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前野りりえさんのレビュー一覧

投稿者:前野りりえ

2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本

紙の本うそをつく女

2001/06/14 17:52

本当はうそがつけない、ひたむきな女

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

フランスの人気女優、ソフィー・マルソーが自伝的小説を書いた。いわゆる男優や監督がいっぱい登場する華やかな恋の遍歴を語った告白本と思いきや、ちょっと違った。
 市井の人々を含め人物は多数登場するのだが、その名が語られることはほとんどない。三人称の人々との関わりのなかでソフィーの心情だけがクローズアップされる。パリに生きる一人の女性の孤独な心のうちが素直に吐露され、女優にありがちな自己愛やうぬぼれとは無縁だ。

 無防備で無軌道な少女時代、友人たちや、ときには大人の男たちとつき合いながらもソフィーは孤独で醒めていた。働きものの労働者の家庭に育った金持ち嫌いの少女は早熟で、空想好き。独立心が強く、学校で学ぶよりもパリに生きる人々との交わりが好きだった。自堕落な生活も不倫も経験したけど、やがて真実の恋に目覚めてゆく。それは多分映画監督のアンジェイ・ズラウスキーとの恋のことだろう。

 けれど男と暮らしても、かわいい息子がいても彼女の孤独は終わらない。自分を見つめ、死を見つめる人間は誰しも孤独だ。本の中で彼女はよく一人で散歩している。その孤独な姿こそ彼女の生き方そのものだと思う。

 一人の女性としての実像とスクリーンの中の虚像。女優という仕事はつねにうそをつくのが宿命で、本作の題名はそこからとられているのかもしれない。だがむしろ彼女の率直さこそがこの本からにじみ出ている柱となる部分だろう。行間から、うそをつこうとしてもうそがつけない正直な女性が立ち現れてくるのだ。そのあけっぴろげで飾らない人柄が彼女を人気女優にしているのではないだろうか。

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紙の本

紙の本ビューティフル・ボーイ

2001/06/12 16:17

軽妙な文体、深い愛

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『ビューティフル・ボーイ』はイギリスの音楽・サブカルチャーのジャーナリズムを担ってきたトム・パーソンズが初めて書いたベストセラー小説。
 30歳を迎えるころ、ハリーは軽率にも同僚の女性と一夜を共にし、妻のジーナに出て行かれてしまう。もともと妻は一日中家にいて話す相手は息子だけという生活にうっぷんがたまっていたのだ。もちろん彼女だって息子を愛している。妻は日本で仕事を見つけ、落ち着くまで実家に4歳の息子のパットを預けることにした。そこでハリーは息子を引き取った。
 彼は俄然子育てに奮闘する。それまでは仕事が第一。でもこれからは子どもが第一。新しく見つけた仕事もフルタイムでなく十分息子を育てる時間が取れるものだった。
 子育て中は予期せぬことの連続。一番の事件はパットが水のないプールに自転車ごと転落し、頭から血を流して意識不明になるシーン。身が張り裂けてしまいそうな不安! 愛する我が子が傷つくなんて!…
 やがて新しい恋がハリーにもジーナにも訪れる。だけどハリーが好きになったのはシングルマザーのシド。これでは話がこんがらがる…。
 本書ではハリーと彼の父親との関係も描かれる。彼と違って父親は元軍人のタフガイ。ごく普通の良識的な家庭を築いてきた。ハリーにとって父親はいまだにヒーローで越えられない存在だ。父親にとって結婚とは永遠に続くはずのものだった。それなのにハリーは…。世代間のギャップはあるものの、父親とハリーと孫は深い愛で結ばれていた。だが父親は病に倒れてしまう。
 夫を亡くしたハリーの母親は言う。「愛するって、手を放すタイミングも分かるってことよ」。妻が親権を主張したとき、争う構えを見せていたハリーは母の言葉の意味を理解して息子を手放す決心をする。涙なくして読めないシーンだ。
 ふがいない男の話が今時の言葉使いでユーモアを交えて軽妙に語られる。どこにでもある話だからこそ人々の胸に迫り、これだけ愛されているのだろう。両親を愛し、息子を愛し、恋人を愛するハリー、あなたはタフガイとは程遠いけど、間違いなくナイスガイよ!

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