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青木みやさんのレビュー一覧

投稿者:青木みや

39 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本医者が心をひらくとき 上

2002/11/29 22:15

医学生・研修医に、そして患者自身に読んで欲しい

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は、JAMA(アメリカ医師会誌)の連載コラム「A Piece of My Mind」からの傑作選を、『アメリカ医療の光と影』の著者である李啓充氏が訳したものである。
 医師や研修医を中心に、患者とその家族が書き手となり、それぞれが思いの丈をつづった100本近いコラムが収録されている。

 生と死が関わる場所にはドラマが生まれやすいが、ここに描かれているのは、そんな大げさなものばかりではない。実地研修中の医学生が医師の質問に答えられず、採血にも失敗し、暗い気持ちで1日を終えようとしたところに、患者に言われる。「君は、きっと、よい医者になるよ。俺にはわかる」。患者がそう言った根拠は、たんに医学生が「椅子に座って話しかけてきた」からだ。
 だが、ここから入院患者が人間的な扱い、思いやり、優しさに飢えていたことがわかる。医学生の技量は未熟だったが、患者から暖かい気持ちと信頼を勝ち取ったのだ。

 もちろん医師にも患者にも、それぞれの立場があるだろう。しかし、患者は病気の残酷さ、容赦なく訪れる死に、恐怖感や無力感、さらに絶望感を持つ。そんな患者の個人的な感情を、診断、検査、投薬、手術などというスキルだけで癒すことはできない。そして医師自身が抱える苦悩にも同じことが言えるのではないだろうか。感情を摩滅させ、機械的に効率よくしようとするほど、信頼や愛情という温もりは失せていく。それは本来の医療と呼べるものだろうか——。

 本書の中では、患者家族から「アートとしての医療」への感謝が表される。「アートとしての医療」とは何か、本書を読んで考えてほしい。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
上:
序 キャスリン・モントゴメリ 博士
編者まえがき ロクサーヌ・K・ヤング
[医者になること/医者であること]
[家族]
[暴力−−医の対極にあるもの]
下:
[思い出をありがとう]
[患者の視点]
訳者あとがき


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紙の本ジュゴンデータブック

2002/10/29 22:15

もっと、ジュゴンのこと、知りたい

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 ジュゴンについて、知っていること。人魚伝説のモデルになった(らしい)、数が少なく珍しい、くらい。あまりに知識が乏しくて、『ジュゴンデータブック』を読んで恥ずかしくなってしまった。
 写真をまじまじと見たのはこれが初めてだ。似たイメージの動物を挙げてみる。カバ、イルカ、アザラシ……。人魚のイメージからはちょっと遠い。海牛類とされてきたが実際はゾウの仲間と考えられている。海生哺乳類としては唯一の草食動物だ。そう言われてみれば、体長3メートルの大きな体にちょこんとある瞼のない小さな眼はおとなしそうで、ゾウの目に似ているかもしれない。
 ジュゴンは太平洋とインド洋の赤道を挟んだ熱帯から亜熱帯の沿岸の、多くはオーストラリア、パプアニューギニアに生息している。個体数は減少する一方で、日本でも絶滅寸前で沖縄本島で確認されているのみ。
 沖縄ではザンと呼ばれ、民話にも登場するほど親しまれていたジュゴンは、終戦後に見かけなくなったという。戦時下の爆弾投下や戦後のダイナマイト漁がひっそりと暮らしていたジュゴン達に影響を与えたことは間違いない。だが、今もなお沖縄本島東海岸にはジュゴンが海藻を食べに来ている。生息数もはっきりとは判らないが、まだジュゴンは確かにそこにいる、存在している。まだ間に合う。
 沖縄の海のジュゴンが伝説にならないように、私たちはジュゴンのことを知ろう。そこにある海に、環境に眼を向けよう。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
プロローグ
名前/分布/生息数/ジュゴンとウミガメ/分類、大きさ、寿命
潜水能力/泳ぎ/海底の移動/ジュゴンとアマモ/食餌/プロポーズ
繁殖/オスとメスの違い/ジュゴンの瞳/体つき/鼻の下/目と耳
鼻/口/皮膚/骨格
ジュゴンの仲間 海牛類
ジュゴンのまつわる話いろいろ
ジュゴンノート 沖縄取材日記
エピローグ
ジュゴンを折ろう
ぱらぱらジュゴンの作り方
ジュゴンの生息分布図
日本で会える海牛類・ジュゴンの目視記録
ジュゴンリスト・協力クレジット
参考文献

【関連書籍】
ジュゴン保護キャンペーンセンター編『ジュゴンの海と沖縄 基地の島が問い続けるもの』高文研
中村元著『人魚の微熱 ジュゴンをめぐる愛とロマン』パロル舎


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人体をパーツとみなし、切り売りする権利は誰に

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 あなたが難病を患い、「治療の一環」と思ってある検査を受けた、とする。あなたは検査は自分が回復するためだと思っている。ところが実際は、あなたの身体組織から特殊な細胞や遺伝情報を手に入れるための検査だとしたら、あなたはどう思うだろう。しかもあなたの身体組織に対し、医師の名の下に特許が申請されていたら。

 これは実際に米国シアトルのジョン・ムーアの身に起こった事件だ。ムーアは医師たちを訴えたが、1990年、カリフォルニア州最高裁判所は、ムーアの自分自身の身体に対する財産権を認めず、そこから生ずる収益は医師とバイオテクノロジー企業側に属すると判断した。ムーアに認められたのは、身体組織を研究に使うと聞かされた場合に同意するか拒むかという権利のみだ。だが、医師や研究者は目的をすべて明らかにせずとも組織を採取することが可能だ。あなたは健康診断の血液検査で、自分の知らないうちに遺伝子情報が調べられることがあると想像するだろうか?

 バイオテクノロジーの時代に、人間の身体は貴重な遺伝子情報の宝庫となった。そして科学技術の進歩、ベンチャービジネスの育成という理由で、ヒト遺伝子特許が認められ、人体組織の商業価値が高まっている。ドナー候補者は自己決定をもとに自分自身を販売し、企業や研究者は金銭的利益を確保しようと患者の組織試料をため込む。遺伝子特許により遺伝子診断は法的制限やコストがかかるようになり、診断結果は遺伝子差別の原因となって現れた。

 人間は宗教的、歴史的、文化的なバックボーンをもつ社会的な存在である。人体を部品(パーツ)とみなし、切り売りする権利は誰にあるのか。法律家を含む著者たちは裁判記録やインタビュー、具体例を示しながら、個人や社会の価値が脅かされている現状に警鐘を鳴らす。科学技術のネガティブな側面ばかり強調されているように思えるが、人間が使う以上は誤用も濫用もあり得る。説得力と衝撃に満ちた内容であり、必読の書と言えよう。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
目次
謝辞
プロローグ────人体をめぐるビジネス
第1章  アインシュタインの脳からシルクウッドの骨まで──人体組織の研究
第2章  生体部品売買──人体組織に宿る“人間”
第3章  遺伝子ゴールド「・ラッシュと特許戦争
第4章  採血して走れ
第5章  人体にひそむ密告者
第6章  DNA捜査網──生物学的監視とDNA鑑定の拡大
第7章  生物収集と人体展示
第8章  死後の詮索──DNA捜査によって蘇る過去
第9章  新時代の死体泥棒──人体犯罪と法対策
第10章  人体を市場から救い出す
訳者あとがき

索引

【関連書籍】
粥川準二・文、あべゆきえ・絵『資源化する人体』現代書館
立岩真也著『私的所有論』勁草書房
市野川容孝編『生命倫理とは何か』平凡社

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紙の本C型肝炎 沈黙の感染症

2002/08/16 18:15

C型肝炎のことを知りたいと思う人にはうってつけの本

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 肝臓は有害物質の解毒や排泄、胆汁の生成、栄養素の代謝機能、タンパク質の生成と血液凝固作用など、身体を維持する重要な機能を担っている。その肝臓が炎症を起こす肝炎はアルコールなども原因となるが、最も多いのはウイルスによるウイルス性肝炎である。ウイルス性肝炎の中でも危惧されているのが、C型肝炎である。

 日本では非加熱血液凝固因子製剤による医原性の感染が広まっている可能性が強まったため、2002年度から住民健診にC型肝炎ウイルス(HCV)検査が組み込まれた。少しでも感染の心当たりがある人は、すぐに検査を受けることをお勧めする。なぜならC型肝炎の70〜80%が慢性化する。そうなるとほとんど病気の自覚症状はないまま、密かに肝臓は破壊されていき、何十年後かに肝硬変、肝癌として姿を現す可能性が高いからだ。沈黙の感染症と呼ばれる由縁である。

 C型肝炎ウイルスの大部分は血液を介して拡がる。輸血、ドラッグの静脈注射回しうち、刺青、ピアス、鍼治療などなど。幸いなことに、家族間のC型肝炎の感染は極めて起こりにくい。治療法は、インターフェロン治療と抗ウイルス薬の併用療法が注目を浴びている。

 以上のことは、本書にもっと詳しくていねいに語りかけるように書いてある。C型肝炎のことを知りたいと思う人に本書は、うってつけだ。ミシガン大学部の講師でありC型肝炎の免疫療法の研究者である著者によって、感染者やその家族、友人のための解説書として書かれた。病気に関心を持つこと、自分の状態を知ること、それが治療には良い影響を与えるはずだ。

 C型肝炎ウイルスが発見されたのが、1989年。それから十数年、治療法は急速なペースで進んでいる。もう少し、もう少しだ。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
まえがき
1章 「肝炎」という病気
2章 C型肝炎の発見
3章 C型肝炎と慢性肝炎
4章 C型肝炎と末期肝臓病
5章 C型肝炎と肝移植
6章 C型肝炎感染の拡大を防ぐには
7章 C型肝炎と飲酒
8章 聖杯を求めて
9章 食事と栄養
10章 C型肝炎とインターフェロン
11章 代替医療と非伝統医学
12章 C型肝炎と体の闘いと、ワクチンについて
13章 皮膚と関節病変—C型肝炎の肝臓外の症状
14章 C型肝炎と腎臓
15章 あなたと免疫系
16章 C型肝炎の心理面への影響
おわりに
訳者あとがき
関連情報
参考文献
用語解説
索引

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紙の本海馬 脳は疲れない

2002/07/11 18:15

ポジティブに生きるための方法論となっている脳の本

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 ひとの脳の中には「海馬」と呼ばれる場所がある。海馬は記憶を扱う部位だ。この本は、その海馬を研究対象に定めた新進気鋭の学者である池谷さんと「ほぼ日刊イトイ新聞」の糸井さんが、脳をテーマに対談したものである。親しみやすい言葉と日常の例をあげて話してくれるので、するすると理解できる。

 例えば「年のせいか物忘れがひどくて」と笑いながらもほろ苦い思いを抱いているひとはいませんか。でもね、池谷さんによると「物忘れ=老化」って誤解なんだそうだ。大人は経験値が子供より高いし、知識も豊富。だから上手く刺激すると、情報を整理し、推理する論理的な思考能力は30歳を越えたところから飛躍的に伸びる。だけど逆に歳を喰うと視点がマンネリ化し、情報のインプットを抑えてしまう。それが「物忘れ」に繋がっているのだ。

 脳の記憶の仕方の特色は「可塑性」。情報を受け入れて留めて記憶する、ということ。可塑性がないと記憶はできない。海馬は最も可塑性に富んだ場所だから、海馬が発達していると新しい局面や価値観に柔軟に対応できる、と池谷さんは説明する。それに対する糸井さんは、「変わることはいいこと」という人生観や物事の受けとめ方に広げていく。
 池谷さんと糸井さんの会話は絶妙だ。池谷さんが脳の機能を話すと、糸井さんがそれを実生活の中で起きているケースに変換する。この本は、脳の本でありつつ、ポジティブに生きるための方法論になっている。
 会話はざっくばらんに、思いは真摯に、発想は奔放に。二人の話題はとぎれる事がなく、読みながらわくわくしてしまう。

 さて、脳を働かすコツは、がんがん脳に刺激的な情報を与え、睡眠時間をきっちり取ること。眠っている間に海馬が情報を整理しているから、睡眠時間は6時間は必要らしい。みんな、ネットばっかりしてないで寝て頭を良くしよう!

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
第一章 脳の導火線
第二章 海馬は増える
第三章 脳に効く薬
第四章 やりすぎが天才をつくる

【関連書籍】
池谷裕二著『記憶力を強くする 最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方』講談社ブルーバックス
ラマチャンドラン&ブレイクスリー著『脳のなかの幽霊』角川書店
多田富雄&南伸坊著『免疫学個人授業』新潮文庫

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紙の本ウォーター 世界水戦争

2002/06/03 22:15

水不足が貧困を招き、紛争をも引き起こしている

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 本書は、21世紀を「水の世紀」——水危機の時代だと指摘する。
 読みながら「人間は水を何に使っているか?」と自問してしまった。しかしこの問いかけが出てくること自体、たいした危機感を持たないですむ日本にいる自分がいかに無自覚か、ということを端的に表していた。個人では、まず飲み水。もちろん手や身体を洗う。料理をする、食器を洗う……。農業や工業でも水が大量に必要だ。
「21世紀の戦争は、水をめぐる争いになるだろう」。世界銀行副総裁だったイスマイル・セラゲルディンが述べたこの言葉は、非常にインパクトがあり、水資源の需要と供給のバランスが崩れかけているという事実をつきつけた。水問題の構造は単純なことだ。先史時代以来、地球上に存在する水の量は変わっていない。そのほとんどは海にある。海水だ。そして人間は水に依存して生きている。水を欠かせない人間はひたすら増加し、水の需要は激増している。
 それなのに水の浪費により地下帯水層は縮小し、汚染物質垂れ流しで水質は低下し、過剰な灌漑やダムのために水源の枯渇と汚染、土壌の劣化が起こっている。例えばアラル海は、ソ連が行った大灌漑事業のために水位が下がり、いまや消滅の危機に瀕している。
 構造は単純だが、そこに政治経済が絡んでくるので解決は単純ではない。水不足は、食糧不足や貧困、病気の蔓延につながり、水紛争を引き起こす。著者はこれを、世界水戦争と呼ぶ。水はほんとうに危機的な状態にあるのかという問いかけから始まり、水循環、歴史的背景、各国の状況まで、さまざまな事例や問題が詰まっている本書は、読み応えがあった。
 水戦争への対処法はまだ具体化していないが、まず関心を持つことだろう。世界水会議(WWC http://www.worldwatercouncil.org/)による世界水フォーラムで取り組みが始まっている。2003年は日本で開催される予定だ。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
はしがき
第1部 水の世界はどこにあり、どんなもので、どれくらいの大きさなのか?
 第1章 危機に瀕する水
 第2章 水循環
 第3章 自然の摂理
 第4章 歴史のなかの水
第2部 水の世界をつくりなおす
 第5章 気候、天候、水
 第6章 不自然な選択
 第7章 アラル海
 第8章 ダムに判決を下す
 第9章 潅漑の問題
 第10章 縮小する帯水層
 第11章 川の再設計
第3部 水の政治学
 第12章 中東
 第13章 ナイル川
 第14章 チグリス・ユーフラテス水系
 第15章 アメリカと近隣諸国
 第16章 インド亜大陸
 第17章 中国のジレンマ
第4部 何をなすべきか?
 第18章 解決策と宣言
注 / 参考文献 / 訳者あとがき

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未来への期待と科学技術の普及への熱意が伝わってくる。

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 1999年9月、2000年2月とスペースシャトル・エンデバーに搭乗した毛利衛。本書は、毛利へのインタビューや対談、生い立ちなどから毛利衛を解きほぐそうとする、丸ごと一冊毛利衛本である。

 毛利衛は2001年7月にオープンした日本科学未来館の館長となった。館長に就任したのは、2度の宇宙飛行の体験をより多くの人と共有すること、その体験を生かして社会にどう貢献できるか、を考えていたからだという。そして日本科学未来館によって、「科学技術を文化にする」ことに魅力を感じたのだと。
 科学技術はこれまで経済の発展に貢献し、家庭電化製品や医療技術の向上など現代の生活に欠かせないものとして成長してきた。私たちはそれを知っていながらなぜ科学技術を「特別なもの」と感じてしまうのだろう。毛利は、日本科学未来館で働く科学技術スペシャリストに議論させ、彼らのオリジナルな解釈を出すことを求めたという。その最初の結実が哲学的なテーマも盛り込んだ「ロボット・ミーム展」だった。今後は、日本科学未来館から文系や理系という枠を越えた新しい試みがどんどん発信されることが期待される。

 ところでいまは日本科学未来館の館長である毛利衛だが、やはり宇宙がバックグラウンドにある。毛利の「ユニバソロジ」という考え方は、宇宙で顕微鏡で細胞をのぞいていて、ふとスペースラブの丸窓から地球を見たら、そのふたつの姿がよく似ていた、というところから発想を得た、という。スケールの違うものを大きな観点から見た驚きは、宇宙の、とても包括的な雄大なスケールを感じる。毛利のユニバソロジという考え方は、今後、日本科学未来館で、未来を目指して発展し、広がっていくのだろう。
 未来への期待と科学技術普及への熱意が伝わってきてわくわくする一冊。

(青木みや/管理栄養士 http://live.pobox.ne.jp/)

【目次】
巻頭写真
巻頭言 毛利衛
1 未来館
・ロングインタビュー 終わりのない進化の中で —宇宙飛行士から日本科学未来館館長へ—
・聞き語り 新しい場所で「個」をみがく —ある5人のこだわり—
・私が見た毛利衛 酒井夕子 藤田大悟
2 宇宙
・対談 坂本美雨×毛利衛 宇宙で見たきれいなもの
・対談 坂本龍一×毛利衛 Music in the Universe 音楽の未知なる可能性
・聞き語り 地球の中でなく、宇宙の先に向かうということ —3度目の宇宙はじっくりと—
・私が見た毛利衛 角野直子 RYU
3 生い立ち
・対談 石川直樹×毛利衛 ふたりの旅人が語る自然との対話
・エピソード キーワードで探る 毛利衛「好奇心の遺伝子」
・BOOKS SELECTION 毛利衛 本との出会い
・私が見た毛利衛 広畑優子 本島修
4 科学と社会
・対談 瀬名秀明×毛利衛 科学と文学のリアリティ
・聞き語り アート、ボランティア 未来へのアプローチ
・Q&A 学生5名×毛利衛 科学と社会をめぐるQ&A
・私が見た毛利衛 中村桂子 中西忍

【関連書籍】
毛利衛撮影・坂田俊文監修『私たちのいのち』(集英社インターナショナル 2001.1)
毛利衛著『宇宙からの贈りもの』(岩波書店 2001.6)
幸村誠著『プラネテス』(講談社)

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紙の本医者が薬を疑うとき

2002/03/14 18:15

「薬」を服用する患者の視点から評価すると

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 良い薬の条件とは一体何だろう? ごく単純な疑問だが、「誰にとって」、良い薬なのかで条件は変わってくる。患者にとっては、効いて、しかも副作用が「ない」ことが前提だろう。だが、医師からすれば、副作用のない薬はない。だから、効き目が強くて切れ味がよく、副作用は用量などでコントロールできる薬が望ましい。また製薬企業は、当然、収益が大事になる。
 このようにひとくちで「良い薬」といっても、立場によって認識に違いが出てくる。「良い薬」とは、服用する患者の視点から評価したものでなくてはならない、それが医師であり、医薬品情報誌『正しい治療と薬の情報=TIP誌』の編集長でもある著者の主張である。
 著者は情報をできるだけ公開し、条件をすべて提示した上で、個々の消費者が判断して選ぶべきだという。そして消費者は自分の健康や医療に関心をもとうと、呼びかける。その著者のスタンスの現れが、購読料だけでまかなう情報誌や市民が中心となった医薬品監視機構「薬害オンブズパースン会議」の活動である。
 この薬は効かないなぁと思ったことはないだろうか? 新しい薬を作るには、薬効の有無を調べ、安全性を確認する。そして治療にどの程度有効なのかなど、さまざまなハードルを越えなくてはならない。その開発費は莫大な金額になるため、不都合なデータは隠したまま発売したい。最終的に薬害まで起こらなくても、消費者は効果のない薬を買わされているかもしれないのだ。本書は、みんなもう少し薬を疑ってみようという提案と、薬とつきあっていくための具体的なスキルが示されている。
 第3章「医者の反省に終わりなし」は、薬だけでなく、医療社会そのものへの思いや反省、期待が語られ、著者の堅実な人間味を感じさせる。医療と上手につきあうために、手にとってみてほしい。

(青木みや/管理栄養士)

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B・Jで育った弟子たちの師ブラック・ジャックへの「恩返し」

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 『ブラック・ジャック』(手塚治虫、秋田文庫)を読み直す。やっぱりブラック・ジャックはかっこいいなぁと思う。どんな難しい手術にも果敢にメスをふるう無免許の天才外科医。治療の依頼には莫大な代価を要求するがいったん引き受けると、患者の命を助けることに全力を尽くすヒューマニスト。

 が、読み続けるうちに素朴な疑問がわく。そこで外科手術に持ち込む必要がどのくらいあるのかとか、それで人間を鳥にする手術を始めちゃうのはもはやSFだね!とか。そこがまた楽しくもあるのだが、本職の医師が現代的な目で見ると楽しいだけじゃ済まされないのか、ブラック・ジャックの手がけた治療の数々を研究報告する症例集も2巻目になってしまった。コンセプトは1巻と変わらずに「マンガだから」を禁句とし、1巻より7名増えた24名の医師たちが31症例を真剣に検討している。そのメンバーのほとんどが『ブラック・ジャック』を読みながら医師になったという、ブラック・ジャックの影響力の大きさを身をもって知っている面々である。

 専門的見地からびしびし突っ込み、時にはブラック・ジャックの診断を間違っていると指摘する。『ブラック・ジャック』が普遍的なテーマを持つ優れた漫画であることを考えると、専門的な側面も現代に合わせて進歩させていくのも、読み継いでいくために大事なことだろう。
 また、本書の好ましいところは、執筆者が『ブラック・ジャック』という「漫画」を楽しんでいること。これは弟子たちの師ブラック・ジャックへの恩返しでもあり、何より『ブラック・ジャック』を語るのが楽しいというファンのお祭りなのだ。2巻はピノコの登場も多いので、ファンは必読。

(青木みや/管理栄養士)

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紙の本血痕は語る

2001/11/23 01:10

目次・関連書籍

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【目次】
はじめに
プロローグ 初めての鑑定─科学警察研究所というところ
第1話 歩く血痕
第2話 Rホテル殺人事件
第3話 キメラ
第4話 親子鑑定
第5話 人獣鑑別
第6話 尿斑
第7話 流動血─強姦事件
第8話 性癖─DNA鑑定型の現在
おわりに
謝辞

【関連書籍】
上野 正彦著『死体は語る』(文藝春秋 文春文庫 2001.10)
木村 康著『死体からのメッセージ 鑑定医の事件簿,1』(日本放送出版協会 NHKブックス 1999.2)
西丸 与一著『法医学教室の午後 〔正〕』(朝日新聞社 朝日文庫 1985.7)

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減塩だけがよいわけではない

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 人間の血液から赤血球などの血球成分を取り除いた血清の成分と海水の成分は、ほとんど同じ組成になっている。生物が海洋から陸上に進出した名残であり、海水と血清で濃度の差はあれど、どちらも最も多いミネラルはナトリウムと塩素である。
 ナトリウムと塩素は、人間の体の中では、細胞外液(特に血液量)の水分量や浸透圧の調節、血液の酸・塩基平衡、筋の収縮、神経機構、糖質の吸収などに関係している。そのため生命の保持には食塩が必要だが、1日1〜3gの食塩の摂取で十分なのだ。

 本書では、まず食塩が体にとってどのような働きをしているかを説明し、その事を踏まえて食塩の必要量はどのくらいか、を示す。そのステップの踏み方が丁寧で、納得がいく。専門的な事を一般的な言葉で説明しようとすると、科学的な精密さが犠牲にされることがあるのだが、本書ではそのような事は見受けられない。

 他に、食塩と血圧の関係、治療としての食塩制限についてもポイントは抑えられている。それにしても食塩制限によって血圧が上昇するケースや降圧薬で食塩嗜好が亢進し食塩摂取も増加するケースなど、人間の体の不思議さにはうならされる。

 また歴史的な話も挟まれているのが興味を引く。人肉を食べるカニバリズムの風習は地球上の赤道付近に広がっているが、熱帯のような発汗の著しい地域では食塩の喪失が大きいため、塩分の補給のためにカニバリズムが行われたのではないか、というのだ(第3章「塩とカニバリズム」)。そして人類の歴史から考えると、食塩が過剰に摂取されるようになったのは、近年のことであり、そのため食塩を多く取って血圧が上がるという食塩感受性に関して進化の途中にあるのではないか、と著者は言う(第12章 食塩感受性と奴隷貿易)。真偽のほどは判らないが、面白い話ではある。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
まえがき
第1章 海と我々の意外な関係
第2章 食塩への渇望
第3章 塩とカニバリズム
第4章 塩の種類
第5章 食塩嗜好とはどんな要因で変化するか
第6章 塩の道と塩税
第7章 塩と健康
第8章 食塩とがん
第9章 食塩は高血圧にどう影響するか
第10章 食塩はどのようにして血圧を上昇させるか
第11章 食塩負荷によって血圧の上昇する人、しない人
第12章 食塩感受性と奴隷貿易
第13章 治療としての食塩補給と食塩制限
第14章 食塩と他の栄養素の関係
第15章 食塩制限はどのようにするか
あとがき
参考図書/その他の主な文献/さくいん

<関連書籍>

片平 孝著『塩 海からきた宝石』(あかね書房 1979.12)
木村 修一・足立 己幸編『「食塩」 減塩から適塩へ』(女子栄養大学出版部 1981.11)
都甲 潔〔著〕『旨いメシには理由(わけ)がある 味覚に関する科学的検証』(角川書店 2001.3)
アスペクト編『至宝の調味料 5 塩』(アスペクト 2000.3)
陸田 幸枝著 大橋 弘写真『日本の正しい調味料 全部取り寄せ情報付き』(小学館 2000.10)
コリン・コバヤシ著『ゲランドの塩物語』(岩波書店 岩波新書 2001.5)

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意外に身近な毒物を専門家が解説

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 毒物といえば、一般の生活からは遠いもののように思える。だが、毒性物質も含めて捉えると生活の場には様々な毒物があることに驚く。例えば、毒物が体内に入る経路として、もっとも多いのが口だ。口からはいる毒性物質として249pに挙げられているのは、食品添加物、医薬品、残留農薬など。2番目の経路である鼻からは、タバコ(ニコチン)、大麻、スモッグ、農薬、スギ花粉が体内に吸い込まれている。皮膚や粘膜からは洗剤、化粧品、医薬品、農薬、ハチやヘビの毒だ。
 本書では、身近にありながら注意がおろそかになりがちな毒性物質から化学・生物兵器まで取り上げている。各専門家が、実際に現場でその毒物に接した体験談や研究結果から、中毒の予防や治療について述べている。どれも毒性物質が広がる危険性に懸念を表し、ドーピングや麻薬・大麻・覚せい剤への警告には切迫感が読みとれる。
 11章には毒を理解するための基礎として、毒性物質がどのように身体にダメ0時を与えるか、毒性物質を排除するしくみ、毒から身を守るポイントが示されている。身近な毒から身を守るために知っておいて損はないだろう。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
1章 一酸化炭素毒殺事件とトリカブト殺人事件◆ある保険金殺人の記録 大野 曜吉
2章 タリウム毒殺事件◆無味無臭の恐怖の白い粉 井上 尚英
3章 キノコ食中毒事件◆美しいキノコには毒がある? 権守 邦夫
4章 くすり中毒110番◆日常のなかの薬物事故
5章 スポーツ界をゆるがすドーピング事件◆記録へのあくなき戦い 後藤 京子
6章 若者をむしばむ麻薬◆事件を引き起こす毒物 山本 郁男
7章 薬物乱用者の末路◆破壊をまねく大麻と覚せい剤 山本 郁男
8章 細菌毒による食中毒事件◆身近に潜む微生物の危険度 三好 伸一
9章 恐怖の化学・生物兵器◆戦場の殺りく道具 A・T・Tu
10章 サリン事件の全貌◆日本中を震撼させた最強の毒 A・T・Tu
11章 中毒のサイエンス◆毒を理解するための基礎 小林 晴男

<関連書籍>
常石 敬一〔著〕『毒物の魔力』(講談社 講談社+α新書 2001.7)
三好 万季著『四人はなぜ死んだのか』(文藝春秋 文春文庫 2001.6)
篠田 純男著『家庭で防げる食中毒』(丸善 健康とくすりシリーズ 2001.3)
高橋 正人・立木 幸敏・河野 俊彦著『ドーピング』(講談社 ブルーバックス 2000.8)
勝野 真吾〔著〕『ドラッグと健康といのち』(学研 1998.3)
<宗教>オウム事件を忘れないための本

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紙の本高齢者の食と栄養管理

2001/08/05 15:49

高齢者医療・福祉に関わる人は必読

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 高齢社会に入り、高齢になって生きることの意義が介護保険の開始を機会にクローズアップされている。高齢者がその人らしい個性を尊重され、生き甲斐を持って社会生活を営み、より良い人生を送り天寿をまっとうすることを欧米ではサクセスフル・エイジングと呼ぶが、日本でもようやくそれを目指す意識が出来つつある。
 本書は2000年5月に行われた第54回日本栄養・食料学会大会のシンポジウムの記録が元に高齢者の食と栄養管理について、総論的にまとめたものである。医療・福祉関係者(特に栄養士・管理栄養士)に向けに編集されているので、やや教科書めいて文章が硬いが、高齢者医療・福祉に関わる人にはこの程度の知識は必須であろう。
 加齢に伴い、味覚や視覚、嗅覚などの感覚機能の低下、咀嚼・嚥下障害、消化吸収機能低下、日常生活活動強度の低下などが起きる。それにより高齢者は容易に低栄養に陥る。施設や病院に入っているからといえども、安心は出来ない。現在、問題視されているのは、病院や施設でケアを受けていながら、タンパク質、エネルギーの低栄養状態(PEM)に陥っている高齢者がいることである。栄養管理とは、栄養価計算がなされた食事を提供することではない。食事がきちんと摂取・吸収されて栄養状態が良好なこと、患者のクオリティ・オブ・ライフや満足感に貢献していることが必要なのである。
 またPEMの改善は平均在院日数の短縮による医療経済的効果もある。
 自己満足的な栄養管理に陥らないこと。我が身を反省しつつ、読んだ。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
第1編 高齢化社会の食と栄養管理対策
第1章 高齢者のセルフケアとソーシャルサポート
第2章 人生の勝利者としての高齢者の食
第3章 高齢者の食と栄養管理に関する対策と提言

第2編 高齢者のQOL改善をめざした食と栄養
第4章 サクセスフルエイジングへの食と栄養
第5章 高齢者の食と栄養に関する介入研究とエビデンス
第6章 「健康日本21」の意義と目標
第7章 QOL改善および生活習慣病予防のための食と栄養

第3編 ハイリスク高齢者の食と栄養管理
第8章 高齢者でみられる栄養障害の背景
第9章 高齢者の栄養管理の実態
第10章 高齢者に対する食と栄養管理の実践と方法
第11章 高齢者の栄養管理をめぐる政策展開の可能性

<関連書籍>
手嶋 登志子編『介護食ハンドブック』(医歯薬出版 1999.10)
細谷 憲政監修『これからの高齢者の栄養管理サービス 栄養ケアとマネジメント』(第一出版 1998.12)
中原 澄男〔ほか〕共著『介護・福祉施設の栄養管理業務実践マニュアル 改訂新版』(日本医療企画 2001.5)
藤本 大三郎著『老化はなぜおこるか』(講談社ブルーバックス 1984.9)
藤本 大三郎著 『老化を防ぐ科学』(講談社ブルーバックス 1990.7)
石井 直明著 『分子レベルで見る老化』(講談社ブルーバックス 2001.1)

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正論だがもう少し身近な視点も欲しかった

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 地球温暖化や環境ホルモン(内分泌攪乱化学物質)、ダイオキシンなどの環境への影響が懸念されている。そして土壌汚染や異常気象の増加は農業にダメージを与え、食料生産量を低下させる。一方、世界人口は21世紀半ばには90億人を突破すると推計されている。食と環境を守るために、農業はどのような道を取るべきなのか。本書では、環境と調和した持続的な農業生産への転換や自給農業を提起する。著者は、元毎日新聞の記者。本書は紙上に掲載された社説や記事を手がかりに、データを加えたものだという。食料生産の現状と近未来予測に関するレスター・ブラウン氏やスワミナタン博士のコメントも交え、資料性が高く、正論が展開されている。
 食料が溢れかえっているように見える日本だが、食糧自給率は供給カロリーベースで40%(1998年)と先進工業国中で最低である。穀物輸入率は世界一を誇る。つまり輸入穀物(輸入飼料)がなければお手上げなのである。
 ただ私たちは毎日の食生活に漠然とした不安を抱きながらも、目の前に豊富な食品があることにたいした疑問もなく過ごしている。まだまだ飢えは遠く、危機感は薄い。そのギャップを埋めるにはどうしたら良いのか。
 本書のグローバルな視点からの整然とした理論はもっとも基本的な事であり、環境について考えていると、大いに頷けるものがある。だた、もう少し近所の八百屋の店先を覗くような身近な視点からの問題提起があれば、と思う。本書が一般市民に強く共感を呼び起こせるかは疑問ではある。

<目次>
まえがき
序章 地球の温暖化、そして60億人の時代へ
 ポリン博士の警告
 変質する“日焼け止めクリーム”
 罰当たりの光景
 「現代文明に未来はない」
第1章 環境と農業
 生体実験の時代か
 環境へあふれる化学物質
 農薬の安全性を高めよう
 お産が出来ないウシ
 ダイオキシンへの不安
第2章 農業は環境の守り手か、破壊者か
 環境を守り、破壊する農業
 干拓事業の虚実
 中海干拓計画を検証する
 公共事業とは何か
 NGOを生み、育てた公共事業
 交換価値から関係価値へ
 持続可能な農業へ
第3章 地球温暖化への備えを森林で
 雨の振り方が変わる
 地球温暖化
 水の大循環を
 森林から緑の文明を
 白神の“源流”を守るブナ林
 ブナの貯水力
 稚魚泳ぐ清流
 保水力の劣る針葉樹
 森と共生する森林文化社会
第4章 生物圏の危機
 危機と飽食の狭間で
 アジアは食糧危機に陥るか
 地球は増える人類を養えるか
 過剰から不足へ
 金で「買える」は誤り
第5章 日本の農業─そして現実と課題
 どこをどう変えるか
 株式会社も参入
 高まる棚田への関心
 まほろばの里に共生する農─宮沢賢治の理想を求め
 生命への優しさを
 衰退するスギ山集落
 踏みとどまるクヌギの林の村
 山里をつぶしてよいか
 新農基法によるデカップリング政策への評価
 都会人に農業を─市民農園を大きく育てよう
 環境都市・フライブルクの試み
 飢えを救ったダーチャ
 農業大改革の時代へ
あとがき

<関連書籍>
『レスター・ブラウンの環境革命』(レスター・R.ブラウン編著 朔北社)
『奪われし未来 増補改訂版』(シーア・コルボーン著 ダイアン・ダマノスキ著 ジョン・ピーターソン・マイヤーズ著 翔泳社)

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脳は砂糖を求めている?

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 甘いものは好きですか、と聞かれると好きと答える人は多い。そしてまた砂糖は肥満の原因だと思いますか、と聞かれると肥満の原因になると答える人も多いだろう。だから世のダイエットブームの流れを受けて、ノンシュガー、シュガーレスの商品が売れている。 では本当に砂糖を食べると太るのだろうか。イエスでもあるし、ノーでもある。砂糖10gのエネルギーは38kcal、米10gは36kcalでそんなに変わらない。そして本書では砂糖に特別に肥満になる成分も依存性もない、ことが科学的に検証されている。砂糖のみならず何でも食べ過ぎれば、太る。

 でも砂糖って体に悪いのでは、という疑問もありそうだ。どうだろう。砂糖はそのブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)がくっついたものだが、脳はそのブドウ糖のみをエネルギー源にしている。穀類に多い糖質のでんぷんはブドウ糖の重合したもの。
 脳のエネルギー消費量は激しく、ブドウ糖の摂取が不足すると集中力や記憶力が低下するとも言われる。砂糖の分解はでんぷんの分解より早く、速やかに吸収される。私たちは3度の食事で穀類のでんぷんからブドウ糖を補給しているが、食事から数時間たち、血糖値が低下してきた頃に砂糖入りのコーヒーを摂るのは理にかなっている。砂糖が体に悪いとは言い切れないのだ。

 じゃあ、砂糖はいくらでも食べて良いかというとそうじゃない。砂糖のフルクトースは高脂血症を引き起こしやすい。また穀類にはタンパク質もビタミンもミネラルも食物繊維も含まれるが、砂糖はほとんどエネルギー源にしかならない。本書の途中までだと砂糖の効用ばかりが強調されているので、砂糖は体に良いのねと早合点してしまいそうだが、そういうわけではない。きっぱりあれがダメ、これは良いとは言えないのが食べ物の微妙さだ。

 結局のところ、食べ物はこれを食べれば……という単品効果主義はあり得ない。何を食べても良い、ただ「過ぎたるは猶及ばざるが如し」。昔の人は旨いことをいう。

(青木みや/管理栄養士 http://member.nifty.ne.jp/live/)

<目次>
はじめに
第1章 「砂糖は太る」の誤解
第2章 健康常識の落とし穴
第3章 ”糖”が付くから砂糖が原因?糖尿病
第4章 脳が欲しがる砂糖
第5章 健康な生活のために

<関連書籍>
『脳の栄養─脳の活性化法を探る』(中川八郎 共立出版)
『食卓の生化学(別冊・医学のあゆみ)』(三浦 義彰著 小野 直美著 橋本 洋子著 医歯薬出版)
『砂糖の世界史』(川北 稔 岩波ジュニア新書 岩波書店)

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