守屋淳さんのレビュー一覧
投稿者:守屋淳
2000/12/01 15:43
コラム「知的ミーハーになりませう」コメント
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この本は、宮台先生が自分の私的な経験をさらけだしつつ、社会が成熟したあと、
自己責任で何を択びとっていくかという真に困難な問題——その文脈のなかで、宮台
先生の愛読者が自殺した、という経緯も踏まえつつ——を見据えようとした名著で
す。もちろんパブリックな部分——リベラリズムや歴史解釈などの問題にも、相変わ
らずの最強論客ぶりを発揮していて、読み終わったあと、自分がミニ宮台化してしま
うのを実感してしまいます。
紙の本入門刑法の読み方 新版
2000/12/01 15:39
コラム「知的ミーハーになりませう」コメント
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
おお、これでどうだ——『入門 刑法の読み方』。ほーらほらほら、法律破ると大変なんだよー。辛いんだよー。
≪互いが傷つけあわず「共存」していくため」につくるのが法律なのであり、放っておけば強い者が弱い者をねじ伏せることになってしまうので、そうならないために作るのが法律なのです≫
ねえ、いいこと言ってるじゃん。ほら、殺しちゃえばこうなるんだよ——
≪ときどき「自分は三人も殺した」などと威張っているヤクザがいますが、前述のように人を一人殺せば相場として8年から10年くらい刑務所にくらいこまなければなりませんから、三人も殺人で人を殺して娑婆にいられるわけがありません≫
ほーら、人殺しなんかすると、10年近くファミコンも、不純異性交友も、鮎の塩焼きで日本酒一杯も出来なくなる、暗—い青春送っちゃうんだよ・・え、「死ぬ覚悟なんだから関係ない」って? 「だいたい自分は未成年だから、もっと刑期は短い」? なんだ、ちゃっかり計算してやがるなあ。でもさあ、いま不純異性交友のとこで、眉ピクっとしなかった? ああ、そんなにナイフ首に食い込ませないで・・お願い待って、もうちょっと説得力あるの探すからさあ・・。あ、これなんてどう、大物だよ大物。
2000/12/01 15:18
コラム「知的ミーハーになりませう」コメント
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
『なぜ人を殺してはいけないのか』——これだ、これ。ふむふむ、君ねえ、そんな馬鹿のことは止めなさい。この本にも、こう書いてあるよ。
≪ニーチェが何と答えるかはわからないけれども、ぼくがニーチェを代弁するなら、肯定するのは当然だと思うんです。殺してもいいというのはまだ甘いので、もしそれだけが自分の生を肯定できる瞬間であるならば殺すべきだ、と≫
そうだよ、そうそう、殺すべきだ・・って違——————う。おおい、なんじゃこりゃー、ロクなこと書いてないな、ブツブツ。待て待て、こんなことも書いてあるぞ。
≪「お前は殺されていいのか。人を殺していいということは、おまえもいつ殺されるかわからないということになるんだ」≫
そうだよ、どうだいヘヘーン、反論できないでしょう。ええ? 「僕は死ぬ気でやってるからいい」? 「どうせ、殺した後自分も死ぬから関係ない」? そ、そんなー、ほらこう書いてあるし——
≪「自分はいつ死んでもいい」とか「自分はどうなってもいい」と思っている人に対して、他者に対するある気遣いとか、何らかの倫理を強制するというのは、実効性がなくなるんじゃないかという疑惑があるわけですよ。≫
そうだよ、実効性がなくなって・・って、ダメ、ダメだよ。この本はポイ。次だ次。おお、こんなのがあるぞ、
2000/08/16 12:49
荒縄で体をガチガチに縛られ、さらに目隠しまでされてるのに、まだ自分は自由だと信じて疑わない。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
荒縄で体をガチガチに縛られ、さらに目隠しまでされてるのに、まだ自分は自由だと信じて疑わない——それが、今の現代人なのかもしれない、と思わされる一冊だ。
その、荒縄や目隠しとは何か?
例えば、この小説は名作だ、と権威的に教育されたがゆえ、あまり面白くないなあ、という正直な自分の感想を無視して、傑作なんだと信じ込む意識。例えば、マスコミが報道しなくなった事件は、もう終わったもの、どうでも良いものと忘れてしまう意識。
そういう意識を形作るのが、現代人に叩きこまれた<知>の大系という荒縄なのだ。いや、<知>自体が、大学や国といった権威を形作るための道具であったことを、この本で明らかにしている。まさに、巷にあふれる<手軽に知的になれるのでは>と思わせる入門書の天敵のような存在としてこの本はある。しかも、体に巻きついた<知>という荒縄を、個々の具体例という刃物を使って、内側から食い破ってしまおうとさえするのだ。
水俣病や、教育、近代文学、新聞学——この本で挙げられる具体例はどれも歯応えが強い。しかし、その一つ一つの歯応えが、荒縄を断ち切ってくれると信じられる、そんな名著だ。 (守屋淳/翻訳・執筆業)