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ちゃうちゃうさんのレビュー一覧

投稿者:ちゃうちゃう

31 件中 16 件~ 30 件を表示

紙の本

紙の本反逆の星

2001/02/05 12:16

自己再生できたら、強くなる

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 反逆者達が流された流刑惑星世界。その惑星を圧倒的な強さで支配したのは「遺伝子学」の子孫ミューラー一族。不愚となるのを恐れなければ、人間は戦うことを恐れはしないという言葉通り彼らは戦い、傷ついてもその特異な遺伝子作用に拠ってたちまち元の体に復元することができた。だが、そんな彼らにもたったひとつ恐れている遺伝子作用があった。それは「性」の取り違い。一族の王子ラニックは自分の体に起こったその作用のため惑星を放浪する旅に出た。
 全体を通して「再生する強力な遺伝子」の表現は、グロテスクとも感じられるほど、肉体の細胞の「生」に対する欲望が非常に生々しい。しかし、それよりも、この惑星に追放された他の子孫との交流、異文化とのふれあいによりラニックがより強く成長し、それまでばらばらであったこの惑星をひとつにまとめていくストーリーは、まさに大人の「冒険小説」。科学的な一族、神話的な一族、そしてそれ以外の惑星の一般民衆。多種多様な民族の模様がなぞなぞのように楽しめる作品である。

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紙の本

紙の本ミス・メルヴィルの後悔

2001/01/27 19:33

見た目は中年のおばさん、でも「殺し屋」よ

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 ミス・メルヴィルは地味だけど品の良い中年のおばさん。生まれも育ちの上流階級なのに「父親の破産」によって貧乏生活をしなくてはいけなくなってしまった可哀想な女性。趣味は「絵を描くこと」。
 たとえば、パーティなんかで、もし「殺人事件」があったりしたら真っ先に「犯人じゃない人」の枠に入れられるタイプの彼女。一体、誰が彼女に拳銃なんて撃てると思うかしら? そう、誰も信じやしないでしょうね。ミス・メルヴィルは実は腕の良い「殺し屋」なんだっていうこと。
 小気味の良い上品なテンポで進むストーリーと、ミス・メルヴィルの控えめで誠実な性格。おまけに緊張感のある警察とのやりとり。こんな意外性の組み合わせが、とても好感の持てる作品です。
 このシリーズ第一作目では、ミス・メルヴィルが「殺し屋」となる羽目になったいきさつから始まっていて、最初の「お仕事」の場面がなんとも愉快です。
 さあ、まずはミス・メルヴィルのお手並み拝見と行きましょうか。

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紙の本

紙の本密偵ファルコ白銀の誓い

2001/01/26 18:09

ローマ時代で犯人探し

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 密偵ファルコシリーズの第一弾。正真正銘、ローマ時代が舞台の推理小説である。歴史的な背景がしっかりしていないことには、この手の話は「胡散臭い」もので終わってしまうのだが、この作品は非常に緻密に当時の様子が描かれていて、まるで映画を見ているような錯覚に陥りそうになった。
 庶民の家の作り、家具やスリッパ(スリッパを部屋の中で履き替えるとは知らなかった)などの小物の描写、階級の分け方、街の雑踏。主人公ファルコは「密偵」であるので、それなりにちゃんと解決しなければならない事件は起こるが、事件よりもローマの生活を読んでいるほうがおもしろいかもしれない。(支配下にあるイギリスを「顔色の悪い土着の民」と言い切るところなどは、思わず吹き出しそうになってしまった。)
 ストーリー自体は、ハードボイルド系の仕立てになっていて美女とのラブロマンス有りだが、極端に大掛かりなしかけがあると言うわけでもないのが少々残念。
 歴史的描写のうまさに加えて人物描写がしっかりしているので、作者に好感が持てる。清潔感のある一作である。

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紙の本

紙の本血のごとく赤く 幻想童話集

2001/01/25 17:31

上等な光沢のある「教訓」幻想物語

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 一時流行した「新説、グリム童話」系の本だと思ったら大間違い。アダルトファンタジー界屈指のタニス.リー女史によるひねりの効いた、価値ある教訓短編集である。

 愚かで浅はかな人間が犯す「自己保身」の数々を、冷ややかでしかし微笑を浮かべた女神が見守るように、華麗なタッチで表現されている。読み終えた後に「不快」感は全く無い。むしろ、どこかで胸が痛くなるような、懐かしい思いが残っている。

 他に向ける、ひとかけらの優しささえあれば「子供」は失われずに済んだであろう村人の話(報われた笛吹き)や、失った若さに気が付かず、犠牲になる少女に哀れみすらかけなかった魔女の愚かさ(黄金の綱)、姿形にとらわれて大事なものを見失っている私(緑の薔薇)。どれもこれも、厳しい言葉ではないが真中にある芯を見事に描いてある。

 少し裏側から見た上等なおとぎ話。是非読んで頂きたいものである。

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紙の本

紙の本同居人求む

2001/02/21 17:26

他人になりすます女

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 映画「ルームメイト」の原作になったこの作品。最初この作品が発刊された当時、現実的にはかなり無理があると思っていたのだが、最近のIT化や他人とのかかわりの無い世界を見ていると実際にあってもおかしくないと思えてきた。

 新聞広告で「同居人求む」を見てやってきた女性。おどおどして、どこか頼りない。はっきり言って「没個性」型。世の中にいてもいなくてもあまり問題になりそうでないこの彼女が、実はとんでもない女性だったのだ。

 徐々に自分に成り替わられる恐怖。

 当の本人にとって、これほど怖いことはない。今まで生きてきた人生を、まるごと乗っ取られようとした時、あなただったらどうしますか?

 スピード感あるラストは好感が持てますが、かなりサイコ的な作品です。じわじわっと来ます。

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紙の本

紙の本略奪

2001/08/03 12:42

返せ!と言っても誰に返せばいいものか..

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 第二次世界大戦終了間際のどさくさに乗じて略奪された多数の美術品。その行方不明になっていたある1枚が時を経て、アメリカのある質屋に持ち込まれた。鑑定を頼まれた「美術鑑定家」ベン・リヴィアが登場し、そして起こる殺人事件。

 著者アーロン・エルキンズの美術シリーズにはすでに「クリス.ノーグレン」がいるのに、あえてまた新しい美術鑑定家を登場させたのには、正直ちょっと戸惑った。後書きに「クリス.ノーグレン」とは違った人物を描きたかったとあるが、「失敗した結婚生活」を背負い、腕力にもそんなに自信があるわけでもないという全体の印象は、あまり前者と変わらないような気がしたのだが。

 内容は「鑑定」に重きが置かれているのではなく、略奪された絵画の「本当の持ち主」の権利とは一体なにかという、現実的な問いを含んだ展開になっている。
 ナチスがヨーロッパの人々から奪い取った名画。それが今見つかった場合、どうやってその絵画の元の持ち主の手に返すことができるのか? そもそも、どうやってそれを主張することができるのだろうか? 案の定、「私のものだ」と主張する人物が3人も現れた。

 ヨーロッパをオーストリア、ハンガリーなど移動する忙しさに加えて、元ナチスだった人物の発言する「不愉快」な話、ユダヤ人の権利にこだわり続ける女性との「いさかい」など、ちょっと読んでいて疲れる場面が多いので、推理小説というより「第二次大戦の傷跡」を描いた小説と思ったほうが気分的に楽かもしれない。

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紙の本

紙の本妖精の王国

2001/03/19 14:01

もし、あなたが妖精に連れて行かれてしまったら?

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 妖精の国ってどんなのなんでしょう?美しい国?魔法の国?永遠に年を取らない国?

 実のところ、全く訳がわかりません。この作品が書かれたのは1941年、そうです、第二次世界大戦勃発の頃。主人公バーバーも同じ頃、イギリスがドイツ軍の空襲を受けているのを体験する場面から話は始まります。彼はなんの変哲も無いアメリカの外交官。ところが聖ヨハネの前夜祭に、配給のミルクを家政婦が妖精のために戸口に置いておくのを発見します。ミルクが大の好物のハーバーは、それを飲み干してしまうんですね。さて、それから一体なにが起こったか?

 ファンタジーならではの、一体どうなるんだろう?という魅力的な出だしなんですけれども、どうもなんだかよくわからないんです。あたかもシェークスピアの「真夏の夜の夢」が、おもしろいけどなんだか言い回しがよくわからない、みたいな、わからなさ。

 言い伝え通り、妖精達に連れて行かれたバーバーも、読者と同じように事態が飲み込めません。妖精の王、オベロンと王女タイタニアが嘆きます「恐ろしい『わやく』のせいで、妖精の王国はめちゃくちゃだ」と……。

 混乱している妖精の王国を救うために、バーバーの不思議な冒険が始まりますけど、どうも尻切れトンボ。2人の作者の共同執筆によるせいかどうかわからいのですが、すらすらっと読めるところと、「え?これだけ?あれは一体どうなったの?」という、ちょっとストレスたまってしまうような個所が交互に出てきてしまいます。

 イギリスの伝説や言い伝えが御好きな人には、興味深いものが沢山出てきますけど、もしかすると、戦争当時、現実から目をそらしたかった二人の作者の「夢」の世界なのかもしれません。

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紙の本

紙の本銀の檻を溶かして

2001/02/08 14:33

古めかしくて、今時風な薬屋に事件はおまかせ

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 作者が大学在学中の女性ということで、全体の雰囲気は「女の子が好きそうな明るい元気系」という感じがする作品。
 起こる事件は「殺人事件」である。小学生の男の子が雪の中に倒れていた。果たして犯人は? 妖精が出てくるのか?
 古めかしい薬局にやってきた、さえないおじさんから始まった薬の調合は、一体この殺人事件と、どうつながって行くのか?
 西洋の伝説に出てくる言い伝えの悪魔や、魔物。日本の妖怪やお寺の昔話。ハーブティやケーキの作り方。女の子が好きそうなものを、一個のコーヒー缶に詰め込んでよく振り混ぜて出来上がったような印象である。
 ミステリーとしてはそれほど深みのある作りではないが、その分登場する3人の薬屋の男の子達(というか青年、少年、子供の3人)の魅力が生き生きと明るく描かれているのが好感が持てる。
 本作品がデビュー作ということなので、次回作からは、もっと深みのある、しかもこの3人の魅力がますます光るものになりそうだ。

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紙の本

紙の本南国再見

2001/02/08 14:07

亡くなってしまった恋人の思い出を抱きしめて彼女は歩く

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 もし、あなたの最愛の人が亡くなってしまったら? しかも遥かかなたの異国の地で。
 主人公の私に残されたのは、彼が着ていたコート。そして現像していないフィルムが一本。
 全編通して、亡くなった恋人の思い出ばかり、次から次へと描かれています。あれを見ては嘆き、これを見ては切なくなり。「夏」という暑い季節に「死」という重い出来事を背負わなければならなくなった主人公に、最初から最後まで私達はお付き合いしていかなくてはなりません。
 いやですか? 暗そうですか?
 恋と生、死と別れ、それが軽く描かれているだけです。時に幻想的な場面に遭遇し、私達は彼女が見た「一つの区切り」を一緒に体験できるはずです。

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紙の本

紙の本おしまいの時間

2001/02/08 13:57

生きることに揺れている時期の揺れた心

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 主人公は大学生。まだ女性でもない、でも少女でもない。そんな揺れ動いている時期。なにもかも「否定」も「肯定」もできない時期。彼女の元に一通の知らせが届く。

「高校の時の先生が自殺しました」

 何故、先生は自殺したのか? 何故、私のところにその連絡が来たのか? 「いずみ」さんって誰? 私のこと?
 3人の「いずみ」さんと、自殺した先生の弟との不思議な心のふれあいを描いた、人生に揺れる青春物語です。重く、自己中心的になりがちなテーマを、軽く優しい視点から描かれている佳作。
 読後感、雨が降って青い空が見えた後のような清々しくも優しい気分になれる一作です。

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紙の本

紙の本はじまりは、恋

2001/02/08 13:47

制服を着たままの恋の短編集

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 たとえば学校の帰り、好きな人と一緒に歩きながら「どうでもいいこと」や「昨日あったこと」などを話ながら帰ったことはない?
 たとえば夜、ふと「人生ってなんだろう」なんて部屋の中で考え始めたりしたことない?
 たとえば、楽しくて楽しくて、このままずっとその楽しさが続くことしか考えていなかった時ってない?
 この作品はそういうことを「文字」で書いたものなのです。
 本作品が高校在学中のデビュー作となった著者の「制服を着たまま」の、素直で純粋な作品集です。
 自分の制服時代、思い出してみませんか?

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紙の本

紙の本菜穂子・楡の家 改版

2001/02/07 20:30

昭和初期、そして軽井沢

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 作家「堀 辰雄」、そしてこの作品にはすでに何人もの研究者が解説を述べているので専門的なことはその方々におまかせします。
 たまたま「菜穂子」という名前に惹かれて読んでみたのだが、想像していた以上に清々しい印象の作品だった。明るいと言う訳ではない、題材は「結核」や「かなわぬ恋」など、ちょっと間違えると重苦しい内容になってしまう。それなのに、なんであろうか? この平らな生活感を感じさせない読後感は? カタカナの西洋文字をハイカラに直したあの日本とはまた違った、一種のお洒落(または独特のセンスがある)小説である。人の心の表現と同じくらいの風景描写。ある程度、心の中にゆとりのある人間でなければ描けないであろう風景や色彩。今の軽井沢の四季をご存知な方には特に一度、読んでみることを薦めしたくなる作品である。

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紙の本

紙の本サファイアの書

2001/01/27 02:50

イスラム、ユダヤ、そしてキリストの不思議な融合

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 美しいブルーの表紙。まずこの本の厚さと表紙に驚いた。分厚い小説として考えるとそんなに珍しくはないのだろうが、さあ、腰を据えて読むぞという気になる本作品である。
 中世ヨーロッパが舞台のこの作品、宗教と人種が混ざり合い、そして友情と信頼が生まれていく過程は非常に人間的でおもしろい。「サファイアの書」と言い伝えされる幻の書物を求めるはめになった3人の男性。一人はユダヤ教、一人はイスラム教、そしてもう一人はキリスト教。なんとも奇妙な取り合わせに加えて、時の皇帝の命を受けた美しい女性がそれに加わってくるので、更に話は「まぜこぜにしたスパイスの効いた風習」になる。果たして「サファイアの書」とはなんなのか? それに至るまでの遥か遠い旅のいきさつが、なんとも奇妙で、歴史ものが好きな方にはたまらないであろう。
 ラストが少々期待はずれであったが、それはまあご愛嬌。ここまで訳した訳者の方に敬服する内容である。

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紙の本

紙の本死者の書

2001/01/26 17:25

エジプトミイラは出てきませんが

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 タイトルの「死者の書」からするとなんだか死者を復活させる怪しげな内容かと思ってしまった。
 主人公のトーマスは映画俳優であった亡き父の「名声」に縛られた人生を送っている高校教師だ。彼は最愛の作家の遺作を捜し求めて、作家の娘が住んでいる町を訪れた。なんの変哲もない平凡な田舎町。その町で起こる、数々の「奇妙な」事件。殺人事件が起こるわけではないのだが、住民とトーマスの妙な「ずれ」。違和感のあるこの町の秘密とは?
 最初の事件が起こった段階で、なんとなくその先が見えてしまう作り方だが、それがもしかすると作者の狙いなのかもしれない。読んでいくに従って「やっぱり、思った通り」と読み手に思わせておきながら、クライマックスに近づいていくと「予想していた結果」がだんだんとねじれて、曲がっていく。最後の最後で「なるほど、これが伏線だったのか」と思わせられてしまった。
 裏表紙の「鬼才のデビュー作、驚嘆の一言に尽きる傑作」という文句は多少オーバーかもしれないが、平凡な町なのに起こっていることは「非平凡」という描写は、確かに傑作なのかもしれない。
 この作品中の天才作家「マーシャル.フランス」が実在しているように思えてきた。

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紙の本

紙の本彷徨者アズリエル

2001/01/25 17:04

意志を持った優しい精霊「骨のしもべ」

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 原題は「骨のしもべ」。なんとも妖気ただようタイトルではあるが、この「骨のしもべ」たる精霊アズリエルが、歴史学者ジョナサンの元に現れるところから物語は始まる。
 呼び出した主人の命に従うと言い伝えられているアズリエルをジョナサンが呼び出した訳ではない。一体何故彼はやって来たのか?一体誰が彼を呼び出したのか?

 アズリエルがジョナサンに自分の人生を語る形式で物語りは進められる。「インタビューウイズバンパイア」と同じように、主人公の独白とそれを聞く側の思考が交錯していくのだが、アン.ライス独特の官能的にも思える美青年主人公の描写は非常に色濃い。

 はるか昔、バビロニア時代、まだアズリエルが人間の青年であった頃に話は遡り、彼が「骨のしもべ」になっていく過程が前半の一種のクライマックスでもある。このあたりは非常に強烈である。古都バビロン、そこに住むユダヤの人々の生活、そして神々。よくまあ、アン.ライスはこれだけ緻密に当時の再表現を描けるものだ。歴史好きなものにはぞくぞくする感がある。
 魅力的な青年アズリエル、その彼が神に捧げられる運命となり、そしてなぜか力ある精霊に変えられてしまう。ここまではかなり力をいれて一気に読んでしまうであろう。

 後半は再び現代のニューヨーク。カルト宗教団体「心の寺院」との戦いがクライマックスである。「骨のしもべ」たる力を持った精霊アズリエルが思う存分暴れまわる、という訳でもないが、闇に影となり世界を滅ぼそうとたくらむ教祖ベルキンの行く手を阻むのは、じっとりとした緊張感がある。不思議なことに「心の寺院」の歪んだ世界観は読み手の我々に、一体なにが正義なのか判断を狂わせてしまう「正しさ」があることに驚かされるであろう。

 残念ながら、誰が彼を現代に呼び出したのか、何故殺されたベルキンの娘はアズリエルを知っていたのか、などの疑問は残ったまま本編は終了してしまいストレスが残る。しかし、時代の正確な描写や人間の心の葛藤の描き方は非常に濃いものであり、大人のファンタジーストーリーとしては読み応えのあるものである。

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