旭 恭右さんのレビュー一覧
投稿者:旭 恭右
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IT革命 新世紀への挑戦
2000/12/26 15:21
世界のIT革命推進者が一堂に会して議論,ITの魅力,課題,危うさなどを徹底検証したレポート
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ITを説いた書物は枚挙にいとまないが,そうした中で本書のセールスポイントは,沖縄サミットへの政策提言のために開かれた国際会議のナマの議論を再現したという点。ご記憶の方も多いと思うが,2000年7月19日,東京でインターネット国際会議が開かれ,IT革命を推進している世界の著名企業家,学者19人がIT革命の本質と課題,日本の現状と可能性を議論,7項目の政策をまとめ,森総理に提言した。政府がITを政策目標の中心に据え,沖縄サミットでもITが大きなテーマになった事を考えると,この国際会議の果たした役割は大きい。
本書は,クローズドセッションで行われた会議の中味と,会議の共同議長を務めた竹中平蔵慶応大学教授,舟橋洋一朝日新聞編集委員による「日本はIT大国になれる」「教育がIT富国のカギとなる」とのIT論の3部構成。
いうまでもなく,白眉は議論を再現した部分。政府の役割,規制問題,プライバシー保護,デジタル格差,教育問題,デジタル犯罪など,IT革命を推進するための課題に,白熱した論議が展開される。場合によっては世界を破滅させかねないデジタル犯罪に極刑で臨むべきだとか,教育いかんでは,途上国が一気にIT大国に変貌する時代になったとか,個人のプライバシーがなくなる「ビッグ・ブラザー」の監視が現実化する懸念を指摘する意見など,実に興味深い議論が再現される。さすがIT革命の最先端を走るトップランナー達との感を深くする。
では日本はどうなのか。鳴り物入りの割には,規制緩和は進まないし,IT予算も総花のきらいなしとしない。政治家も経営者も口ではITの必要を唱えながら,その実,動かない。竹中教授は「いまの日本人の志の低さを象徴している」とし,高度成長時代のようながむしゃらさが必要と指摘する。日本がIT大国として21世紀に再浮上できるかどうか,傾聴に値する提言,指摘が多い。
IT用語の解説も親切で,IT革命の衝撃度,問題点などを理解する上で,格好の書物といえる。
(C) ブッククレビュー社 2000
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