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  3. 和田呂宋兵衛さんのレビュー一覧

和田呂宋兵衛さんのレビュー一覧

投稿者:和田呂宋兵衛

59 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本

むずかしい為替相場をやさしい語り口で

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

東京外為市場って、どこにあるの?時々刻々と変わる為替レートは、どうやって決まるの?そんな素朴な疑問に対する答えから、ベテラン向けには為替相場の様々な分析方法まで、むずかしい事がやさしい語り口で書かれています。著者は実際に百万ドル単位の為替取引を経験し、個人投資家向けの情報発信も行ってきました。だからこそ書ける、優れた為替相場入門書です。

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紙の本

紙の本設問式船荷証券の実務的解説

2018/09/14 20:17

実務に密着した高度な解説

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

船荷証券は、海上運送による貿易で非常に重要な書類ですが、その取り扱いで起きる様々な問題について、豊富な事例を引いて、書名の通り、実務に密着して解説しています。そのうえで学問的に高度な水準も保っており、貿易の実務家、研究者にとって、ぜひ手元に置いておきたい一冊です。

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紙の本

紙の本完訳論語

2018/08/21 08:54

孔子は最高の先生

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

毎日少しずつ読んでいますが、孔子は、ユニークな個性を持つ弟子ひとりひとりに、最適のアドバイスを与えていく最高の先生だと思いました。寝ころんで気楽にも読めるし、他の論語解説と比べて深く読み込むこともできます。

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紙の本

実務に役立ちます

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

とことん実務の立場から、書類のサンプルや図表を多く使ってわかりやすく説明しています。貿易の新しい動きにも触れており、実務に重宝します。

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紙の本

紙の本牧師、閉鎖病棟に入る。

2024/01/03 15:15

「聖職」の痛み、イエスの幻

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「聖職」という言葉が使われなくなって久しい。
学校の先生、お医者さん、お寺の坊さん・・・色々あることは、日々話題になる。
かろうじて「聖職」のイメージが残っているとすれば、キリスト教の神父さんや牧師さんか?
牧師が心を病み、精神科の病院、それも閉鎖病棟に入院する。
一般には、まさかそんな事が、と思われるだろうか。
著者は入院前、牧師と、教会付属幼稚園の園長を兼ねていた。
業界ではよくあるパターンだが、実は相当にブラックな兼業である。
年々複雑さを増す幼稚園の仕事、「宗教的中立」の名の下に、幼稚園でのキリスト教伝道にブレーキを掛けられ、
著者は伝道の手段としてSNSを使い始め、「いいね」やリツイートの快感を覚え、
深みにはまり、心身のバランスを崩していく。
奥さんの勧めで決意した入院だが、主治医に閉鎖病棟に入るよう言われる。
外界とシャットアウトされ、なぜ自傷行為がいけないの?夕日がきれいって何?と言われ、
「聖書にこう書いてある」は、ここでは通じないことを思い知らされる。
ベッドに拘束され、睡眠薬の注射をされる患者に、著者は十字架につけられたイエスの姿を見る。
主治医には、これまで牧師として発してきた「ありのまま」という言葉を批判され、
自分の挫折を見つめ直すように言われる。
そんな中で著者は、高校生時代、阪神大震災に遭遇し、教会で被災者と過ごしたことを思い出す。
暗黒の中で、芝居がかった祈りをする人、それをにらみつける人、どちらもクリスチャンなのに・・・。
著者は退院後、別の教会に復職しようとして、先輩牧師に相談するが、こう言われる。
「・・・君には重度の精神障害があるんだよ。それで教会を治めるという、責任ある仕事ができると思うか?」(本書P214~215)
しかし著者は、入院時の主治医に相談した。
「とんでもない!その教会に赴任しなさい。なにを言ってるんだその人は。無視しなさい」(P217)
そして著者は今も、東京の小さな教会で、牧師を続けている。
宗教って何だろう。キリスト教って何だろう。
誰もが抱える、生きていく痛み。その痛みが露わになる、閉鎖病棟。
たとえ聖書の言葉が通じなくても、痛みの中に、イエスの幻が見えるのではないか。
なお評者も、著者と同様の環境で過ごした経験があることを、最後にお断りしておく。

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紙の本

紙の本天路歴程 続篇

2024/01/03 09:30

助け合って天国への旅、でも最後は独りで・・・

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正編で一人、様々な苦難の果てに天国にたどりついたダンナを追って、
続編では奥さんが、子供たちと近所の娘さんを連れて天国を目指す。
やっぱりいろんな化け物が現れてピンチになると、助け手が現れます。
お互いに悩みを話し合い、助け合う。
正編よりは、和気あいあいの色が濃いですね。
それでも、天国を目の前にして、最後の川は独りずつ渡る。
死ぬときは一人、冷厳な真理です。

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紙の本

生まれた国が悪いのか、それとも彼が悪いのか・・・・

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ヒトラーと並んで、20世紀最凶の独裁者と言われるスターリン。
ヒトラーは、今でも先進諸国を中心に少数の熱狂的な支持者があるが、
母国ドイツでは一般に、口にするのも忌まわしい犯罪者とされている。
スターリンの評価はどうか。
日本には彼の名を冠したロックバンドがあったが、奇をてらってつけたらしく、
大概の国では、スターリンをプラスに評価する人は、思想の左右を問わず、まずいない。
ところが「母国」ロシアでは、近年彼を「偉大な指導者」として評価する動きが高まっているらしい。
(正確には、彼の出身は黒海とカスピ海に挟まれたカフカース地方・現ジョージア共和国だが)
この内外の評価のギャップはなぜかという問題意識から出発して、彼の生い立ちから死に至るまで、
人物と事績を丁寧に追うことによって、彼の実像をとらえようとしたのが本書である。
貧しい靴職人の家に生まれ、キリスト教の神学校に進んだ優等生の少年が、
社会主義の反体制運動に目覚め、退学処分を受け、シベリアへの流刑から逃亡したりするうち、
レーニン率いるボリシェビキ党の有力な幹部となっていく。
革命の先達マルクス、レーニンのような天才的な閃きは、彼にはなく、
どちらかというと「努力の人」らしい。
ボリシェビキが権力を握り共産党と改称した後、スターリンは蔵書のリストを作らせ、
貪欲に勉強を始める(本書144~147ページ)。
先輩レーニンや政敵トロツキーは、第一次大戦後、ヨーロッパでの社会主義革命に期待をかけたが、
それは起こらなかった。
スターリンは、ソ連独力での革命建設を目指し、レーニンの死後トロツキーを追い落とし、
「一国社会主義」の路線を取りだす。
レーニンは、晩年の著書「国家と革命」で、共産主義の下では国家は「死滅」すると説いたが、
スターリンの指導の下、軍と秘密警察を中心とする国家権力は強化され、
「社会主義の祖国ソ連」を守れという、ナショナリズムの色が濃くなっていく。
急速な重工業化と軍備強化が進む中で、農民が巨大な犠牲を強いられ、
反対者とみなされた者は容赦なく「粛清」され、処刑・流刑の憂き目にあうようになる。
しかしながら、この強力な軍事国家建設なくして、ソ連が第二次大戦でナチス・ドイツの猛攻に耐え、
戦後はアメリカに対抗する強国となれたであろうか。
今もロシアでスターリンの評価が高いのは、この辺にあるらしい。
従来、晩年のレーニンの言及を元に、スターリンの「粗暴」さが恐怖の独裁を招いたとされてきたが、
著者はこれを批判し、レーニンの行った「赤色テロル」を指摘して、こう述べる。
『歴史上の大量殺害は、多くは政治指導者の「粗暴」さよりも、自分の主張への過度の確信と結びついている。』(本書131ページ)
この怖さは、共産主義に限るまい。
独裁政治を進める中で、妻は自殺、息子は酒乱になり、晩年は誰も信じられなくなって孤独の中で病に倒れる。
側近に発見されたが、パニックか故意か、すぐに医者は呼ばれず亡くなり、
彼の死後、娘はスターリンの姓を捨てる。独裁者の末期は悲しい。
ソ連が崩壊して30年以上経つ。
ロシアは共産主義を捨てたはずだが、トップには元・秘密警察の親玉が据わり、
スターリンそっくりの政治が今も行われている。
そもそもロシアという国に、民主主義、平和主義は似合わないのだろうか。
なおタイトルは、昔のドラマ「非情のライセンス」主題歌、「昭和ブルース」のもじりです。
スターリンの犠牲となった方々には申し訳ないが、天知茂の歌声が、本書にはよく似合う。

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紙の本

紙の本日本国紀 新版 上

2023/11/06 16:22

歴史は暗記物にあらず、物語です

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人名と年号の暗記に四苦八苦した受験時代。今思えば、あんなものは歴史ではない。
本書は古代から幕末までの通史が、物語として文庫本一冊にまとめてあり、
日本は天皇を中心とし、独自の文化を持った素晴らしい国だから、もっと誇りを持とうという視点で書かれている。
しかしながら、戦前の皇国史観とは一線を画しており、右翼というよりは穏健保守の歴史観といっていいだろう。
皇統の「万世一系」については、それが事実であったかどうかより、
古代よりそう信じられていたこと、天皇を倒して新しい王朝を建てようという動きが歴史上なかったことが強調されている。
源平や南北朝の合戦のきっかけとなった、皇位をめぐるドロドロした争いも包み隠さず書かれているし、
南朝の肩を一方的に持つこともなく、楠正成についても冷静に記述されている。
ただし、息子を皇位につけようとした足利義満の野望や、新井白石が創設に尽力した閑院宮家の血筋が今の天皇につながっていることなどは、
本書の特徴的な記述といえるだろう。
本書では江戸時代を高く評価し、寺子屋や藩校の普及による世界最高の教育水準や、
街道・上下水道といったインフラの整備が日本の近代化に果たした役割を強調している。
荻原重秀・田沼意次といった、悪役視されがちな人物の政策にスポットライトを当てているのも面白い。
桜田門外の変に絡めて、百田氏はこう書く。
「教科書でしばしば太字で記される出来事の裏には、名もなき人々の慟哭や嘆きがあります。
しかし、歴史の大きな流れは実はそうした名もなき人々が作っていることを忘れてはならないと思っています。」
まさにその通り。いわゆる進歩派学者の方々が、そうした視点で分かりやすく通史を書いてくれただろうか。
評者は百田氏の歴史観に百パーセント賛同する者ではないが、実に魅力的な通史であり、下巻も楽しみです。

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紙の本

一粒の麦、地に落ちて死なずば

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城山三郎「落日燃ゆ」で広田弘毅は、「悲劇の宰相」として描かれた。
著者は広く資料を渉猟して、彼の実像に迫った。
結論から言えば、彼は軍部に引きずられて日中戦争にブレーキを掛けることができず、結果として太平洋戦争を食い止められなかった。
政治家としては、失敗したと言わざるを得ないであろう。
カイライ国家「満州国」を温存したままの「日満支」親善・対欧米協調など、そもそも無理筋だった。
相手は、若き日の彼が冒険旅行した「支那」では、もはやない。
ナショナリズムが民衆レベルまで高まり、外国の侵略を排除しようとする「中国」である。
その中で「親日」の政治家達と交渉を図っても、彼らには裏切者の汚名を着る恐れがあり、生命の危険すらある。
広田には、それが分からなかったのだろうか。
そもそも彼は、外務省先輩の幣原喜重郎や、同期の吉田茂のような親英米派ではない。
本書では、彼が少年時代から親しんだアジア主義的結社・玄洋社との関係について、詳しく述べている。
彼が一高・東大で学ぶことができたのも、外務省の山座円次郎の面識を得たのも、頭山満をはじめとする玄洋社人脈のおかげであり、
頭山が死去した時も、彼は葬儀委員長を務めている。
1932年に駐ソ大使を離任して、翌年初めて外相に就任するまで、彼は政党政治に批判的な国維会や、アジア主義的な大亜細亜協会に加わっている。
狂信的な右翼とは言えまいが、中国大陸進出に肯定的なアジア主義に彼が共感していたことは、否定できないだろう。
だからこそ、「満州国」が成立し、やがて日華事変に向かうこの時期に、二度にわたり外相を務め、首相にまでなれたのだろう。
それでも彼は、国の外交を担う者として、戦争の拡大を食い止めるべく努力し、欧米との親善に努めた。
だが、軍部の無謀な進出を支えたのは、夜郎自大と化した「国民世論」であった。
著者は、1937年の南京事件について、広田は杉山陸相に軍紀粛正を求めるのみで、なぜ閣議に持ち出さなかったかと批判するが、
全国が南京陥落を祝う提灯行列に沸く中で、閣議に持ち出したところで、何ほどの効果があっただろう。
彼は死刑になる直前、愛読した「論語」から、「身を殺して仁をなす」の言葉を引いている。
だがこれは、容易なことではない。
1930年、浜口首相が東京駅で狙撃されて以来、二・二六事件に至るまで、
十指に余る政治家・軍人が、右翼テロによって殺され、あるいは、殺されかかっている。
彼が命を惜しんだというのは酷だろうが、近衛内閣の下で二度目の外相を務めた時には、
もはやあきらめの境地になっていたという著者の見解に同意する。
東京裁判が始まり、マッカーサーは、昭和天皇を被告としないことを決断した。
天皇に責任を負わせられないなら、軍人だけではなく、文官にも責任があるのではないか。
開戦間近まで三度にわたり首相となった近衛文麿が、逮捕直前いかにも貴族らしい最期を遂げ、
連盟脱退・三国同盟の立役者・松岡洋右が裁判中に病死。
こうなれば、広田の責任を問うしかない・・・。一票差で、死刑判決が下った。
しかし、彼の死は、無駄ではなかったと思う。「身を殺して仁を」なしたと、言えるのではないか。
東京裁判が、いかに無理な政治裁判であったことをハッキリさせてくれた。
そして日本が、中国という国と付き合うことの難しさを教えてくれた。
彼に贈りたい言葉。
「一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにて在らん、もし死なば、多くの果を結ぶべし」(新約聖書文語訳・ヨハネによる福音書12章24節)

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紙の本

紙の本でっか字大阪詳細便利地図 24区+全市 2版

2023/10/09 22:21

一回り大きくなって、見やすいです

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今日びは皆さん、スマホで見てる?本屋さんの地図売り場も、ちっちゃくなりました。
でも、あっちへ行こうか、こっちへ行こうかとワクワクして探す時は、
昭和世代の私には、文庫サイズの地図をめくるほうが分かりやすいのです。
一回り大きくなって、ちょっと高くなりましたが、やっぱり字の大きいのは見やすい。

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紙の本

紙の本天路歴程 改訳新版 正篇

2023/09/26 23:13

聖書一冊で天国に行ける?

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司馬遼太郎いわく、
「プロテスタントであれば、聖書を一冊もっていれば、
たとえ牧師さんを介さなくても、自分と神と直接取引できる。」
(「国家・宗教・日本人」井上ひさしとの対談集より)
本書はまさに、聖書一冊で天国を目指す物語にして、世界的ベストセラー。
著者バニヤンは17世紀の英国人。貧しい職人の家に生まれ、学校は、少年時代ちょっと行っただけ。
16世紀に国王の結婚問題がきっかけで、英国国教会がローマカトリックから独立。
17世紀に入ると、国教会改革を唱えるピューリタン(清教徒)が活発化、
クロムウェルによる清教徒革命、王政復古、名誉革命が相次いで起こる。
若き日のバニヤンはクロムウェル軍の兵士、帰郷してピューリタンの信仰に目覚め、
やがて説教者となるが、国教会の迫害を受けて何度も投獄され、獄中で本書の構想を練った。
物語はバニヤンの夢という形を取る。
主人公が聖書らしき本を読むうちに、このままでは身の破滅だと泣き出し、
妻子にも理解されぬまま、救いを求めてひとり旅に出る。
道中で道連れはできるが、意見が合わず別れたり、友人となっても時にはガチンコの論争。
しかも本書には、「教会」という言葉がほとんど出てこない。
聖書一冊のみによる、個人の信仰。絵に描いたようなプロテスタントの思想。
悪魔の手先に殺されそうになったり、「この世で楽しく過ごせたらええやん」という人達や「にせクリスチャン」と論争したり、
様々な誘惑や困難の果てに、道中で出来た友人と二人、天国にたどり着く。
聖書の引用は、まさに自由自在。時間があれば、聖書(旧約・新約合冊の、出来れば字の大きいやつ)を参照しながら読むと、なお面白い。
作中の登場人物は、善人は善人、悪人は悪人、中途半端な人も、ずっとそのまんま。
「水戸黄門」みたいな時代劇でも、悪人が改心することあるで。
これはピューリタンの教義によるらしい。どう受け止めるかは、もちろん読者の自由。
しかし、本書によれば、自称クリスチャンのうち、天国に行けるのは、どんだけ?
ふと、そう思った。

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紙の本

紙の本落日燃ゆ 改版

2023/09/18 23:19

本物の庶民宰相だったのだが・・・

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石材店の息子に生まれ家業をつぐはずが、周囲の期待を受けて進学コースを歩み、
日清戦争後の三国干渉を見て、戦争に勝っても外交で負ける日本ではだめだと、外交官を志す。
外交官になっても、パーティーやダンスといった社交ごとは苦手。
門閥、閨閥がモノをいう世界なのに、結婚したのは、郷里で学んだ玄洋社ゆかりの女性。
それでも広汎な情報収集と粘り強い交渉力で頭角を現わし、
満州事変、国際連盟脱退といった暗雲が立ちこめる時、外相に就任。
2.26事件後、「背広を着たやつがいい」ということで、まさかの首相を拝命する。
この人こそ、後年の「今太閤」なんぞと違う、本物の庶民宰相だったのではないか。
それだけに、昭和天皇に「名門をくずさぬように」と釘をさされたというのは、悲しい。
だが広田内閣は、中国大陸進出と軍備強化を推進しようとする軍部との折り合いがつかず、
一年も持たなかった。
その後、近衛内閣で再び外相に引っ張り出された時、日華事変が勃発。
軍部に真っ向から反対するのではなく、国益を守りながら平和的解決を図ろうとしたが、挫折。
首相・外相在任時の行動が、極東軍事裁判で、侵略のための「共同謀議」を行ったとして、
死刑を宣告される。
右翼団体と目された玄洋社とのつながり、頭山満の葬儀委員長を務めたことが、
命取りとなったのだろうか。
それでも、彼は一言も弁解しなかった。
義務を果たして生き、死ぬとは、こういうことか。見失いがちなことを、思い出させてくれた。

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紙の本

紙の本いつか王子駅で

2023/09/10 16:13

職人芸と、昭和の名馬たち

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居酒屋で出会った正吉さんは、名人級の印鑑職人、居酒屋なのに本格コーヒーを淹れてくれる女将さん、
古書店主・筧さんのパラフィン紙掛けの見事さ、
間借り先の大家・米倉さんは旋盤工場を営み、そこで働く林さんの美しい手並み。
次々と職人さんが出てきますね。
米倉さんの一人娘・咲ちゃんは陸上選手で、
料理しながらの独自の筋力トレーニングすらも、職人芸に見えてきます。
この著者独特なのでしょうか。会話に「」がない、修飾語を連ねていく、
センテンスの長い文体も嫌味がなく、飽きさせず、一気に読んでしまいました。
これも職人芸か。
それと、昭和の名馬たちが続々と出てくるのがうれしい。
居酒屋の名前も、昭和49年、牝馬クラシック初戦・桜花賞を勝ちながら、
ケガで引退した馬にちなむもの。
京都・淀の粉雪に散った悲運の流星・テンポイントが出てきたのは泣かせる。
徳田秋声、滝井孝作、島村利正といった、地味系の小説家の文章が出てくるのも不自然でなく、
私も読んでみたくなりました。

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紙の本

紙の本あの日の「徹子の部屋」

2023/09/04 23:28

やっぱり昭和はキャラが濃い

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今から47年前に始まった、国民的インタビュー番組。
記念すべき第一回ゲストは、森繁さん。止まらないウンチクに、圧倒される黒柳さん。
いきなり大先輩、その後もキャラの濃い人達ばかり。
きっちり屋の料理マニア、沢村貞子さん。芝居こそ「女の一生」、杉村春子さん。
勝新は天衣無縫、話が飛びまくり、意外や大変なアガリ性の、越路吹雪さん。
狐狸庵先生若き日の結核闘病、戦争で奇跡的に助かった三波春夫さんの話もすごい。
一番話が合ったのは、「サヨナラ、サヨナラ」の淀川長治さんみたいですね。
16人のゲストのうち、今も「こっち」におられるのは、欽ちゃんと佐藤愛子さんだけになりました。
先日、スペシャルで三波さんの映像はチラッと見れましたが、ほかも見たかった・・・。

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紙の本

紙の本井上成美 海軍提督三部作 改版

2023/08/23 22:48

「坂の上の雲」とセットで読もう

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司馬さんが「坂の上の雲」で描いた、日本海海戦を頂点とする、日本海軍の栄光。
阿川さんの本作は、その後日譚として読むと興味深い。
国民的英雄となった東郷平八郎が、軍縮反対を唱える海軍右派に担がれ、
没後は東郷神社まで出来てしまう。
日清・日露戦争で中国大陸に得た権益の無闇な拡大に熱中する陸軍、
それを、夜郎自大となった「国民世論」が後押し、
その動きに海軍も引きずられ、ついには絶望的な対米戦争に突入。
この憂鬱な昭和史を、司馬さんはノモンハンの敗戦を切り口に描こうとして、果たせなかった。
阿川さんは、井上成美という風変わりな海軍大将を切り口に、見事に描いた。
いや、風変わりなどという、生易しい人ではない。この人、日本人だろうか。
軍人の神格化など、おかしいと思ったことは遠慮会釈なく批判、
「アメリカと戦争して勝てるわけがない」と、頑ななまでに言い続ける。
空気なんか読まない、いい加減な妥協はしない、身内親類、先輩後輩といった情実では決して動かない。
令和の今でも、いくら有能でも、こんな人は日本の組織の中では生きにくいだろうと思うし、
こんな人を大将というトップにもってきた日本海軍という組織に凄みを感じる。
最終章の、彼が聖書を熟読していたというエピソードが興味深い。
切れ味鋭い論理で正論を述べ、身内親類には冷淡と思われるほど厳しい反面、
部下や使用人には温かく接し、戦後は近所の子供たちにタダ同然で英語を教える。
金銭には潔癖で文字通り清貧の晩年を送りながら、軍人恩給の停止には約束違反と怒る。
これは、キリスト教徒、しかも英国のピューリタン(清教徒)の生き方に近いのではないか。
ふと、そう思った。

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