こぶたさんのレビュー一覧
投稿者:こぶた
![深く、暗く、冷たい場所](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03368061_1.jpg)
深く、暗く、冷たい場所
2011/04/29 16:32
少女が大人になる物語
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
屋根裏部屋で見つけた1枚の古びた写真。写っているのは子ども時代の母親と伯母と、もうひとり。母親も伯母も「覚えていない」という写真に、どんな秘密が隠されているのか? 夏休みをおそった「ゴースト」ストーリー。
13歳の少女アリが
湖近くのコテージで伯母と従妹のエマと一緒に過ごす夏は
アリが少女からおとなへと一歩踏み出す夏になった。
雨が降り続く肌寒いコテージ
アリとエマのもとに現れる少女シシーとは何者なのか
物語の初めは
陰鬱な雨と暗闇の恐怖を感じるホラーだったが
シシーが登場してからはゴーストストーリーになり
話が進むにつれわたしの読解力不足なのか
作者がどの方向に物語を進めていくのかわからなくなり
本を閉じてからこの物語は
少女が大人のステップを上る物語だったのかと納得した。
湖で起きた悲惨な出来事から
母は何かを恐れ不安のあまりアリのすべてを干渉し
すべてを禁止する
父は神経衰弱気味の母を気遣うばかり
芸術家の伯母はエキセントリックで
従妹のエマは甘えん坊で
シシーが現れると突然どうしようもなくわがままで嫌な子になってしまい
そんなエマの世話に疲れ切り
物語の後半は幽霊に付きまとわれ
アリの孤軍奮闘ぶりに本当に同情した
物語の題名がすべてを物語っているのだけれど
中途半端なゴーストストーリーなのが残念
こういうお話ならもっと抒情性がほしかった
![月と陽炎](https://img.honto.jp/item/1/f8f7ef/75/110/03374147_1.jpg)
月と陽炎
2011/04/29 16:53
善と悪のはざまというより
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
13歳の時少女を連れ去った男と少女を切り刻み想像上の魔王にささげた少年康平。十数年後、最新の心理療法を受け更生への最終段階にある康平はとある町で働きながら静かに暮らしていた。が、そんな街では若い女性が失踪する事件が起き、いやがおうなしに康平は事件に巻き込まれていき
静かに始まった物語は
だんだん暴走し始め
テロ事件にバラバラ殺人に
物語の最後には康平を養子に迎えた神父の秘密や
更生プログラムになぜこの街が選ばれたのか、
更生プログラム自体にも隠された秘密がありと
話しは大きくあっちこっちに動き
たくさんの人が死に
何の救いもないまま話は終わる
本に書かれている惹句には
善と悪、二つの狭間で揺さぶられる魂の慟哭とあったが
いやいや、善は全く感じられず
洗脳のにおいがプンプンし
結局悪と悪のはざまで慟哭する魂と言った趣で
今までの三咲作品の虚無が漂う殺伐とした雰囲気が消え
ただ無機質な雰囲気が漂っていた。