新田 隆男さんのレビュー一覧
投稿者:新田 隆男
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紙の本海外でキャリアを築くということ 工藤夕貴がハリウッド女優になるまで
2000/07/10 00:36
海外でキャリアを築くということ
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かの相米慎二監督作品『台風クラブ』の主演があったものの、アイドルとしての工藤夕貴はどこか華奢で線の細い(肉体的だけでなく存在的にも)印象だった。
だからジム・ジャームッシュ監督作品『ミステリー・トレイン』に出演が決定したときは、けっこう驚いたし、作品を見てみれば、自然体の演技で外国映画に登場するという、かつてどんな日本人も成し得なかったことを楽々こなしている姿に唸ったものである。
インディペンデント映画とはいえ、アメリカ映画で堂々渡りあっているうえ、アイドルの時よりも、伸び伸びとしているようにも見えたのだ。それ以後、工藤は幾多の海外インディペンデント映画に出演、ついにハリウッド・メジャー作品『ヒマラヤ杉に降る雪』に主演、ときわめて順調にステップ・アップ…と思いきや、本人としては、そうではなかったらしい。
コンプレックスの固まりだった子供時代、意に添わない仕事を引き受けたアイドル時代、そして海外進出の後、結婚、離婚。本書を読むと、この十年が決して順風ではなかったことがわかってくる。それでも、自分の力で着実に積み上げたキャリアの数々、そしてそれを支えた心の原動力。「インタビュー、ってけっこうセラピーみたい」と表現するだけに、彼女の言葉は隠し事のない正直なものに思える。ハリウッドのオーディション風景など映画ファンの読みどころもあるが、そこにはとどまらない。いかに自分の可能性を試しつづけるか、前向きな生き方のビタミンになる一冊だ!
(新田 隆男・映画文筆業)
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