Okawa@風の十二方位さんのレビュー一覧
投稿者:Okawa@風の十二方位
紙の本霊玉伝
2003/07/01 05:48
地下王宮と文字、二つの迷宮を舞台にした李高と十牛の新たなる冒険
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「あの李高と十牛が帰ってきました。今回の謎は僧院の書庫係の死、しかもこの世の恐怖を全て詰め込んだような死に顔をさらして。そしてその手には、謎を秘めた司馬遷の書の断片が握られていた。次々と起こる不気味な予兆に、囁かれる伝説の非道の暴君、笑君復活の噂。残虐の限りを尽くした笑君が残したといわれる地下王宮を舞台に、李高と十牛の冒険が始まる!」
「鳥姫伝」ではファンタジックな美しさを秘めた異世界中国を描き出したヒューガード。今回の李高と十牛の活躍は、巨大な地下墓所でのホラーアクションです。もちろん、虚実が入り組む民話や神話のガジェットも満載。二人は地下の迷宮だけでなく、様々な伝承に彩られた文字の迷宮もさまよっていきます。その辺は解説にあるように、ちょっと「薔薇の名前」を連想させますね。どっちかというとショーンコネリー演じる映画版のイメージですが。そう言えば助手である十牛君の悲恋のストーリーが織り込まれてるところなんかも似ているような。
幾つもの謎が提示され、本当にこれはまとまるのかと心配させるほどの展開と、それがジグソーパズルのようにぴたっと嵌まるラストシーンも健在です。大人のユーモアファンタシーを楽しまれたい方にはお勧めの一冊。
紙の本アイオーン
2002/11/25 06:35
中世の歴史素材を贅沢に取り入れた、壮大な改変暦物語
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「何故? その疑問を封じられた暗黒の中世。人々は全てを神の意思として見て、信仰とともに生きていた。
では何故、月は満ち欠け、惑星は巡り行くのか。そして、古代の遺物が埋まる巨大な穴<深み(プロフンドウム)>は何故できたのか? 人々は何故、物質の悪意によって身体に異常を持って苦しみ往くのか? 医師の弟子として科学を志したファビアンは信仰では、満たされない世界の謎に惹きつけられて止まなかった。
そんな彼に世界の真の姿がもたらされる。アルフォンスという名の遍歴の青年は、この世界がかつての古代文明の廃墟であることを告げる。かつてこの地には、夜を昼とし、空を翔る船が行き交った古代ローマの帝国が存在したという話を… 信仰と科学、二つに惹きつけられながら、謎を求めるファビアン。ヨーロッパからオリエントたるコンスタンティノポリスへと広がる彼の旅が、今始まる」。
西方ヨーロッパから、オリエント、そして中央アジアへと、13世紀の歴史素材がふんだんに取り込まれた壮大な改変歴史世界。明らかにされる謎がさらに新たな謎を呼ぶスリリングな展開。歴史ファンにもファンタシーファンにもお勧めの連作短編の一作がJコレクションに加わりました!
相変わらず高野さんらしい凝ったストーリーですので、ネタバレを恐れて最初の短編だけご紹介。
「エクス・オペレ・オペラート」
映画版「薔薇の名前」をイメージさせる、この作品世界への素晴らしいイントロダクションです!
中世の暗き世界の中にばら撒かれたかつての知の断片。それらは、世界に問い続け、知を求める者にとっては、ダイヤモンドのようなきらめきを感じたはず。そんな中世の修道会の舞台設定に、核戦争まで起こした古代文明というカードが、一際光る謎として埋め込まれている。言ってしまえば超古代文明というキッチェな設定を、舞台の中に自然に見せる高野さんの筆捌きに感嘆しました。
世界を問い続けるファビアンというキャラが、アルフォンスというメフィストフェレスに出会い、旅立ちを決意する。独立した作品としても、ロマンに満ちた作品だと思います。
そしてファビアンが全ての旅を終えた時、訪れる美しいラストシーンにあなたは何を思うでしょう。
紙の本ゴルゴン 幻獣夜話
2001/04/30 07:47
幻獣をテーマにファンタシー、SciFi、ホラーと広いジャンルの幻想ストーリーを集めた短編集
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ちょっとこんな想像をしてみてください。
月夜、テーブルの上にはランプの明かり、そしてワイン。ソファーにもたれたリーが、あの猫のような瞳であなたを見つめながら語る物語。次々と物語は紡ぎ出されていきます、時には恐ろしく、時には皮肉な結末に満ちた、そして時には悲劇の愛がきらめく話の数々。「こんな話はどうかしら…」そんな声が聞こえそうな夜話を集めた作品集です。
表題作ゴルゴン:「エーゲ海が洗うギリシアの島々。しかし、沖に離れた緑の孤島については誰も語りたがらない。そんな謎に引かれた作家は驚くべき話を耳にする。その島にはゴルゴン(メデューサ)がいるというのだ。作家はその謎を追うべく誰一人近づかないその島に渡る。そしてその作家が目にしたのは一人の女性の姿…日常の世界に待ち受ける残酷な運命という名の恐怖を描いたホラー」
紙の本白馬の王子
2001/04/30 07:14
荒野を行く白馬の王子、待ち受けるは巨大な真鍮の龍、魔物、妖術使い。そして、王子には使命を果たすという燃えるような決意が...無かった!?タニス・リーが放つ、面白うてやがて悲しきユーモアファンタシー。
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もし、あなたがファンタシーファンを自認し、数多くのファンタシーを読んでいるなら、この本は是非ともお勧めです。恐らくあちらこちらに「にやり」とさせられるような、いわゆるファンタシーを皮肉ったシーンを見つけ出すと思います。この無気力王子の「やってられないよ」というつぶやきとともに…。
しかし、さすがはタニス・リーそれだけでは終わらせません。「ジュウェルスター!」のときの声が響くクライマックスでは、ファンタシーファンなら誰でもこの王子愛さずにはいられないような結末が待っています。