respondeoさんのレビュー一覧
投稿者:respondeo
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紙の本ユリシーズ 1
2003/11/06 23:21
大兄,ユ,ユリシーズが文庫でこの値段ですぞ。これを買わないで何を買うって言うんですか。
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ほんの数年前,本書がはじめて集英社から出たとき,文学少年だったぼくは本書が陳列された書店の棚の前を,羨望のまなざしとともに徘徊したものだった。三冊で,1万2000円(と税)。それは,明らかにひとつの本に費やす値段ではなかった(と税,は今より安かったが)。
それが,だ。あなた。デフレだかなんだかしらないが,文庫になって,一冊1200円だということだ。これは凄いのだ。集英社はエライのだ。この本一冊必死で翻訳することを考えてみればタダみたいなものではないか。なにせ『ユリシーズ』の英語は難しいのだ。下手すると本当に死ぬかもしれないぞ。そうでなくても,英文学研究者になってそのまま御陀仏かもしれないのだぞ。
それが,だ。あなた。デフレだかなんだかしらないが,文庫になって,一冊1200円で,しかも単行本についていた詳細な「註」は,そのままちゃんと残っているのだ。凄いのだ。この註がまた半端ではないのだ。当時のダブリンの様子からトマス・アクィナスの『神学大全』まで何でも載っているのだ。ほとんど,偏執狂なのだ。なにせ『ユリシーズ』の註釈はたいへんなのだ。下手すると本当に死ぬかもしれないぞ。そうでなくても,英文学研究者にそのまま御陀仏かもしれないのだぞ。
それが,だ。あなた。デフレだかなんだかしらないが,文庫になって。一冊1200円で,しかもなんと内容は同じなのだ。涙が出る。凄いのだ。感動なのだ。買うしかないのだ。
註:内容については何もふれなかったが,一言で言うと,登場人物たちがのべつくまなく,おしゃべりをしたり,蘊蓄をたれたり,エッチなことを考えたり,まあ,そこらへんのきみやぼくと同じようなことをえんえんえんえんと続けている小説なのだ。とにかく,えんえんえんえんえんと続くのだ。筋なんてどうでもいいのだ。で,それが面白いかって,面白いのだよ。
集英社はエライのだ。
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