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  3. 山好きお坊さんさんのレビュー一覧

山好きお坊さんさんのレビュー一覧

投稿者:山好きお坊さん

38 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本異類婚姻譚

2016/01/31 21:55

夫婦は異類にはじまり同類へと変化する

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

タイトルが良い、読みたくさせる猥雑さがある。
 超美人ともったいなくも離婚したパッとしない男と結婚して専業主婦で暮らす容姿の普通の女性が夫婦生活の進むにつれ、夫婦二人の顔が変化して似てきたことに驚く。夫の顔の鼻や目や口が時として勝手に崩れるがごとく位置をずらす。妻サンちゃんの注視に気づくと慌てて正位置に戻る。このころから旦那は人間ではないのではと思い始めた。物に憑かれたように携帯ゲームに興じたと思っていると、今度は今までしたこともなかった揚げ物調理に凝る。体調不良を理由に頻繁に会社を早退するようになると、美人な元妻とよりを戻そうとしているのかとサンちゃんは疑心暗鬼になる。耐えられず、旦那に「あんたのすきなものになりなさい」と問い詰めると、なんと旦那は、山芍薬に変じてしまう。サンちゃんは、キタヱと猫のサンショを捨てに行った群馬の山奥に、その山芍薬を植え、時々会いに行く。
 怪異譚だが、作者は何を言いたかったのか。世間でいう「夫婦は似てくる」ということをベースに、似てくるには理由がある「楽に生きるにはツレアイの姿に同化すればよい、意見でも過ごし方で目立つ差異には「角がたつ」。夫婦とはいえ所詮他人同士、波風立てないほうが気は楽だ。そう考えた方が一方にドンドンと食べられるがごとく自分を喪失させ、無意識に相方に似せていく。 本書では、似ていくことを気取られ、「似るのではなく、好きなものになれ」と怒鳴られた亭主は一輪の白い花を抱く山芍薬になった。ラストに清涼感が漂う、読後しばらく瞑目して、わが夫婦のあり様を思った。

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クトゥルフ神話の雰囲気を十全に醸しです

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

怪奇小説好きな読者には余りにも著名なラヴクラフトの本作品を、原作が持つ妖気漂う恐怖感そして不気味さをそのままにコミックにしあげるとは、著者田辺剛の繊細でかつ剛腕ともいえる筆力に圧倒されてしまった。
黒色を背景に描かれる顔は恐怖の叫びをさらに恐ろしいものの予感を呼び込んでいる。多くの漫画家がクトゥルフ神話に挑んでいるが、田辺剛こそラヴクラフトの心情そのものを描くことができる漫画家と断定できる本書である。怪奇小説の読者よ、「漫画なんてと言わず」にとにかく手に取ってほしい。

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紙の本きことわ

2016/03/03 22:10

高嶺を舞うごとき読後感

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

品がある。幾重にも重なる過去の話が乱雑に絡むことなく紡がれていく。透明感があり、人と人の触れ合う温かみを感じながら読んだ。永遠子の母淑子が、夫以外に好きな男性がいたこと、その頃に生まれてこなかった妹がいたことをデパートの食堂で何気なく告白すること、また貴子が妻子ある男と最近別れたことなど結構泥臭さが匂ってもよい出来事もあるのだが、流れは静謐で静かで清らかな深山の沢の感じである。難字や触れたことに無い言葉に出くわすことが多い。作者が歌舞伎の研究者である所以であろう。

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紙の本白鯨 改版 上

2016/02/20 13:14

無類の狡智に富んだ凶悪な巨大な鯨との死闘

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

物語は、白い(抹香鯨は齢をとるにつれ頭部、背部が白くなる)巨鯨に片足を奪われた捕鯨船長エイハブが、自ら狂人と呼び、一途に勝利せんと一頭の悪魔と恐れられ幾多の人名を奪った巨鯨に挑むを筋とする。捕鯨船乗りの初心者イシュメイルを語り手として話を進展させながら、時に作者メルヴィルが鯨に関するあらゆる百科事項を独立の章を立てて実に詳細に述べる、その分量は半端ではない。鯨に敷衍する神話から文芸作品、そして捕鯨術、鯨の動物学的分類説明、鯨油をはじめ麝香ならぬ抹香の採取等々と作者メルヴィルの博学というか著述のための前調査の重厚さにひたすら驚く。捕鯨船ピークフォド号の船長エイハブ。3隻の短艇(いわゆるタッグボ-ト)には船長を補佐する航海士が艇長となり、銛手一人が付き、後の船員は漕ぎ手となって、鯨に挑む。1等航海士スターバック(コーヒーチェインの“スターバック”の命名由縁)と銛手クィークェグ(イシュメイルが捕鯨船に乗り込むため捕鯨中心地ナンタケットに着いたとき満員のため止むを得ず宿で同床した人格高潔なる“蛮人”)。2等航海士スタッフと銛手タシュテゴ(純粋インディアン)。3等航海士フラスクと銛手タグー(黒人)。さらに、予備の短艇には船長が隠すように乗り組ませた琥珀色した謎めく銛手フェデラー。
 その白鯨の悪魔的な性格は、異常に雪白な皺頭を持ち、高く光った白瘤を持つ。体の他の部分もまた、京帷子の色や縞や斑点や模様に一面に覆われていた。この鯨に根源的な恐怖感がつきまとうに至ったのは、ただその異常な巨躯、めざましい色彩、または怪奇な形をした下顎などであったというよりは、その闘争においていく度としれず発揮したところの―玄人たちの言によれば、無類の狡智に富んだ凶悪さであった。
 鯨に関する百科全書的な披瀝のなかでも、眼から鱗であったのは、抹香鯨の名の所以が、薫香なる鯨脳油で、当時この油は貴重品で灯火には用いられず塗用又は薬用に用いられたこと。捕鯨は鯨油を採ることが目的で、空樽を船底に満載し、甲板上で船員総出で油を採り、肉はすべて洋上で廃棄されていた。また、太平洋上を昇り、日本近海で台風に遭遇する。日本近海が鯨の有数な漁場であったこと、そして当時日本が鎖国状態で救援寄港できないことを船長が認識していたことも何故か知りえて妙なものであった。
 ナンタケットの港を出、航海出資者への義務として多少の捕鯨も行うが、エイハブは白鯨の影を求め、洋上を彷徨う。物語は、ピークフォド号短艇を襲う白鯨の狡知に長けた攻撃に船長エイハブも謎めく銛手フェデラーも白鯨の背に磔の刑に処せられたごとくはりつけられ、ピークフォド号はイシュメイル一人を水面に残し海の藻屑となって終わる。出港前のわずかなプロローグと筋の残りの大半を占める白鯨を探す航海という変化を予想させない舞台であるが、船長の感情の高揚、三人の航海士の人格描写、時として荒れ狂う海、鯨との死闘、癖ある船大工や料理人そして銛手の驚異的活躍に心躍らせて読めた海洋冒険小説としても楽しめた。

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紙の本外道クライマー

2017/04/19 17:37

人間の体力の限界はここにあり

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

とてつもない男の本である。登山にはヒエラルキーがあるそうな、一番偉いのが冬期登攀で、二番目が普通の岩登りで、三番目が沢登りで、底辺は誰でもができるハイキングだそうだ。自ら低位な「沢ヤ」と呼び、自称「舐め太郎」と称する宮城公博氏の超人的な登山記録である。2012年7月熊野那智大社御神体那智の大滝を登攀して検挙され新聞を賑わした御仁でもある。高度な登攀テクを要する山行はさておき、タイのジャングル四十六日間の沢登り記には驚嘆した。かくも微量なる食糧で重き荷を背負いて密林の沢を遡行し岩稜をよじ登れるのか、人間の体力可能性に興味ある御仁はまずは本書を繙いていただきたい。長さ5mもあるニシキヘビと格闘し切り取った尻尾の皮を齧り剥く写真は鬼神の様。

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紙の本グローバライズ

2016/03/30 23:05

ハチャメチャで心にグッと迫る

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

新聞文芸時評(東京新聞2015年10月29日掲載文芸時評、評者:佐々木敦)を読んで単行本の発売を心待ちしていた。寡作な作家であるが極めてマニアックな多くのファンを持つらしい。普段読む文芸書とは桁外れに展開する内容についていくのがやっとであるが、読み終えてそれがまた痛快と感じられる。なにせ、通常「起承転結」で進むところが、「起」はあるが「承」が無く「転」はあるが「結」がない作品が12篇も載っている。万人に、是非手に取り読まれることを願う稀有な小説である。一点だけ紹介すると、『道』という作品は漢文ならぬ漢字のみを羅列しての下ネタ表現、それが実に上手く読ませて手に取るように理解できるのである。中国女が僧侶に「伊勢丹」への道を尋ねる。僧侶は中国語ならぬ漢字語?で下ネタ話を累々とならべる。クライマックスの表現「貴方絶叫、伊伊、伊伊・・・」、「我息荒喘、勢、勢・・・」、「激律動相互肌衝突音発、丹、丹、丹、丹・・・」で落とす。これで古栗作品の虜となること請け合いです。

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異国情緒あふれる犯罪物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

テーマーは、最高級の聖遺物となろうイエス時代の遺物で、物理的に時代確定できる石棺にイエスの弟云々と刻銘された遺物が発見されたものであった。学問の世界と俗世界を大いに騒がせた事件を追ったもので、確かに推理小説のような読みやすさであった。かって、日本の考古学でも「ゴット・ハンド」と謳われた民間学者の贋物事件が一大スクープされたことがある。信仰は盲目にすることを改めて感じた。

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紙の本自由への道 6

2016/02/24 22:02

捕虜となったブリュネは、収容所内で抵抗組織づくりに精を出す

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

サルトルはまだまだ書き継ぐ予定であったのだろう。今までの主人公マチウは消えて、共産主義に、そしてフランス共産党に凝り固まったブリュネ一色になった。収容所でのオルグづくり、日本のプロレタリアート文学にもありそうな動き。人物の個性がありありと描かれ、小説家としてのサルトルを大いに評価したい。ブリュネは党から離れてのオルグ活動、リーダーシップを発揮していた。党役員のシャレーの登場により、悩み、党から離れた自己を見出す。身の不安を察知し、捕虜収容所から脱走を図るシャネデールにブリュネは悩みぬいた末に行動をともにする。しかし、卑劣なる党役員シャレーの密告により、収容所を脱出したものの二人はドイツ兵の銃撃の的となる。このシーンの迫力、緊迫感はハードボイルド並みである。哲学的なんてことはない、結構面白い小説である。

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紙の本天国の魚

2016/02/23 23:20

地球が破滅し、新天地をめざす

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

地球が破滅し、4人の精神体が最後の人類として残され、新天地を目指し宇宙船で運ばれる。汚染により心身が汚され未来が閉ざされた末期の地球。同じような設定で書かれた多和田葉子『献灯使』に通じるものが存することを感じた。多くの人に読まれるべきSF作品である。

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紙の本シルクロードと唐帝国

2016/02/23 14:49

唐帝国と「中央ユーラシア型国家」

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

(親本の『興亡の世界史第5巻シルクロードと唐帝国』講談社 2007年2月刊を読んでのレヴュー)中華思想に発し大中国と称されてきた国は漢民族が建国維持してきたものではなく、中央アジアの遊牧民がその建国、拡大に大きく覆い重なって推移してきた。そしてそれを可能にしたものが、唯一の機動性も持つ軍事力であり最も早い情報手段である馬の所持であった。盛唐を衰微させた安史の乱(安録山の乱)は、遊牧民の力が国の内と外で大きく動き、さらに西へそして東へ拡張していったものである。実に説得的に著述されていて分かりやすい。

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紙の本たまもの

2016/02/21 22:41

性を川の流れのごとく受け流す人生を描く

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

小池昌代さんの作品の裏にはいつもほのかな性の匂いがを感じられる。本作もそんな「匂いか」が最後まで一貫して感じ取れる。ここが素敵なのである。詩人である故に選ばれた言葉が、心の奥底に鋭角に飛び込んできて、思わず目を閉じ、シーンを心に描くことしばしであった。             「人間って本当に臭いんだなあ。そう思うとき、ポーと音をたてて暗い胴体のなかを夜汽車が通る。」「わたしの欲望は限りなく憎しみに似ていた。憎しみでも性交できるのだろうか。性交という、なんて哀しい、そしてすばらしい、ばかばかしいこと。夢中になること、急激にさめること。」
性を何気なく拘泥することなく受け流すかのように人生の単純なる一コマとして淡々と描く、この味わいがこたえられない。

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紙の本どうで死ぬ身の一踊り

2016/02/21 19:09

人間性丸出しの作品

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

おのれの性欲に振り回され、グダグダと女体への思いを募らせる、女性の感情を全く忖度せず暮らすエロ男でDV野郎の生活をイライラしながら描く秀作。
いつでも性欲を処理できると期待していた同棲は、かなってみると「念願の女体を毎夜横づけしてみると、当初こそ連日連夜挑みかかっていたものが、間もなく憑き物が落ちたようになった。」(p114)
 不遇な作家藤澤清造におのれの姿を見出し、全集発行を生涯の目標とする文学青年の物語なのだが、極めて汚い小説、センズリあり、ソープランドありである。しかし、読み終えて人間性丸出しの素晴らしい作品と思った。中学しか出ていないというのにこの文章の構成力、漢字知識には驚いた、苦労して文学を吸収したことがうかがえる。

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紙の本タタド

2016/02/20 12:29

詩的なさわやかな作品

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「スズコはオカダの手をとりソファの上にいざなった。・・・オカダがおずおずとスズコに覆いかぶさり、二人は魚のようにぴっちりと密着して横たわった。・・・オカダはスズコのスカートをつかみ、強引にそれをひきずりおろす。ファスナーはすでにはずされていて、スカートは簡単に無抵抗にさがり、下着をつけていなかったスズコ下半身が、海藻と貝のようにあらわになった。・・・寝室から、タマヨのあげる大きな荒々しい声が聞こえてきた。」(65頁)
 中年から高年になりかけた男女2組、子どもはいない。飽いたイワモトとスズコの生活、ともに永く仕事で係わってきた異性の友人がいる。同じ屋根の下で示し合わしたように他の雄雌と交じり合う。
詩的なさわやかな文章に魅入る。若いのかと思ったが、51歳か。

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紙の本水死

2016/02/19 15:13

難解でない大江作品、 作家大江の実像投影があり頷きながら読める。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

大江さんの作品が、こんなに滑らかな文章で綴られているのに感激した。全てが丸い感じの文体なのである。どこまで事実で、どこが創作なのか判然としなくなる不思議な感じがした。私小説的であるが、筋はチョット現実離れしている。でも、教育委員会や右翼活動家の介入などありそうなことでもある。今までの作品に登場する色々な人が飛び出してくるが、きちんと収まるところにおさまっているのは、愛読者として気持ちが良い。聞いたことのある名前が出てくると、あああの作品の登場人物だ、こう言うことだったのかと得心した気になったが、正しい作品名はとんと浮かんでこない。篠原茂著『大江健三郎事典』を取り出してきたものの、なぜか、探す気にはならなかった。

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紙の本ホログラム街の女

2016/02/19 11:09

ジャックシリーズ前の隠れた傑作

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

F・ポール・ウィルスンの、上手さに脱帽した。すじの運びといい、欲求をくすぐり、子どもへの情愛を刺激する。あわやという緊張する場面の盛り上がり。娯楽小説として最高。 日本でヒットしないということが不思議だ。
 ジャックシリーズもヒットしないので、このところ翻訳出版されていない。
 未来生活における管理された性。脳に刺激を与えることでの擬似体験。セックス技巧のみを脳内インプットされる女クローン。不法に生まれた子どもを最低生活のなかに隠れて遺棄する社会。作者の医者の知識を駆使しての想像力を大いに楽しんだ。

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