casiroさんのレビュー一覧
投稿者:casiro
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紙の本シェルター
2006/10/31 00:41
シェルターを守りたいのか壊したいのか。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
江藤恵は、都会のシェルターのような喫茶店でざんばらの短い髪をした女のコを拾ってしまった。「わたし、殺されるかもしれない」と言いながらも素性を語らない彼女を恵はなぜか放り出すことができない。その頃、歩は「中国に旅行に行く」と休暇を取った姉・恵の部屋にパスポートが残されていることに気付き。
整体師の力先生のシリーズ『カナリヤは眠れない』『茨姫はたたかう』に続く3作目です。文庫版も出ましたが、カバーが可愛いと思いこちらを買ってしまいました。そもそも前2作は文庫だったのにこれだけどうしてこのサイズで出たんでしょ?読み終わった今なら文庫でもよかったかな、と思っております。
もどかしいのは、姉妹が過去から歩き出そうとしている話なのだからだと思います。暗いほうだけを見つめている人と関わるのは辛い。恵の自虐的な考えは客観的に自己分析されている分、余計に、鬱々とした気分を誘発させてくれます。近藤さんの作風と云えば、まぁ、そうなのでしょうが。
力先生の手際の鮮やかさがあまり感じられなかったのが残念。
2006/10/31 00:21
ココロなんてどこから繋がっていくものか。
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父親の仕事の都合で6年間住んでいたドイツから日本への帰国が決まった亮─リオ。いずれその日がくることはわかっていたけれど、日取りまで勝手に決めてしまった父親に反抗して、リオは日本語補習授業校の元担任であった小林先生のところへ家出をした。そこで出会ったのは、日本からドイツへと越してきた同い年のアキラ、無愛想な老いた男マックス、そしてマックスが拾ってきたといううすよごれた子犬のペーター。近くの公園ではノイマン野生動物研究所の所有するトラックが横転し、オオカミたちが逃げ出していた。オオカミには一頭当たり1000ユーロの賞金がかけられたらしい。──もしかしてペーターはオオカミではないだろうか。リオとアキラは調査に乗り出した。
ドイツにきたのにはワケありで日本に帰りたいと思っているドイツと日本のハーフであるアキラと、アキラよりドイツに詳しくてここが好きでも日本に帰らなければならない日本人のリオ。二人はペーターと引き換えに賞金をもらうつもりでいたけれど、ノイマン博士のオオカミの研究所を見て考えを改める。「飼い犬」でもいいんじゃないのという考えは、けれどペーターがオオカミだと確認されたことで出来なくなってしまった。届け出るかそれとも。二人とマックスはペーターを群れに帰そうと決意する。
出てくる地名についての土地鑑なんて全然ないのですが、単純に距離だけみてもスケールが大きいなぁと思います。ノイマン博士を含んだマックスの過去、恋愛、東西問題や、自分達の両親とのことも絡めながら進んだ先に待っていたのは、リオたちにとって予想もしなかった光景。1ページにも充たないその場面にじわっと泣きそうになりました。何かを守ろうとする気持ちはコドモのほうが純粋なのかな、打算とか偽善とか関係なくそうしたいからしたんだろうな、と思い。でもその周りにいる人達がダメで馬鹿なオトナなのかというと全然そんなことないんだ、この話。このコたちはきちんと大人になるんだろうなぁ、と考えられるのが気持ちいい。
作者が翻訳をする方だからなのか、14歳にしてその言葉遣いは堅いよぅと思う箇所もあったものの、間違ってはいないよね‥‥。 日本とドイツに別れたリオとアキラはその後、また会ったりするのだろうなとか想像するのも楽しい。
あ、リオの夢に出てきたコーヒーを入れてくれる天使たちが妙に好き!!
「おれは、てっきり、町中の若い連中がモミとか白樺とかの若木をかついで、愛する女の子の窓辺へわさわさ走っていくのかと思ってたのにさ」
ぼくは笑った。
「笑うな! おれなんて道行く人にすれちがって、チラッと見られるたびに気恥ずかしくて、ほんとうは違うんです、この五月の木はおれんじゃなくてマックスのです、なんて心の中でつぶやきながら、歩いてたんだぜ」
アキラはぶつぶつと文句を言った。
それが南ドイツの「古い」風習だと知らなかったアキラと、リオの会話。わさわさ走ってたらなんか楽しそうだねぇ(笑)。
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