森山和道さんのレビュー一覧
投稿者:森山和道
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紙の本宇宙はこうして始まりこう終わりを告げる 疾風怒濤の宇宙論研究
2000/07/09 06:54
宇宙論研究者達の熱意と息吹をありのままに描く
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ユニークなスタイルの宇宙論本だ。ハッブルの弟子サンディジを主人公に据えつつ、数々の研究者達にインタビュー。宇宙論の歴史から現在に至るまで、そして研究者たちの姿そのものを鮮やかかつユーモラスに、この上なく生き生きと描き出している。
宇宙論は「現代の神話」。研究者たちはまさに現代の「神官」だ。彼らはこの世界が生まれた瞬間に迫り、運命に思いを馳せ、創世記を書き直している。現代の「神官」は、直感や神の啓示ではなく、論理と観測結果で神話を編む。徹底的に緻密に構築された論理と、観測成果の発展双方が激突し、絡み合い、劇的に変化していく宇宙の描像。そして、笑い、怒り、泣きもする宇宙論研究者達の熱意と息吹。研究者同士の権力争いや、つまらぬしきたりも著者オーヴァバイは余さず描き出す。著者自身が認めるように中には偏った見方もあるだろう。だがそれも含めて実際の研究現場の空気そのものがここにはある。研究者たちの雰囲気を感じ取りたい人には、これ以上の本は望めまい。
話は観測から理論、ブラックホール、銀河、銀河団、素粒子物理、統一論、対称性、暗黒物質と続いていく。たかが宇宙論が誕生して80年。だが長大な物語である。なにせ本書は本文700ページもあるのだ。腕が筋肉痛になる重量を誇る本だが、文章はなめらかで躍動感があり、同時に人間くさい。宇宙論という「神話」を扱いながら、これだけ人間くさい話を描ききった著者の技量に感服!
(森山和道/サイエンスライター、bk1サイエンス担当エディター http://www.moriyama.com/)
<目次>
プロローグ 永遠を背負わされて
──PART ONE 主焦点ケージの男──
第一章 天の声
第2章 キャンディーマシン
第3章 世界モデル戦争
第4章 時の岸辺の篝火
第5章 神の検問所
第6章 ブラックホールの王様
第7章 ビッグバン
第8章 銀河を作るもの
──PART TWO フェルミランド──
第9章 長征
第10章 永遠に続くさようなら
第11章 フェルミランド
第12章 美しいものが勝つ
第13章 宇宙論をやる気はなかったけれど……
第14章 うまい話にはウラがある
──PART THREE 影の宇宙──
第15章 ハッブル定数をめぐる戦い
第16章 測定装置ゼットマシン
第17章 ニュートリノの春がやってきた
第18章 ツビッキーの復讐
第19章 占星術師の呪い
第20章 夢の時代
──PART FOUR 最後のジェントルマン──
第21章 流浪のサンディジ
第22章 宇宙の膨張が停止する日
第23章 あちら側の世界
それから──宇宙論の黄金時代
エピローグ
訳者あとがき
事項索引
人名索引
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