依田 憲枝さんのレビュー一覧
投稿者:依田 憲枝
2000/07/22 06:15
医療現場にかかわるさまざまな心理学的問題を取り上げ,「人間としてどう生きるか」を探る
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ふつうに暮らしていた人が病者になると,心理状態はどのように変化するのか。病気を意識してから病院へ行くまでの困難や葛藤,受診して検査結果を知るまでの不安や脅えといった患者心理を詳細に記述。さらに,告知後の病者の無力感や思い煩い,対人関係の変化など,こころのかげりにも触れている。
本書は,病者とその家族が病気の治療のために生きるのではなく,人間らしくより良く生きようとしていることに焦点を当てている。健康,あるいは家族や大切な人の死という「喪失」を契機に直面する「人間としてのあり方」を,子どもを失った著者の体験を交えて考察。患者と家族が抱える社会的・経済的・心理的な問題をケアし,喪失を乗り越えられるよう援助することが人間として豊かで健やかに生きることにつながると述べている。さまざまな職種の医療従事者だけでなく,病者を抱える家族や病者本人にも,医療現場で起こりやすい心理を理解する参考になるだろう。
(C) ブックレビュー社 2000
2000/07/22 06:15
最近流行の清潔志向は適切か。プロフェッショナルな感染対策を,一般の人にもわかりやすく解説
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日本では「熱があるときは風呂に入ってはいけない」といわれてきた。しかし外国にはそのような習慣はなく,シャワーを浴びてその蒸発熱で解熱させる方法をとることもある。むしろ汗や垢が体に付いたままでいるほうが感染対策上,問題である。このような具体例を「うそのようなほんとの話」,「知っているようで知らない話」などで挙げ,言い伝えられてきた非科学的習慣を指摘。感染対策で先行する米国疾患管理センターの情報を常識として,一般の人にもできる科学的感染対策を紹介している。本書を読めば,これまで習慣化されていた感染対策がいかに根拠のないものであったかが納得できるはずだ。
近年,インフルエンザが猛威を振るい,O-157,HIVウイルス,結核などの感染症が注目されている。もはや他人事ではない現状を医療施設だけでなく一般家庭でも考えるべきだろう。本書をきっかけに,日本の清潔志向が科学的方向に向かうことを期待したい。
(C) ブックレビュー社 2000
紙の本医療費のことがわかる本 風邪からガンまで74の実例でみる レセプトの読み方・給付制度などおトクな知識が満載
2000/07/10 09:16
医療費はどのようにして決められているのか。自分で支払う医療費の中身がよくわかる本
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「この病気はいくらかかるのか?」について,74の病気の原因・症状を挙げて「だからこれだけかかる」と医療費の算出方法を解説。レセプト(診療報酬明細書)の読み方に始まり,風邪など身近な病気から,ガン治療のように手術料や入院料で高額になるケース,医療費加算が多い子どもの病気などを幅広く取り上げている。医療費は個々のケースで異なるが,例えば,発熱や喉の痛みを訴えた風邪の症例は,初診料と投薬料,薬剤師が常勤している病院ならば調剤技術基本料が,また薬剤自己負担金がかかる場合もあることをわかりやすく説明している。
医療保険制度については「なぜ同じ病気でも病院によって料金が異なるか」ということに答えながら概説しており,「大病院に行くには紹介状があるほうが得か?」など17の疑問を集めた「医療費Q&A」も収載されている。本書は,受診の際にどれだけ医療費が必要か,自分の医療費の分析や病院選びの参考に役立つだろう。
(C) ブックレビュー社 2000