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ロボさんのレビュー一覧

投稿者:ロボ

15 件中 1 件~ 15 件を表示

こんな面白い漫画と、<男だから>ってだけで、ひょっとしたら一生出会わなかったかも知れないなんて。

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 週刊少年ジャンプしか読んでない少年たちに、少女マンガの面白さを伝えた高河ゆんの「源氏」。

 それから十数年たって、今度は少年たちにヤオイの面白さを伝えてくれる作品が現れた。それも同じ「WINGS」という雑誌から。

 きれいな描線で全体のバランスまで考えられて描かれたページ、格好良いシャープな台詞。そして、行き当たりばったりでない、先々まで考えて練りこまれたストーリー。プロ野球の解説と同じで、必要以上にうるさい少年漫画とは全く反対な、必要なもの以外を徹底的に削ぎ落とした、その画面構成はTVの連続ドラマか、映画のラブストーリのようだ。

 行間を読むのが読書の基本、コマとコマの間を読むのが、漫画読みの基本。一歩先にすすむ、よしながふみの作品は、ひとコマひとコマの中からも、そこに描かれていないものを読めてしまう。作中では言葉にされない、絵でも表現されないなにかが伝わってくる喜びがある。

 WINGSという雑誌は、中性的な絵柄と作風で売っている。まだ男性が少女漫画を読むのが、はずかしいことだった時代には、掛け橋的なその役割で大きく読者を増やしたけど、読者がボーダレスになった現在も、あえて中性的な作品だけ集めているため、エアポケットにはまってしまって、書店の棚では埋もれてしまっている。どちらかというと、で少女漫画それも耽美系なコーナーに置かれてしまっている。

 ずるい、ホモマンガっていっても、こんな面白い漫画をどうして、女性だけで独占しているんだ。ほかにもあるだろう、もっと表に出してきてくれ!と叫びたくなる作品だった。

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紙の本スカイジャック 改版

2001/06/11 15:18

映画もいいけど、小説もね

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 阿部真理子さんのポップな表紙。「ハズレなし!」との大胆な帯のコピー。さあ、いやな予感のした方、そのとおりです。へたなハリウッド映画よりもアメリカ的なジェットコースター小説家のトニー・ケントリックです。トニー・ケントリックのデビューとその時代、60〜70年代のアメリカでの映画とミステリの関係は、この著者の「リリアンと悪党ども」(角川文庫)の解説にて、小森収さんが詳しいのでそちらをみていただくとして。
 意表をつかれるイントロ、予想もつかない展開、派手なアクション、仲の悪い主人公たちだけど、憎まれ口を叩き合いながらも一緒にいる内に芽生えていくロマンス、悪役との息詰まるやり取り、舞台を支えてリアリティを深め、その上で本筋のストーリーにまで口をだす脇役たち、そして、やっぱりそうだよねの大団円。映画が小説から奪ったお客を小説に引き戻す、その映画的創作手法の出来映えには感嘆するばかり。
 ぜひ、本作を手にとって、一ページ目を読んで欲しい。一気に最終ページの最後の一行まで、読みきってしまいたくなることまちがいなしなんですから。小市民な生活を過ごす主人公たちが、ある日なんの因果かとんでもない事件に巻き込まれるコミカルでハートフルなクライムストーリー。本作の主人公は若き弁護士ベレッカー、そしてパートナーには元妻兼秘書のアニー。翻訳家には、「将軍の娘」ネルソン・デミルも「推定無罪」スコット・トゥローも手がける上田公子。文章からこぼれ出すユーモアをも見事に訳しきるその力量、どうぞご一読をとお薦めします。

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B級ホラーアクション漫画の決定版、吸血鬼やクモ男や猫娘やジッパーフェイスが現代日本に甦る。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この作家に、あと必要なのは強烈な個性を持ったキャラクターだ。
 「天上天下」によって、デッサン力、トーンワークなど、その画力は大いに評価された。アクションシーンを描くネーム力もセンスもある。それはこの「魔人-DEVIL-」でも同様だし、作品世界として、伝奇的要素が増えた分、よりパワフルに展開されている。

 ある日、町に降りかった連続行方不明事件、現場に残された多量の血痕からは、吸血鬼伝説がとりざたされる。週刊少年マガジンに掲載された読みきりでは、本作のプロローグが語られる。主人公は暴走族のヘッド。彼が、事件の元凶である魔神に「選ばれる」までの話だ。

 掲載紙を月刊マガジンspecialに移した本作では、一転、主人公はガリ勉童貞優等生になる。しかもプロローグの主人公ジッパーフェイスは、妹の猫娘とともに「魔人狩り」となっている。連載では明らかになっている「魔神」の行方も、この一巻ではまだ語られない。ガリ勉主人公は、勇気と知恵で襲い来る魔人、クモ男と戦う。もっとも、魔人を目の前にした時に主人公の額に浮かび出た傷跡が、彼を待ちうける”なにか”を予感させてはいるが。

 吸血鬼に、現代科学が挑むテーマは再三再四語られる。この作品もその範疇に充分収まりきってしまう。後はいかに描き切るかだ。小野不由美は「屍鬼」にて、医学と日本の地方集落の閉鎖性を吸血鬼の対抗勢力として描いた。奥瀬サキは「夜刀の神つかい」で公安警察や中国マフィアを、吸血鬼と戦わせる。

 作品世界を引っ張る魅力的なキャラクターを作り出せるか。吸血鬼という、もはやイメージの定着した最強の人類の天敵に匹敵しうる個性が、いまだ作品にないのが残念だ。作者の名前が一番個性的だという現状からの殻を破れたとき、菊地秀行がそうであるように、最強の伝奇作家の名が冠されるであろう。その時がくるのが楽しみだ。

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紙の本みかん・絵日記 特別編

2001/06/19 05:50

この事実を、人はあまりに知らなさすぎて

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 月刊メロディに、平成11年から平成13年にかけて、掲載された4篇の物語。みかん色の毛をした人間語を話す猫「トム」と、その飼い主「吐夢」の出会いを覚えている人も、そうでない人も、ぜひ手にとってみてほしい。

 猫の生きる時間と、人間の生きる時間とは、大きくずれていますし、見てるものも、感じてるものも違います。それでも、互いにそばに居ると、飽きることなく楽しく、なぜかしあわせな時間を一緒に過ごせます。わからないはずの言葉でも、ときおり通じる気持ちがあることを知ります。

 「サトラレ」ではありませんが、猫たちも「みゃー、ふみゃー」というあの泣き声に、その仕草に気持ちを力一杯こめて、想いを放っているのではないでしょうか。

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紙の本プラネテス 1

2001/06/12 08:50

日本SFは、宇宙を語る言葉を取り戻した

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 最近、面白いSFないなぁ。「FSS」ぐらいじゃないか、漫画でも。そんな嘆きがあちこちから聞こえてくるよう。ライトノベル全盛期な今日、深く、静かに、夜空から降りてくるような物語はSFというジャンルではなく、癒し系というジャンルになってしまったのかな、という気にもなる。なんでだかわかんないけど文明の遮断が起きた後の、未来日本を舞台にしている「ヨコハマ買い出し紀行」といった漫画や、遺伝子SF小説なはずの「リング」などの、それら。でもなんだか物足りない。もっとSFが読みたい。

 その声に応える作品は、いまさらながらの「宇宙飛行士」の物語だった。「アポロ13」に「ミッション・トゥ・マーズ」、ハリウッドは、なんのかんのと作りつづけていた。日本でも「ロケットボーイ」なんてTVドラマが作られている。沖一の「アストロノーツ」や新谷かおるの「パスカルシティ」に宇宙飛行士の夢をみた読者たちに贈られた、21世紀の宇宙飛行士SF、ついに単行本化。

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俺より強いやつに会いに行く

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 PRIDEもK—1もまだなかった時代、アントニオ猪木がモハメド・アリなどと戦って、世界一強いのは誰かを問うていた時代。漫画ではあったものの、異種格闘技戦を正面に掲げ、それをリアルに描く作品が生まれた。一子相伝の暗殺術という「北斗の拳」を彷彿とさせるその格闘技の名は“陸奥圓明流”。
 暗殺術=人殺しの技は現代には不要だ。ただ、それが世界最強の技であることを証明する、そのために主人公陸奥九十九は戦う。
 「空手バカ一代」や「プロレススーパースター列伝」は、実話を元にしたノンフィクション漫画だった。「1、2の三四郎」「あしたのジョー」「リングにかけろ」は荒唐無稽な技で戦い、しかもそれぞれの格闘技の枠を超えなかった。異種格闘技戦という大風呂敷を、陸奥圓明流という架空の流派を主人公にすえて、なおかつ架空ではあっても、その技のひとつひとつにはリアリティをもたせて描いた、この作品は大きな流れを作り出した。
 「グラップラー刃牙」という「相手を倒すためなら何でもOK」という格闘技マンガ。「ストリートファイター」「バーチャファイター」というTVゲーム。そして、現実の異種格闘技戦トーナメント。

 少年達の心をつかむのは、ひとことの言葉である。修羅の門の作品において、それは「世界最強」ということばで表される。のちに「ドラゴンボール」の中では、「もっともっと強くなりてぇ」と表現されるその言葉は、「ストリートファイター2」において完成される。
 -俺より、強いやつに会いに行く-

 少年漫画のほとんどには、主人公より強い敵がいる。その敵を倒すために主人公が強くなっていく。それを共時体験していくのは、確かに面白い。しかし、「修羅の門」は違う。“陸奥圓明流”は最初から無敵なのだ。しかも陸奥九十九は歴代の“陸奥圓明流”の継承者の中でも最強だと語られる。最強な者が、最強であることを証明するために闘いつづける。そのことが、最高に面白い。

 蛇足ではあるが、まだ一度もこの作品を読んだことがない方に一言。読まれるときは文庫版では2巻以降からまず読まれた方がいい。1巻が面白くないわけではないが、作者の技術が荒削りな分、またザコキャラとの試合が多い分、現在の漫画に比較すると退屈なのは否めないからだ。重要なエピソードがあるし、なによりも「ホンマに強いのか、こいつ?」という前ふりとして、2巻以降でこの作品の面白さを体感してから、ぜひ立ち戻って読んで欲しい。

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紙の本ご機嫌の直し方

2001/05/25 04:19

そこらのHOWTO本とは一味違う不思議な本

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 努力する「才能」って、あるよなぁ。高校生の頃から、よくそんな話を友達としていました。「やる気」になるために、必死になって環境を整えないと勉強に集中できない人と、何気に、集中モードに頭を切り替えられる人がいたからです。
 「頑張ったらできる」「努力したらできる」そんな自信はあるけれども、では、どうやったら「頑張れるか」「やる気になれるか」、当時はわかってなかったのです。当然のことですが、教壇の上に立って教えてくれているる先生方も、生徒らが努力するための手助けはしてくれましたが、生徒自らが「努力するため」に「どう努力すれば」いいのかは教えてくれませんでした。

 そんな頃、ある本が発売になりました。「脳内革命」と名づけられたその本は、「ポジティブシンキング」という流行語と結びつき、「前向きに考えれば」「やる気」が出ることを教えてくれました。そうか!これだ!と思いました。けれども、すぐ次の悩みにぶちあたり、また考え込むはめになりました。「どうやったら前向きに考えられるのか」が、わからなかったんです。

 財布を落として落ち込んでいるとき、軽い冗談のつもりで言った言葉で人を傷つけてしまって反省しているとき、失恋したとき、人に騙されたとき、うまくいかなくて自己嫌悪しているとき、へこんでいるとき、ブルーになっているとき、ダメダメなとき「前向きに考え」たくないときが生きているとたくさんあります。そんな時に、どうすればいいのか?

 この一冊の本の、どのページでもいいから開いてください。

 この本の各ページには、“機嫌を直す”ための具体的な方法が書いてあります。全部で、109例あります。なんで、109例なんでしょうか、108じゃないのか? それを考えてみるのも、ひとつの方法かもしれませんが、なんにせよ、109個もあれば、そのうちのいくつかはご自分の、その時の気分にあっているもんです。それを実行する、そうすると機嫌が直る。そうすると「前向きに考え」たり、「努力する」ことも意外と簡単になっています。そんなもんです、はい。これは、そんな本なのです。

 最後に、不思議なことをひとつ申し上げますと、この本は、機嫌の直し方を集めた本なので、この本に書かれてあることを実行してみることで、元気になるための本なのですが、なぜか不思議なことに、この本を「読んでいる」だけで機嫌が直り、うきうきした気分になれてしまうのです。ページ一杯に元気いっぱいに描かれた津々井良さんの挿絵も機嫌をなおすための、とっても大事な要素の一つなのでしょう。そして、編者の斉藤勇さんには、ほとほと感心させられてしまいます。

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紙の本ラヴレター

2001/06/26 12:38

いまは、もういないあなたへ宛てた手紙だからこそのふしぎ

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 札幌と神戸、とてもお洒落で、なのにそこに住む人達は、それを息をするのと同じくらい当たり前に感じてる、異国情緒の漂うふたつの都市。これは、そのふたつの都市を結んだ不思議な手紙の物語です。

 2年前に雪山で死んだ藤井樹、彼に宛てて出された手紙。届くはずのない、天国に届けばいいな、そんなことを二十歳をとうに越した彼女が、ちょっとした茶目っ気といえばかわいいが、彼がまだ生きて、札幌で中学校に通っていた頃のことを考えながら書いた手紙でした。

お元気ですか?私は元気です。
−私も元気です。でもちょっと風邪気味です。

思いもよらなかった返事の手紙、これはどこから来たの?
そもそも、さきの手紙は、どこに届いたの?

 こんなイントロで始まる物語が、ホラーでもファンタジーでもSFでもなく、紛れようもないラブストリーとして展開されます。少女漫画を読んで育ったという作者、そこからの影響は映像面でもはっきり見て取れますが、それは映画あるいは絵コンテ集の一巻、ニ巻で観ていただくとして、この小説では、もどかしい、でも好ましい、照れくさいような、なんともいえない、そのふしぎ感覚を味わってください。

 神戸の人の喋る神戸弁も、そして札幌の人が話す札幌弁も見事に活字化されているのも読みどころ。

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紙の本魔界医師メフィスト 怪屋敷

2001/06/02 03:26

「クォヴァディスドミニ」

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 <魔界医師>の名を冠した作品には、これまで2種類の敵が現れていた。<区外>から訪れ、<新宿>の支配を試みる者と、<魔界医師>その人に挑む者である。本作にて、それに新たな、そして最強の敵が加わる。だれが想像しえたであろうか、<魔界医師>の医師資格の如何を問い、その技術をもって試そうとするものが現れようとは。
 魔女医シビウでさえ、<魔界医師>の名を賭けて、メフィストに挑んだに過ぎない。その医師資格がそもそも危ういものであったとは、いやそうであったとして、それが如何なものかと問える者とは?

 彼の者の存在自体は、既作品のなかで言及されてもいる。先頃最新作が上梓された、コミック版魔界都市<新宿>では、本作とパラレルな設定で登場もしている。それでも<彼の>師の本編への登場は、<魔界医師>その人の存在感を今まで以上に深く、より鮮やかに<魔界都市>に映し出すこととなった。
 本作初登場の脇役たちも、充分に魅力的な設定と役回りを得てストーリーを盛り上げる。が、あまりのテーマの凄さに印象がかすんでしまっているのが残念。エロスとバイオレンスも控えめなので★一つ減。

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SF復古の序曲が聞こえる

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 全世界の人が、ある晩いっせいに同じ夢をみた。
 後に「R-ドリーム」と呼ばれるその夢の中で、人類は「ゼル」と名付けられた敵と戦っていた。R-ドリームでゼルに殺されることは、現実世界でも死ぬことであり、人々は夜の眠りのなかで、わけもわからずただ戦いつづけることを求められた。

 夢を入り口にして、異世界に迷い込むテーマは、「不思議の国のアリス」など児童文学で広く扱われていたし、その異世界での冒険が現実の人間社会の問題とリンクしているというテーマも、「はてしない物語」に代表されるほどポピュラーなものであった。ただ、それを単に漫画というメディアに焼きなおしただけではないところに、この作品の特異性はある。

 夢の中で、主人公たちの戦う武器は、マシンガン、ミサイルランチャー、ビームライフルといった機械製品である。また乗物もジープや戦車、そしてホバークラフト、エアバイクと、現代兵器プラスSFチックな近未来兵器が登場する。ストーリーの後半において、これらの現代プラス近未来的設定自体が、実はR-ドリームの成り立ちと深く関わることがわかってくる。

 同時に、トラウマや心理的防御の視覚化、夢のなかでの共時体験、人類全体の無意識の集合などといった、時の精神分析学の最先端理論も縦横に利用され、読む側は心理学の症例の一つとしてのR-ドリームの側面に思いいたる。

 とは言うものの、学問用語やSF用語、科学的解説などは作中には全然あらわれない。そこがまた凄いのだが、ストーリー自体はファンタジックに展開する。その画力やネームの表現力は、漫画の可能性、SFの可能性を堪能させてくれる。

 これ以降の作品において、この作者のセンスがどこか枯れた感じをうけるのがまことに残念だ。現段階では、この作品において最高潮を極めてしまったと言わざるをえないだろう。
 ともあれ、最近の作品の質にとらわれることなく、良質のSFの復刊がなされたことは、本当に嬉しいことだ。各出版社でも新しいSF文庫のレーベルが創刊されている。電脳戦記ヴァーチャロンというTVゲーム、エヴァンゲリオンというアニメで閉じられてしまった日本のSF界に新たな胎動の時期がきているように思える。

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男に気持ちを伝えない女、女の気持ちを読めない男

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 「なんで、」とか、「こんなに」とか、男がじたばたすればするほど、女ってのは生き生きと動く、魅力的に見えてくる。—なにがなんだか、さっぱりわからん。—そうでしょうね、でもわかってほしいわ。—じゃあ教えてくれ、どれが本当なんだ。—わかってないな、本当のことなんて一つじゃないのに。
 気持ちは目に見えない。だからこそ、つかみそこねたり、すれ違ったり、あっちに行ったり、こっちに来たり。目に見えることだけ、自分に分かる自分の気持ちだけを、そのままに描ける。作家の底力ってものの恐ろしさを感じる。
 短編作家が挑んだ、2作目の長編。1作目は、女性キャラの性格がいささか暗くなりすぎて、作品のトーンは重かった、一転、今作の女性キャラたちは、明るい。そんなに明るかったらまずいやろう、と思う過去をそれぞれ持っているのに、明るい。
 やっぱり、女ってよく分からん。

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仮面ライダー達の帰還

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 「磯野家の謎」から始まる謎ネタ本と、「ウルトラマン研究序説」に代表される非公式設定解説本が、書店の棚の一角に定番商品として並ぶ。「エヴァンゲリオン」の一大ブームによって確立された、この光景は不況の風吹く店頭にあっても、立ち読みの多さ、商品の回転率の良さで、いまだ拡大傾向にあります。

 TV作品の原作コミックや、小学一年生などで連載した絵本まんがも愛蔵版という形で復刊されています。子どもの頃読んだけど、あるいはお金が無くて買えなかったから、そういう思いを持った層の購買意欲をうまく引き出しています。

 こういった出版物の増加は、本放送のLD化、リメイク作品の制作、キャラクター商品市場の復活とつながって、レトロオタクブームを作り上げています。

 けれども、それらのブーム便乗商品の多くは、顧客のノスタルジーを満足させるだけのものに過ぎません。それらは、幼い頃の感動の追体験は提供してくれるが、オリジナルを超える感動を与えてくれないからです。

 懐かしむ対象としてでなく、新しい感動を与えてくれる作品を待ち望んでいたファンの期待に応えて、とうとう帰ってきた。あのライダー達が、人類の自由と平和を守るために。
 日本に平和を取り戻し、世界に散っていった歴代ライダー達はやはり戦いつづけていた。「時代が望む時、仮面ライダーは必ず甦る」と、巻末にて石森プロの早瀬氏は述べています。

 1話あるいは前後編2話で一人ずつ紹介される、ライダー達の帰還。新たな悪の組織の影、その手先となっているライダー、扉絵からは、10人ライダー大集合に向けての一つ一つの伏線が読み取れ、否応なしに興奮させられます。

 すべての仮面ライダーファンの子どもたちと、かつて仮面ライダーファンだったすべての人に届けられた、新しい仮面ライダーの伝説のはじまりです。

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ダイジェスト版

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 まだ魔界都市<新宿>の門をくぐられたことのない方にお薦めするダイジェスト版ともいえる一冊。13年の月日を超えて、少年向け漫画として、十六夜京也がドクターメフィストとともに<新宿>の敵に立ち向かうために甦った。敵は2500年前の古代の王と、不死身の女王セミラミス、舞台はバビロンの空中庭園。

 古代アッシリア、バビロニアの歴史、神話を菊地流にアレンジするとどうなるか。伝奇アクション作家としての氏の筆が踊りまくった原作を、細馬氏が漫画として何倍にも増幅、面白くしている。

 魔物が棲み、妖術が唱えられ、神と悪魔が人間と共存する魔界都市<新宿>。途方もない霊的エネルギーを産み出す都市<新宿>の覇権を求めて、古代の魔王が、西洋の魔導士が触手をのばしてくる。魔物、死霊、古代技術、伝説の騎士を操る彼らには、銃や戦車は無力。立ち向かうのは、人の思念を悪しきものを払う”念”に昇華させた剣術、十六夜念法の伝承者十六夜京也。そして、死者をも甦らせ、古代から現代までのあらゆる霊薬、秘術も修めた<魔界医師>ドクターメフィスト。

 彼らの活躍を存分に楽しんでほしい。全ニ巻という分量に物足りない方には、ぜひ前作「魔界都市ハンター」をお薦めする。また<魔界都市>の魅力に惹かれた方には、もうひとつの魔界都市<新宿>への入り口として「魔王伝」がある。謎と危険と淫欲と悲哀と魔と隣り合わせの<新宿>にぜひ訪ねて来ていただきたい。

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コミック界の星新一

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 小説にショートショートというジャンルがあります。その精神を見事に、漫画の世界に写し取ったのが、岡崎二郎さんの描く作品です。既に星新一さんの作品を読んだことのある方には、岡崎さんの作品は星さんの作品からシニカルな部分をちょっと減らし、その分を暖かさでくべたものという説明で充分でしょう。
 まだ残念なことに(あるいはうらやましいことに)星新一さんの作品を読んだことがない方に説明しますと、短編よりも短く、電車で一駅乗る間でも読み終えられる短い短編、それがショートショートです。短いといっても、起承転結はきっちり入っていて、しかも独特のセンスで、おもわずニヤリとしてしまうオチが必ず用意されています。時には、二つも三つも。
 子どもから大人まで安心して楽しめます。通勤・通学のお伴にでもどうぞ。
★ショートショートを探す

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三国志を舞台にして、古の大陸の神々を躍らせる二重の意味で不遜、傲慢な恐ろしい話

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 「月刊アフタヌーン」という一風変わった漫画ばかり集めた雑誌で連載中の作品(2001年6月現在)。戦乱の世と呪術をからめて、国取り合戦を呪術対決にすること自体は、「山田風太郎忍法帖」を筆頭に時代伝奇小説の定番ともいえる。しかし、それを「三国志演義」を素材にして、描いたものははじめて見た。

 様々な奇策、謀略を用い、武将を率いて、戦の行方を占う軍師達。彼らはこの作品にあっては、戦場を祭礼の場とし、神に贄を奉ずる儀式をも司る。そこでは、主君のためというだけにとどまらず、天下の命脈、星辰の運行をどの宗派、一門が握るかを賭けた争いが繰り広げられる。

 三国志の見せ場である多くの戦いも、血を流す兵卒、功をあげる名将、力尽きるまで闘う勇将たちをも依代とできる、その発想は恐ろしい。「西遊記」や「封神演義」にでてくる神のようには、やさしくない。人間のことなどはなから気にもとめていない、古の神々こそがそこに召還されるのだから、正義も悪もなく、ただただ混乱の中に話は放り込まれていく。

 「龍狼伝」「蒼天航路」と、講談社には既に二つの「ネオ三国志」が定評を得て、連載中だが、その二つにあっても武将たちは性格、描写は変えられども、話の主役であることに違いはない。しかし、もはや英雄も奸雄も偶像としての姿を葬り去られる。司馬一族の怨霊とともにある忠達、反魂の術を使い、古の神々の巫女となる孔明。軍師達と彼らが奉る神意が、新たな歴史絵巻の主役となる。新たな境地を開いた作品ではあるが、未完の作品だけに、今後の展開をまたずに評価はできない。世に現れた神々を、どのように降ろすかに注目していきたい。
★、「山田風太郎忍法帖」

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