Mi−Neさんのレビュー一覧
投稿者:Mi−Ne
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紙の本地雷のあしあと ボスニア・ヘルツェゴビナの子どもたちの叫び
2003/03/22 20:16
悲しい力
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自分も一応、絵を描く者のはしくれであるので、
子供の絵の良さがどこからくるのかというのはとても興味深いのですが、
…だめです。
子供たちにこんな絵を描かせては。
こんなことがあってはならないと、強く強く思いました。
童画の持つ、独特の力強い色彩に悲しい画題。
子供がみんなお花や象さんを描いてれば良いと言うのではないですが、
でも彼らが選んだ画題がこれだというのが本当に悲しかった。
本屋さんの店先で本当にボロリと涙がこぼれて慌てて本を避けました。
「この絵が地雷をなくすのに少しでも役立つなら」と言う大人びたコメントに圧倒されました。
紙の本地平球EX Side:4
2002/12/26 20:05
永遠の孤独
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もともとは少女誌連載の連載のマンガだったという本作。
しかし内容は文明社会が一旦崩壊した後の地球と言うわりと普遍的なSFの世界ながら、独特でしっかりとした設定が作者の中のビジョンの確立していることを感じさせる、骨太なお話でした。
複雑に敵対し、憎みあい、あるいは利用し協力しあう国家から個人単位まで様々な勢力の攻勢や思惑の激しい交錯の中で、反発しあったり、友情を築いたり、または家族として互いを支え慈しむ、細やかに描かれるアンドロイドや人間たちの関係の切なさ、暖かさが印象深いです。
このお話の大きな魅力の一つ、登場人物の主軸になっているアンドロイドたちの特性に、彼らの記憶が自らの精神を保つために22年を境に、いっぱいになったコップから水があふれるようにこぼれて消えていくというものがあります。
1巻でこのシステムが言葉で説明されている部分があるのですが、そこではまだちょっと分かりにくかった。でも、読み進むにつれそのシステムが心理的・感情的にどういうものかわかってくると、もういけません(笑)。作者の思うツボというか、どんどん感情移入して引き込まれて行きます。
生身の人間と変わらない感情や個性を持ち、優れた身体的能力や頭脳、ほとんど永遠に滅びることのない若く美しい体といった、人間が望んでも得られないものを持ちながら、彼らは決して冷徹に完成された完璧な存在ではない、不完全さや人間くささを持ち合わせている。
感情や人格を持つアンドロイドたちにとって22年後の自分ではどうにもならない「忘却」は、自分の「精神」を守るための必要不可欠なシステムでありながら、大切な思い出や忘れたくない記憶さえもとどめておくことはできない、22年の歳月の先には確実に失ってまうという諦観やもどかしさ、うつろう命の私達にも共通する…もしかしたらそれ以上かも知れない無常の寂寞をもたらすのです。
その性質を自らも理解している彼らは、自分の1分1秒を少しでも悔いのないものにとあがき続ける。記憶を大切に抱きしめ、そして失いながら、時間に取り残されて生きていく。
「永遠の生き物」と言うのは、ファンタジーやこういったSFなど、様々な物語に登場しますし、そういうものを求める人々の物語もあったりします。けれど本当に大切なものを失いながら、取り残されながら、それでも永遠の存在であり続けなければならないとしたら…、それはどんな悲痛であることでしょう。この設定はお話の中ではややBGM的なものですが、その深い孤独、そしてそれさえもが癒される瞬間があることにも胸を打たれます。
ただやはり残念なのはこの全4巻があくまでも「第一部」であり、そして第二部が出版される予定がまだ立っていないということ。ぜひぜひ、彼らの物語に第一部以上のすばらしいラストシーンを、と切実に願っています。
2002/12/15 21:21
洋画の「ことば」と和の「こころ」
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出ると知ってからとても楽しみにしていた新刊で、喜び勇んで購入しました!
最初単純に江戸時代頃のお話かなあと思っていましたが、
登場人物の考え方はとても現代的でそこも面白い。
パラレル江戸時代と言う感じ。
またこの山田睦月さんのマンガの特徴として、セリフ回しが良い意味で
映画の字幕の台詞のようでテンポが良くて素敵なのですが、
和風の世界を描きつつもその語感は保たれていて、
他の和風マンガにはちょっとない感じがしてとても新鮮です。
とても簡単な言葉づかいなのに、すごく洗練されていてしみじみじーんと来ます。
その中で描かれるのは、東洋人ならではの無に有を見、
心のないモノに自分の心をうつし見る感覚であったり、
愛おしい思い出さえだんだん薄れていくせつなさ、もどかしさと
それでもなお残るしみじみとした優しい懐かしさ、
家族や友人、隣人や知人を本当に何気なく思いやり見守る気持ち、といった、
人が人として生きていく中で普通に持っている優しい美しい気持ち。
そういったものが、マンガという手法で純文学にも決してひけを取らないほど見事に表現されています。
そして、そういう事柄をつきつめて細部まで描き切るのではなく、
読み手の身につまされる「思い」が入り込む余地が絶妙な間で残っているのです。
こういう作品に出会うと、マンガは文学でもあるんだなあと思います。
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