magnoriaさんのレビュー一覧
投稿者:magnoria

黒い家
2004/12/08 20:06
究極の、リアル。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ある日、顧客の菰田の家に呼び出された生命保険会社の若槻は、そこで子供の首吊り死体の第一発見者となってしまう。しかし、その家族の態度から他殺を確信した彼は独自調査に乗り出すが……。
ひたすら続く恐怖。
あまりにも丁寧に描かれた残酷な情景に、初めて読んだときは衝撃を受けたものです。作者本人が「ISOLA」でのデビュー以前は生命保険会社勤務だっただけあって、そのリアリティは秀逸。

天使の囀り
2005/01/31 00:32
鬼才、貴志裕介が見せてくれた美しいもの。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ホスピスで終末期医療に携わる精神科医、北島早苗。
彼女の恋人である作家の高梨は病的に死を恐れていた。
しかしアマゾン調査隊に参加してからの彼は人格が変容し、自殺してしまう。
そして、それは彼だけではなかった。
調査隊のほかのメンバーも次々と異様な方法で死を遂げる。
アマゾンで何が起きたのか。
高梨が死の直前に残した「天使の囀りが聞こえる」という言葉の意味は?!
貴志裕介!まさに鬼才である。
全ての文章には意味があり、ラストへと繋がっていく。ほんの些細なことも。
素晴らしいとしか言いようがない。
「クリムゾンの迷宮」など他の著作同様、読み終わるのがもったいない!作品。
前半はストーリーの展開が全く掴めない。
読者も、早苗と一緒に謎の中に投げ込まれているのだ。
徐々に明らかになる真実…どんどん話が緊迫していく。
「天使の囀り」
その言葉の意味が明らかになった瞬間、涙が出た。
残酷だったりグロテスクだったりするだけが人間ではない。
そういった美しい希望も、この本は私たちに教えてくれる。

鳥肌口碑
2004/12/22 12:54
二種類の恐怖!
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
やっぱり、怖い…。
「怪の鳥肌」と「狂の鳥肌」、二つに分けられた本書。「怪の鳥肌」には幽霊にまつわる怖い話が、「狂の鳥肌」には人間にまつわる怖い話が収録されている。どれもこれも、そんじょそこらでは味わうことの出来ない鳥肌モノばかりだ。聞いたこともないような怖い話のオンパレード。
「怪」と「狂」、比べてみたが、どっちも怖い。
何が怖いって、「自分たちが平和に暮らしているこの町のどこかで、こんなものすごい非日常的な出来事が、こんなにたくさん起こっている」ことが怖い。
どちらも自分には絶対に起こらないとは言い切れない。
この二種類の恐怖、ぜひぜひ読み比べていただきたい。

もう消費すら快楽じゃない彼女へ
2005/01/30 03:10
田口ランディというフィルターを通して見る世界
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
小説では独特の世界を持つ田口ランディ。
コラムも勿論そうなのであるが、これは面白かった。
タイトルが、まず、いい。
この言葉が当てはまる女性が、この世にどれだけ溢れていることだろう。
内容についてはあえて触れない。
小説は好き嫌いがかなり分かれるだろうが、これは結構イイ。
いろいろな部分で共感できる一冊。

禍禍 プチ怪談の詰め合わせ
2004/12/19 15:00
オチのない怪談集
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
大抵の怪談にはオチ(理由)がある。
祠を壊したから祟られた、自殺現場でふざけていたら幽霊が襲ってきた…。
それも勿論怖いわけだが、理由があるほうが読んでいて安心できる。
理由があるから、幽霊を見るということは、理由が無ければ見ずにすむということだからだ。
しかし、この本に紹介されている話にはオチがない。
日常生活にふいっと紛れ込んできた、ほんの一瞬の怖い話ばかりだ。そこには特に理由も無く幽霊が登場し、消えていく。たった一度、理由も分からずに現れた幽霊たち…理由がなくたって起こる奇怪な出来事は避けようが無い。
不可解な出来事ばかり92話。
身の毛もよだつ…というのともまた少し違う、ちょっと変わったテイストの怪談集である。

アムリタ 上巻
2004/12/19 01:13
鮮やかな奇跡
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妹の死・記憶喪失・霊的な出会い、そして弟に芽生えた不思議な力。
ある女性に訪れる様々な出来事を通して、生きること、そして死ぬことについて、考えさせられる。
彼女の目を通して描かれる日常はきらきらして美しい。全てが鮮やかだ。
不思議な気持ちで読んだ。そこに起こる出来事は非日常的なのに、それが一層、「ありふれた日常」を美しく際立たせる。
いとおしくて、胸の中にずっと留めておきたいような、せつない物語。

亜洲魔鬼行
2004/12/08 19:51
終わり無き恐怖の旅
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あまりにも平凡な青年の身に、突如訪れる、終わり無き恐怖の旅。
妖怪を使役する一族の意図により、アジア中を流浪する羽目に陥った男性の濃密な数日間を描いたロード・ホラー。
妖怪と人間、という非日常の物語でありながらも圧倒的なリアリティで、
ぐいぐい引き込まれます。
アジアの国々の描写も、非常にリアル。
「ダブル・ビジョン」や「スリー/臨死」はどちらかというと閉塞された物語であるのに対して、こちらは非常に壮大。
RPGの好きな方(特にクーロンズゲートなど)にオススメの1冊。

私の骨
2005/01/30 02:41
親の愛情が生む、残酷な物語。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
表題作を含む、7話からなる短編集。
ミステリーと言うか心霊系というか、不思議な物語。
表題作「私の骨」は、親の深い愛情が生んだ残酷な過去が描かれている。
そこに、夫婦、そして愛人の思惑が絡み、平穏な生活が歪んでいく。
ちょっと前の日本なら、きっとどこかにありそうな、そんな物語だ。
この中の「奇縁」という話が私は好き。
それは、心霊とか単に、「人と人の縁にまつわる話」なのだが。
非常に面白いお話。おすすめ。

スリー/臨死
2005/01/31 00:12
寂しい物語。
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【メモリーズ】記憶喪失の女性が遭遇する恐怖。
【ホイール】人形に込められた呪いに翻弄される、人間の業と宿命。
【ゴーイングホーム】妻の死体を世話を続ける夫の、切なくも壮絶な愛。
アジアの映画監督たちがおくる、新感覚のホラー映画を完全ノベライズ。
いずれも或る一定の場所において発生し繰り広げられる恐怖が描かれている。
冷たい都市。小さな村。ある一室。
そこで描かれているのは恐怖であると同時に、家族の愛と残酷さだ。
いずれも人間の業のなせる技と言ってもいい。
読後に残るのは恐怖ではない、切なさや悲しみだ。
ホラーと一言で片付けることのできない、寂しい寂しい物語たちである。

ストーカーズ
2005/01/30 03:18
「ズ」の意味。
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「びっくりした」。コレに尽きる。
友成純一の本を読んだのは、これが初めてだった。とにかくびっくりした。
何がって……いろいろである。
まさか、そんなラストが用意されていようとは。
まさか、そうなっちゃうとは。
結構ぐちゃぐちゃのどろどろです。
ただのストーカーものだと思ったら大間違いである。
猟奇殺人だし、なんたって、ストーカー「ズ」なのである。
でも本当に、話に勢いがあって、面白い。
ぐちゃぐちゃどろどろだから、そこが苦手な人は遠慮したほうが無難。
ラストは意外を通り越して「ん? あ? え?」である。
ぐちゃぐちゃOKのアナタにオススメの一冊。

変身 改版
2005/01/30 03:00
毒虫の悲哀
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
或る朝、目が覚めたら自分が巨大な毒虫になっていた…。
設定がすごい。すごすぎる。
どうしたらそんなことを思いつくのか。シュールにも程が或る。
犬猫ならともかく「巨大な」「毒虫」なんて。
初めてこの作品を知ってから、20年。機会もなかったのだが、ようやく読んだ。
怖い。怖すぎる。
下手なホラーより怖い。
それでも会社に行こうとする主人公。
認めない(そりゃそうだ)家族。閉じ込められ、虐待を受ける。
昨日までの平凡な生活は、もうどこにもない。未来も。
薄々感づいているのに家族が余りにも冷たくて、むごい。
自分たちの生活における秩序のために「毒虫」は「毒虫」として扱われる。
しかし、毒虫は人間であり、感情も思い出も有している。
シュールすぎて読後感が悪いったらありゃしない。
しかし…。
そこまで、読者を「嫌な気分」にさせる、ということ。
それは作品にリアルさがあるということに他ならない。
結末も衝撃的。
ぜひ一度は、読んでおきたい作品。

手作りアクセサリービーズ・レッスン はじめてでもよくわかるポイントアドバイスつき
2005/01/30 01:47
入門書にオススメ。難易度かなり低め。
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
紹介されている点数が少ない。まさに入門書。
オススメは、太めのワイヤーを使用したもの。
ココで紹介されているハート&羽のモチーフは超かわいい。
しかし、この二つはちょっと練習が必要。
スパンコールが多用されているのも、この本の特色。
ラストのほうで紹介されているミニポーチは色合いも良くてかわいい。
本書で使用されているアクセサリースタンドも、すごく素敵。
ただ、本当に「入門書」なので、或る程度経験のある人には物足りない。

ニューヨークスタイルのビーズアクセサリー
2005/01/30 01:38
飽きのこないデザイン。
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シンプルだけど、飽きのこないデザイン。
あっさりした上品さで、ごてごてしていないので普段使いに最適。
一個あたりにかかる時間もそれほど長くない(難易度も高くない)。
初級〜中級者にオススメ。
ワイヤーやピンを使用したものがかなり多い。
できあがりもかなりシンプル。
そのため、編みこむほうが好きな方には、いまいち物足りないかも。
図解に関しては丁寧。

ビーズスタイル・クール
2005/01/30 01:25
斬新なデザイン。難易度高め。
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ちょっと真新しい、斬新なデザイン。モチーフものの繊細さは素晴らしい。
竹ビーズの使用が多いため、線画のような優雅さがある。
堕天使・クリオネ・柊などちょっと変わったデザインが多い。大人向け。
が。
難易度は高め。
1工程ずつの丁寧な図解があるにも関わらず、難しい。
初心者であれば挫折する恐れアリ。
基本的に、テグスの片側だけで編んでいくタイプ。
編みあがりはしっかりしたものになるが、飲み込むまではちょっと面倒。
中級〜上級者であれば写真を見て編んだほうが楽かも。

うつくしい子ども
2004/12/21 21:56
複雑な読後感
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
幼い少女を殺した弟。
その背景を探るべく、フィールドワークを開始した少年・ジャガの成長物語。
酒鬼薔薇事件をモチーフに取られているが、むしろそれは忘れて読んだほうが純粋に物語の美しさが楽しめる。自然の描写、まっすぐに成長していくジャガの精神…物語として読めば、思春期のこども特有の「モノの見方」を思い出し切なくなる。
ただこれを酒鬼薔薇事件と絡めて考えてしまうと、納得いかない部分が多々ある。現実はそんなに美しいものではないのではないか、と思うのだ。
被害者や、被害者の家族に関する描写が極端に少ない。それはもちろん意識的にそのように作られたのであろう。そして様々な描き方があるのは小説として当然のことだ。しかし、あまりにも物語は淡々と進む。ところどころ、例えばジャガと被害者の母親が話すシーン…そんなちょっとした部分で、ふとこの作品が「つくりもの」であることが際立ってしまう。これはあくまでも小説…しかし、事件に関与した人物はこれをどのように受け取るのだろうと考えたとき、複雑な気持ちにならずにはいられない。
実際の事件同様、内容はセンセーショナルで衝撃的だ。しかし、あまりにも綺麗にまとまりすぎている。物語としては非常に良い出来。