高原英理さんのレビュー一覧
投稿者:高原英理
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紙の本ゴシックハート
2004/08/13 11:14
著者からのメッセージ(前編)
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物心ついた頃から怪奇なもの怖いもの暗がりにあるものが気になってしかたなかった。夜とか墓場とかお化けとか怪談とか、そういうのが興味の大半を占めていた。
集団生活と共同作業が苦手だった。幸い今のところ徴兵制はないからよいが軍隊に入れられたら耐えられないだろうなとよく考える。
平穏が続くというのが信じられない。いつも死のイメージばかり考えていた。死は膜一枚で隔てられているだけと思っていた。今もそう思っている。
ダークな感じ、陰惨なもの、残酷な物語・絵・写真を好む。ホラーノヴェルもホラー映画も好きだ。
時代遅れと言われても耽美主義である。様式美の感じられないものに興味が持てない。
身体の改変・変容や欠損・過剰に強い興味がある。いつもサイボーグを夢見ている。肉体の束縛を越えたい。
両性具有、天使、悪魔、多くは西洋由来の神秘なイメージが好きだ。澁澤龍彦の紹介した文物絵画などは大抵好ましかった。
金もないのに贅沢好み。少女趣味。猟奇趣味。廃墟好き。頽廃趣味。だが逆の無垢なものにも惹かれる。
情緒でもたれあう関係が厭。はにかみのない意識が厭。
欲望はよいとしても野卑で凡庸な欲望の発露が嫌い。
自信満々の人が厭。弱者だからと居直る人も厭。「それが当たり前なんだから皆に合わせておけ」と言われると怒る。はじめから正統とされているものにはなんとなく疑いを感じる。現状の制度というのが決定的な場面では自分の味方でないように思える。いつも孤立無援の気がする。
気弱のくせに高慢。社会にあるどんな役割も自分には相応しくない気がする。毎朝、起きると、また自分だ、と厭になる。自分でないものに変身したい。それは夜に生きる魔物であればよい。フランケンシュタイン・モンスターの気持ちがわかるつもり。楳図かずおの描く怪物たちの気持ちがわかるつもり。
最近ようやく気づいた。私の考え方、好み、いずれも、ゴシックと呼ばれるものなのだ。私のような感じ方をゴシック的と言うのである。
これから私はゴシックな意識について語ろうと思う。それは主義のような言い方になるときもあるが主義ではない。また思想や理論として構築されているものでもない。言ってみれば好悪の体系のようなものだ。だからその動機と起源を探って行くともはや説明不能な偏差にぶつかるだろう。しかしそこに自分として確固たる必然が感じられるものだけを語る。好みだからといって重要でない筈はない。命懸けの好みなのだと言いたい。ロックがそうであるように、それは生き方だからだ。
私・高原英理は一九九六年、「第三十九回群像新人賞評論部門優秀作」に選ばれることから評論活動を開始しましたが、また一方で一九八五年、澁澤龍彦・中井英夫両氏の選考による「第一回幻想文学新人賞」をいただきました。この文学賞は翌年第二回まで行われましたが、澁澤氏の逝去により途絶したまま現在に至っています。
澁澤さん・中井さんは今も私の師です。
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