権大納言さんのレビュー一覧
投稿者:権大納言
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紙の本きみの友だち
2005/11/16 20:38
本当の友達
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この小説は、表紙にもなっているとおり交通事故か病気かで足が不自由な女の子の物語・・・なんだろうと思っていた。
が、各章ごとに主人公は変わり、もちろん最初の章で主人公になった女の子が核になっていることは間違いないのだが、今までにはない印象をなんとはなしに受けていた。
それは読み始めてすぐにもあった。
それがどこからくるものなのかと最初は判然としなかったが、よくよく見ればこの小説は二人称になっているのだ。一人称は「ぼく」「おれ」「わたし」など。三人称は「〜は」と固有名詞を使う。物語って大体はそういうものなのかと思っていたが、この小説ではそれが「きみ」という表現になっている。
だから、物語の後の時代から誰かが語っているのか、或いは物語に出る各章の主人公たちを共通して知っている「物」の目線で見ているのか、そういった印象を受けながら読み進めた。
最後にはその意味も分かるのでお楽しみにされたい。
物語は題名にもあるとおり、「友だち」とは何かについて考えさせてくれる。
ケータイでつながっているのが友だちなのか、いつも一緒に話をするのが友だちなのか、困ったときに助けてくれるのが友だちなのか、それとも・・・。
「友だち」なんて言葉、ちょっと照れくさくて面と向かってはあまりしゃべりたくなかったけれど、この物語はそんな年代の心情もまた表現している。
答えははっきりないけれど、それはきっとそれぞれが見つければいい。そんな物語だと個人的な感想を持った。
紙の本冒険にでよう
2005/08/29 14:14
夢が現実に
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
この本はそんな作者の椎名誠さんがどうして世界各地を旅するようになったのかということから、実際に訪れた各地の様子を描いた作品だ。
子供のころの話では、秘密基地であったり、川遊びであったり、ここでは千葉の海辺で育った作者のことが書かれているが、場所こそ違えど子供たちにはそこにあるものを上手く使って遊ぶことを知っている懐かしさがあった。
そして一冊の本『さまよえる湖』との出会い。まだ見ぬ砂漠の世界に思いを馳せ、そこから同じような冒険の本、旅の本へとのめり込んでは身近なところでキャンプやちょっとした旅へと実行してみる。
現在では作家として小説やエッセイを書かれている他に、世界各地を旅した紀行文も数多く発表されている椎名さん。
たった一冊の本との出会いが、その後の人生にも大いに影響を与えているということが分かるし、きっかけになった本『さまよえる湖』の場所へ実際に訪れることになったときの感動は読みながらひしひしと伝わってくる。
だからといって自分も・・・というと、とても真似できそうにはないことだらけであるけれど、せめて椎名さんが書かれた世界各地の様子について思いを巡らせてみる。
本との出会いの大切さ、夢を持ち続けることの大切さ、さらにはそこにしかない風景をも知ることができた。
紙の本全日本食えば食える図鑑
2005/08/27 17:06
読んで、笑って、食べて。残暑を乗り切る!
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ヤシガニ、イソギンチャク、ブラックバスに熊・・・。食べ物として珍味になるのだろうか、或いはゲテモノになるのだろうか、その境目が微妙な食材を食べまわる。
途中、「あれー、エゾシカって食べるものだったかなぁ」なんて思いながら読みすすめたり、近年大発生し漁業者には天敵ともいうべきエチゼンクラゲの食べ方など、こちらは有効な食材として活躍できる部分を発見する。
この本を読んでいて痛快なのは、豊富な写真で実際登場する食材を見ることができるのにも関わらず、読んでいて気持ち悪いとか、恐ろしいとかといった感情はない。
むしろ、夏バテで食欲がなくなったときに、違った食感の食べ物を求める気分で読むことができる。
また、椎名ファンならご推察の通り、この本は著者である椎名さんが約20年前に書いた『全日本食えばわかる図鑑』の姉妹本とも言うべきものである。
この二つの本を合わせて読めば、笑って、そして食欲も出る。残り少ない夏、この暑さを本書で乗り切ることができるだろう。
紙の本やんぐとれいん
2005/01/19 10:48
大人って何?
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同窓会。それもただの同窓会ではない。行き先も解散場所も指定のない旅を、JRの普通列車なら一日乗り放題である青春18キップを使って行なう。
普段なら参加しない自分が参加したいと思うような同窓会とはなんだろう、という考えのもとに出た企画だった。
集合場所である、高校のあった駅の改札口に集まった六人は特に親しかったわけでもない。それぞれの現在の生活に悩みを抱えている連中ばかり。それでも誰もそんな気配は感じさせずに電車に乗りこみ出発する。
話はこれといった事件が起こるわけでも、驚きがあるわけでもない。昔の思い出や現在の様子などを織り交ぜつつ淡々と進められていく。だけど、どこか和むというか癒される部分がある。
主人公であるアメの夫が「そんなものに付き合うほど暇なやつはいない」という言葉があるが、これが答えだろう。
だからこそ、なのである。
確かに、大人になれば誰もが時間に追われ、仕事に追われ、目的のあることばかりをしている。しなくてはならない。だが、大人って何だろう?
アメの母が病床で「大人になるには…」と話す言葉が印象的だ。
ここでは、だからこそ、なんの目的もない旅を同窓生とすることで、学生時代の楽しかった時間、無駄な時間をもう一度過ごすことができる。そこで思い出すもの、得られるもの、逆になくすものはそれぞれである。
もし学生時代を懐かしみ、あのころは良かった、という気持ちになることがあったら読んでみて欲しい一冊である。
紙の本となり町戦争
2005/01/18 17:26
戦争認識を問うだけにとどまらない作品
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ある日、広報で知ることになる「となり町」との戦争。文章は回覧板で見ることができるような内容を戦争に置き換えたようなもの。
しかし、そこには戦争でイメージできるドンパチやケガ人などの生々しい描写は一切描かれない。報道で人が何人死んだという記述だけがされていく。主人公も偵察などをするのだが、それらしい気配はない。本当に戦争を行なっているのだろうか…という思いにさせられながら読み進めることになる。
この小説では「戦争」と「地域生活」がキーワードのような気がした。
まず、戦争。よく考えてみれば、実際の戦争を体験したことのない世代の私たちにとってみれば、戦争とはどんなものなのか分からないということに気づく。
人が死ぬ場面や銃弾の雨嵐のイメージはしてみるものの、あくまでもテレビの中の映像に過ぎない。だが、それが全てではないし、見えないところでも戦争は行なわれている。人も死んでいるのだ。
いかにそうしたもので植え付けられた知識だけで戦争を考えていたかという思いがする。
そして地域生活。となり町、という市町村レベルの地域を扱っているだけに、広報や住民説明会といった私たちに身近な言葉も登場する。また、主人公に業務の説明をする役所の女性など事務的、感情なし、業務最優先、といった人も出てくる。それら役所への痛切な批判も見える。
また、大切な人を守りたい、という感情も身近なところにいる人だけに強くなる。
こちらは戦争というキーワードと打って変わって知っていること、理解できることばかりだ。
戦争というものへの考え方だけに留まらず、感じる部分は人それぞれ多い作品ではないかと思う。
紙の本大和竜門サムライ人間論
2005/01/14 11:15
真剣勝負で生きること
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「サムライ人間論てなんだ?」と手に取って見れば、まず表紙の著者の写真に圧倒される。
内容は強く生きていくための人生哲学といったもので、一つの項目について簡潔に、読者一人一人に問いかけアドバイスしてくれる。理屈を述べるわけでもなければ長々と説教をたれるわけでもない。それだけに真正面からぶつかってくる何かが必ずある。普段、本を読むのが苦手な人にもオススメできる。
決心はついているのに一歩を踏み出せないとき、誰かに背中をぽんと押してほしくなることがある。或いは今現在、何をやりたいのかが見つけられない人もいる。
失敗してもいい、今バカをやっててもいい、大切なのは大人になっても夢を持ちつづけられるかどうかにある、ということを教えてくれる一冊。
心に迷いが生じたときにページを開いてみてほしい。
2005/01/14 10:55
前向きに考えるために
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ある日、「あなたは白血病です」と言われたら、あなたはどうするだろう。
どんな病気であれ、はじめて入院する人にとってみれば、次はどんなことをするのだろう、と不安になる。
最低6ヶ月以上の入院、骨髄液を採取する検査、抗がん剤投与、やがてやってくる吐き気、髪の抜け落ちなどの副作用…。
テレビなどではよく知っている光景であっても、今は完治する病気だと聞かされていても、それが自分自身や家族の身に突然降りかかってきたら、相当混乱し取り乱すことだろう。
だが、長い入院生活、長い付き合いになるのだと割りきって考えた方がいい病気もあるのだと知った。
そのきっかけとなった本書は、小学生でも読めるように語りかけるような文章で体のしくみのこと、病気のこと、検査のこと、治療のことを説明する。どのページにも絵を取り入れてあるので理解しやすい。
子供であれば付き添いの人が読んで教えてあげてもいいと思うし、大人であれば後半部の用語も併せて読めばいっそうよく分かるのではないだろうか。
闘病生活をしていく上で、気持ちの切り替えとなる一冊にきっとなるはずである。
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