かりんさんのレビュー一覧
投稿者:かりん
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紙の本少年と少女のポルカ
2001/11/06 10:15
孤独と静寂と
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プールに潜った時に感じる茫洋とした静けさは、ざわざわした教室の中で感じる孤独に似ている。この小説を読むたびに、いつもそのことを思い出すのは、なぜだろう。
ゲイのトシヒコ、性同一性障害で少年の肉体を持つヤマダ、不安神経症と戦うミカコ。人は誰でも孤独を抱えて生きているという事実に、うすうす気づき始める、高校生という時間の中で、登場人物たちの抱える孤独は、深い海の底を思わせるような静寂に満ちている。
藤野千夜は、淡々とした軽やかな語り口の中で、それぞれの孤独と向かい合う3人のティーンネイジャーを、決して甘やかさない。時に残酷なほど彼らを突き放す。けれどそのことがかえって、ぞっとするほど恐ろしい孤独というものの正体を、忘れがたいほどの美しさで、読む者の胸に迫ってくる。
珠玉の一遍である。
2002/05/31 18:09
読者がためされる一冊
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スティーブン・キングは、たくましい心を持った作家だと思う。ひ弱な心の大人たちはみな、希望を持つことの危険性ばかりとくけれど、キングはいつも、希望を持つこと、持ち続けることのすばらしさを説く。もちろん、大きな夢や希望を持ったところで、人生は、なかなか思い通りには行かないし、傷つくこともたくさんあるけれど。でも、希望を持って何かを始めなくては、何も得られはしないのだ。
自分の人生や、小説を書くに当たっての真摯な姿勢を、キングは、いつも通り少々声高な調子で語っている。語りながら、読者一人一人に、問いかけ続けている。失敗を、成功するための道のりの一つと考えるか、自分の才能のなさの証拠の一つとしてファイリングするのか。僕が何を語ろうと、どう受け取るのかは、君しだい。そしてそれが、君の人生を決めるのさ、と。
この本のおっかなさ、いや、スティーブン・キングのおっかなさは、たぶん、そこにある。そんなことを考えさせられた一冊だった。
紙の本ファイアボール・ブルース
2001/11/14 16:36
あこがれとため息と
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著者は、あとがきで真っ先にこういっている。女にも荒ぶる魂がある。
実にもって同感だ。男と同様、女にだって戦闘本能というものがあるからだ。そして、女だって毎日戦って生きているのだ。悪いやつとか、理不尽な世の中とか、自分自身と。
ファイアボール・ブルースで描かれている女子プロレスの世界は、この3つがとてもわかりやすい形で存在している。そして、その世界で少しも輝きを失うことなく戦い続ける火渡抄子は、かっこよすぎる。かっこよすぎるけど、あこがれずにはいられない。
彼女に憧れ、付き人をしながら強くなろうともがく近田は、多くの読者の代弁者だ。もし、胸の中に少しでも荒ぶる魂の炎が灯っているならば、きっと近田と一緒になって、火渡を見つめ続けずにはいられないだろう。もっと強くなりたい、もっとかっこよく生きたいと、心の底から願いながら。
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