抱く祖父。彼もまた息子を亡くして泣くに泣けない父親であり、先の見えた老人である自分しか頼る者のない孫に、どんな気持ちでそう言うのか想像すると、ラストシーンがあまりに切ない。
怒りと憎しみに主人公は燃え尽き、読者に自己問答の余地を残す。忘れられない作品のひとつだ。

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紙の本インド夫婦茶碗 11

2008/06/10 22:23

愛と笑いの国際結婚エッセイコミック

5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

祝、流水さん家のアルナちゃん小学校入学! その頃兄のアシタくんには学級崩壊の危機が…! もはや何だか長年のご近所さんのように思えてきた11巻。それだけ作品に臨場感があるということでしょうか。
作者が1年の4分の1をインドで過ごしていたという「インドな日々」と本作を1巻から読み返してみると、結婚、出産、育児と、家族が出来上がっていく様子が刻々と描かれていて、作者本人とご家族にとってこそ最も良い記念ではないかと思います。
あくまでコミックなので誇張や簡略化、多少の脚色はあるにしても、これだけ欠点も弱点もあけすけに出せるのは作者のおおらかさのなせる技、飾らず取り繕わずいつも自然体なのが快いです。絵柄も分かりやすく読みやすく、たまに作者がホラーの畑出身であることを思い出しつつ笑わされます。喧嘩しても文句を言っていてもほほえましいのは根底に揺るぎない愛情があればこそ、夏休みの里帰りがインドであること以外に大きな違いはないように見えます。
しんどい時、楽しい時、嬉しいこと、腹立つこと。親って家業は大変だけど、子供って商売も楽じゃない。そんな大人の気持ちも子供の気持ちもとてもよく観察されていて、あの頃あの時、疑問だったこと理解できなかったことが、すとんと分かってしまうような表現も随所にあるのがすごいです。
ご一家の今後益々のご発展を思わず祈ってしまう1冊でした。

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紙の本黄金の石榴

2009/02/28 01:56

金の斧・銀の斧系不滅のテーマ

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

相変わらず昔の中国がとてもよく似合う絵柄で、人間嫌いの仙人と人間好きの仙人が、人を助けたり懲らしめたりする物語です。
この作者のキーワードは「貧乏」であることがしばしばですが、今回1話目の主人公がのっけから行き倒れ寸前でそりゃもう貧乏です。しかも正直な働き者でお人好し。(つまり貧乏性?)黄金の石榴か奴隷働きか、我が身を賭けた仙人との勝負ですが、勝敗の形は人それぞれ。これもよくあるパターンです。
でもこの上なく素直で人への愛情にあふれた作者の視点が快くて好きです。作者自身とても幸せなんだろうと思います。明るく、不屈の精神力を持ちながら心はしなやかで穏やかな性格の人々。けれど優しいだけでなく、努力は報われなかったときに初めて苦労と呼ぶものだと認識する厳しさも持ち合わせている。善人も悪人も動物も植物までも同じ形の心として描かれている。それが不思議に自然に見えて、自分もその中に迎えてもらえるような温かさを感じる、昨今珍しい清らかな印象の作品でした。

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紙の本死化粧師 5

2008/10/14 22:41

恋するエンバーマー心十郎に強敵出現

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ゴスロリ系のダークな絵柄と繊細な感性で描かれるシリーズの5巻です。
今回の依頼は同じ遺体を2度エンバーミングすること。1度目は社会への敬意を込めて。2度目は家族への愛情を込めて。故人の思いを代弁すること、遺族の心を慰めること。双方に深く関わる死化粧師の仕事は、フィクションでなくても尊く切なく、時にやりきれないものではないかと思いました。
死に化粧といっても病院でしてくれるエンゼルケアとは全く違うエンバーミングの手順や、日本の法規の遅れなど色々知らないことを教えてくれて勉強にもなります。
主人公・心十郎はそんな堅い仕事とは思えない外見で、女にだらしがないくせに本命のアズキには告白もできないまま、日々遺体と向き合い様々な感情を呑み込んでいる。それゆえの鋭敏な感覚と危うい脆さが愛しく見えて、アズキのみならず読者も惹きつけられるのかもと思います。
決して他人事ではありえない現実的な死を媒体にして、形にも言葉にもならない思いを描き出す手法が、良くも悪くも転がりやすい人の気持ちの本質をよくとらえている気がしました。会えない息子のサンタクロースになりたかったお父さん。嘘をつかない生き様を教えてくれた近所のお姉さん。嫉妬で道を誤るほどに妻を愛した夫。「ひとりの死を万人の生に繋げること」という言葉が刻まれるように残りました。
台詞や表情のひとつひとつがすごく大事にされていて、静かに響いてくるような、今後もずっと読んでいきたい作品です。癒しをたれ流す強敵ワオワオにとられないうちに、心十郎とアズキちゃんがうまくいってくれますように。

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