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  3. 求道半さんのレビュー一覧

求道半さんのレビュー一覧

投稿者:求道半

281 件中 46 件~ 60 件を表示

紙の本

天体の衝突

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

スポーツを題材にした漫画にありがちな誇張表現や、競技中に再現するのが不可能な荒唐無稽な技の描写が本編で一切描かれる事のない真っ当な体操漫画である本作は、体操に惚れ込んだ作者と金メダリストの監修者によって公刊された、体操の魅力を周知するのに貢献する、極めて良質な啓蒙書である。
 主人公の天原満月は、体操の初心者ではないものの、他の同年輩の選手とは、競技に取り組む心構えが、根本的に異なっており、現在は自身が通う高校の体操部に所属しているとは言え、人生において試合に出場したのは一度きりである。
 第一巻では、その一度目の試合と入部直後の活動内容が描かれる。風変わりな主人公が地道に基礎練習に励む姿を延々と見せられるのではなかろうか、と懸念する読者に対しては、第一巻だけでも最後まで読めば、体操と言う競技に対する理解度が急激に深まり、高校一年生の男子の成長を見守りたい、と願うであろう、と予言したい。
 また、満月が通うのは共学高校で、女子の体操部もあるので、汗臭く、むさ苦しい、殺風景な練習場が主要な舞台ではない、と伝えたい。体操の話題に対しては、取っ付き難い、と感じる読者でも、満月や他の部員の恋愛問題の発生の兆候は見逃す筈がなく、身を乗り出して、その経過を観察したくなるであろう。
 タイトルとの関連性が高い種目である床の競技が重点的に描かれる第一巻だけを読んでも、体操の奥深さは曲がりなりにも分かるが、完結するまで読み続けて、他の五種目や女子の種目についても詳細を把握したくなる作品である。

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知られざる摂理

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

東京で調理師を目指す青年は、幼馴染の少女の葬儀に参列する為に、故郷の和歌山に帰省し、不可解なその死因を知り、何者かによって命を狙われる。
 但し、本作は、単純なミステリーでもサスペンスでもない。
 物語の大まかな枠組みは、第一巻と第二巻を読めば分かるのだが、テレビゲーム的な作品である、と、この場ではお茶を濁したい。
 完結目前でもないのにどんでん返しの連続である、と言い添えても構わない。
 本作は離島を舞台にした因習的、神話的、暴力的な物語である。
 猟奇的な描写が苦手な読者は、心して読んでほしい。
 残酷な描写を読む苦痛を緩和するエロチックな描写を不快だと感じる読者は、第四巻の生前のヒロインの入浴シーンは、特に、気に入らない場面となるかもしれない。
 包丁、ハンマー、ライフル銃等で、肉体を毀損される人物が、老若男女を問わず、多数、本作に登場する。
 犯人は一人ではなく、敵の正体についても読者は皆目、見当が付かず、疑問が一つ解けても、新たな謎が生じる仕掛けとなっている。 
 怖くても、薄目を開き、続きを読みたくなる作品であり、既刊を読み返したくなる作品だ。
 本作は未解決の一家失踪事件や殺人事件と、蔓延する風土病とが、何らかの関係がある、医療的なサスペンスでもある。
 第四巻の結末では、ヒロインは友人の親が院長を務める病院の、山中にある旧病棟の探索を始める。
 ヒロインの死因は溺死だ。
 目撃者も大勢いる。
 死因は疑いようがないものの筈だが、主人公は、殺人犯がいる、と思う。
 そして命を狙われる。
 超自然的な事態である。

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口篭る息子

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若死にした夫に、最近、とみに似てきた高校生の息子から、母親としてではなく、女として慕われている事に、ヒロインの鈴木綾が勘付いている、とは思えないが、息子は本音が伝わらないように母親との会話中に不自然な受け答えをする。
 第三巻には、部活動を行わない主人公の実の、夏休みの直前から八月上旬に開催された近所の神社の夏祭りの数日後の出来事までが収録されており、実の同級生の女の子や、記憶の中の大蜘蛛ちゃん、そして三十八歳の未亡人の水着や浴衣姿、全裸などを見た実の、誰にも言えない喜びと苦悩が描かれている。
 実が異常なのではない。
 細身の高校生、旧姓大蜘蛛綾に恋する男子は何人かいたものの、肉付きの良い寡婦の鈴木綾の性的な魅力を感知する男の数と比べれば、後者の方が圧倒的に多い事を、読者は身をもって知る事となる。
 父親の記憶のフラッシュ・バックに関しては、それが一過性のものではなく、その仕様は更新され得るものであり、その仕組みは本巻においても解明されないが、たとえ今後もその原因や消去法が判明しなかったとしても、故人が縁者の記憶の中に生き続けている、と解釈すれば、早急に対処すべき厄介な現象だとは言い切れず、読者にとってはむしろ歓迎すべき椿事である。
 漫画家である鈴木綾の母校は、息子が通う高校であり、綾が在籍した漫画研究部は、実のクラスメイトの一一と二年生の薬袋部長の二人だけで活動する、部員が女子のみの団体である。実は二人から、部員にならないか、と勧誘されており、二人は母親のファンである。
 第二巻に収録された話では、大蜘蛛綾のサイン会に二人は参加した。
 大蜘蛛綾の担当編集者も、OBであり、大蜘蛛ちゃんの同級生である。
 本作は、高校生の大蜘蛛綾と、漫画家の鈴木綾と、鈴木父子と、それぞれの同級生や知り合いとが、実の頭に浮かぶ謎のフラッシュ・バックによって関係を深める、過去と現在の共時的な恋の物語である。

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禁欲の反動

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幼馴染の天生目立夏に告白出来ずに、悶々とした日々を過ごす高槻草太は、ある日、不随意に発情した立夏の淫らな態度に触れて、性的な願いを叶える事となる。
 立夏を豹変させる原因となった謎の古書は、草太が手に入れた物であり、オカルトが好きな立夏を喜ばせる古色蒼然とした洋書である。
 恋人同士ではない高校生の男女が、性的な行為を、学校や自宅で、或いは白昼の公園で、声を押し殺して、せざるを得ない状況の内実は、機械的な手順の反復による即物的な訓練ではなく、閨房での快楽を伴う実践的な戯れに他ならない。
 二人の異変に気付いた風紀委員の雨水真琴が煩悶するのも当然であろう。
 当該の古書の来歴は不明だが、元の持ち主の正体と深く関わる事だけは本巻で明かされる。
 作中で立夏の乳首にモザイクが施される事はないものの、草太の一物は描かれず、本作が一般向けのラブコメディの範疇に収まるのは確かだが、予想以上に読者の劣情を刺激するのは間違いない。
 本作は、珍本が幼馴染から恋人へと移行する一助となる異色作である。

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牧歌的な窮状

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仮に、中学生の男女の磯遊びが、余暇ではなくて生活の糧を得るための純然たる労働だったとしても、本作を読まずに、そんなのは退屈で面白くない、と断言するのは止めた方が良い。
 主人公の浦島六郎の家は、ヒロインの村上セトの家族のような切羽詰った経済的な苦境に陥ってはおらず、六郎には二人で食べ物を探すのを楽しむ余裕があるが、空腹に耐えかねているセトは海の恵みを余す所なく享受したいので、血気盛んで我武者羅である。だが、手当たり次第に獲物を捕らえようとしても、都会育ちのお嬢様には、知識と経験が足りず、漁村ならではの社会的なルールにも阻まれて、苦労が水の泡となるのが常であり、そこに滑稽さが生じるのだ。
 この説明だけで、瀬戸内の海辺の中学校を舞台にした地元の少年と余所者の少女との準サバイバル生活が、楽しそうだと感じられる読者には、これ以上、言い添える必要はないかもしれないが、年頃の男の子の前に突然、現れた美少女に対して、男の子が恋したとしても、不思議ではなく、傍から見ても実際に六郎はセトの事を意識しているので、恋の話が好きな読者にも、本作は受け入れられると思われる。
 また、食材の調理法や保存方法も作中で解説されており、一種のグルメ漫画の側面も持ち合わせているのが、本作「いそあそび」である。
 読切版がプロローグとして収録され、各話の幕間にはおまけのカットがある、巻末には後日譚も載せられている単行本の第一巻は、六郎とセトの出会いから、海辺の生活に慣れ親しんでいくセトの暮らしが時系列に配置されており、読者は二人と一緒に海辺で生きる術を少しずつ学べるのだ。

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忍間日記

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本作は、病弱で外出がままならなかった少女が、元気になり、ゲーム好きの幼馴染の少年を家の外へと連れ出して、一緒に各地を探検する、二人のデートの記録のような作品である。
 部屋に閉じ籠っていた少女にとっては、病床で夢想した場所を訪ねる、ピクニックやハイキングのような近場の散策も、未知の世界の探訪であり、紛れもない探検である。
 抑圧されたさぐりちゃんの好奇心と行動力が、高校への入学を待たずに、昆虫採集へと向けられ、ツムと再会する契機となって、二人は久しぶりに行動を共にする。二人が同じ高校に進学する春から話は始まり、学校で知り合った人々も、探検の仲間として、二人に同行する。
 第一巻では、首都圏を中心に、西は三重県まで、二人は足を運び、旺盛な活力と豊富な知識で、さぐりちゃんはツムを圧倒する。目まぐるしく変化するさぐりちゃんの表情からは、本等から得た知識を、自分の目で見て裏付けられる喜びが読者に伝わるであろう。
 冒頭とおまけで、幼少時のさぐりちゃんの姿が見られるが、高校生になったさぐりちゃんは健康的な体形となり、ツムを惑わす。ゲームと探検を天秤にかけるツムの助平な態度は、素直で、好感が持て、知的なさぐりちゃんにも直情的な面が多々あり、二人の遣り取りを見ているだけで、読者は自然と笑わせられる。
 探検中のさぐりちゃんの観察対象物に寄せる興味や着眼点、造詣の深さには学ぶべき事柄が多く、本作は、単なるガイドブックではない。
 ツムは入学祝にカメラを貰い、探検に携行する。
 ツムが写真を撮る動機に着目すれば、二人の探検に対する読者の見方は、必ず変化する。
 単行本のおまけは番外編だけではなく、作中で探検した場所の写真やカットも多数、載せられている。

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天球の大祓

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祖母から謎の訓練を受けていた女子高校生が、或る日、訳の分からない間にロボットのパイロットにされ、裸で操縦して、未知の敵と闘う本作は、見かけは近未来のSFであるのだが、その本質は太古から続く信仰と人類の尊厳の物語である。
 弱虫で泣きべその女の子に主人公としての魅力が備わっているのか、或いは、全二巻での完結は不人気の証ではないか、との疑問に対しては、純真で潔癖なうら若き処女の裸体が、肉体的にも精神的にも多大な負荷のかかる激しい戦闘に連動して、色香を漂わせる作品は、たとえ打ち切りであったとしても、ひっそりと流通する事に意義があるのだ、と答えたい。
 グラマラスな女体にしか惹かれない読者には、主人公佐京姫香のスレンダーな、慎ましやかな無防備な裸身は、成育不全で病的な、性的にも美的にも、価値の無いものでしかない。しかし、几帳面で律儀な内面を反映し、かつ意外にも芯の強い少女の造形として、これ程までに理に適った形質は、他には考えられないであろう。
 性的な面だけではなく、ロボットによる激しい攻防戦や、その合間合間の、緊張感を和らげる戦闘員のコミカルな一面にも注目すべきであり、むしろ、近未来の混沌とした世界情勢を更に悪化させる複数の集団と、それに抗う一派との水面下での出し抜き合いが、興味深い背景として、最終的に浮き上がるのが本作の特徴である。
 主人公の姫香は斎女である。
 霊的な、或いは精神的な力の発露が、コミュニティーを破滅の危機から救うのだが、その構成員は八百万である。
 神聖な儀式を執り行う、選ばれた少女の舞に見惚れるのは、敵の将兵だけではない。

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紙の本ぬむもさんとんぽぬくん

2017/06/09 17:39

真空からの贈り物

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二足歩行する二頭身の異星人ぬむもさんとんぽぬくんの外形的な違いは、頭にアンテナのような突起があるか、単眼鏡のような物を掛けているか、であるが、んぽぬくんについては『いないときに来る列車』に収録された書下ろしの短編でその素性が少しだけ明かされており、本巻にもタイトルに偽り無く登場するものの、その活躍は二年前の断片的な出来事が過半を占め、ぬむもさんの地球での滞在記が本巻の大筋である。
 『いないときに来る列車』の大部分を占める「斥力構体シリーズ」の続編である『ぬむもさんとんぽぬくん』は完結していない架空の静岡の郷土史の一部であり、本巻では昭和から平成へと作中時間が経過しており、それに伴う少女の裸体表現に対する世間の風潮を反映して、スクール水着を着用する機会は十分に確保されてはいるものの、腰蓑姿は影を潜めている。
 年頃の女の子に対する性的な関心は、地球人だけの特質ではなく、本巻に登場する性別不明の宇宙人とも共通する自然律であり、彼らの地球滞在の目的を遂行する上で欠かせない財政的な基盤に資する宇宙規模での一大事業を興す動機ともなっているのだ。
 残念ながら本巻では、日本人の少年や成人男性は直接的には登場せず、複数の少女が様々な異性人と交流する様子が和気藹々と描写され、彼らが男の子の代役として、少女の羞恥心を刺激しつつ、微笑ましい日々を共に過ごす。彼らの存在は噂として周知されており、初対面であったとしても、旧友のような自然な応対から交際が始まる。
 通常の異星人と「彼等」と呼ばれる存在の区別が作中でなされているのが「斥力構体シリーズ」の真骨頂で、時間的、空間的な広がりが、凡百の異星人の来訪譚とは趣を異にする、独特の謎と訴求力を産み出し、ある状況下での、当事者ですら想定し得ない展開は、物語の根幹に関わる秘密の一端を覗かせ、読者を唸らせる。
 半官半民の組織なのかさえ明らかではない杉登機関と呼ばれる異星人との窓口機関や政府の関係者が、男子の件と同様に直接、読者に姿を見せることは無く話が進み、ぬむもさんの居候先の娘である吉川奈美に地球人代表の権限が託される、ある異常事態が本巻の山場である。    
 空を飛べる機械で自宅の周辺を散策したり、謎の生き物を採集したり、海辺まで遠出したりする、夏の日の出来事や、学校での部活動は、読者の郷愁を呼び起こし感傷に耽らせる役目を果たすだけの陳腐な情景ではなく、気の抜けたような絵柄からは想像し得ないサスペンスの舞台に変貌する性質のものである。
 繰り返し用いられるモチーフをマンネリの所産だと決め付けるのは早合点であり、他の作品との比較、類推から「斥力構体シリーズ」を、より深く理解する手立てを読者が自らの意思で放棄する事を意味し、賢明な態度とは言えない。同一の行為や状況が作中の時間経過で、その内実を変化させているのに気付けるか否かで、作品に対する愛着の度合いが変わるのだ。
 締め込み姿の少女は健在である。

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おまけの重み

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初出時に無料で読み、単行本は買わない、と判断した読者も、本巻を読めば、その妥当性を疑わざるを得ず、初めて本作の事を知った読者と共に、第十二巻から遡って購入する決意を固めるのも、遅きに失する事ではない。
 年末年始の番外編のような一話と四コマ、鬱屈した感情に振り回される少女の悲喜劇全四話と、一話で完結するその他の五エピソード、合計十一話が収録された本巻は、冒頭のアプリゲームの話を例にして考えると、第七巻を読んでいれば、登場するカップルの成立過程を踏まえた上での感想が生まれ、前巻で別の登場人物が同じゲームをしていた事を知っていれば、同一のモチーフで全く異なる内容が描かれている事に、新鮮さと驚きを感じ、重苦しい長編の端休めの役割を果たす毎回のおまけが、そのゲームとは表面的には関わりが無いものの、全体の読後感を左右する重要な役割を担っている事に気付かされる。事程左様に、単行本を全巻揃えていれば、再読の楽しみと喜びは一入なのである。
 本巻で初登場した人物が番外編や書下ろしの四コマで再登場する、週刊少年ジャンプでの第一話のカップルが初詣に出掛ける、比較的登場人物の多い第十二巻は、言うまでもなく、それ以前の十四巻分の時間の経過と蓄積の上に成り立っており、オムニバスと言う形式の特性を十分に活かした構成で、それはこの一巻だけに限った話ではなく、連載が続く限り、各巻の内容は随時、深みと厚みを増すのだ。
 もし、単行本化の際の目玉が、乳首の加筆だけの、男子の性欲の捌け口である、浅墓な作品だ、と未だに本作を侮る者がいるのであれば、認識不足も甚だしい。それは武勇伝で名高い朱雀少年の活躍をロハでしか目にした事のない者の妄言であり、相棒の筧少年と共に一肌脱いだ本巻での冒険を聞き及ばない、不見識な輩の負け惜しみである。
 作中で女子のプライバシーを侵害して凍結されたアプリ、パパラッチの、おまけでしか知りえない個人情報や、それを暴く謎のイルカの生態等、乳首が描かれているか、否か、は、さして重要ではない。
 携帯電話の性能と機能から逸脱すればするほど、魔法のアプリは本領を発揮したと言えるが、本巻ではむしろ、現実世界の延長線上の出来事だと思える、起こりえる事象、起きたら楽しい事案が豊富で、謎の組織パームズは影を潜め、新年祝賀に相応しい陽気な笑いが最終的に生じるのだ。

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おぼこと火男の剣舞

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巫女による化物退治で相手が傷付いても読者は痛みや不快感を覚えないのと同様に、本作の少女による刃傷沙汰には不届き者を成敗する痛快さを感じこそすれ、生身の人間が切り刻まれる瞬間を目撃する恐怖や残虐行為に対する嫌悪感は抱かないであろう。
 逆に無法者の狼藉に対しては、勧善懲悪を求める心が沸き起こり、主人公青猫の敵討ちに同情と賛意を禁じえないのだ。
 毒をもって毒を制する、無垢な少女の捨て身の弔いは、終戦前後の退廃した世相を背景にした、復興とは無縁の、暗澹たる日々の記録であり、いつの頃からか彼女に寄り添う幼い相棒が、戦災孤児という境遇にめげずに、抜け目なく立ち振る舞う姿が、場の雰囲気を和らげ、残忍だ、と断罪するには忍びない潜行活動に、張りと潤いを与える役割を果たす。
 斬殺される輩の血煙で画面が曇り、脳漿や臓物の触感と臭気を想像して、吐き気を催すのを抑えるには、嫁入り前の生娘の柔肌を凝視するのが効果的で、男の視線など気にも留めない年増の乳房や、女主人と使用人の秘密の情事を覗き見るのも気晴らしになる。
 青猫はキリスト者である。
 南無阿弥陀仏とは唱えないが、別の言葉を呟く。
 世間とは真逆の下り坂を駆け下りる少女は、地獄の底を見据えている。

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冒険者の心得

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幼女新米冒険者の修行時代を、二十九歳の独身男性の目を通して描く、相棒が少年ではなく少女である利点が遺憾なく発揮された作品だ。
 捨て子や奴隷が横行する社会で前向きに生きる少女リルイに過去の自分を重ね合わせたハジメは、時に手を貸し、葛藤し、突き放すが、命取りになりかねないと分かっていながらも、年端の行かない女の子を仲間として迎え入れ、面倒を見る。
 だが、単なる人情話や苦労話で話が終わるのではなく、本人ですら気付いていない幼女の正体が、性別の異なる師弟関係を今後、ただならぬ仲へと発展させる可能性を宿し、興味深い。
 毎朝、ギルドに顔を出し、仕事を請け負う冒険者としての心構えを、手取り足取り、一から教えられるリルイの修行は、村が管理するダンジョンに出現するスライムに打ち勝つ、初歩的なものだが、リルイは、中々、倒せない。
 おまけでは、そのスライムの視点で、ダンジョンの仕組みの一端が明かされ、立場が逆転した二人のパロディも別にあり、目次の仕掛けも面白い。

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格安物件の日常

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地縛霊を除霊すれば下宿代が只になる男子高校生、冬空コガラシの高校入学式前後の騒動が収められた第一巻は、元温泉旅館の入居者への挨拶と交流、クラスメートから依頼された怪奇現象の解明が主な内容で、腕力のみで霊や妖怪に立ち向かう粗野でざっくばらんなコガラシの態度が、周囲にあらぬ誤解を生じさせ、反感を買う原因となり、時には諍いの種となる。
 除霊対象が十六歳の少女だと知り、力尽くで成仏させる他の霊能者のやり方に異を唱え、自分自身でさえ未練の中身に気付いていない幽奈さんの悪霊化を阻止すべく、解決策を模索する、高校一年生の春先の出来事から話は始まるのだが、曰くつきの場に住み続ける管理人を含めた四人の猛者の正体と彼女らとの触れ合いも、物語の重要な柱である。
 一巻の時点では、主人公以外で氏名の明かされた男は二人だけで、一人はクラスメートとして今後も登場する機会があると思われるが、もう一人は余程の事がない限り再登場することが適わない仕打ちを受けており、男同士が拳で語り合う展開を好む読者には期待外れな場面が多いであろう。
 その反面、山裾の温泉郷ならではの風景と温泉を堪能する少女や女性の裸体の描写には事欠かず、入居者以外の入浴の場面などもあり、湯煙で霞む事が多いとは言え、重力に従い、時に抗う躍動的な乳房の持ち主の、主人公に心ならずも全身を弄られた時の表情は、目を細め、頬を赤らめ、吐息を漏らす、少年だけではなく成年男子の心をも落ち着かせないものである。

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きなことラーメン

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週刊誌連載分の三冊とタイトルに+が加わった七冊との間には、設定上の変更点や話数の断絶がなく、第一巻から順に読み進めるべきだが、試し読みとして手当たり次第に手に入れるのであれば、最低、二冊は読んでほしい。
 どの巻にも必ず登場する魔法のアプリの説明書アイビスが仲立ちする高校生の恋模様は、オムニバス形式でありながら、数話後に、別のシチュエーションで、新たな側面を見せることも多々あり、読めば読むほど、登場人物に対する思い入れが深まるのだ。
 本巻でも、今迄、何度も登場した空手部の面々や不良少女、生徒会長や異彩を放つパソコン部員が本編や特別編で活躍し、一度読めば彼らの人となりをより詳しく知りたいと思わない読者はいないであろう。
 物語の大半は恋愛絡みの話であるが、本巻収録の不良少女のエピソードのように恋愛とは全く無関係な話もあり、毎年恒例のクリスマスの特別編はゲームブックの要素を取り入れたショートストーリーであり、新刊発売時の宣伝を兼ねた番外編や新年に因んだ四コマも七巻には収録され、各巻で収録話数や内容が大きく異なるのも、本作の魅力である。
 単行本収録の際に加筆訂正される女の子の乳首の描写は、暗黙の了解事項で、本巻でも踏襲されており、心配は無用だが、本編を補完し相乗効果を発揮するおまけの存在が、実は、本末転倒になりかねないほど際立つのが本作の特徴だ。
 「人なら誰でもついてるし。」と言い放ち、グラビア撮影に臨む少女の姿は、単行本でしか目にする事が出来ず、本編では裸になる場面など一切なくても、おまけでは惜し気もなく上半身を露にする、と今更、注記するのは蛇足かもしれないが、初出時との印象の変化は大きく、第一印象で久しく見向きもしていない人こそ、是非、本巻を読んで全巻揃えて貰いたい。
 連載開始時から最新話まで、似たような場面、似たような構図はあるものの、各エピソードの核となる魔法のアプリは常に新しく、「パパラッチ」のように特殊な状況で再使用されるのは例外的な扱いで、爆笑することが多くなった予測不可能なギャグセンスと愛のある性的な表現は発展途上だ。

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終末の神楽

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西暦ではなくなった未来のとある町の風景は、一見すると現代の日本の都市と瓜二つで、住民の生活は平穏そのものだが、一部の者が安全保障上の特殊な任務に就き、八百万人の生命を脅かす危機に、人知れず立ち向かう。
 喋る戦闘ロボットに乗り込む新人の少女は地味で、運動音痴で、客観的に見ればとても適任者とは思えないが、多くの候補者の中から選ばれた、名の知れた血族の一員であり、慣れないながらも懸命に、体を張って、心血を注ぐ。
 これは誇張ではなく、歴代パイロットの中には戦死者もおり、主人公姫香の先祖も戦闘中に負傷して片目を失った模様だ。
 得体の知れぬ複数の敵のロボットが跋扈する旧市街地と居住地域内における緊張感の落差は激しく、その差が主人公を突き動かす原動力となり、なんとか踏ん張りながら、死線を掻い潜る少女の姿は健気で美しい。
 パイロットは専用のスーツを着て操縦し、援軍の少女も専用スーツを着用しているが、姫香は裸で戦う。
 敵の正体や世界情勢には不明な点が多く、暗躍する勢力の存在も示唆され、姫香の命を狙う輩も登場しそうな気配が漂うが、重苦しい描写が続くと勘違いされては困る。
 姫香は裸だ。
 冒頭に掲げられた天岩戸の件との関連が濃厚な裸で戦う姫香の姿は、浴室で寛ぐのと何ら異ならず、時々、苦悶の表情を浮かべる以外はリラックスして、華奢な肢体と形の良い乳房、毛の生え揃った股間と尻を、コクピットで曝け出す。
 事ある毎に住民を巻き込んで自爆しようとするロボットの中から、運良く脱出したとしても、素っ裸である。
 姫香が発する緊張感と滑稽感、礼儀正しさと几帳面さが、悲壮な世界を妙に居心地の良い空間に変貌させており、終末に向かいつつある故郷の命運を握る彼女の一挙手一投足から今後も目が離せない。

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カメレオンガール

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裸で壁を登るわけではないのに、妙に艶かしく崇高さを覚える女子高生の姿が、見る者の心を揺さぶり、感化する。
 部活動や放課後、合宿における主人公の真摯な練習姿勢や立ち居振る舞いに触れた周囲の男女は、己を省みて、襟を正す決意をする。
 或る者は恋心を抱き、或る者は同性に憧れ、その人に似つかわしい姿を求めて、己を磨く。
 純粋なスポーツ漫画の側面と学生生活の描写とが、少女の一途さゆえの滑稽さを繋ぎとして、バランスよく配置され、第一巻では乏しかったボルダリングというフリークライミングの一種目の詳細が、本巻では大会の場面を通して描かれ、臨場感に溢れた間近で観戦する気分が味わえる。
 名字以外、詳しいプロフィールが明かされていない主人公、高校一年生の小寺さんの、中学卒業時から夏の大会までの、練習に打ち込む日常が、主に何らかの関わりが生じた者の視点で捉えられ、その相手が受けた印象を、小寺さん本人の内面性の発露として読者は受け取り、共感し、その身に起きた変化に好感を寄せる。そして、その触媒となった小寺さんの様々な一面を更に知るのが楽しみになるのだ。
 各話の終わりに挿まれた一コマだけのおまけも、番外編に匹敵すると言っても過言ではなく、ショートストーリーであるが故に本編では描ききれない機微を、そっと載せて、味わい深い。
 出る杭は、いつの日にか、打たれるのか、異質な者に対する蔑視と羨望が、所々、集団生活の息苦しさと同調圧力の捌け口となり、空気が淀むのが、苦々しい。
 作者名は、珈琲である。
 砂糖はふんだんに用意されてはいるが、何も入れずに飲み干すのが流儀であろう。

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