ポラーノの広場さんのレビュー一覧
投稿者:ポラーノの広場
電子書籍詩心の風光 新版
2023/04/17 10:19
平和を求める心を深く知る
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みすず書房といえば、多くの良書を出してきた出版社として誰もが知っていますが、この本はそのみすず書房が戦後の焼け跡に「美篶書房」として創立し第一冊目として世に出した本です。この度電子版で読めるようになりました。片山敏彦氏にとっても、戦時中の苦しかった生活から脱して、「生」を肯定することのできる時代を迎えた喜びが、本書全体に溢れています。序にこう述べられています。「感覚とイデアと、分析と綜合と、友愛と孤独と、知性と直感と、有形と無形とが、人間性への新しい自覚に於いて握手して夢と行動とを協力させ、精神アリストクラシーと社会デモクラシーとの統合を熱意を以て志向する。されば、この志向に従はうではないか」。難しい表現ですが、この言葉を本書によって読み解いてみたいと思いました。そして、片山敏彦氏の言われた言葉は今の時代にこそ深く深く受けとめるべきことがわかりました。
紙の本山の上の家 庄野潤三の本
2023/04/16 13:09
家族との暮らしの中で
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庄野潤三さんは、少し年配の方には今も人気のある作家です。東京から小田急線で郊外へ出たところに生田というところがあります。その丘陵の上にまだほとんど家が建っていなかった頃に、庄野さんは家を建てて、家族と共に移られました。それ以来、ずっとここで家族との暮らしを楽しみながら、作品を書かれ、亡くなられました。この「山の上の家」での暮らしの様子が、写真と短い文章でもって丁寧に描かれています。決して広くはない家なのですが、楽しく暮らす知恵が詰まっていて、気持ち良くなります。
紙の本大坊珈琲店のマニュアル
2023/04/16 12:41
珈琲店ご主人の矜持
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大坊珈琲店。東京の南青山にあった小さな珈琲店。このお店は1975年に始められ2013年に閉じられました。著者はこのお店のご主人であり、閉店を機に書かれたのがこの本です。岩手県盛岡に生まれたご主人が、その人生を振り返りながら、自身の珈琲への思いを淡々と書いておられます。一杯の珈琲に込められた職人の矜持が存分に感じられる本です。今どきのカフェとはまるで違う、しかし決して古臭くない著者の珈琲談義に耳を傾けることができます。
紙の本チョコレートの手引
2023/04/16 12:16
チョコレート好きにはたまらない本
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著者は東京の下町で小さな珈琲店を営む方です。もともと珈琲の焙煎技術を習得するなど珈琲に興味をお持ちだったようですが、どういう理由があるのか、チョコレート会社でお仕事をされてチョコレートに関するたくさんの知識を身に着けられました。そうして書かれたのがこの本です。チョコレート好きの人にとっては楽しく読めること間違いなしです。この本の姉妹本が『珈琲の表現』。著者のお店でチョコレートを一粒食べて珈琲を飲んだら、さぞ楽しいことでしょう。
紙の本原野から見た山
2023/04/14 16:59
日高への思いの詰まった本
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北海道日高の原野に開拓農民として入った坂本直行さんは、日々の暮らしの中で絵筆をとることを忘れず、時には山に入って絵を描き続けた。農民として画家として生きた坂本さんの名著が文庫版で復刊された。古書店でも入手の難しかった本がこうして手に入るのだから嬉しい。いまでは想像すら難しい厳しい暮らしの中でも絵を描く喜びを忘れなかった坂本さんの生き方は素晴らしいと思う。日高の山々を描いた作品はその生き方を示している。
紙の本北海道の大自然と野生動物の生態をモチーフに絵本創作法を語る 手島圭三郎仕事の流儀
2023/04/14 16:39
手島圭三郎の魅力が詰まった本
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北海道の厳しい自然と向き合って、そこに生きる動物たちの生と死を真っ直ぐに見続けた手島圭三郎さん。手島さんは自身の目で確かめた野生動物の生態を木版画として描き、文章を付けて、絵本にしてきました。仕事への思い、創作の手順、絵本にすることの難しさと面白さについて手島さん自身が語り尽くした本です。
2023/04/14 16:22
力強い生き方
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賀川ハルさんを描いた物語。キリスト教の信仰に支えられて社会運動に邁進した賀川豊彦の妻として、そして自らも社会活動に積極的に参加したハルさん。ハルさんについては、これまで賀川豊彦の伝記の中で語られることが多かったので、結婚してからのことに偏っていましたが、この本は、生い立ちから少女の頃のことが詳しく書かれています。社会福祉などなかった時代に、さまざまな事情から苦しい暮らしを余儀なくされた人たちを気遣い、励まし、寄り添って生きた賀川ハルさんを知ることができました。NHKの朝の連続ドラマにしてもらえたら嬉しいです。
紙の本言葉を恃む
2023/04/14 15:31
言葉によって生きる
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「言葉を恃む」はとても難しい表現です。この本の帯には「言葉によって生きることこそ、自分の在り方を知ること」と書いてあります。「言葉を使うことへの畏れと魅力」とも。著者の竹西寛子さんは現代の日本においてもっとも美しい文章を書く人です。その人が言葉からいかに生きる力を与えられてきたかを語った講演の記録。古典と現代文学、詩歌と小説を分け隔てることなく自らの思うままに取り上げて丁寧に話してくれていて、講演会場にいる気持ちになりました。そして会場を出る時には清々しい気持ちになっていました。
紙の本大きな木のような人
2023/04/14 15:03
少女の成長を見守る大きな木。
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植物の大好きな少女と植物学者とのある夏の日の出会いと別れの物語。少女と学者との交流を大きな木が見守っている。少女が去った秋の静かな植物園で学者は思う。「大きな木よ。じっと記憶する木よ。おまえが見てきたものに、わたしは耳をすます。おまえから生まれたことばが、わたしの物語になる。」この言葉は作者の言葉でもあると思った。『ルリユールおじさん』と姉妹の本です。
紙の本チェロの木
2023/04/14 14:33
チェロと森との協奏曲
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森を育ててきたおじいさん。チェロを作る仕事をしているお父さん。そしてチェロ弾きを夢見る少年の物語。森の中で大きくなった木は切り出され、チェロを作る板になった。お父さんは小さなチェロを作って少年の誕生日にプレゼントしてくれた。「木にやどった音」が「チェロから生まれでてくる不思議さ」に少年は心を奪われる。チェロの響きがいつまでも続く本です。
紙の本わたしの木、こころの木
2023/04/14 14:08
木との対話
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木の声に耳を傾けてみましょう。自分の心に何かが響いてきます。この本の作者はそう教えてくれました。木は大空に向かって高く高くのびていくものと思っていました。しかし作者は横たわってもう新しい芽を出すこともない木に足を止めています。大切なことを教えてくれました。
2023/04/14 12:17
草木と共に
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「牧野先生、先生のお仕事を手伝わせてください! 」本を読み終わって私は思わずこう言ってしまいました。先生は素直で純粋な心をもって草木を観察し、その姿をありのままに記録し続けました。牧野富太郎先生の生き方を知り、学び、しっかり考えることのできる本です。
2023/04/14 15:54
柚木沙弥郎さんの作品を知るにはもっとも良い本
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柚木沙弥郎さんの作品を知るにはもっとも良い本です。柚木さんは、言うまでもなく、現代日本の染色家として著名な方ですが、わたしは柚木さんの人形を知りたくてこの本を手に取りました。本の最後の6ページに載っています。1ページに大きく1体ずつが4ページ、あとの2ページにまとめて19体。染色作品と同様に、1ページに1作品としてくれたらもっとよかったと思いました。それでもこの大型本で柚木さんの作品をゆっくり観ることができるのは嬉しいことです。装丁もとても良いと思います。
紙の本なつやすみ
2023/08/17 20:30
やっぱり夏休みはこうでなければ
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絵のひとつひとつがちょっとレトロに描かれていて、メインの文章の他に小さな文字で絵のあちこちにちょこっと書かれているところがとても楽しいです。作者の丁寧な仕事ぶりに感銘します。夏休みはやっぱりこうでなければいけませんね。読み終えてほっとするのは歳のせいでしょうか。子どもたちにこんな夏休みを楽しんでもらいたいです。