Nakiさんのレビュー一覧
投稿者:Naki
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紙の本二つの母国に生きて
2016/04/24 23:24
深い愛は静かに語られる
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日本人は外国人に日本のこと・・精神や文化がわかるわけがない、と考えているようだ。
または私に会うと、(日本文学について)むつかしい質問をされるのではないかと若干緊張するようである。
「キーン先生」の語る日本人像は80年代に書かれたこのエッセイからは若干変わってきているのかもしれませんが、
日本人の、「日本を良く知る外国人」という存在に対する態度はあまり変わっていないように感じます。
そんな「日本人」に対して、キーン先生は良い悪いというわけではなく、
自分たちの日常を外国人たちにも「わからない」と決めつけることなく見せればよいのだ、と優しく諭してくれます。
(和食の店で座敷に通すか椅子に座らすか、道案内を英語ですべきか・・・等)
第一部は日本での生活、二部では日本の美術・芸能、第三部では日本の近現代文学についてのエッセイが集められていますが、
特に印象深いのは三部にある谷崎潤一郎と三島由紀夫との思い出でした。
今まで作品の名前のみ知っていた存在でも、人となりをうかがい知ることができ、
次はなんとなく敬遠していた日本の近現代文学をもっと読みたいと思うガイドをしてくれました。
キーン先生、ありがとう。
紙の本通訳ブースから見る世界
2016/04/25 00:06
気品も知性も、たゆまぬ学びなしでは身につかない
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原さんはILOやダボス会議を長年手がけられているベテラン同時通訳者。
日本の同時通訳をほぼ創生期からささえられて来た方です。
日本語と英語を幼少期から徹底的に叩き込まれて育ってきたこと、
参加したMRA(Moral Re-Armanent)運動の世界大会でいきなり同時通訳者デビューをされたこと。
大きなチャンスや挑戦をむしろ待ち受けているかのように、常に学びを欠かさない姿勢に背筋が伸びます。
日記調の文体が歯切れよく若々しいのも、常に新しい言葉に触れ自分の中の表現をブラッシュアップされているたまものなのでしょう。
幼少期の教育をいまから受け直すことはできないけれど、自分も言語への情熱を持って暮らしたいと改めて思わせてくれる一冊でした。
電子書籍あなたのあらゆる「困った!」がなくなる 「ADHD脳」と上手につき合う本(大和出版)
2016/01/04 01:53
短所の正体を教えてくれた本。
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私はずっと締め切りが守れない、部屋をきれいに保てない、すぐ前にやっていたことを忘れてしまう・・等に悩んでいて、「ADHDかもしれないなあ」と思いながら過ごしています。
最近職場でのミスが続き、今まで自己流に対処してきたつもりだった自分の脳の特性に向き合わなければと思いこの本を購入しました。
この本ではまず、「ADHD脳は、今この時の誘惑に負けやすく、ワーキングメモリが少ない」というのがADHDの脳が抱えている「クセ」であって、「できないこと」で自責にかられたり自己嫌悪に陥ることはないのだ、と諭してくれます。
そしてそのクセを踏まえて、「部屋をきれいに保てない」「優先順位がつけられない」等、派生してくる問題へどう対処するか?のアドバイスをくれる本です。
特に持ち物や捨てるべきもののチェックリストは、コピーして目につくところに貼るなどして活用できて良いと思います。
おそらく、すべてのADHDを抱える人がこの本に書かれた方法で「普通の人」と同じくらいに困らなくなるわけではないのでしょうが、
同じようなことで困っているのは自分だけではない!ということを知れて、
どんな風にがんばればよさそうか・・という指針をもらえるだけでも、一読の価値は大いにあると思います。
紙の本うつくしい人
2016/04/24 23:01
その気持ち良くわかる。・・でもだから、むかつく!
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主人公のゆりちゃんはとにもかくにもめんどくさい女。
社会で認められるように生きるためなら、
周りに合わせて嫌いじゃないクラスメイトをいじめもするし、
そんなに好きじゃなくてもステータスが立派な男と付き合おうとする。
社会に合わせきれないけど、合わせきれない「自分」を見つけもできず、
社会にはなから合わさってない奴を見るとすっごくイライラするのに、小心者。
ぶっちゃけ生きていくのがすごくしんどそうなタイプ。
あんまり友達には、なりたくないかなあ。
でも似たやつ、知ってるな。
あれ、これ私じゃないかしら?
・・だからよけいイライラするのかも。
ゆりちゃんは勢いで決めた瀬戸内海のリゾートホテルで、適度に社会から外れて生きている坂崎とマティアスという二人の男に出会って、ほんの少し解放され、ほんのすこし素直になり、ほんの少し前向きになります。
でも、おそらくそうなったのも二人に会ったのが瀬戸内海のリゾートだったからで、
都会の雑踏の中だったらおそらくイライラしていたことでしょう。
小説を読んでいるというよりは、めんどくさい友達のモノローグを聞いているようで、
その友達に説教を垂れたくなるような生々しさがありました。
(会社の同僚だったら、飲み会でだけ話して、友達にはならないタイプでしょうね)
西加奈子さんの小説は初読でしたが、上述のなまなましさゆえにパワーのある書き手さんだと思います。ただし読む側にも相当パワーが要りそうです。
紙の本HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか
2016/01/04 02:38
「直感を信じてはいけない時もある」
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Netscapeからラウドクラウド、オプスウェアのCEOを経験してきたベン・ホロヴィッツの「マジでしんどかった」経験だけを集めた本。
どうすればいいのか?なんて本当は誰にもわからないので、自分が苦しんできたことを書いたという著者の姿勢からして、なんだか信頼できる先輩の言葉を聞いているような感覚で読み進められる本でした。
人材を外から引っ張ってきて適切に評価する、取締役会も含む「外」への責任を果たす、株に関する事項の決定等、アメリカのCEOがどのような職務・権限を持つのかというところで日本の会社経営者とはだいぶ違うところもあるのでしょうが、
もし自分がそうなったらと思うと胃がキリキリしてきそうで、これから起業を考えるならこの覚悟は絶対にいるな・・と思う点ばかりでした。
ごく限られた情報だけで、自分の直感も信じきれない決断をしなければならない時がある。そんな時に、著者のように信頼できるメンターが得られるかどうか・・それは運によるところが大きいのでしょうが、そんなメンターを引き寄せていることすらもCEOの資質なのかもしれません。
紙の本あ・うん 新装版
2016/04/24 22:40
「ふつう」ほどアブノーマルなものはない
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親友の嫁に惚れている男。
それを知りつつ、どこか誇らしく思っている、親友。
旦那と旦那の親友のあいだで心地よく揺れる妻。
親たちの関係を見つめながら、自分の恋につき走っていく娘。
どろどろしそうな関係を、
さも当たり前に「日常」として描き出す文章に惹きこまれました。
男が2号3号を作ったり、芸妓に入れあげたりすることへのおおらかさは
今であれば男性優位の昭和の悪癖と取られることもあるでしょう。
でもそれを傍目に認めながら、だからこそ自らを律して旦那を愛している女たちと
命を懸けて恋をする娘=また新しい時代の女の潔さが、
とてもカッコいいと思ってしまいました。
門倉も仙吉もたみも40代のおっさんおばさんですが、
まるで爽やかで、青春小説を読んでいるようでした。
向田邦子の長編小説はこれ一本、とのこと。
もっともっと読みたいのに・・もどかしくなってきます。
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