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あられさんのレビュー一覧

投稿者:あられ

149 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本Qを追う 陰謀論集団の正体

2022/09/20 08:30

よく取材され、具体的で、読みやすくまとまっている

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

朝日新聞の連載をもとに、大幅な加筆のうえで書籍化された一冊。元が新聞記事だけに、とても読みやすいです。「Qアノン」はネットで広まった陰謀論ですが、インターネットに特に詳しくなくても、家族との連絡のためにスマホでLINEを使っている程度の人でも、これを読めば経緯がわかると思います。落ち込んでいるときや悩んでいるときにスマホで見たビデオなどをきっかけに、「ウサギの穴」に落ちてしまった一般の人々の実像が、伝わってきます。

個人的には、HBOのドキュメンタリーで(おそらく日本語が壁となって)全然食い足りていなかったところが、藤原記者によって明らかにされているのがよかったと思います。特に旧2ちゃんねる管理人の「ひろゆき」氏と、アメリカの「ちゃん」カルチャー、とりわけ「4ちゃん」との関連についての事実、および取材を申し込んだときの氏の対応や氏の他メディアでの発言などが具体的にはっきり書かれているのはよい仕事だと思います。日本での展開、日本語圏での情報拡散の追跡は、鬼気迫るものがあります。

他にも「中の人」たちの具体的な発言を詳しく記録してあるところが多く、通り一遍の説明で済ませまいという筆者の強い意志が感じられます。

注文を付けるならば、子供の性的搾取を憂うあまり「Qアノン」にはまってしまった人が、いったいなぜ、大統領予備選の段階から女性に対して非常に暴力的で失礼な発言を繰り返していたドナルド・トランプのような人物が、「搾取されている子供たちを救う唯一の人物だ」などというでっちあげのストーリーを信じてしまったのか、その経緯ももっと詳しく知りたかったです。普通に冷静に考えれば、そこで引っかかって、あの陰謀論にはまることはないと思うのですが、それを考えるほどの思考力もなかったのでしょうか……。

あと、トランプがバラク・オバマについての陰謀論をわめきたてていたのは、「大統領に就任する前」(第2章「信じる」より)どころか、「大統領候補になるなどということを決意するずっと前」ですね。Birtherで検索すると当時の報道記事なども見つかると思います。

藤原記者の取材に応じて語ってくれた当事者の方々に敬意を表します。そして筆者の藤原記者には、今後も期待しています。

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紙の本鴨川ランナー

2021/12/28 01:58

「ことば」をめぐる緊張感

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きみは、この作品の紹介文で「『きみ』という二人称を用いた独特の文章」と書かれているのを見て、それはどういうものだろうかと「試し読み」をクリックしてみる。そこに連ねられていたことばに、きみは即座に引き込まれ、作者/筆者の書く「きみ」と同化する。それでいて、きみは「きみ」ではない。きみはアメリカ人ではないし、アシスタントランゲージティーチャーとして学校で勤務した経験もない。きみではない「きみ」の語る物語を、きみは、目で文字を追う、という形でたどる。そこに「存在」はあるのだろうか、ときみは思う。すべて、想像された概念にすぎないのではないか――。

ストーリー/描写されていること・出来事とは別に、筆者/作者/「きみ」と、彼が使っているこの言語との間の緊張感そのものが、とてもインパクトがある作品です。こんな記述を、私は読んだことがありませんでしたし、また、おおいに共感できました。母語である日本語でもしょっちゅうこういう/これと類似する感覚に襲われています。そう感じたことはない、と言う人が圧倒的多数だろうとは思います。しかし、私は感じたことがあるのです。私の周りにも何人か、この「感じ」を共有している人がいます。ケズナジャットさんも、きっと、母語であるアメリカ英語を使い、アメリカに暮らしているときはさほど自覚していなかったにせよ、自分が使っている「ことば」との間に、常に緊張関係をもってきた人だろうと思います。

「きみ」という人称代名詞も、時制の使い方も、きわめて英語的だと思いました。しかしそれを見事に表現しているのは日本語である、という二重性。そして、それでもところどころに垣間見えるちょっとしたずれ……例えば、今私たちが日常生活で使っている「雑な」という形容動詞は、本書の「きみ」が「ネイティブ先生」をしていたころは、あまり使われていなかったのではないか(京都では使われていたのかもしれませんが)。少なくとも、私はそのころは「粗雑な」「大雑把な」といった言葉を使っていた。そんなことを考えながら、ストーリーよりもむしろ、ことばそのものを読んでいました。

電子書籍よりも、形のある紙の本で読みたい一冊です。するり、するりと逃げていくことばを、少しでも手元に引き寄せておきたい……そのこと自体が幻想ですが。

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紙の本東京暗渠学

2021/12/05 12:17

復刊してほしい本

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版元の洋泉社が2020年に解散してしまったので、そのまま書店の店頭から姿を消してしまった本。まさに出版界の「暗渠」的な一冊になってしまいましたが、テレビ番組の影響で関心が高まった東京の地形に関する本の中でも、この本は特に面白かったです。復刊してほしいです。

著者の本田氏は波照間島の民俗や信仰、自然などを研究している在野の研究者であり、90年代終わりからウェブサイト(のちにブログ)で故郷・東京23区内の川と湧水について調査したことをまとめて発表されてきた方で、この本で「暗渠学」を提唱しました。

「暗渠」の定義は本書冒頭にあります。いわく、ふたをされた河川のような「機能的定義としての『暗渠』」に加え、「『かつて川や用水路、溝渠が流れていた空間』で、かつ『現在でもその流路がなんらかのかたちで確認できるもの』」を「広義の暗渠として定義」しています(10~11ページ)。

その視座から見えてくる東京の街の景観は、にぎやかな繁華街、平凡な住宅街やオフィス街の下に埋まっている景観と言えると思いますが、不思議な「水の街」のそれです。水のある所には人の暮らしがあり、東京(江戸)の場合は、人の暮らしのために水が引かれもしたのですから。

内容がよいだけでなく、文章も魅力的です。13ページから引用します。「水が必ず高いところから低いところへと流れていくように、かつて水が流れた痕跡である暗渠もまた、低い場所を選んで下っていく。坂道に囲まれた明確な谷筋から、歩いてみて初めてわかる微地形まで、周囲より低いところをたどればそこに暗渠はある。そして、暗渠をたどっていくとき、風景は川に流されていくように、もしくは川を遡上するようにつながっていくのだ」。

こうして著者は、私たち読者を、神田川や石神井川のように今も流れている川の、暗渠化された数多くの支流や、玉川上水や千川上水のような人造の川、およびその支線や、運河・お堀が、網の目のように張りめぐらされたわが町・東京の時空を超えた旅に誘い出してくれます。

写真や地図がたくさんあって、東京に住んでいる人ならきっと見たことのある平凡な風景に歴史的な意味づけがされていることにスリルのようなものを覚えると思います。

ブログもすばらしいのですが、一冊の本として持ち歩けるという特性は、この内容にぴったりです。今また散歩の季節にこの本を再読し、復刊してもらいたいという願いが強くなるばかりです。

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通読してみたくなる料理本

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私がまだ漢字も十分には読めない子供のころ、母が使っていた料理の本をめくっては「いっぱい書いてある」とドキドキワクワクしたものです。その感覚を思い出させてくれる料理本です。「一家に一冊」という本ですね。

確かにレシピ本なのですが、よくある「きれいな写真を見せて、段取りよく簡単そうに作れそうに見せるために手順を少なく編集したレシピを添える」という感じのビジュアル重視本とは正反対の作りで、料理の写真はごくごく少ないです。その代わり、読むところがとても多い。まさに読む料理本です。それも「うんちく」ではなく、実用的な知恵と知識です。例えば塩もみした野菜を冷蔵庫で何日か保存する場合は、「ジッパー付きのポリ袋に入れてバットにのせ、上から重しをしておくと傷みにくいです。重しと言っても、冷蔵庫の中の重めのものをのせておけばいいのです」(19ページ)というように。

こういう形式ですから、写真主体のレシピ本では扱うのが難しいような、見せ所が難しい超シンプルなレシピなども多く入っています。実際に家で料理するときに使えるのはそういうレシピです。

また「作り置き」に必ず必要な保存容器についてもポイントをついた説明があります。プラスチックの容器よりステンレスの容器のほうが優れているのはなぜか、具体的にどういう利点があるのか、など。

全体的に、単に「~するとよい」というだけでなく「~なので、~するとよい」という書き方になっているので説得力が違うし、頭にもすっと入ってきやすいです。まだ全体の通読はできていませんが、一度、頭から終わりまで読むということもしてみたい料理本です。

料理に不慣れな人には向いていない本だと思いますが、自分が食べるご飯くらいは自分で作るということができる人なら、一人暮らしで、家族のためのメニューを考える必要もないし、特に作り置きはしないかなという人でも持っていて損はないと思います。

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電子書籍イスラム飲酒紀行

2020/05/31 16:19

文化・風土を濃密に伝えてくれる、笑える一冊

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「私は酒飲みである。休肝日はまだない」を標語とする筆者が、カタール、パキスタン&アフガニスタン、チュニジア、イラン、マレーシア、トルコ、シリア、ソマリランド、バングラデシュと、イスラム教の国々を、現地の人々と和気あいあいと楽しみたいと願いながら酒を求め、酒を探し旅した結果、見たものは……という、いかにも雑誌連載調で読みやすいルポ本。たまたま映画『ラム・ダイアリー』を見たあとで読んだので、こういうのをハンター・S・トンプソン流の「ゴンゾー・ジャーナリズム」と呼ぶのかなと思いました。

「酒が好きで好きでたまらない、どうしようもないおっさん」っぷりをかなりしつこく強調する筆致の裏に、ジャングル迷彩をほどこしたかのように、鋭い知性が鈍く光っています。酒、酒、また酒というドタバタを描く端々に織り込まれている洞察はかなり深いです。実際、筆者がなぜそこまで酒にはまったのかも本編でさらっと明かされますが、それって、体は大丈夫なんですかねと本気で心配になってしまいます。

とはいえ、筆者の高野氏、この本でも訪れているソマリランドについての著作でも知られる通り、かなり破天荒なアドベンチャー野郎で、筆致は喜劇調ですから、全編、笑わせてくれます。特に一方的なイメージがありすぎるイランと、逆に何もイメージできないチュニジアは興味深かったです。タイミングとしても、2000年代の初め、2011年のいわゆる「アラブの春」の前の取材(「あとがき」にある日付が2011年5月で、取材はその前の何年かで行われている)ですから、時代の空気みたいなものとしても貴重な記録なのではないでしょうか。特にシリアは切ない気持ちにさせられます。イスラム主義勢力の支配下に置かれた町にもキリスト教徒は暮らしていたのだし、「ガットバーン」はあったことでしょう。

この本に書かれていることが、「知られざる一面」であることは確かです。ただし、というか、だからこそ、というべきか、この本を読んで「イスラム」を知った気にならないこともまた重要だろうと思います。「イスラム」というより、その土地の文化・風土を濃密に伝えてくれる一冊です。旅行ができないときに読んで旅気分にひたるにはぴったりです。

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ヴィーガン対応で、家で作れる創作料理

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しゃれた創作料理店で出されるようなお料理が自分で作れて、しかも動物性食材ゼロ(ヴィーガン対応)。

といっても特に難しいテクニックが必要なわけではなく、「材料を切って2時間弱火でじっくり炒めて味を引き出す」といった、テクニックはいらないかもしれないけど一般家庭では到底現実的とは言えないようなレシピでもなく、普通にハンバーグを作ったり煮物を作ったりするくらいの感じで作れます。

季節に応じた旬の食材を使うことが重視されているので、「夏野菜グリルのベジタリアン麻婆あんかけ」などはまだ試せませんが、「白菜のラタトゥイユ」(野菜の水分だけで調理する)は美味しくできました。次にレンコンを買ってきたら「蓮根とおからのベジタリアンローフ」を作ってみようかなと思っています。

著者のカノウユミコさんは精進懐石料理の経験がおありで、本にはベジタリアニズムの詳細は書かれていませんが、「説教臭さ」を排した実用書の作りと言えると思います。

レシピの数が全部で30件ほどと少な目です。おしゃれでかっこよい料理が作れそうですが、この本に1400円はちょっと割高に感じます。

それから、うま味をシイタケに頼っているレシピが多いです。シイタケが駄目な人は、この本は買ってもこのまま使えるところが少ないかもしれません。

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立派な研究書

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

イギリスの陶磁器(主に磁器)の歴史を、「ティーカップ&ソーサー」に絞り込んで解説してくれる立派な研究書です。しかも美麗写真多数。ストーク・オン・トレントなど現地訪問もされていて、情報量がとても多く、読み応えたっぷりです。

お茶の器だけでなく、お茶そのものについての解説もたっぷり入っていて、お茶の産地としてイギリスに重視されていた中国との関係や、お茶と庶民との関係(当初、お茶は上流階級にしか手の届かないような高級なものでした)も書かれていて、単に「美しいボーンチャイナの写真を眺めてうっとりする本かな」と思って手に取っただけだったので、驚きました。嬉しい驚きです。

あえて難を言えば、ここ20年ほどに起きたイギリスの製陶産業の激変っぷりを、1ページ分でよいのでカバーしていただけていたら、と思いました。例えばミントンはとっくの昔に別の製陶会社の傘下に入っていましたが、その後も経営の統廃合が続き、2020年の現在ではもうブランドとしても存続していません(2015年にブランド廃止)。イギリスの製陶は、産業丸ごと博物館入りしてしまったような状態にあります。イギリスでは日常に近すぎて特に誰も関心を払っていないかもしれませんが、そういうなかで、日本でのこのような立派な本が比較的安価で出版されたのは、すばらしいことだと思います。関係者各位に敬意を表します。

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電子書籍マイナス50℃の世界

2020/01/30 06:27

米原万里さんの最初の著作

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2006年に惜しまれつつ亡くなった米原万里さんの最初の著作で、オリジナルの出版は1986年。電子書籍を見つけたので買ってみました。

TBSのテレビ番組で、真冬の一番寒い時には平均気温がマイナス60度になるヤクーツクを含め、シベリア横断取材したときに見聞きしたもの、食べたものなどを、とても読みやすい「です・ます」調の文章でルポルタージュふうにまとめた一冊です。何もかもが凍っているのが当たり前という酷寒の地の人々の暮らしを、初めて訪れる外国人の視点で、生き生きと伝えてくれます。人間はたくましい。もっとこういう話を聞きたかったなあと思います。しかし、米原さん、よく食べますね……本当に健啖家でした。

山本皓一さんの写真も数多く収録されていますが、スマホの小さな画面では大きく表示させることができないのが残念です。写真はパソコンやタブレットで見るのがおすすめです。

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電子書籍ゼロトレ

2020/01/30 06:10

試してみる価値あり

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この手の本は立ち読みで済ませることが多いのですが、電子書籍がセールだったので買ってみました(紙の本のほうが見やすいとは思います)。

購入してまだ4週間たっていませんが、このストレッチ法をやってみたら体が軽くなってきました。冬で縮こまっていた筋肉(特に脚)が伸びるようになった感覚で、関節の可動域が広がったことを実感しています。肩こりも軽くなりました。呼吸法は見てもらわないと難しいですね。

本当に歪みが修正されているのかどうかは見てもらわないとわかりませんし、「痩せた!」みたいな劇的な変化はありませんが、この本に書いてあることに効果はあると思います。

ストレッチのやり方の説明に入る前の文章(著者の石村さんの体験談)もよかったです。

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紙の本英語類義語活用辞典

2020/01/26 02:03

古典的名著

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名著です。同時に古典的です。そういう「古典的名著」の価値が分かる人ならば、そういうものとして書棚に置いておいてぱらぱらめくれば、めくるたびに新たな知見が得られるでしょうが、単に「名著」という評判だけを聞いて実用的な本を求める人には、残念ながら、向かないと思います。

自分がこの本を使えるかどうかを判断するには、340~342ページのstandardとcriterionの解説を見てみることをお勧めします。偶然ですがまさにこの項が「基準」となる一冊です。例文も含め、この項目が理解できれば、この本は書棚に常備しておいて損にはならないでしょう。

ただし、約40年前の本ですから(オリジナルが出たのは1979年。文庫での再刊は2003年)、今の社会の中でのことばの実態・リアルさとはずれてしまっているところもあります。40年前のさまざまな言葉の語感を知らない若い世代の方には、あまり向かないかもしれません。例えば「エキサイトした新聞記者」のような、今は廃れてしまったような言葉遣いがなされている箇所があります(全体から見ればごくごくわずかですが)。

それでもなお、そういった移ろいにかかわらず確固としてぶれずにいる部分もことばには多くあります。例えばidleとlazyの違いの簡明な解説(200~201ページ)がその一例で、これは一度読んだらしっかりと頭に入るようなスッキリした解説です。他方でpowerとstrengthの違い(276~278ページ)は、年月を経て読者の側の知識が増えたころに再度読み直すと、さらに知見を広げることができる深い解説です。

この本で引用されている英文と解説を見て、「これが書かれた当時はこうだったのかもしれないが、今はどうなのだろう」と思ったら、インターネットで調べればよいでしょう。最所フミさんの時代は得られなかったような道具とリソースを、私たちは日常的に手にしているのですから。

電子版も出ており、紙版より安く買えるようですが、この本はまず紙版を入手して、「ぱらぱらとめくってみる」、「通読してみる」という使い方をした後で、必要なら検索自在な電子版を買うようにしたほうがよいでしょう。最初から電子では、この本の長所は引き出しづらいし、何よりユーザーとして使いづらいのではないかと思います。

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作りやすいです

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ビーガンのレシピ本というと、「玉ねぎを2時間炒める」みたいな、現実問題として一般家庭では無理でしょというプロ向けすぎるものもけっこうあるのですが、この本はそんなこともなく、使いやすいと思いました。食材だけでなく調味料も普通に家にありそうなものを使っていますし(味噌を使うレシピが多いですね)、調理時間も数分~20分程度と現実的です。

高野豆腐やピーナツバターの使い方は「なるほど!」と思ったし、なすの味の使い方もおもしろいレシピが多いです(季節的に旬がめぐってきたら作ります)。じゃがいもとキャベツとオリーヴオイルと塩、こしょうだけで作れる「白のポタージュ ポルトガル風」は、簡単だし、今の季節に美味しかったです(春先の柔らかいキャベツでも美味しそう)。

収録されているレシピはだいたい70種類くらいで、主菜、副菜、ごはんもの・麺類、スープ、スイーツと常備菜のカテゴリーに分けられています(目次は立ち読みで確認できます)。ぱらぱらめくってみると「あ、これはおもしろそうだな」と思うページが多く、付箋をぺたぺた貼ってます。

使われている食材に味が濃すぎるもの(しいたけなど)が少ないので、これをベースに自分でアレンジするということもしていけそうです。

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紙の本ある男

2019/12/08 04:29

もうここにいない「ある男」をめぐって

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もうここにいない「ある男」をめぐって、もうここにいないはずの「ある男」を探す「ある男」の話。表紙に使われているアントニー・ゴームリーの彫刻作品のポーズに最初は目が行きますが、読み終わったあとはこの「人体」(のようなもの)を構成しているひとつひとつの要素に目が行きます。

いろいろな意味で上品で、センスのよい小説だと思います。するっと読めてしまう。でも読み終わったあと、何日かは、どことなくぬるっとしてしまう。車や原付の免許を持っておらず、「写真付き身分証明書」が要求されるからオールナイトのイベントに行かなくなってしまった自分は、もしこの小説に出てくる小見浦のような人物と遭遇したら、どうするだろう?

「自分」を構成しているのは、いったい何なのだろう? 氏名に住所に生年月日、この顔にこの身体に、これまでの経験。そのどれが、他の何かに置換可能なのだろうと考えたとき、最後まで置換可能だとは思わないのが顔や身体ではないか? でも実は……?

そういう裂け目のようなものを意識させてくれる小説です。

気になるのは、女性たちが男性たちに比べて一面的かな……でもタイトルが「ある男」なので、女性を類型的に描いているのは意図的なことかもしれません。

ウェブでも全編が読めるようですが、本(紙でも電子でも)で読んだ方が読みやすいです。

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土壇場で延期が決まった民間試験導入、本当の問題は何なのかを専門家が解説

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2019年11月1日に導入延期が発表された、大学入試の英語民間試験。2020年度(21年春の入学者の受ける試験)からの実施を当面(4年間)延期するという判断を決定的にしたのは、直接的には「格差」を正当化する文部科学大臣の発言(失言)でしたが、実はこの民間試験導入という「改革」には、ずっと以前から、英語・英語教育の専門家の多くが異を唱えていました。本書は民間試験導入の何がどう問題なのかを、5人の専門家が、それぞれの持ち場から解説した小論集です。

端的にまとめれば、導入されることになっていた試験は学科試験としてどうなのか、また大学入学試験としてどうなのかといったことが、丁寧に検討された一冊です。結論としては、平易な言葉でいえば「新制度はとても使えるような代物ではない」ということになるかと思います。

「日本人は英語をしゃべれるようになる必要があるので、この入試改革はよいことだ」と信じている人々の間でときどき見られる誤解ですが、この「改革」に反対している人々は、「4技能」に反対しているわけではありません(例えば「英語はしゃべれなくても問題ない」と考えている人はいません)。そうではなく、「4技能の能力を測定する」と標榜しているはずの試験が、到底そんなことはできないような代物であることを指摘しているのです。自動運転車だといって市場に投入されたものが、自動運転どころかまっすぐな道路をまっすぐに進むこともろくにできないようなものだったら、誰でも批判するでしょう。英語入試で起きているのは、そういうことなのです。「自動運転なんて危険だ」ということではありません。

11月1日に延期決定となったあと、週刊文春、週刊新潮、アエラと雑誌媒体で次々と新聞報道以上に中身の濃い報道がなされましたが、現在、それらを読んでからこのブックレットを読み返すと、点と点が結ばれるようです。

編者の南風原朝和さんは文科省の会議に専門家として参加して見てきたこの数年の紆余曲折(突然英語試験の取り扱いが一変するなどしてきたこと)を解説し、続く第2章で都立高校の校長である宮本久也さんが今の高校ではどういうふうに英語を教えているかという点から今回の「改革」の問題点を指摘しています(「改革」推進論者の多くが、20年も30年も前の学校英語をイメージして「だからダメなんだ」と言っていることと照らし合わせて読むべきでしょう)。

第3章は京都工芸繊維大学教授で英語試験の開発などをしてこられた羽藤由美さんが、対象も目的も異なるいくつもの民間試験にひとつの基準を当てはめることの無理さかげんを丁寧に解説し、第4章では東京大学大学院教授で英文学者の阿部公彦さんが英語が「しゃべれる」ということが過大評価されていることの問題点を、平易でわかりやすい言葉で論じています。最後の第5章では東北大名誉教授の荒井克弘さんが専門家として長年関わってきた文科省の「高大接続」について、具体例を多く盛り込んで説明しています。

この本を通じて、問題は1人の大臣の失言ではないということがよくわかります。このまま「延期」ではなく「中止」という結論に至ってもらいたいと、心から思います。「変えるべきことを変えないのは、テストを受ける側の利益に反する」(羽藤さん、本書54ページ)のです。

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飽きることのない一冊

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作者のキャスリーン・ヘイルはイギリスのスコットランドに生まれ、イングランドで育ち、ロンドンでアーティストとして活動した女性。1938年に世に出した子供向けの絵本、「ねこのオーランド」のシリーズは好評を博し、70年代まで新作が出ていたそうです。

本作『ねこのオーランド―たのしい日々』 (Orlando's Home Life) は、イギリスが第二次世界大戦で苦しいときにあった1942年に発表されています(翻訳本である本書は2018年刊)。時世を反映してか、物語は創意工夫してお金を稼ぐという場面から始まります。

とはいえ、そこは「ねこのオーランド」のシリーズ。寓意臭さはなく、辛気臭くなることもなく、文字を追うごとに、ページを繰るごとに次々と、想像力をかきたててくれます。猫の目のようにくるくると変わりながら展開していく物語が、見事としか言いようのない絵にのせて語られていきます。元々作者自身の子供たちのために創作されたシリーズですが、当時の窮乏生活の中でこの本を手にした子供たちは、どんなに心を躍らせ、目を輝かせたことでしょう。

もちろん、戦争から遠く離れた今読んでも、何の違和感もなく楽しめます。お子さんに読んであげる場合にネックになるものがあるとしたら、フィッシュ&チップスなどイギリスの文物や、レコード盤のような古いテクノロジーでしょうか。「ペルシャの王様」についての描写も、お子さんによっては「?」となるかもしれません。読み聞かせでは、そういったところを、必要に応じて説明できるよう準備しておいたほうがよいかもしれない一冊です。

表紙も本編も、見返しや中表紙も含め、とにかく絵がすばらしいです。猫のふわふわの毛並みや足の裏の肉球のぷにぷにした手触りまで描かれていて、絵だけを見ていても飽きるということはなさそうです。

日本語でも読めるように翻訳出版してくださった関係各位に感謝です。

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ポイントは調味料

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紙の本を持っていたのですが、姉のところに行ったまま戻ってこないので、セールになっていることだし、電子書籍で買いました。電子より紙のほうが使い勝手はよいのですが、電子版をタブレットやスマホに入れておけば、見たいときにいつでもさっと参照できて便利です。電子版は目次は細かく指定されていますが、マーカーをつけたり全文検索したりはできません(基本的に、紙の書籍を画像データ化してあるだけ)。

この本のレシピの優れているところは、まるでデパ地下で売っているような、ありきたりでないサラダが、近所のスーパーで買えるありふれた素材の組み合わせで、自宅で作れる、という点です。

決め手は調味料の使い方で、巻頭にまとめられている「人気の定番ドレッシング20」を使いまわすだけでも毎日の食卓に変化を出せます。レモン果汁やマスタードを感覚で使えるようになると、家で作るものもデリっぽいおしゃれな感じになりますね。

サラダなので基本的に素材にはあまり手を加えないレシピが多いのですが、レンコンを素揚げしたり、ピーマンを焼いたりして使うという「ひと手間かける」系のレシピもあります。うまく作れれば、パーティーのときなどはそれがよいかも?

本体は8つのパートに分かれていて、Part 1は「デパ地下人気サラダ」、Part 2は「エスニックサラダ」、Part 3は「和サラダ」、Part 4は「ごちそうサラダ」、Part 5は「ランチサラダ」、Part 6は「おつまみサラダ」、Part 7は「ホットサラダ」、Part 8は「フルーツサラダ」という分類です。Part 4は「サラダ」と呼ぶのは無理があるように感じますが(「メインのおかずと付け合わせ野菜」だと思います)、他が充実しているので気になりません。

巻末には「食材別インデックス」があり、「かぶが安かったから大量にあるんだけどどうしようかな」というときは、「かぶ」で見ればよさげなレシピがぱぱっと見つかるようになってます。

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