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  3. uwasanoさんのレビュー一覧

uwasanoさんのレビュー一覧

投稿者:uwasano

60 件中 1 件~ 15 件を表示

現代を切り取る皮肉な言葉

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現代日本の違和感を切り取ったエッセイ。読みやすく良かった。皮肉な物言いが多かった。皮肉が通じない人もいるかもしれない。

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紙の本成長戦略のまやかし

2016/03/31 23:31

アベノミクスの成長戦略批判

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アベノミクスの第三の矢、成長戦略を批判した本である。
反バブルの思想に貫かれていて面白かった。中身のある経済にするにはどうしたらよいかを、自分の頭で考えている。安倍首相は、リフレ派=バブル派の学者ではない、こういう小幡氏の本も読んで、勉強すべきだと思った。
p157からのレントシーキングの話が面白かった。日銀ウォッチャーのような無駄な仕事に従事している人が多い。人材の無駄使いは日本経済の劣化の原因だと思う。

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紙の本ライ麦畑でつかまえて 新装版

2003/05/09 17:50

社会生活がいとなめない少年の独白録から何を学ぶか?

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 16歳の少年・ホールデンは、ペンシー高校を退学することになった。高校を退学するのは複数回目である。その日から数日間の彼の思考を、ホールデン自身の独白の形で語った小説である。彼を取り巻く社会は、彼の眼から観るとどう映るのか?
 1951年にアメリカで出版され、世界的に話題となった青春小説である。繊細な心を持つ主人公ホールデンは、今いる社会に馴染めない。その違和感を、学校をやめた時の数日間の思いを語ることにより、告発しようとする。
 主人公・ホールデンは繊細さを通り越して、精神の病である。同寮の学生が不潔だったり、いかがわしい落書きが目につくぐらいで、落ち込んでいる。同じような女性が出てくるホラー小説を読んだことがある。鈴木光司著『仄暗い水の底から』である。この小説を原作とした映画では黒木瞳さんが演じていたが、エレベーターのスイッチに焼け焦げた痕を見て、イライラして落ち込んでしまうのだ。この女性にも精神の病を感じたものだが、繊細さというより精神の軟弱さを感じる。社会生活に支障を来すレベルだと危うい。おまけに、ホールデンの場合、ライ麦畑で子供をつかまえたりし続けることや、聾唖者のふりをしてガソリンスタンドで働くという生活なんかを妄想している。日本の引き籠もりが連想されるが、半世紀の時を経て、ホールデンなみの繊細人間が日本で量産されているということだろうか? セイラ・マスがカイ・シデンにやったように、「それでも男ですか、軟弱者!」とひっぱたいてやりたいくらいだ。
 社会生活とは、他人と付き合わなければならないことである。他者が馬鹿な人間に見えると、軋轢が増す。他者と平和的に生きるための智恵が必要だ。オススメの本がある。門脇厚司&佐高信『〈大人〉の条件 「社会力」を問う』である。この本に出てくる寮生活の話が参考になる。他人の不潔さに慣れてしまおう。他人とは極限までの白熱の議論してしまおう。そのような智恵が詰まっている。社会を十把一絡げにせず、他者の個人個人を細かく見ようとする智恵もある。一人でいると出来上がってしまうような精神の軟弱さを叩きのめしてくれるだろう。
 青春時代に経験する壁などで、脱落などしていられない。自分の調子の悪いのを社会(他人)のせいにしてばかりいられる筈もない。こういう問題に智恵を働かせて乗り越えられるようにすることが、教育の役割だと思われる。入試のための勉強しか考えていない教育の場合、落ちこぼれた人を救うことが出来ない。落ちこぼれを作らないという教育の流れも出来つつある。ガラスのような繊細さよりも、他者から感じる圧力をしなやかにかわす智恵=したたかさを身につけたい。

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紙の本蜷川幸雄の子連れ狼伝説

2002/12/30 13:38

世界のニナガワが語る『子連れ狼』

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 『子連れ狼』(小池一夫・作/小島剛夕・画)は、1970(昭和45)年9月より1976(昭和51)年4月までの7年間にわたり、「漫画アクション」に連載された劇画である。この劇画は、複数回、映画化・テレビドラマ化され、単行本も版を変えて複数回出版されている。1995年から1996年に道草文庫(小池書院)により全28巻で文庫化された時、解説を書いたのは演出家の蜷川幸雄氏だった。その解説をまとめ、原作者の小池一夫氏との対談を収録したのが本書である。
 『子連れ狼』は次のような話である。公儀介錯人・拝一刀は、裏柳生総帥・柳生烈堂の陰謀により、その地位を失う。一刀は、一子・大五郎を連れた刺客「子連れ狼」となる。烈堂は、探索方の黒鍬一族、裏柳生の配下(烈堂の子どもたち)、全国にひそむ「草」(忍びの者たち)等を動員し、一刀父子を狙う。一刀は襲いかかる敵をことごとく斬り、黒鍬も裏柳生も滅ぼす。そして烈堂との最終決戦に挑む…
 人の生き死に、親子愛、権力闘争。子連れ狼から受けとれるメッセージは、古今東西で物語の基本となる、人類の原初的テーマと言える。蜷川氏の愛する物語はシェイクスピア作品、『青の炎』(貴志祐介著)等、どこか原初的な共通点がある。若山富三郎氏から「おまえたちの演劇は、哲学的でわからない」と言われたアングラ演劇から、商業演劇・テレビ・映画の世界へ進出した蜷川氏だが、物語の主題は変わらないようだ。
 主題とともに重要なのは、物語の情報量である。「劇画体験というのは、大変なエネルギーを必要とする」というのが蜷川氏の言葉だが、『子連れ狼』に限らず、小池一夫・小島剛夕コンビの作品は、読むと疲れるものが多い。時代物で言葉が古いせいもあるのだろうが、練り上げられたセリフ、巧みな画、現実と虚構の折り合い、どれも膨大な情報で融合されている。このレベルの時代劇画はなかなか成立しないが、時代漫画専門誌も登場しているし、『バガボンド』井上雄彦著(講談社モーニングKC)のブームもあるので、時代漫画ブーム復活もありうるだろう。
 その他、現実と虚構の絡み合いを楽しむためには歴史知識が必要だと思うが、この本でもなかなか面白い発見があった。「阿部怪異のキャラクターは金田龍之介さん」(小島剛夕氏の言葉)なのだが、テレビドラマで金田氏本人が阿部怪異を演じることになる。その演技は原作を超えたキャラクターという評判である。「拝一刀は実は“狼一頭”のもじり」であることや、「冥府魔道」「公儀介錯人」「表柳生裏柳生」は作者の造語であること、柳生烈堂は「柳生家系図の傍系に義仙烈堂の名で実在する」(柳生十兵衛三厳の末弟)など、勉強になる。

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紙の本「人間復興」の経済を目指して

2002/07/31 21:28

バブルの言説に対する内橋克人氏の怒り

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 作家の城山三郎氏と経済評論家の内橋克人氏が、日本の現状について対談した本である。現在進行形で悪化しつつある日本の状況と、それに対する処方箋を語り合っている。
 まず驚いたのは、普段それほど饒舌と思えない内橋氏が、この対談ではかなり熱く語っていることだ。内橋氏は、全国を取材する、つまり話を聴いてまわるという立場であることが多い。インタビューされる側ではなく、する側という仕事である。それが、今回、城山氏のインタビューに対し、内橋氏がその思うことを存分に語ったという印象だ。内橋氏を饒舌にさせた、日本に対する危機感とは何か?
 『匠の時代』シリーズの取材で服部セイコー等の多くの企業取材をこなした内橋氏は、日本の経済を成り立たせる前提条件が、人間が作り出す技術力の結集しかないと考えている。ここ最近の「市場主義至上経済」の流れは、「カネ、モノのムダを最小化するため、ヒトはムダにしてもよいのだ」というリストラ社会を作り出し、労働者のカンバン方式とも言うべき、オン・コール・ワーカー(電話1本で勤務先を告げられ、駆けつけるという雇用形態)というシステムまで作ってしまった。そんな社会では、技術力の結集など出来るはずがない。日本の資本主義を成り立たせていた前提を崩してしまって、どうして経済再生など可能であろうか。そんな危機感を持っているのだ。
政府や財界はアメリカ型の「市場主義至上経済」万能論を信じて、その他の選択肢が見えなくなっている。内橋氏は、社会を再生させるモデルとして、オランダやデンマークの例を出している。私はこの対談本を読む前に、『誰のための改革か』という、内橋氏と複数の経済専門家の対談本を読んでいたので、その説得力がより強く感じた。また、アメリカをモデルにするとしても、「アメリカ型経営のなかから、企業にとって都合のいい部分だけをつまみ取りしてくる」ということも批判する。これは、よくある手口のようで、オランダのワークシェアリングを歪めて取り入れたという経緯を思い出す。
 雇用不安の日本の状況を「選職の時代」と命名した知識人も強く批判しているが、自らの政策の失敗を、そんな言葉で誤魔化すようなことをしてはいけない。バブル経済の時代に、バブルを批判した内橋氏だが、今は、御用知識人の言説のバブルを見抜き、それに対し、かつて無いほどの強い怒りを持っているようだ。

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紙の本ワケありな映画

2018/05/07 22:38

トラブルを引き起こした映画46本の解説

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何らかのトラブルを引き起こした映画46本について、解説した本である。
『靖国 YASUKUNI』や『ザ・コーヴ』など、「反日映画」と糾弾された映画や、
『時計じかけのオレンジ』『タクシードライバー』『ナチュラル・ボーン・キラーズ』など、暴力事件につなった映画が紹介されている。
思ったのは、日本人も他の国の人も、言論の自由・表現の自由に絶えられないんだな、ということだ。
スタンリー・キューブリックやマーティン・スコセッシのような偉大な映画監督に、もっと自由を与えてやれよ、と思うのだが、
あれやこれや糾弾されてしまう。
映画監督の表現の自由に、もっと自由を与えてほしいところだ。
ただ、強姦事件を起こして、ヨーロッパに逃げたロマン・ポランスキーは、駄目だろうと思った。

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紙の本不良のための読書術

2002/09/30 21:08

ゴダールの邪道な映画鑑賞を読書術に応用

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 新刊書の書評を数多くこなすフリーライターの永江朗氏が、自らあみ出した読書術を紹介した本である。
 まず、フランスの映画監督、ジャン=リュック・ゴダールの映画鑑賞法を紹介する。20分見たら次の映画館に移動。そこで20分たったら、さらに次の映画館に移動。このように、ゴダールはちょっとづつ細切れに映画を見ていたという。これから連想することは、「ゴダールは邪道な映画鑑賞をしている不良である」ということだが、著者は、まさにそんな不良に変身することを読者にすすめ、本書のタイトルも『不良のための読書術』としている。
 この映画鑑賞法を読書術に応用したのが、「ゴダール式読書法」で、「適当にページを開き、二〇ページから三〇ページ読む」方法である。一冊まるまる読まない方法をすすめているワケで、まさに邪道・不良のやり方である。
 しかし、万人に平等に与えられた時間というものを、いかに有効に使うかという点で、この方法は有効である。巨大な書店にいくと、山のように本がある。しかも毎日、新刊書が洪水で押し寄せてくる。そんな中からいい本を見つけだすのは至難の業である。こんな時代だからこそ、この方法を試そうという目論見である。
 私も、この読書術を発展させる方法を考えてみた。まず第一に、あらゆる本の後ろに索引を付ける。人名・地名・法人名・専門用語等、その本のキーワードになる言葉を抜き出し、五十音順の索引を付ける。これだけのことで、本を読むための足がかりが出来る。『「超」整理法』等でおなじみの野口悠紀雄氏の著書は、昔から索引を付けていて、使い勝手が良い。永江氏の著書では、『批評の事情』に索引がついている。
 第二に、小説の文庫版に後ろによくついている「解説」を、ハードカバーや新書本などにも取り入れる。私は文庫を読む時、たいてい後ろの解説から読む。解説が面白ければ、本書も面白いハズである。ハードカバーの本にはこのような解説が無いので、最初の足がかりが無いのがつらい。
 第三に、新聞・雑誌・ホームページ等で、著者・編集者自身による解説を増やす。特に,出版社のホームページの情報量の少ないのはどういうわけなのだろう? 小説の場合、あらすじ・読みどころだけでも情報を出してくれれば、読む・読まないの判断が出来る。

 ところで、作家の高村薫氏が、わざと映画を途中から見るという、本書で言うゴダールの映画鑑賞法を行っているという雑誌記事を読んだ。高村氏の作品から見て、こんな邪道・不良な方法をとらない人だと思っていただけに、驚いた。人は見かけによらない。

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紙の本人生教典

2002/05/29 19:54

高田純次氏による人生案内は、深刻病国家・日本に対する処方箋となるかも。

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 タレントの高田純次氏が、人々の様々な悩みに答えてくれる人生相談の書である。こうした悩みのQ&Aは、読売新聞の「人生案内」や雑誌等でよく見かける。世間の人がどんな悩みを持っているのか、それに対する適切な回答例はどんなものか、そういったものを読むのはなぜか楽しい。他人の不幸を喜んでいるわけではない。世の中の問題というのは、けっして単純なものだけではなく、回答者がそれら難しい問題にどう説得力を持たせて回答するのか、そのあたりが楽しい理由かもしれない。
 さてこの本では、コメディアンの高田氏らしく、どんな悩みも笑い飛ばす方向で答えている。柳に風というのか、飄々とした答えで、吹き出してしまうものが多かった。
最近、佐高信著『手紙の書き方』を読んだのだが、そのアドバイスの一つに「具体を書け」というのがあった。具体的な事が手紙に書かれると、それを読む者に強い印象を与える効果が出てくる。それと同じ事が、本書でもうまく使われている。つまり高田氏の人生経験のバックグランドを効果的に使って答えている場合が多い。結婚して子どもがいるのに、宝石会社を辞めちゃった話とか、ボウリング場のテーブルを盗んじゃった話とか、実に味わい深く、具体的な内容を織り込んでいる。盗んじゃったテーブルなんて、写真つきで、そのことを綴った詩までつけるというサービスぶりである。
 文章の活字をところどころ大きくしているのも、戸梶圭太氏の小説(『牛乳アンタッチャブル』等)みたいで、メリハリが効いている。
 好日派の作家・高杉良氏の小説でも、現実を反映して好日度の低い作品が多くなっている。このような時代である現在、お笑いの人から、つらい社会を笑い飛ばすようなエネルギーを補給してもらいたい。ここんとこ、本当に暗いニュースばかりの日本だが、高田氏のように、のらーりくらりと世界を笑い飛ばすエネルギーは、貴重である。彼の突飛な答えに、脳味噌がとろけそうになるような感覚は、深刻病国家の日本に対する処方箋として有効である。

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売り上げ減少時代の、出版業界の企業戦争

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 昔に比べて、本・雑誌が売れなくなっている。音楽CDは、昔の「レコード」の時代に比べ、100万枚売れるものが増えているときくが、本・雑誌は売れていない。そんな時代、出版に関わる人々は、どんな行動をとっているか、ルポしたのがこの本である。
羽振りがいい、華やかな分野だと思っていた出版業は、危機的な状況に直面して、冬の時代といわれている。そんな時代の出版社の戦略は、厳しいものになりつつある。
まず、雑誌が売れない。一般週刊誌(週刊ポスト・週刊現代)、写真週刊誌(フォーカス・フライデー)、漫画雑誌(週刊少年ジャンプ・週刊少年マガジン)など、雑誌が軒並み売れなくなっているという。
 写真週刊誌は一時期100万部突破時代まであったのに、フォーカス等は休刊してしまった。最近は、政界スキャンダルのスクープで、週刊新潮は売れているという話だが、スキャンダルのネタが続くかどうか? 週刊誌等のジャーナリズムの報道を法律で縛るという話もあり、冬の時代が続くのではないかと心配である。
 また、漫画雑誌やコミックスも苦戦している。漫画雑誌の種類は数多いのだが、ジャンプ600万部突破の時代とは雲泥の差である。コミックスの新ブランド(小学館の「BLUE COMIX」「My First Big」等、コンビニで売られることも多い人気漫画の再録作品)も、漫画不振時代の申し子であったことを知って驚かされる。出版社の大手三社の売り上げの四割強が漫画誌・コミックスというから、この売り上げ不振が続けば、会社の存続に関わる。学術分野の出版物も、漫画の売り上げがあってこそ、の状況だという。新聞社が出す雑誌も、新聞の売り上げがあってこそ、という世界と同じようなことが展開されていて、日本の出版界の特殊事情を知る。どうすれば、うまくいくのか? 企業努力の難しさが紹介される。
 出版界でのいい話題が少ない。大判の美術雑誌の競争が活発だったことと、仕掛けのジャーナリズムならぬ、仕掛けの出版社ともいうべき幻冬舎等の頑張りと、オンライン販売が流行りつつあるくらいである。雑誌や本を読む代わりのに、日本人は何をやっているのだろう? スポーツ・テレビゲーム・インターネット・携帯電話といったところか? 祖父の時代より、父の時代より、今の日本人は本を読まない、という状況になっているのかもしれない。ただでさえ、学級崩壊やら、円周率はおよそ3という教育なのだから、日本人がだんだん馬鹿になるのではないか? また、将来、漫画を読めない子供とかが出てくる可能性もある。日本の文化状況が、下降していかないか心配である。

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紙の本虹の刺客 小説・伊達騒動 上

2002/04/30 21:11

平成の現代にも繋がる、江戸時代初期のすさまじい権力闘争

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 江戸時代初期、徳川四代将軍家綱の時代。仙台藩主の伊達綱宗は、飲酒癖・吉原の遊女との乱行のため、わずか20歳で隠居させられ、その息子2歳の亀千代が藩主となった。
その背後には、伊達家一門の伊達兵部宗勝(亀千代後見役)と、老中首座の酒井忠清による仙台六十二万石分割・伊達家乗っ取り計画があった。
それを察知した仙台藩の家老・原田甲斐は、彼らの謀略と戦うため、綱宗の返り咲きを狙い、自らも謀略を謀り、刺客を放つ…
江戸時代のお家騒動の一つ・伊達騒動(寛文事件)を森村誠一が小説化した作品である。この事件をモデルにした物語には、歌舞伎「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」や山本周五郎の小説 『樅ノ木は残った』等の作品がある。長い間信じられてきた、原田甲斐の乱心・極悪人説を覆し、実は忠臣であったとしたのが『樅の木は残った』であった。この『虹の刺客』の原田甲斐は、忠臣とは言っても、獣の血を持つ謀略者として描かれる。
自分の計画に邪魔であるというだけで、綱宗の愛人・薫を斬るように刺客を放つ。「薫には気の毒であるが、この際伊達家には代えられない」(上巻211頁)と考えているのだが、なんの罪もない女性を斬れというのだ。その後、放たれた刺客・虎之助は、薫と愛し合うようになり、彼女と結婚してしまう。怒り狂う綱宗に、妊娠しない女=石女(うまずめ)をあてがう(上巻296頁)という策略を謀る。原田甲斐という男は、伊達家安泰のためには、なんでもありか!と思わずにはいられない。『樅の木は残った』とは明らかに違う人物像である。
 こんな、原田も悲惨な最期を遂げるわけだが、藩政で恐怖政治を引いた伊達兵部も史実どおりの晩年を送った。幕閣の酒井忠清も、四代将軍家綱の死とともに失脚する。五代将軍綱吉を擁立した大老・堀田正俊も、若年寄・稲葉正休に刺殺される。その後、側用人・柳沢吉保が権力を握るのだが、彼も綱吉の天然痘による死後は、隠居することとなる。
 歴史小説とは、歴史・事件のあったずっと後の時代から、それを捉えようとするたくらみである。この作品から浮かび上がってくるのは、今の時代にも変わらぬ権力闘争の虚しさである。虹のようにはかない権力をめぐって、人々は謀略を図り、刺客を放つ。伊達騒動の場合、現実に、亀千代毒害未遂事件や、原田甲斐乱心による刃傷事件として歴史に残っているわけだが、全くすさまじい権力闘争である。しかし、たとえ権力をつかんだとしても、彼は果たして幸せだったのか?
 そして現代、鈴木宗男・加藤紘一・辻元清美といった与野党それぞれ国会議員の面々が、すさまじい権力争いをして、辞職する人さえ出ている。基本的には、権力争いの姿は、江戸時代初期から変わっていない(刺客は放っていないだろうけど)。国会は、政策論争をやるべき…というのは綺麗事で、結局、権力闘争は、こんなものなのかもしれない。
 権力は、虹のようにはかないもの。無駄な権力闘争にエネルギーを使っている権力亡者達に、この物語を送りたい。

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紙の本闇の楽園

2002/04/30 20:54

2つの「闇の楽園」建設計画・ホラーテーマパークv.s.カルト団体施設

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 青柳敏郎はマイラインの営業マンだったが、業績が伸びず、上司の厳しい叱責に絶えかね、1年11ヶ月で会社を辞めた。
一方、長野県上高井郡坂巻町の町長・藤咲雄夫は、動物園に勤める娘のあゆみと二人暮らし。町長は過疎化の進む坂巻町の町おこしのアイデアを賞金100万円で一般公募する。
 一方、自衛隊出身で、カルト団体『真道学院』のナンバー2である大始祖・丸尾邦博は女性学院長・天海原満流(あまみはらみちる)の後釜を狙っている。丸尾は、『真道学院』の「坂巻町新ネスト建設計画」を目論み、坂巻町に向かう。
一方、坂巻町町会議員の君塚琢磨は、親の遺産を食いつぶすボンボン男。東京で狡猾な美人局に引っかかり、資産である広大な土地を、産業廃棄物の保管場所に狙われる。
ひょんなことから、坂巻町のアイデア公募を見た敏郎は、「巨大ホラーテーマパーク・坂巻ダークランド」を思いつき、応募する。そのアイデアは町議会で最終案となったが、君塚の意見で住民投票で町民の意思を問うことになる。君塚は、産業廃棄物の問題と『真道学院』の新ネスト計画にも関わるハメになっていく…。
 ゴーストタウンに続々と引っ越してくる『真道学院』の学院生たち。彼らは「坂巻町新ネスト建設計画」のため、「坂巻ダークランド計画」反対運動を起こす。長野県の過疎地に様々な思惑が集まり、陰謀の魔の手が伸びる。ここに作られる「闇の楽園」は、果たして、カルトの楽園か、ホラーテーマパークか? そして彼らの運命は?
オウム真理教事件の後、それをモデルにした小説がいくつか書かれた。新堂冬樹『カリスマ』、馳星周『無(ナーガ)』(「週刊新潮」連載)等だが、この『闇の楽園』もその一つである。一般市民を信者にしてしまうテクニックや、カルト特有の理論体系の存在や、反対派への情報収集(盗聴等)といった、もう懐かしい感じもするオウム真理教事件の要素が詰め込まれている。
文庫解説で映画監督・演出家の堤幸彦氏が「実存する言葉」たちと指摘している、現実社会の固有名詞が数多く使われ、現代小説の楽しさを味合わせてくれる。現代社会を切り取る単語群を読んでいく楽しみ。これらは数年で使用されなくなり、死語となる言葉ばかりなのだが、だからこそ、小説の形で残しておきたいという気持ちがあるのではないかと、しみじみ思う。
 オウム真理教事件で語られたサティアン・ポア・アーナンダ・マイトレーヤ等という言葉も、やがて知らない日本人が増えてくる。この事件を直接知らない人に、私たちはちゃんと解説することが出来るのかどうか? 昔、サリンをばらまいたカルトがあった…というだけでは、この時代のこの事件の雰囲気を伝えることは難しい。この小説は、この時代の雰囲気をうまく切り取っている。
 過疎化に悩む地方自治体や、産業廃棄物問題といった、現代のホットな話題もふんだん取り入れ、ラストの大騒動に向かって、飽きさせない物語である。

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紙の本連鎖

2001/10/20 18:41

狂牛病で揺れる日本。今こそ真保裕一著『連鎖』を読もう

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 真保裕一の作品で、公務員を主人公にしたものを、“小役人”シリーズと呼び、本書以外では、『取引』(公正取引委員会審査官)『震源』(気象庁地震火山研究官)『防壁』『密告』(警察官)等がある。このシリーズの最初の作品『連鎖』は、元厚生省・食品衛生監視員(通称食品Gメン)で、食品検疫所で働く羽川が主人公である。
 チェルノブイリ原発事故により放射能汚染食品(メインは汚染牛肉)を雑誌記事に書いた竹脇が車ごと海に飛び込む。警察は自殺を図ったものと予測する。数日前に竹脇の妻を寝取った羽川は、竹脇の自殺を疑う。それと並行して、ファミリーレストランの冷凍倉庫内の肉に毒物を混入したという手紙が検疫所に届く。実際、危険な農薬がばらまかれていた。羽川は竹脇の件と農薬の件の両方の調査に乗り出す…。三角輸入という原産地を誤魔化し食品汚染を隠す手法や、輸入途中で駄目になった食品を買い取るダメージ屋の存在など、食品輸入の問題点が次から次へと明らかになる。水際でチェックする立場の検疫所の役人・羽川が主人公だが、食品に含まれる放射能や農薬の問題を超えて、もっと大きなスケール物語が展開する。ジャーナリストである竹脇は何を調べていたのか。その道筋をたどっていく羽川が、遂に真相を究明するまでの物語である。
 多くの食品を輸入に頼っている日本人にとって、その安全性の問題は深刻である。農薬や放射能以外の食品汚染問題で、現在日本は揺れている。狂牛病の発生した牛が日本で発見されたことにより、食肉産業が打撃を受けている。原因は“肉骨粉を含む飼料”の輸入らしいのだが、牛の飼料だって、間接的に人の食べる食品の問題と言える。輸出の送り手側から、最終の消費者の間になんらかの問題があるから、この小説や、狂牛病のような事件を引き起こす。検疫所の水際だけのチェックでどうこう出来る問題ではなく、生産者から消費者までをつなぐ、流通全体の問題といえるだろう。輸出・輸入が絡めば、日本政府の手に届かない、我々のコントロール出来ない世界にまで、問題が広がることもある。
 世界をつないでいる輸出・輸入は、単なる商品の取引ではなく、外の人をどれだけ信頼出来るか、その信頼性の取引とも言える。ブランド物が、信頼性があるから価値があるのと同じで、食品は、最も信頼性を失ってはならないものだ。食品を取り扱う会社やそれを取り締まる責任を持つ農林水産省や厚生労働省は、万が一ヘマをすれば厳しく糾弾される。関係者は、この小説の“小役人”や“ジャーナリスト”の行動により、世界規模で必要な食品の安全性を考えるべきだ。

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「始めに結論あり」で進めるアンケートや新聞記事への批判は正しいが、しかし…

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 犯罪学、ギャンブル社会学、社会調査論を専門とする学者が、現代に蔓延する社会調査のいかがわしさを暴いた本である。【世の中に蔓延している「社会調査」の過半数はゴミである】と言い切っている著者は、過去の様々な社会調査を実例として挙げ、どのようにゴミが生み出されるかを検証している。
消費税導入や、憲法改正のアンケートで、調査する新聞社によって、結果が大きく変わるのはなぜなのか? 著者は、新聞社による「始めに結論あり」というような調査手法を暴き出し、手厳しく批判している。
 また、アンケートではない新聞記事にしても、産経新聞と朝日新聞のそれぞれの印象操作のテクニック(p78,p79)を紹介し、問題視している。
「ジャンクフード」と「子供の非行」や、「ジーンズやハンバーガー」と「健康への悪い影響」等、「相関関係がある」と言われる調査結果のウソ。「選挙の当落予想というと出てくるH大学のF教授」批判。『買ってはいけない』の著者である渡辺雄二氏や船瀬俊介氏への批判と、バッサバッサと批判のオンパレードである。
 一般に多くの人々は、新聞社や評論家などに、適切な判断を下す存在であることを期待している。しかし、実は彼らは様々な政治的な考えを持ち、自分の思想に合うような議論や結論に持っていくことが多い。そのように、「始めに結論あり」というのは、ゴミ情報の量産に繋がり、危険というわけだ。
 しかし、新聞社や評論家を、ただ事実を伝えるだけの存在ではなく、政治的アクションを起こす積極的存在として見ることも可能である。ジャーナリズムというのは、そういう思想家・運動家のような存在であってほしいと思う。その点で、産経新聞なり朝日新聞なりの新聞社や、前出の科学評論家等が、何らかの主張を持っているというのは、結構な事だと思う。
 実際、数学や理科の分野と違い、社会を科学的に扱うことは難しいと思う。小泉首相の支持率のように、市民の考えは移ろいやすい。社会的なデータなんか気にしない、少数意見でも気にしない、という生き方が正しいと思う。多数派の意見のみに流れてしまう新聞社や評論家などが存在するわけないし、あってはならないだろう。
 ゴミ情報に惑わされないために、正しい情報の共有化を強く訴え、官庁や大学の調査データの公開を強く求めるという建設的意見もある。全く正しいことである。インターネットの時代になり、著者の行う計画が進めば、統計情報等、効率的に運用されるようになり、少しはいい社会になるかもしれない。しかし、最終的にモノをいうのは、統計調査ではなく、政治的な思想を持った個人のリーダーシップだと思う。

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ファストフード産業が引き起こす数々の問題

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 ファストフード産業の問題点を取材したルポルタージュである。
 1950年前後から現在までのアメリカのファストフード産業の発展によって、様々な問題が発生してきた。若年層や外国人労働者をパートタイムで働かせて、賃金を低く抑え、労働組合結成をも阻止するという雇用問題。ジャガイモ・鶏肉・牛肉等の原料について、大手加工業界が、第一次産業従事者(牧場主・農業従事者)を搾取している問題。精肉工場の低賃金労働者の労働災害の問題。肉が引き起こす食中毒の問題。ファストフード摂取により引き起こされる肥満や、それに伴う心臓病・糖尿病・癌等の病気の問題。それらの実例の数々が指摘されていく。
 一般的な、アメリカ企業は、どういう思想をもち、どういう行動をとっていくのか? ファストフード業界という、アメリカの顔とも言うべき業界の発展の歴史は、そのモデルとして適切である。それは、極限まで効率を重視して、大量生産、大量消費を目指す。市場を次々に開拓していき、成功を収める経営者も出てくる。しかし、その背後にはこの本で紹介されるような数々の歪みがある。
一番の問題は労働問題である。資本主義の黎明期に、児童労働といって、子供を労働に駆り立てていた事実がある。山本茂実(1917-98)の記録文学『あゝ野麦峠』(製糸工場)や、テレビアニメ「ペリーヌ物語」(主人公の少女・ペリーヌは、フランスの工場でトロッコを押す仕事を行う)を思い出すが、現代社会は、児童福祉法・労働法等の制定によりそれらの問題を克服した。しかし、企業は、外国人労働者や、学生のパートタイム労働者等、低賃金で雇える存在を構築し続ける。最近では、労働者のカンバン方式とも言うべき、オン・コール・ワーカー(電話1本で勤務先を告げられ、駆けつけるという雇用形態)というシステムまで作ってしまうほどである。
 効率重視は結構なことだと思うが、人権を無視した方法までも許容することは出来ない。ファストフード業界は大広告とイメージ戦略により、好感度の高い業界だと思われるが、この本に書かれているような面もあることを忘れてはならない。変なことをやっている企業ならば、その製品は買わないという「自覚的消費者」になる必要がある。

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紙の本小泉改革と監視社会

2002/09/04 21:17

官僚が全市民を支配する。そこから何が生まれるのか?

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 盗聴法、改正住民基本台帳法、自動車ナンバー自動読み取りシステム(Nシステム)、新宿区歌舞伎町の監視カメラ網、JR東日本の定期券「Suica」等の様々な事例から、現在進みつつある日本の管理社会化に警鐘を鳴らした本である。著者は、様々な事例を取材することによって、この国の指導者層がどんな社会を作ろうとしているのかを、読み解こうとしている。
 小泉改革のイデオロギーは、新自由主義(ネオ・リベラリズム)と呼ばれる経済思想である(p38)。市場原理至上主義・規制緩和・企業行動完全自由化・民営化路線といろいろ思い浮かぶが、この路線がどんな社会を生み出すのであろうか? 「弱い者を徹底的に淘汰すべし」「強い者、強くなり得る者をより一層強くするための支援策を講じよ」(p44)。エコノミスト・山家悠紀夫著『「構造改革」という幻想』の指摘だが、この路線が、弱者切り捨て・強者優遇の階級社会を作っていく。この階級社会化はすでに進みつつあり、弱者の家に生まれたならば、教育機会さえ奪われてしまう(p42)。その結果、多数の市民は「市場」としての役割でしかない存在にされ、番号で管理されることになる。改正住民基本台帳法が、それを徹底させることになる。
 全国民の改正住民基本台帳法のデータは、基本4情報だけで終わるはずがない。必ず、税金・保険・健康等のデータとリンクされる。このデータを、「市場」としてどう利用するか? 今はダイレクト・メール利用のダイレクト・マーケティングぐらいだろうが、もっとダーティなビジネスを考える必要がある。新堂冬樹著『カリスマ』で、宗教団体が中学受験の子供のいる家庭と、病人のいる家庭をターゲットに、信者獲得を狙うというのがある。このようなカルト団体が全住民のデータを集めれば、マインド・コントロールにより全財産を巻き上げる事件が多発するだろう。
 歌舞伎町の監視カメラ網(p25)、顔認識システム(p28)、警察の持つ運転免許証の顔写真データ、これを組み合わせれば、「歌舞伎町のホテル街を通るすべてのカップルは、警察に監視されている」(p27)わけだから、不倫カップルなど、悪の警察官に恐喝される。ホテトル等の売春産業を牛耳ることも可能である。暴力団にミカジメ料を払う変わりに、警察に払うという世の中になる。ケツモチは新宿警察署、ミカジメ料を払わないと、何かあった時に助けてくれない、という可能性もある。戸梶圭太著『溺れる魚』・『アウトリミット』等の小説に、そんな悪徳警官が登場するが、そんな連中が増える可能性を考える必要がある。
 それに対し、管理される側の住民に、どのようなベネフィットがあるのか? リスクばっかりである。こんなに馬鹿げたことはない。多くの住民は、「僕は悪いことしていないから平気」(p33)なのだろうか? 管理社会を目指す官僚など、信じないほうがいい。

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