こぶたさんのレビュー一覧
投稿者:こぶた
![数えずの井戸](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03221460_1.jpg)
数えずの井戸
2010/10/01 16:26
さまざまな思惑が重なって
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
番町皿屋敷の怪異を
京極夏彦が京極流にまとめたこの物語は
すべてが深い底が見えない井戸に誘われるように
悲劇が起きたのだと語っている。
菊が最期に何を言ったのか
播磨がどんな思いを爆発させたのか
大切なことは明かされないまま
井戸の周りに
渇いた喉が水を欲するように
すべてのものを手に入れないと気が済まぬ人間の思いや
人を陥れようとする人間の思いや
足りない、足りないと心に満たされないものを抱えている人間の思い、
起きたこと全部を諦めとともに自分の上に重ねようとする人間の思いが
絡み合い重なり合って
大きな悲劇が起きた
表紙の井戸の絵がすべてを物語っているようなそんな気がした。
すべてのことは井戸に導かれるように
起きた悲劇だったのではないか
![世界でいちばん長い写真](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03302127_1.jpg)
世界でいちばん長い写真
2010/08/23 15:18
久しぶりに心地よい作品
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このところ
誉田作品は後味がすごく悪いか
何となく消化不足と言った感じが強かったが
久しぶりの青春小説は心地よく楽しかった。
親友が転校してしまい
心もとないちょっと気弱で優柔不断な少年が
360度撮影できるという
不思議なカメラと出会い
そのカメラで写すことのできる世界にはまっていく
そして周りの強い女性たちに背を押されながら
成長していく
武士道シリーズも疾風ガールシリーズも
ヒロインたちはみな強くてたくましい
ちょっと気弱な、だけど心優しく素直なヒーローも
まったりして心が温かくなってよいなあと思う
![夏草のフーガ](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03436508_1.jpg)
夏草のフーガ
2011/10/22 20:03
ヒンメリのような物語
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
私立中学に入学したばかりの夏草と
その母木の実、祖母夕子
祖父が亡くなったのち、祖母が倒れ回復した時には
気持ちだけ13歳に戻っていた
3代にわたる母と子のそれぞれが胸に抱える周囲との軋轢や
自分自身を見つめ直す思いに
宗教というものがどうかかわってくるのか
ヒンメリというフィンランドの伝統装飾品を
ひたすら作り続ける祖母夕子の思いはどこにあるのだろうか
絶対に揺らがない強く信じる思いというのはあるのだろうか
震災後すべての価値観が揺らいでいるように感じる社会
震災や原発事故ですべてを失い生きる希望を無くしている人たちに、生きることの大切さ、生きることはヒンメリをつくるように
一つ一つを積み重ねいろんな方向を向いているようでも
同じ場所に立っていることを忘れないでと
この物語は語っているように思う
![夏目家順路](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03325503_1.jpg)
夏目家順路
2011/02/26 10:11
誠実に生きる男
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夏目清茂が74歳で突然亡くなった。
彼の一生と彼を取り巻く人々の視点で
人が生きるということを描いている。
「機嫌の良い男」夏目清茂はどんな人生を送ってきたのか
親や兄弟とも縁が薄く学歴もない彼が
ブリキ職人としてコツコツと努力し
結婚、二人の子を得、ささやかな幸せな人生を歩んでいくはずだったが・・・
人間は呼吸を止めるまで生き続ける
息を止めるまでの間
さまざまな出来事が起きて
その都度泣き笑い悲しみ、時には憎しみ、怒り
さまざまな思いを抱いて
打ちのめされるように辛い出来事が起きても
呼吸が止まるまで生き続けなければいけない
生きるということの意味を問いかけられたように感じ
心に響くよい一冊だと思う
![神様のすること](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03231511_1.jpg)
神様のすること
2011/02/26 09:59
生きていくということ
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自分の両親が老いてそれぞれの老いの日々のあり方と
その死の訪れと
幼いころの記憶からよみがえる両親の姿
この年になって解る夫婦の機微やあり方など
わが身に置き換えて
身につまされる思いに駆られる。
作者が語る
誰にも姿が見えない付き添い天使がいてというくだりには
私にもそんな天使がいてほしい、できればその姿は愛犬の姿でと・・・
神様は姓名をこの世に送り出す時
一人付き添い天使をつけてくれる。しかしその天使は無力で
自分が担当する人間が不幸にならないよう奇跡を起こすなんて
できないし、間違った道を歩もうとしても手を引いて正しい道に導いてやることもできない。
ただそばに居て悲しいときはともに泣き、うれしいときにはともに笑う
その存在を思うと心が温かくなる
![空想オルガン](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03302113_1.jpg)
空想オルガン
2010/09/04 12:30
キラキラ輝いていたころ
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ハルチカシリーズ第3作
吹奏楽の甲子園『普門館』を目指しコンクール出場する弱小吹奏楽部。
コンクールの合間を縫って
高級犬をめぐる騒動など
ちょっと変わった謎ときも続いている。
何かに打ち込むいちずさ、
同じ目標に向かって手を携え力を合わせる仲間たち
それは青春そのもので
今はもう帰らない夏の日の様な
眩しく
キラキラ輝いていた日々を懐かしくかみしめる
温かい物語たちだった。
次回はぜひこのシリーズの長編を読みたい
![ふたりの距離の概算](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03291615_1.jpg)
ふたりの距離の概算
2010/07/20 20:40
これからの二人
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米澤作品には珍しく
毒が少なくサクサク読めて
後味の悪さがちょうどよい塩梅になっているのも珍しい
物語を読み進めるうちに
タイトルの意味に思い当たり
これからの古典部の行く末と
ほうたろうと
千反田さんとの仲がどう進んでいくのか
展開が気になる
![空を見上げる古い歌を口ずさむ](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/02316277_1.jpg)
空を見上げる古い歌を口ずさむ
2005/07/20 14:30
懐かしい物語
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ひと夏の少年達の冒険の物語というのか不思議なお話
スタンドバイミーや少年時代を思い描かせる小説でした
この物語と続編に当たる高く遠く空へ歌ううたもおすすめです
![薔薇を拒む](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03268593_1.jpg)
薔薇を拒む
2010/07/20 20:32
ただならぬ気配の物語
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
静謐で
美しく
物語はただならぬ気配を漂わせたまま
進んでいき
物語の終わりで
思わぬ展開を見せ
タイトルの意味が腑に落ちる。
![あなたに贈るX](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03290734_1.jpg)
あなたに贈るX
2010/08/31 09:10
美しくて苦い物語
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近未来
唇を合わせることで死に至る病が流行し
唇を合わせることは禁じられ
山奥にある純潔が尊ばれる全寮制の高校に入学した美詩の
憧れの美しい先輩がその病に罹り死亡する
先輩を死に至らしめたのはだれか
美詩は友人と調べ始めるのだが。。。
登場人物は皆個性的で
美しい
物語の終わりは予想がついたものの
悲しく切なく
近藤作品らしい後味の悪さが苦さとしていつまでも残る
そんな一冊だった
![ストーリー・セラー](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03301927_1.jpg)
ストーリー・セラー
2010/08/22 15:06
有川版ある愛の詩
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
雑誌ストーリーセラーに発表されたSide:Aと新たに書き下ろされたside:B
どちらも女性作家とそれを支える夫の物語。
side:Aもside:Bも愛する夫のために物語を紡ぎ続ける作家と
夫の誰も入り込めない二人だけの日々がつづられる。
思わぬ病や事故でいくら愛しあっても早く別れなければならない夫婦もいるし、家族だからこそ憎しみ合う複雑な人間関係で悩む現実は
小説だけでなく存在する。
この作品がどこまでが創作でどこからが実話なのか
知る由もないが
泣けるほど感動する物語ではなかったけれど
さすが有川浩、
話の展開はうまく物語に引き込まれていった。
読み終えて思うのは
これは有川版「ある愛の詩」ではないかと・・・
本の装丁が美しく
この作品が妻から夫への贈り物と教えてくれる
![少女たちの羅針盤 新装版](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03402673_1.jpg)
少女たちの羅針盤 新装版
2011/05/05 22:08
過去をめぐる物語
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短編ホラー映画の主演女優としてロケ現場にやってきたマリア。
そこで監督から意味ありげに言われる「きみ、羅針盤にいた子だよね」
伝説の女子高生演劇ユニット「羅針盤」
4年前メンバーの一人が亡くなり活動を停止した。
マリアはメンバーを殺した
過去と現在を交互に描き
「羅針盤」の誕生とその栄光ある活動と
メンバーの死の謎に
話は進んでいく
女子高校生たちのはじけるような若さと
眩しいようなひたむきさ
そして手につかんだと思ったものが
するりと抜けて手の届かないところにいってしまった喪失感
彼女たちの友情と誠実さ
そして犯人マリアの狡猾さや自己中心的な考えが
メンバーを死に追いやったと知った時の彼女たちの憎しみと赦し
ミステリーであり
青春小説であり
心に残る一冊だった
![とんがりあたまのごん太 福島余命1カ月の被災犬](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03531481_1.jpg)
とんがりあたまのごん太 福島余命1カ月の被災犬
2012/04/20 16:02
人と犬のきずな
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
浪江町を襲った地震と原発被害に
翻弄され離れ離れになった犬ごんたと石沢一家
警戒立ち入り禁止地域となった町をさすらうごんたは
保護団体にレスキューされ
離れ離れになった家族探しを経て再会できたものの
そのごんたの体を大きな病が蝕んでいた
優しい預かりさんのもとで
治療を受け
最後の日々を過ごす
地震さえ起きなければ
きっと平凡だけど幸せな日々を過ごしていたはず。
離れて暮らしていても
きっと心は繋がっていただろう
石沢一家が再起していく姿を
見届けた
ごんたは安心するように空へと一足先に旅立っていった
犠牲となった人々や動物たちに心から祈り
一刻も早い被災地の復興を願う
![からくりがたり](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03301931_1.jpg)
からくりがたり
2010/08/31 09:01
反転する物語なのだが
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
自殺した青年の日記に登場する女性たちはなぜ毎年殺されていくのか
妄想とも悪夢ともなんとも形容しがたい雰囲気で物語は進み
ミステリーなのかと思えば
そうでもなく
物語の終わりは
それは無いだろうという感じで
せっかく途中までミステリアスに物語が進んでいただけに残念であり
読み終えて振り返ると
内容全体が浅かった
西澤作品ファンとして少々がっかりな一冊だった