野安ゆきおさんのレビュー一覧
投稿者:野安ゆきお
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紙の本ゲームフリーク 遊びの世界標準を塗り替えるクリエイティブ集団
2000/11/16 18:07
9月23日今日のおすすめ書評
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全世界で2000万本。今後しばらく破られないであろう記録的ヒットを達成したゲームソフト『ポケットモンスター』は、いかにして生まれたのか?
この本は、ゲーム作家・田尻智と、彼が率いるソフト制作集団ゲームフリークが、ゼロから『ポケットモンスター』を完成させるまでを描写した貴重な記録である。
ゲームフリークのスタッフでもあった著者は、サクセスストーリーの本にありがちな「ドラマチックな物語」などの話法に頼ることなく、ソフトの作り手たちの行動を、むしろ淡々と描写していく。田尻智の学生時代の様子から、ゲーム制作のプロとして会社を成長させていく過程、その途中で作られた数々のゲームソフトの中身と、そこに込められたゲーム制作の理念までを、ひとつひとつ書き記していく。
そこから浮かび上がるのは、「いいソフトを作りたい」という作り手たちの揺るぎない意志。『ポケットモンスター』が世界中の人々に愛されたのは、正しい取捨選択の末に産まれた必然であったことが、鮮やかに解き明かされる。ゲームファン必読の1冊。
紙の本ノーライフキング
2000/07/28 00:13
本書は貴重な存在なのである
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『ノーライフキング』というロールプレイング・ゲームを解けなかった子は、呪われて死ぬ。
そんな噂が小学生の学習塾で流れる……。
小学生たちがはじめて向かいあう死やリアル。
いつも大人はわかってくれない。だから彼らはゲームの世界で戦い、あがきつづける。
なんつって、この物語が出版されたのは86年。今振り返ると当時のゲームは熱かったなあ、と思うのだ。本書にはバグや裏技といった、なんとも懐かしい言葉がたくさん出てくる(※バグとはゲームソフトの制作過程で生じるプログラム上のミス。裏技とは、そのバグを利用してゲームを遊ぶこと)。あの頃は素朴なゲームソフトがほとんどだったから、バグも多かったし、裏技を見つけることもしょっちゅうだった。しかし、だからこそゲームに夢中になれた。裏技を見つけることがもうひとつのゲームだった。
しかし、昨今の複雑化したゲームでは、あのドキドキした不思議な感じは、なかなか生まれない。今や裏技という言葉は死語だし、バグという言葉にロマンチズムは失われた。
しいていうのなら『ポケモン』か。151匹目のポケモンの噂(これは制作者が仕込んだものだった)や、ポケモンの増殖ワザなど、いろんな裏技がネット上を駆けめぐった。もしかしたら、そこには『ノーライフキング』の影があったのかもしれない。
かつてのゲームが投げかけた、あの影を忘れないために。
本書は貴重な存在なのである。
(野安ゆきお・ゲームライター)
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